Naughty Dogが定義するサバイバルアクション! 『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』

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 2012年9月24日、ソニー株式会社本社特別会場にて、ソニー・コンピュータエンタテインメントの新作、『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』と『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー ソウル)』のプレミアムセッションが開催された。

 最初にソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンのファーストパーティパブリッシング部の佐竹氏が登壇。東京ゲームショウ2012で『GRAVITY DAZE 重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動 』がゲーム大賞、『風ノ旅ビト』がゲームデザイナーズ大賞、『SOUL SACRIFICE(ソウル・サクリファイス)』がフューチャー賞を受賞したことを報告し、感謝の意を述べた。そして"家庭用ゲーム機で、もっともパワーのある海外タイトル”として『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』と『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー ソウル)』を紹介した。

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▲プレゼンテーションの前に、Naughty Dogのスタッフによるビデオレターが上映された。クリエイティブディレクターのBruce Straley氏とゲームディレクターのNeil Druckmann氏が本作の概要を解説。ふたりは『アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団』の開発における中心人物だ。

 ステージに現れたのは、『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』の開発を手掛けるゲーム開発会社Naughty Dogの広報、Arne Meyer氏。今回は彼がプレゼンテーションを行った。Arne氏は、まずNaughty Dogらしさとは、プレイヤーの行動によってゲームが展開していく“キャラクター主導のゲームプレイ”、“バラエティー溢れる謎解きと探索”、高い技術力で実現する“美麗なグラフィック”であると述べ、「『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』はNaughty Dogらしさが感じられる作品」とコメントした。

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 続いてArne氏は、ノーディドッグに所属するクリエイターたちのインスピレーションの源について解説。2007年にアカデミー賞を受賞した映画『ノーカントリー』を始め、映画『チルドレン オブ メン』、テレビドラマ『ウォーキングデッド』などを挙げ、「これらの作品から得たインスピレーションをもとに“滅亡後の世界”を考えることにしました」と語った。ただし、『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』の世界は、単に破壊され尽くした未来ではなく、人々にとってなじみ深い自然に飲み込まれた美しいものだという。Arne氏は、Naughty Dogが絶望の未来で生き残りを賭けて戦う“サバイバル・アクション”というゲームジャンルにチャレンジしていることを明かしたNaughty Dogが考えるサバイバル・アクションの定義は下記の通り。

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キャラクターが主導する、魂をゆさぶる物語
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説得力のあるリアルな設定と世界観
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生々しく、強烈な、手に汗握る戦闘

 これらの要素がサバイバル・アクション『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』を形作るものとなっているという。さらに、サバイバルをより盛り上げるための要素として、自然科学の分野からのインスピレーションが紹介された。BBCで放送されたドキュメンタリー番組『プラネットアース』では、蟻などの昆虫に寄生する菌(冬虫夏草)の生態を描かれる。冬虫夏草に脳を乗っ取られた蟻は、高い場所に移動してキノコのような胞子を街散らすという。『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』の世界観は、「菌類が種別を越えて寄生したらどうなる?」という問いかけからスタートした、とArne氏は語った。本作では、謎の寄生菌の爆発流行(パンデミック)から20年後の世界で、謎の寄生菌に蝕まれた“Infected”というクリーチャーと戦うことになる。すべてが変貌した世界で、infectedから逃げるために生存者たちはあらゆる手を尽くすのだ。ときには不快なほど激しい暴力がくり広げられるが、だからこそサバイバルの臨場感がアップするのだという。パンデミックを生き延びた人々の絶望的なサバイバルに要注目だ。

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 つぎにNaughty Dogのスタッフによるデモプレイが披露された。その内容は、今年6月に開催された世界最大規模のゲームの見本市“E3 2012”で公開された映像とほとんど同じ。自然に飲み込まれ、あちこちに木の根が張ったホテルを探索し、主人公のジョエルはエリーと協力して上に進んでいく。その途中、暴徒化した生存者と遭遇し、ジョエルは戦いを余儀なくされるのだが……。下にE3 2012の映像を掲載するのでチェックしてほしい。

 なお、今回のデモプレイでは、E3 2012バージョンの続きが用意されていた。生存者たちの追撃から逃れたジョエルとエリーは、エレベーターシャフトを通って上に進もうとする。だが、ジョエルはエレベーターごと下に落ちてしまい、エリーと離ればなれになってしまう。ライトのわずかな明かりを頼りに進むジョエルを“何か”が待ち受ける……。この後、ジョディが何と遭遇するのか、続きが気になるところだ。

