次世代の格闘エンターテインメント、『デッド オア アライブ5』プレイインプレッション

“世界でいちばん美しい”格闘ゲームこと『デッド オア アライブ』(以下、『DOA』)シリーズ。7年ぶりに蘇った本作を、シリーズを通じてプレイしてきたライターがインプレッション。

●7年ぶりに再誕した総合格闘エンターテインメント

 『DOA』シリーズは打撃・投げ・ホールドの3すくみのシステムや、セクシーな女性キャラクターがまとう魅惑のコスチューム、ステージに仕掛けられたド派手なデンジャーなどが特徴の格闘ゲーム。すでに15年以上の歴史があるが、とくにPS系ハードに格闘ゲームとして登場するのは『DOA2 HARD・CORE』(プレイステーション 2/2000年12月発売)以来となる。それだけに長年遠ざかっていた、あるいは初めてプレイするという人も多いだろう。そのぶん、本作の進化がより劇的なものに映るのではないだろうかと思う。
※『DOA4』以降に発売されたシリーズは、スピンオフの『DOAX』シリーズの携帯ゲーム機版『DOA PARADISE』(PSP)、よりカジュアルな層へアピールした『DOA Dimensions』(ニンテンドー3DS)の2作品。


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▲”DOATEC”は秘密裏に“超人開発計画”を推進してきた企業。霧幻天神流の忍者を狙って多くの生体兵器を開発した。創始者フェイムダグラス、開発責任者のビクトール・ドノヴァンの行方は!?

 具体的に変わった部分とあげていくと、新キャラクターの追加や技性能の見直し、ステージやゲームシステムにも大きく手が加えられている。また、イマドキな仕掛けとしては、Facebookとの連動機能もある。こうしてひとつひとつの要素を見るだけでは、格闘ゲームとしてはありきたりな進化に見えるかもしれないが、実際に遊んでみると、新しさと安心感が同居した“格闘エンターテインメント”として、これまで以上に別の方向性に突き抜けたことがわかるだろう。『DOA4』は完成形とも言われていたが、物語のなかで闘いの場を提供してきた”DOATEC”は崩壊した。そして7年後のいま、まるでエレナがトップを務める新生”DOATEC”のように、再構築された『DOA5』がついに姿を現したのだ。ここでその魅力に迫ってみたい。


●家庭用だからできた、群像劇スタイルの物語

 本作での新たな試みのひとつが、群像劇スタイルで進行するストーリーモード。格闘ゲームのストーリーモードというと、基本的にはキャラクターをひとり選び、対戦と同フォーマットのCPU戦を進めるものが標準的だ。本作ではそこに大きなメスが入れられ、格闘大会DOAを取り巻く大きな物語を各キャラクターの視点で体験していくものになっている。プロローグが終わると“かすみの章”があり、今回の彼女が闘う背景が明かされる。つぎに“あやねの章”、“こころの章”という具合に続き、これにともなって物語全体のタイムチャートが埋まっていき、多面的に物語が進行していくのだ。バトルシーンは必ず含まれるため、多くのキャラクターを使わなくてはならないが、ほかのモードに比べると難易度はかなり抑え気味。さらにバトルも1本勝負だったり、タッグバトルだったりすることもあり、多彩なシチュエーションでテキパキ進んでいく印象だ。純粋に格闘大会で上位を目指すキャラクターもいれば、その裏に隠された真実に迫るキャラクターもいる。あるいはそんなきびしい世界とは無縁の、ドタバタコメディをくり広げるキャラクターもいる。なかには「えっ!!」と思うような展開もあり、先が気になって手に力がこもる場面も多々あった。物語全体のボリュームはそこまで多くはないものの、クリアー済みの好きなパートからスタートできるし、各バトルで提示される課題“ボーナスミッション”を達成して称号を集める楽しみもある。対戦前の会話やエンディングをぶつ切りのカットシーンで見せるよりも、こういった手法なら世界観や登場人物の魅力をより深く、濃密に描けると感心した次第だ。エンディングを迎えたあとの充足感も大きい。こういうゲームモードが作れたのは、『DOA』がアーケードベースの作品ではなかったおかげかもしれない。格闘ゲームは格闘部分のデキが何よりも重要だし、アーケードベースの作品なら、なおさらトレーニングやオンラインに力を入れるのが自然だ。結果的にストーリーモードのプライオリティは低くなりがちだが、あえてそこに力を注いでいる。その挑戦は素直に賞賛したいし、成功していると思う。


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▲従来のストーリーモードも楽しいが、キャラクターが20人以上にもなればやがて作業感が出てくる。それを解消しつつ、グランドエンディングを見ることのできる本作のストーリーモードは完成度が高い。ついついやめどきを見失い、一気に最後まで遊んでしまうはず。

●より艶やかに魅力を増したキャラクターたち

 『DOA』シリーズと言えば、キャラクター――とりわけ女性陣――の魅力も代名詞的な存在になっている。第一作は多くの制約があるなかで、トレードオフで肌のテクスチャーに尋常ならざる力を入れ、不自然なほど胸が揺れることで存在感をアピールしていた。だが、『DOA2』あたりからは背景も含め、グラフィック全般が大きなアピールポイントになっている。そんな“世界でいちばん美しい”を掲げるビジュアル面の進化も見逃せないところ。まず、キャラクターのモデリングが大幅に変更されている。かすみ、レイファン、こころなどは顔立ちが大きく変わったキャラクターの代表格。全員をひとりずつ見れば、イメージが変わったことに不満を持つキャラクターもいるかもしれないが、全体的には個性化も含めて本作の造形は魅力が増していると感じた。また、闘いが進むと汗をかき、衣服が汚れていくのも特徴で、“たたかうひと”によりリアルな息吹を与えている。その表現があからさまではなく、さりげなく変化していくのも好印象だ。なお、コスチュームによって素材も変わり、汗の透過具合や汚れのつきかたも変わってくるという。いい意味で変態的なこだわりが結実し、キャラクター全般は本作も非常に魅力的に仕上がっている。

