限られた物資のなかで生き延びるサバイバルアクション

Naughty Dogがチャレンジするリアリズムとは?  『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』インタビュー_01
Naughty Dog
Community Strategist
Arne Meyer氏

 2013年に発売が予定されているソニーコンピューターエンタテインメントジャパンのプレイステーション3用ソフト『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』。2012年9月24日に行われたプレミアムセッション(プレミアムセッションの記事はコチラ)にて、ゲームの開発元であるNaughty DogのCommunity StrategistであるArne Meyer氏にお話を伺った。

――『アンチャーテッド』シリーズで成功を収めたNaughty Dogですが、今回新しいジャンル“サバイバルアクション”にチャレンジした理由は?
Arne 『アンチャーテッド』シリーズでは、銃を使って戦うアクションが中心でしたが、『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』では、崩壊した世界に残された物資を駆使して生き延びる、リアリティー溢れる世界を表現しようとしています。プレイヤーにスリルを感じてほしかったからです。

――先ほどのプレゼンテーションで、Arne氏が「Naughty Dogが目指すのは、“説得力“があるアクションゲーム」とおっしゃっていましたが、Naughty Dogが考える説得力とは?
Arne 『アンチャーテッド』シリーズでも、歴史的出来事に基づいて物語を描いています。『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』も同じように自然の生態系などをリアルに追求して世界観を構築しています。また、プレイヤーキャラクターは特別な超能力をもっておらず、生身の人間とほぼ同じ身体能力です。それがここで言う説得力ですね。本作では、キャラクターのモーションやムービーシーン、音声に関しても、すべて等身大のリアルなものにこだわっているので、じつに本格的なサバイバルが体験できると思います。

――リアルな描写とゲームの娯楽性はバランスを取るのが難しかったのでは?
Arne そうですね。ゲームなので、ある程度自由に行動できるように作っていますが、プレイヤーキャラクターが超人的な能力にならないように気を付けています。

――デモプレイを見たところ、本作ではザコ敵をひとり倒すためにもすごく時間がかかりますよね。リアルなサバイバル描写にはとても期待しているのですが、その分ゲームの難度が高いのではないかと心配でもあります。
Arne おっしゃる通り、戦闘が長びくこともあります。主人公が持ち運べる銃弾の数に制約があったり、殴り合いでもちょうど勝てるか勝てないかのギリギリのバランスにすることで緊張感を高めています。とはいえ、ゲームが難しすぎてクリアーできないということではありません。

――プレイヤーの腕前に応じて難度選択はできるのでしょうか?
Arne はい。いろいろな難度のモードを用意しています。

Naughty Dogがチャレンジするリアリズムとは?  『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』インタビュー_02

――なるほど。ところで、本作は従来のアクションゲームと比べるとAI(人工知能)が大幅に進化しているとのことですが、具体的な例を教えてもらえますか?
Arne まずは敵のAIですが、きちんと状況を見て行動します。たとえばジョエルが銃を持っていて、敵が丸腰の場合、敵はジョエルの前から逃げだそうとします。しかし、逆の立場になると、積極的に攻めて来るのです。あとは敵の人数が多いほど、有利と判断して襲い掛かってくる傾向がありますね。つぎに味方のAIです。本作では、ジョエルの後ろをパートナーの少女エリーがついてくるのですが、プレイヤーがエリーが敵に倒されないようにつねに心配することがないようにしています。エリーは隠れかたやアシストのやりかたを徐々に覚えていき、プレイヤーの負担にならないように行動します。

――キャラクターのパラメータがパワーアップする要素はないのでしょうか?
Arne ええ。一般的なゲームのようなパワーアップ要素はありません。本作ではパワーアップできない分、身の回りにあるものを利用して戦うことが重要になります。

――それと気になるのが謎の寄生菌に感染した人間“Infected”です。この世界ではInfectedはどれほど猛威を奮っているのでしょうか?
Arne Infectedの数がどれくらいで、どれほどの勢力を持っているか、ゲーム中は触れられることはありません。パンデミック後の崩壊した世界では、交通網が麻痺しており、コミュニケーションが分断されているのですが、Infectedという存在は人々に恐怖の対象として映っています。この時代の人間は、つねに感染の恐怖に怯えているのです。

――Infectedとの戦いは、生存者との戦いよりも激しいものとなるのでしょうか?
Arne 現時点でお伝えできることは少ないのですが、ゲーム中にInfectedと遭遇することもあります。彼らは人間の生き残りとは比較にならないほどの強さを持っているので、出くわしたら逃げることをおススメします。

――日本では、『バイオハザード』シリーズを始めとするサバイバルホラーというジャンルが数多く存在します。これらのゲームからインスピレーションを受けたのでしょうか。
Arne いえ、どちらかというと既存のゲームよりも、映画からインスピレーションを受けていますね。たとえば、映画『ノーカントリー』やテレビドラマ『ウォーキングデッド』などの作品がそうです。

――先ほどのプレゼンテーションでもそうでしたが、いつも『ノーカントリー』がいちばん先頭に挙げられますが、この作品のどこに影響を受けたのでしょうか?
Arne ふたつのポイントがあります。ひとつめは映画中に音楽がほとんどなく緊迫感に満ちているところ。『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』では、ほとんどの場所で音楽が使われていません。限られた物資の中でサバイバルをするゲームなので、音楽で盛り上げるのは最低限にしています。ふたつめは、追う側で追われる側の駆け引きを描いたところです。『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』の制作にあたって『ノーカントリー』で追われる側の緊迫感を参考にしています。

――これから発売までの期間、本作のどんなところに注目すればよいでしょうか?
Arne ゲームの内容がネタバレにならない程度にはどんどん情報を出していくつもりです(笑)。皆さんが気になっているInfectedを始め、未来の世界の環境、味方や敵になる人物といった情報を惜しまずに出していきたいと思います。ご期待ください!