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 最後に日本版のローカライズを担当する安次嶺(あしみね)クリス氏から、日本語吹き替えに対応することが発表された。「皆さんがあっと驚くようなキャスティングなので、ご期待ください」と安次嶺氏。『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』の発売時期はまだ先ではあるが、今後の続報から目が離せない。

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心を揺さぶるサイコスリラー!  『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー ソウル)』

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『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー ソウル)』のプレゼンテーションでは、本作の開発を担当するヨーロッパのゲーム開発会社、Quantic DreamのCo-CEO兼エグゼクティブプロデューサーであるGuillaume de Fondaumiere氏と、日本版のローカライズを担当する谷口新菜氏がステージに登場。Quantic Dreamと言えば、2010年にリリースされたプレイステーション3用ソフト『HEAVY RAIN(ヘビーレイン)-心の軋むとき-』が世界中で賞賛され、ゲームファンのあいだで新作が待ち望まれていたスタジオだ。同スタジオのCo-CEOのGuillaumeは、「『HEAVY RAIN(ヘビーレイン)-心の軋むとき-』のヒットのあと、私たちはまったく新しい物語の完全新作を制作することになりました。本作は最新のゲームエンジンの恩恵で、高精細なグラフィックや新たなゲームプレイを実現しています。これにより、『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー ソウル)』では、『HEAVY RAIN(ヘビーレイン)-心の軋むとき-』とはまったく違う体験を楽しめるでしょう。プレイヤーはキャラクターにもっと感情移入することができます」と挨拶。その後、本作のストーリー概要を紹介した。

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『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー ソウル)』は、ジョディという少女の8歳から23歳までの15年間を描いたアクション・アドベンチャー。プレイヤーは彼女の半生を体験し、彼女のことを理解していく。ジョディは特別な力を持っていて、生まれつきエイデンという霊体とコミュニケーションを取ることができる。エイデンが何者なのかはいっさい不明だが、彼は生死の世界の狭間に存在しているという。ジョディはエイデンとの旅路を通じて成長し、死後の世界とはどのようなものかを探っていくことになる、とのこと。

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 つぎにゲームのワンシーンが披露された。この場面では、警察の取調室で坊主刈りのジョディに警官が話しかけている。彼の話によると。ジョディは辺鄙な場所でひとり立っているところを警察に保護されたようだ。警官のていねいな呼びかけにもジョディはまったく返事を返さない。それでも根気よくジョディに語りかける警官が、彼女の友好関係に言及すると、異変が。机の上にあるコーヒーカップがカタカタと震え出したのだ。そしてさらに警官がジョディの頭の傷のことを話すと、突然コーヒーカップが壁に向かって吹っ飛び、粉々になってしまった。あまりにも信じられない出来事に面食らい、警官がオフィスに戻るとSWATの集団が現れる。完全武装したSWATたちだが、彼らは極度の緊張を感じているようだ。彼らは、なぜジョディを警戒しているだろうか? ……この映像はE3 2012で公開されたものと同じ内容だが、特筆すべきは日本語音声が収録されている点。主人公ジョディのキャラクターボイスを担当するのは、声優の白石涼子さんだ。彼女は映画『インセプション』でエレン・ペイジの吹き替えを担当しており、エレン・ペイジがパフォーマンスキャプチャーを務めるジョディにはぴったりのキャスティングとなっている。

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 その後、場面は列車に移り変わる。警察に追われているジョディは、列車に乗って逃亡しようとするのだ。ここでは、プレイヤーはジョディのパートナーである霊体エイデンを操作してゲームを進めていくことになる。エイデンはコントローラーのジャイロ機能やアナログスティックなどで自由に動かせる。空を飛んだり壁をすり抜けたりと自在に移動できるが、ジョディから離れられる距離は決まっている。プレイヤーは△ボタンを押すと任意の他タイミングでジョディとエイデンの操作を切り換え可能。今回のデモプレイでは、エイデンを操って寝ているジョディを起こし、迫り来る警官を回避した。エイデンが道行く通行人が持っているコーヒーや雑誌などに干渉したり、壁をすり抜けたりする様子をチェックしてみよう。