 また、『バーチャファイター』(以下、『VF』)シリーズから、アキラ、パイ、サラの3人がゲスト参戦している点も興味深い。メーカーの垣根を越えたコラボ自体はいまでは珍しくはないが、『VF5』の開発スタッフと密に連携を取り合い、何度も調整をくり返してお互いが納得できるキャラクターを作り上げたという。テクスチャーだけを変えた流用キャラクターではなく、固有のモーションをそのまま使用し、操作感覚も極力再現するように努めている。『VF』のファンが納得できるだけでなく、『DOA』の世界に生きる格闘家として、違和感なく溶け込んでいる。


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▲総合格闘技を操る、新キャラクターのミラ。小柄で細身なキャラクターで、『DOA』にはいなかったタイプ。バースに憧れている。

▲バトル後のカットシーンだけでなく、ゲーム中もよく見ると頬を伝っていくひと筋の光が確認できる。

●カジュアル層もコア層もいっしょに楽しめる!?

 『DOA4』はコアな対戦プレイヤーの視点を基準に、コアプレイヤーが納得感と満足感を得られるものを目指してバランス調整された。その結果、これまで以上にオフェンシブでストイックなゲームシステムが構築された感がある。もちろん、研鑽を積んだプレイヤーほど勝率が高くなるのは当然のことであるが、「(そのゲームに)運の要素がどの程度介在するか」というのは格闘ゲーマーのなかでもたびたび挙がる話題。今回も、さすがに圧倒的な腕の差が運で簡単に覆るようなことはないが、決めるだけでステイタスになるような、ついつい狙いたくなるような、そんな逆転性の高いシステムが新たにふたつ導入されている。ただし、いずれも狙いを絞られるとホールドの的になるため、使いこなすには工夫が必要だ。

 そのうちのひとつが、溜め攻撃の“パワーブロー”だ。体力が半分以下になり、赤く点滅を始めたあと、固有の“パワーブロー技”を溜めて放つと、ヒット時に大ダメージを与えて相手を好きな方向に吹き飛ばせる。

 もうひとつが、最上位のクリティカル状態である“クリティカルバースト”だ。『DOA』シリーズでは、さまざまな打撃の当てかたにより、ホールドとよろけ回復しか行えないクリティカル状態が発生する。このときに条件を満たした追撃を行うと、相手が完全に行動不能なクリティカルバースト状態に持ちこめる。条件は少し複雑なので詳細は省くが、うまく行けば一方的にコンボやパワーブローを決められるのだ。


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▲パワーブローは当てるのが難しいだけに、ダメージは極めて高い。もともとは、超必殺技に相当するものを入れたいという要望から生まれたものだとか。

▲クリティカルゲージを振り切る際、固有のクリティカルバースト技を当てると発生する。体力が半減していれば一気に勝利できるチャンスだ。

●興奮が加速するダイナミックアトラクション

 最後に、さまざまな仕掛けが用意されたステージ全般についても触れておこう。『DOA』のステージの仕掛けは“デンジャー”と呼ばれ、多彩なリアクションを楽しめる。格闘ゲームとしては異例なほど作りこまれているのも特徴だ。とくに本作のステージは“ダイナミックアトラクション”と命名され、これまでにない大規模なギミックが仕込まれている。ぶつけて追加ダメージを与える、叩きつけてバウンドするといった単純な仕掛けではなく、爆発が発生→地面が傾く→崩落する、といった具合に段階を追ってステージ全体が姿を変えていく。もちろん、仕掛けがなく、落ち着いて闘えるステージも用意されているので、どんな対戦を望むのかで臨機応変に使い分けていくといい。


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▲落下ポイントでの攻防では、がけっぷちデンジャーが発生する。読み合いの結果次第で、防御側が受けるダメージ量が変わる。

▲キャラクター数が多いこともあり、トレーニングモードも充実している。相手の行動を細かく設定できるので、確定反撃の有無もある程度は調べることもできる。

「いままでの『DOA』とは何かが違う」と感じる一方で、「これは間違いなく『DOA』だ」とも感じる。そんなある意味では矛盾しているような、不思議な感想を持った。本作のオンライン対戦は未体験だが、これまでの環境が非常にすぐれていただけに、まず問題なさそうだ。格闘ゲーマーや『バーチャファイター』のファンはもちろんだが、本来誰もが遊べるゲームとして『DOA』は設定されている。あまり格闘ゲームが得意ではない人も、ぜひ遊んでみてほしい。逆にブランクのある人ほど、「格闘ゲームはここまで進化したのか!」と感動できるかもしれない。

■著者紹介 バロンマサール
古の時代より活動するフリーライターで、『DOA』シリーズは初代からプレイ。『DOA4』の調整にも(カジュアル寄りの立場として)参加。いちばん好きなシリーズ作品は『DOA++』だが、別にこういえば通だと見られやすいからではない。実際にいちばん対戦したシリーズなのだが、対戦した組み合わせは異常に偏っている。持ちキャラはハヤブサ、バイマン、ヒトミ。昔はジャッキーを使っていました(あれ?)。



デッド オア アライブ 5
メーカー コーエーテクモゲームス
対応機種 Xbox 360 / プレイステーション3
発売日 2012年9月27日発売予定
価格 8190円[税込]/コレクターズエディション 11340円税込]
ジャンル 格闘エンターテインメント

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Akira, Sarah, Pai characters (C)SEGA. Virtua Fighter is either a registered trademark or trademark of SEGA Corporation.