今年はさらに面白いと太鼓判!
2012年9月20日より23日まで幕張メッセで開催中の、東京ゲームショウ 2012。エレクトロニック・アーツのサッカーゲーム『FIFA 13 ワールドクラスサッカー』はセガブースに出展されている。
出展内容は、先日より配信されている体験版と同等内容なので、記者は事前に会社で体験版を落としてみたわけだが、いやぁこれがヤバかった。よりリアルなサッカーゲームを実現すべく毎年新たな機能を追加して進化してきた『FIFA』シリーズだが、前作が個人的にはかなりよかったので「うーん、違いはそんなにわからないんじゃないかな?」とか思っていたのだが、プレイして、驚愕した。ゲームの手触りがさらによくなっており、選手が活き活きと躍動している感じがする!
そしてもっとも驚いたのは、試合中でゲーム的な明確な勝ち負けがないシーンに直面したことだ。たとえばウィンガーがサイドバックとの攻防で抜きにかかろうとした瞬間、蹴り出したボールがディフェンスが反応して出した足に当たった時。
ゲーム的にはウィンガーのドリブルを止めたディフェンスの読み勝ちなのだから、ボールを奪った判定にしてカウンターチャンスにしてやるという手もあるだろう。だがその試合では“運悪く”ボールはウィンガーの真後ろに転がっていった。そしてウィンガーは後ろを向いて、ころころと転がったボールを再度足下に収める……。実際のサッカーを観ていて、何度となく目にした光景だ。ディフェンスは確かにドリブルを一度くい止めることに成功したが、それはボールの奪取と必ずしもイコールではないのだ。
サッカーはボールを足で扱う不確実な競技だ。だからこそ面白い。だからこそ単に足が速いだけの選手より、ボールがきちんと足下に収まってディフェンスに取られず、そこから正確なパスを出せる“ボールの置き所を知っている選手”が高い評価を受けることもある。これはひっくり返すと、そういった選手が評価を受けるのは、サッカーの試合が実によくボールのコントロールに失敗する競技だからだ。
たとえばトラップが流れてしまい、ボールが奪われていないにも関わらず、オフェンスの流れが死んでしまうシーンを観たことはないだろうか? だからワンタッチで確実に繋げる香川真司選手はドルトムントの攻撃の要になっていたわけだし、「ビデオゲームのように」ショートパスをポンポン繋いで崩していくバルセロナやスペイン代表が時代を席巻することにもなるのである。
年々進化してきた『FIFA』シリーズは、よりサッカーの醍醐味を高次元でゲームとして実現するため、今年はどんな挑戦を行っているのだろうか? シリーズのエグゼクティブプロデューサーを務める牧田和也氏と、シニアソフトウェアエンジニアを務める山下崇彦氏に話を聞いた。
サッカーの不確実性
――体験版をやる前までは「12が良かったから違いはわかりにくいかもな」と思っていたんですが……もう全然違うので驚きました。
牧田 もう12に戻れなくないですか?