 ピンチを切り抜けたジョディだが、列車の外にも警察の警備網が張り巡らされていた……。このシーンでは、ジョディがエイデンの力を借りて警察の注意を引き付け、その隙に逃亡を試みる。エイデンとなって周辺の情報収集をする場面を掲載しよう。

 つぎのシーンでは、列車から抜け出そうとしたジョディに警官たちが迫り来る。ここでは、『HEAVY RAIN(ヘビーレイン)-心の軋むとき-』と同様に、QTE(クイックタイムイベント)が発生。QTEとは、画面に表示されるアイコンに合わせてタイミングよくボタン入力すると、成否に応じてプレイヤーキャラクターの行動が変化するシステム。『HEAVY RAIN(ヘビーレイン)-心の軋むとき-』ではキャラクターの日常的な動作など、さまざまな場面でQTEが発生していたが、 『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー ソウル)』でも
いろいろな場面でQTEを体験することになりそうだ。ボタン入力を成功させることで、ジョディは列車の上からダイブ。ひとまず警察から逃げることに成功した。

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 デモプレイの最後は、ジョディが街に身を隠すシーン。大量のパトカーやヘリコプター、完全武装したSWATに囲まれ、絶体絶命のピンチを迎えたエリー。彼女は最後の望みをエイデンに託す。プレイヤーはエイデンとなり、敵のスナイパーを操って同士討ちさせたり、さまざまなオブジェクトに働きかけてガソリンスタンドを爆破したりして、活路を見いだしていく。このシーンはかなり激しいアクションの連続で、本作のスケールの大きさが感じられる。エイデンを操って道を切り開く、本作ならではゲームプレイをチェックしておこう。

 デモプレイ後、Guillaume氏は「皆さんにお見せしたのは、いろいろなパターンのひとつです。本作では、『HEAVY RAIN(ヘビーレイン)-心の軋むとき-』のようにプレイヤーの行動が物語を形作っていきます。
たとえば、先ほどお見せしたシーンでも、列車の中で逮捕されたり、逃亡中に川の中で撃たれることもあります。その場合、ジョディの物語は別の展開を迎えるのです。なお、本作の物語を彩るのは俳優の演技です。パフォーマンスキャプチャーと呼ばれる技術でプロフェッショナルな役者が演じています。」と本作で採用された新技術を紹介した。

 パフォーマンスキャプチャーとは、センサーを付けた役者が演技の動きを記録し、コンピューター上で再現するシステム。モーションキャプチャーよりもセンサーの数を増やし、小型のカメラでデータを記録することで、より緻密な演技を表現できるようになっている。この技術は映画『アバター』のアニメーション制作で採用され、リアルなキャラクターの演技が話題となっている。Guillaume氏は「ジョディ役のエレン・ペイジが約2万5000のセリフを丸暗記して、4週間に渡って撮影し、ジョディに命を吹き込みました。」と本作のボリュームをアピール。台本は全部で2000ページ。パフォーマンスキャプチャーのデータをPCに落とし込むのに膨大な時間がかかったという。

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 パフォーマンスキャプチャーのメイキング映像後、Guillaume氏は「今回お見せしたゲームプレイでは、アクションが激しい部分がありましたが、『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー ソウル)』で重視したいのは、あくまで味わい深い物語。ジョディとエイデンが織り成す成長のドラマに興味を持っていただけるとうれしいです。」とコメント。

 そして、プレゼンテーションのラストに、ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンのファーストパブリッシング部の西島氏が登壇。同氏は「海外産のゲームをこうした形で紹介するのは、じつは始めての試みです。今回はアメリカとヨーロッパでそれぞれ開発されている大作ゲームをご紹介しました。弊社ではファーストパブリッシングという部署を今年設立し、『GRAVITY DAZE 重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動 』や『TOKYOジャングル』といったゲームを立て続けにリリースし、ヒットを飛ばしました。そんな中であらためてゲーム市場でどんなタイトルが売れているかということを考えてみると、まずは作り手の思いが強いもの、そして我々内部の人間がゲームのファンになること、そしてメディアの方々がゲームの新しさを感じてくれて、いろいろなアプローチでユーザーの皆さんに届けていただくもの。いろいろな形で作り手の思いが届いた作品がヒットしていることに気づきました。発売は先ですが、この2本を紹介させていただいたことによって、ユーザーの皆さんに新しい作品を届けていきたいと考えています」と、イベントを締めくくった。

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