リズムゲームではない、本物のギターゲームが登場

 ユービーアイソフトから、プレイステーション3、Xbox 360用ソフト『ロックスミス』が本日(2012年10月11日)発売を迎えた。ここでは、プロデューサーの肥後直巳氏に本作の開発の経緯や目指したものなどを聞いた。

ついに発売『ロックスミス』肥後直巳プロデューサーへインタビュー_02
ユービーアイソフト
『ロックスミス』プロデューサー
肥後直巳氏

――『ロックスミス』を開発することになった経緯を教えてください。

肥後直巳氏(以下、肥後) アメリカ・サンフランシスコで内部開発を立ち上げることになり、私とディレクターのポール・クロスを中心に動いていました。最初は3Dアクションゲームを作ろうと、企画を弊社社長のローレン・デトックに提案したのですが、「いいアイデアだが、キミたちはこれを作ってほしい」と、ギターのトーンを認識できるアルゴリズムの資料を渡されたのがきっかけですね。ローレンはギターが好きで、ギターを使ったゲームを作るために、そのアルゴリズムを作った会社を買収しましたが、どういうゲームにするか具体的には決まっていませんでした。そこで我々が作ることになったんです。しかし、私とポールはギターがいっさい弾けません。ギターの“ギ”の字も知らない我々がプレイできるように、ギターやピックの持ちかたからギターの弾きかたまで、すべてを学べるものを目指しました。

――本物のギターをコントローラにすることは、最初から決めていたのですか?

肥後 そうですね。ギターから出したアナログのシグナルを直接コンピューターに繋ぎ、それをコンピューター側で認識するというアルゴリズムでしたし、専用コントローラにするとハードルが高くなる懸念もあり、本物のギターを使うことになりました。じつは、ギターについているフォンジャックは50年代から変わっていないんですよ。なので、付属のリアルトーンケーブルを接続すれば50年代、60年代のギターを使ってもプレイすることができるんです。

――なるほど。開発で苦労したところはどこですか?

肥後 苦労しなかった点がないという感じでしたね(笑)。前例がないのですべてイチから考えなくてはならなかった。とくに、インターフェースは試行錯誤を重ねました。最初にこのゲームの開発用に用意されていたアルゴリズムは、タブ譜のように数字が横からスクロールするようなものでした。ゆっくりとしたテンポならかろうじて弾けますが、速いテンポになると目も指先も追いつかなくなるので、初めてギターを触る人もわかりやすいものにしようと話し合って作り上げた結果、現在のインターフェースになりました。

――出てくる譜を覚えるのではなくて、ギターの弾きかたを覚えるところに繋がるのがいままでのリズムゲームと違いますよね。

肥後 「気が付いたらその曲が弾けるようになった」という感覚でプレイできるように、難易度を自動で調整するようにしました。既存のリズムゲームは、難易度が決まっています。しかし、ギターの音色をボタンにすると100種類以上ありますし、楽曲もやさしいものから難しいものまでさまざま。それを5つぐらいの段階に分けるのはまず不可能です。たとえば、いちばん下の難易度は1メジャーのあいだで1~2個のノートを与える。そのつぎの段階では、その3倍くらいの数を与えるとなると、突然ギャップが開いてハードルが高くなってしまいます。しかし、『ロックスミス』は1段階上がるとノートが1個増えるという風に段階を細かく分け、少しずつ段階が上がるようにしました。曲によっては30段階くらい設定しているものあります。

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▲奥から流れてくるノートにタイミングを合わせて、ピッキングするだけ。
▲プレイヤーの腕に合わせて、曲の途中で難易度が自動で変化。うまく弾くと出てくるノートがだんだん増えていく。

――収録曲はどのように選定されたのですか?

肥後 選定基準はふたつあります。ひとつは、本物のギターを使うゲームなので、曲の中でギターが強く出ているもの。そしてもうひとつは、チューニングです。ギターのチューニングは曲によって変わりますが、異なるチューニングの曲をいくつも入れてしまうと、曲を選ぶたびにチューニングの調整を行わなくてはなりません。そこで、我々は“スタンダードチューニング”と“ドロップD”のふたつに絞りました。その中からさらに、教えたいテクニック、遊びやすいもの、歯応えのあるもの、ジャンルなど、できるだけ幅広くカバーするために調整しました。収録曲はギリギリになるまで決まらなかったですね。

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▲ギターのチューニングも画面の指示に従って操作するだけオーケー。

――日本のファンは、日本の楽曲もプレイしたいという人が多いと思いますが。

肥後 個人的にもぜひ入れていきたいと考えています。すでにダウンロードコンテンツとして、いろいろな楽曲を配信していますが、今後も配信する予定ですので、日本の曲も入れたいですね。

――ちなみに、この技術はキーボードなどにも使用できるのですか?

肥後 対応できないことはないです。将来的にはキーボードやエレキドラムなどでも、プレイできるようになったらいいなと考えています。

――ミニゲーム“ギターケード”について教えてください。

肥後 ギターを弾くために必要なテクニックを学んでもらうために作りました。もっとも簡単な“Ducks”は、正確にフレットを動かし、いろいろなフレットから出てくるアヒルをピッキングで撃っていくというものです。フレットを押さえてピッキングする、ギターの基礎を練習できます。また、これまでギターを触ったことがない人もギターに馴染めるように、音楽を外し、“ギターの形をしたコントローラ”としてさまざまなミニゲームを遊んでもらうことで、ギターを持つことに慣れるという意味でもこのモードを入れました。

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▲ギターを使って、フレットから出てくるアヒルを撃っていくミニゲーム“Ducks”。

――最後に、読者へメッセージをお願いします。

肥後 長くお待たせしました。音を認識するアルゴリズムの強化や、ベースモードの収録など、北米版よりもだいぶパワーアップしたものを提供できるようになりました。ギターに興味がある方、昔ギターを弾いていた方、いま習っている方、そして、習いたいなと思っている方もぜひ試してみてください。