――戻れないですね! また現実のサッカーに一歩近づいたんじゃないかと思います。まずは“ファーストタッチコントロール”で、ボールをどうコントロールできるか/どうできないかという次元に行ったんだなと。ファーストタッチを失敗していたら、相手のほうがスピードがあっても止めることができる。本当に見る光景ですよね。
山下 まさにそうですね。
――まずは、なぜ今回はこういう要素を導入したのかを教えてください。
山下 これまでは思い通りにプレイできることを重視していて、上手かったら思い通りにすべて進むという所に行き着いたんですね。それはそれでおもしろかったんですけど、不確実性というサッカーの一面をすごく失っていて。前作で“タクティカルディフェンス”という要素を入れて、ディフェンスが距離を取ってタックルのタイミングを図るといったことを実現できたんですけども、まだ駆け引きの要素が足りないと思っていたんです。
牧田 今回キャッチフレーズとして“Unpredictable(予想不可能)”という言葉を採用しているのですが、想像できない、予想もつかないものをどうやってゲームにするかというのがテーマでした。
昨年のプレミアリーグ最終戦、マンチェスター・シティがロスタイムに2点入れないと優勝できないという絶体絶命の状況で、ドラマのようなことが起こりましたよね。ああいったことをゲームにできないか、ああいうことが起きないとサッカーじゃない、と考えました。サッカーとはミスの積み重ねでもあるわけで、つねに完璧なものだったら、ああいった試合は起こらないわけです。かといってプレイヤーにフラストレーションがたまるのも避けたいので、作りこんでいく上でバランスには注意しました。新たな方向性を生み出せたと思います。
――トラップとかファーストタッチが重要になってくると、それでディフェンスの間合いも変わってくるじゃないですか。
山下 そうですね。体をぶつけるのか、あえてスペースを与えるのかといった駆け引きが狙いです。
――それと、タックルも思い切ってできるようになっている感じがするんです。
山下 去年はまだプレイヤーインパクトエンジンで実現しきれなかった部分に踏み込むことができました。昨年までのは、いわば“衝突が起きたあとの処理”を行うエンジンだったのですが、今回は人の入り方や体の入れ方などを考慮できるようになりました。
――モーションもかなり増えましたよね? 今までにないタイミングのプレイができるようになった感があります。
山下 モーションも増えていますね。それも単に数を増やすのではなく、いろいろ考えながら改良しています。
牧田 コンプリートドリブルなども身体アニメーションをかなり増やして作りこんだ部分です。
山下 狭いエリアでもっとボールを触れるようにするというのもひとつのテーマでした。
牧田 オフェンスのAIも、2ステップ先を見て動くようにしています。いまパスが出そうな選手だけでなくて、次のパスが出たときのために、ほかの選手はどう動いておくべきかというのを考えて動かしています。もちろんそれによる失敗もありますが、パスが通った時にはもう次の展開を予測した選手が走り込んでいるといった事も起こる。
――それはありますね。アーリークロスを上げて、トップがヘッドで落としたところに2列目からあがってきててきれいに決めた時は声が出ました。
山下 後ろから走りこんできているというのは今回増えるだろう形のひとつですね。トップが落とすことを予測しながら、後ろからスペースを狙ってくるんです。
――で、またそのシーンがですね、トップが落としたボールを胸でちょっと浮かせながらトラップして、その勢いのまま進んで、球の落ち際を低く蹴る、みたいなゴールで。これまでだったら変な高さのヘッドになったりしていたと思うんですよ。
山下 はい。それも増やしました。ボールと人の関係ですね。触った時にどこか“柔らかい”と感じたかもしれませんが、ボールが空中にある時、受ける瞬間、ルーズボールなど、触る瞬間までかなり操作できるようにしてあります。その入力によって最適な状態を選んだ反応をさせているんです。
固有フェイスも増加
――その微妙な違いが出てくるので、次のターンのために、どういう受け方・トラップがいいのかを考えて遊んじゃいますね。トラップというとひとつ気になることがあるのですが、バルセロナの選手なんかは、アスリートとしての身体能力が世界最強なわけではないけど、狭い場所でもボールをきっちり受けてコントロールする力が長けているからあのスタイルが可能なわけですよね。「現実のサッカーでこういうスタイルが出てきたからこうゲームをデザインしていこう」と影響を与えるようなことは起こるのでしょうか?
