新感覚のステルスアクションがその姿を現す!
2012年8月にドイツで開催されたヨーロッパ最大のゲームイベント“gamescom 2012”にて、プレイステーション 3部門とXbox 360部門、そして総合部門にてベストゲームに選ばれるという栄冠を手にした、『Disnonored(ディスオナード)』。なぜ本作が、ここまで高い評価を受けたのか? その理由をその手で、直に感じ取れるときが来た。このゲームが、いわゆるただの“ステルスアクションゲーム”ではない理由を、筆者の観点で紹介していこう。
ダークでエレガントな世界に夢中です
まずは、本作のストーリーを紹介する。
主人公であるコルヴォは、女王に仕える勤勉なボディーガードだった。しかし、何者かに女王を目の前で暗殺されたうえに、女王の娘のエミリーまで誘拐されてしまう。女王暗殺の罪を着せられ、あえなく投獄されたコルヴォ。王制支持者たちの手助けで脱獄に成功するものの、背負わされた罪が消えることはない。追われる身となったコルヴォは、みずからの顔を仮面で隠し、自分を陥れた存在への復讐を誓う。そこに隠された陰謀の正体は? そして、さらわれたエミリーの行方は? 退廃の街"ダンウォール"を舞台に、男の復讐譚が幕を開ける――。
“復讐”というテーマを描くダークなストーリーもさることながら、『ハーフライフ2』などで注目を集めたヴィクトル・アントノフ氏による世界観がすばらしい! スチームパンクのような機械的なイメージと、産業革命時のイギリスを匂わせるエレガントなデザイン(とくに衣装!)が融合した世界は、好きなヒトならアンテナがピンっと立つことはまちがいない。疫病に侵された死体が転がり、病原菌を媒介する超凶暴なネズミが徘徊する街の風景は、一見の価値がある。
組み合わせで可能性は大きく広がる
ゲームの内容からそれてしまったので、本題に。
本作の基本的なゲームシステムは、ステルスアクションだ。ストーリーを進行していくなかで、さまざまな暗殺ミッションに挑戦するのだが、プレイヤーが持てる力は武器とガジェット、そして人智を超えた超常能力である。メインとなる武器はソードで、ほかにも銃やボウガンなどを装備できる。ガジェットは、敵を切り刻むワイヤーが飛び出すスプリングレーザーやリワイヤツールなど、有効なツールが登場する。そして、超常能力だ。
戦闘のキモである超常能力は、多岐にわたる効果を発揮する。まず最初に習得するのは、指定した場所へ、一定の距離を瞬間移動する“ブリンク”。通常では行けない場所に移動できるようになることで、移動ルートの幅が一気に広がる。ほかにも、ネズミの大群を呼び出して敵を攻撃させる“ラットスワーム”(骨まで食い尽くすさまは圧巻!)や、時間を止める“ベンドタイム”など、多彩な能力が用意されている。
この能力は攻撃に使えるだけでなく、使いかた次第で新しい道筋を生み出すこともある。プレイヤーは、自分の力をすべて駆使して、どのように移動し、いかに目的を達成するのか、考えなければならない。プレイヤーの想像力次第で、攻略法は大きく変化するのである。
また、超常能力は“ルーン”を入手することで強化ができる。しかし、これがなかなか見つけにくい。そこで活躍するのが、心臓のような形の“サーチャー”だ。画面上にマーカーを表示するだけでなく、コントローラーの振動の強弱で、ルーンのありかを指示してくれる。これに、スキルを引き上げる特殊アイテムの“ボーンチャーム”を組み合わせれば、アサシネーションの幅は大きく広がっていくのだ。
殺すか、殺さないか? 決めるのはプレイヤーだ
序盤はチュートリアル的な要素が強いミッション。収容施設から抜け出して、王政支持派のアジトにたどりつくことが目標となる。ここで、戦闘やステルスモードの基本が確認できる。しかし、使えるものは武器とガジェットのみ。ポイントとなるのは、やはりステルスモードだ。数は多くないとはいえ、複数の敵と対峙するのは危険。敵の視線や行動を観察して、ルートを考えながら進んで行くという、基本中の基本を頭にたたき込む。敵を殺すのもいいが、背後からこっそり忍び寄って、首を絞める→気絶した敵を物陰にこっそり隠すという一連の動きを、ここで体得しておいたほうがいい。じつは、敵を殺し続けていると“カオス度”が上昇し、敵の警戒度が強くなったり、街を徘徊するネズミが増えたりするのだ。もちろん、「全員殺す」というアグレッシブなスタイルでもクリアーすることはできる。相当、腕に自信があればの話だが。逆に、「誰も殺さない」というプレイも可能なのだ。ちなみに、プレイスタイルによってエンディングが変化するようなので、1回のプレイでは、本作のすべてを理解したことにはならないと断言しておこう。
道筋はひとつではない! 想像力を働かせて進め
収容施設から脱出して、超常能力を手に入れてからが、いよいよ本番。暗殺依頼を受けてダンウォールに舞い戻ることになるのだが、そこから目的を達成するまでのルートは幾通りにも枝分かれする。実際、とある女性に会って街のごろつきにケンカを売ったところ、そこからは街にたむろするごろつき全員が敵になった。その女性に会わないで、蒸留酒を作る施設に行ったところ、ごろつきのボスから依頼を受けることができた。どちらがいいか、悪いかはプレイヤーの判断次第。個人的には敵が少ないほうがいいので、ボスの依頼を遂行するルートを選んだのだが、別のルートを選んでいればまた違った展開が待っていたようだ。
最終的な目標はターゲットの暗殺なので、画面上に表示される目的へのマーカーに沿って移動すれば、いつかはたどりつく。ただ、闇雲に進むだけでは敵に発見されるだけなので、自分のような“闇に隠れて生きる”派は、鍵穴や物陰から周囲の様子を伺ったりしながら、慎重に行動すべきである。行き詰まっても、超常能力をうまく使えば、必ず解決の糸口が見つかる。ここは想像力の働かせどころだ。
本作の革新性をその目で確かめてほしい
ミッションの説明はここまでにしておこう。あとは、実際にあなたがその目で、手で、頭で体験してもらえればいい。「難しそう」という理由で触らないのは、本当にもったいない。難易度をイージーにすれば、初心者でも比較的安心に進めることができるし。フルローカライズされているので、ストーリーにもスッと入っていけるはず。細部にわたるまで丁寧に作られており、何度もくり返して楽しむことができるよう、配慮も行き届いている。万人に受け入れられる作品ではないかもしれないが、できるだけ多くのゲームファンに触れてほしいゲームなのだ。
■筆者紹介 コンタカオ
ファミ通編集者。ダンウォールをなんとなく探索していて、思わぬところにルートを見つけたときの快感がハンパないと断言。三半規管が弱いのに、FPSが好き。夢中になっているときは平気だが、ふと気を抜くとフラフラしている自分に気づく。