山下 ありますね。開発チームのメンバーは本当によくサッカーの試合を見ているので。最近は、香川選手なんかもそうですが背が小さくてもボールキープがうまいから展開力があるという選手が結構トレンドですよね。ひとつひとつは細かいプレイだけど違いを出せる。こういった流れはたとえば今回の“コンプリートドリブル”にも多大な影響を与えています。
牧田 ほんっとうにサッカーのことばっかり考えているメンバーが多いですからね。
山下 チャンピオンズリーグの期間なんか大変です(笑)。
牧田 スタッフは18カ国から来ているのですが、ヨーロッパの人間も多くて、片っ端から試合を見ているような人も多いです。元プロとか、ジャマイカの年齢別代表に選ばれた経験があるメンバーもいるので、そこら辺は強いですよ。
山下 「こういうシチュエーションではどうするのかなぁ?」と聞いたりすると「XX年のチャンピオンズリーグのXX対XXの試合でXX選手がやってたよ」とか返ってくるんですよ(笑)。で、ビデオを探してみると「そうそうこの動き、この動き」みたいなことが本当にありますね。
――香川選手の名前が出たのでお聞きしたいのですが、今年も海外で活躍する日本人選手が増えましたが、固有フェイスの採用などはいかがでしょう?
牧田 増えましたよ。吉田麻也選手、細貝萌選手、ハーフナー・マイク選手、森本貴幸選手、安田理大選手、宇佐美選手、カレン・ロバート選手。この辺りの選手は今回からご協力頂いて固有フェイスで入っています。
――素晴らしい。今年はドイツリーグとかも熱いですよねぇ! “顔”と言いますと、今回はメッシ選手が大々的にフィーチャーされていますね。
牧田 はい。いい関係を築かせて頂いていまして、メッシ選手が主導している社会福祉活動にも協力させて頂いています。日本では本田選手と長谷部選手にもご協力頂いていますね。
――プレイの話に戻りますが、ミドルシュートが入りやすくなった気がしているのですが、これは実際そうなのか、それともAIの進化でいい形が作れるようになっているからなのか、どちらでしょう?
山下 全体的にシュートへのチャンスが増えたというのもあると思います。それと、GKの動きがもっと人間的になるようにしているんですね。逆をついたりした場合に体重が乗っていて動けないといった局面も以前より出てくると思います。
牧田 だからといって過去にあったような、打てば入るといったことはないようにしているのでご安心ください。
山下 ミドルがあるのでディフェンスはコースをふさいでおきたいというのも、駆け引きのひとつです。
システム面もますます充実
――システム面ですと、マッチデイという機能がありますね。
牧田 あれは毎週データを配信するのですが、試合をするときにオンにすると、怪我とかイエローカードとか能力の上下、スタメンなどの情報が反映されます。現実のサッカーを元にゲームを遊んでもらうという機能です。前回の試合、今週起きる試合なども選んで試合できます。無料です。
――「今週のかっこいいゴール」しか流さない番組より、よっぽどサッカーメディアですよね。今週スペインダービーなんて時にそれも出てくるんですか?
牧田 大きなマッチがある時には出てきますね。勝てばポイントを貰えて、機能のアンロックに使えます。それと、前作のレベルも引き継げるので、やり込んでいる人は最初から結構いろいろアンロックできますよ。
――試合前のローディング中にスキルトレーニングできるのもいいですね!
牧田 あれはずっとやりたかったことのひとつです。いまのサッカーゲームって、ボタンをいっぱい使うので、いきなりやれと言われても難しいじゃないですか。そこを遊びながら練習できるんです。パスの成功率が悪ければパスの練習を薦めたりもします。
――では最後に、「ここを見て欲しい」というポイントを教えてください。後は体験版を遊んでもらうとしましょう!
牧田 “面白さ”と言えると思います。サッカーそのものよりゲーム重視の人でも、今回はサッカーに忠実であろうとしながらゲームとしての面白さも格段に上げられたので、触って頂ければ「これ面白いじゃん!」と言って頂けるものになったのではないかなと。
山下 先ほどもお話しましたように“確実ではない”ということがひとつのテーマなのですが、意外と初心者が上級者に勝てる要素も出てきたんです。スキルはもちろんスキルとして維持されているのですが、「何か起こるかもしれない」という部分を残すようにしましたので。それが逆にゲーム性を増していると思います。それでありながら奥深く、やればやるほど発見があるゲームになっていますので、ぜひ触ってみてください。