<『Halo 4』スタジオツアー 記事リンク一覧>
その2 キャンペーンモードがプレイアブル解禁
その3 マルチプレイの架け橋となる新搭載モード“スパルタンオプス”
その4 “ウォーゲーム”の新ルールが明らかに
その5 最新ビジュアルを一挙公開

新たなアプローチでHalo ユニバースをより強固なものに

【『Halo 4』スタジオツアー その1】偉大なシリーズをさらに拡大する、343 Industriesこれまでの歩み_01

 日本マイクロソフトから2012年11月8日に発売が予定されている、Xbox 360専用ソフト『Halo 4(ヘイロー 4)』。2011年のE3のマイクロソフトカンファレンスでサプライズ発表されてから1年と数ヵ月、世界中のファンが待ち望む同作の完成が、いよいよ間近に迫ってきた。開発会社の343 Industriesでは、タイトルの発表以来断続的に情報を公開してきたが、物語の詳細やゲームプレイの部分などについていまだヴェールに包まれたところは少なくない。そんな周囲の期待、あるいは渇望感に応えるように、9月某日、シアトルにある同社(および隣にある劇場)にて、スタジオツアーが開催された。

 今年3月に開催された343 Industriesのスタジオツアー(詳細はこちら)は、『Halo 4』の概要を伝えることを目的としていたため、開発陣によるプレゼンが中心だったが、発売を2ヵ月後に控えた今回はボリューム満点のプレイアブルを用意。ファミ通.comでは、そこで体験したことのすべてをお伝えするとともに、フランチャイズ デベロップメント ディレクターを務めるフランク・オコナー氏を始めとするクリエイターインタビューを複数の記事にわたってお届けする。……と、その前に本記事では343 Industriesそのものについて紹介しよう。

 343 Industriesのスタジオは、スターバックス1号店やスペースニードルで知られるシアトルの中心地から、クルマで1時間ほど行ったカークランドという地域にある。ワシントン湖にかかる橋を渡った先にある同エリアは高級住宅街で知られ、豊富な緑に囲まれた静かな雰囲気はまるでヨーロッパの街のようだ。343 Industriesのスタジオも、そんな街並みに合わせるかのようにヒッソリ……と言うにはやや巨大だが、景観をそこなわない程度の存在感で社屋をかまえている。外観は体育館のようで、内部では大きなホールに開発スタッフたちが机を並べている。建物の目の前には、広大な駐車場もあって、そこに並ぶクルマはほとんどが343 Industries関係者のものだ。なかには“Halo”と書かれたユニークなナンバープレートを付けているものも。ちなみにフランク氏いわく、この駐車場の込み具合が、『Halo 4』の開発状況をある程度示しているそうだ。つまり、開発が本格化するにつれ駐車スペースは埋まり、最盛期には広大なスペースがほぼ満杯になる。そこから、徐々に駐車数は減り始め、空きスペースも目立つと完成も近いということ。もちろん、今回のスタジオツアーでは、ガラガラの駐車場を確認することができた。

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 343 Industriesのスタジオの立地については、そのほかに特筆すべきことがある。かつてここは、Bungie(バンジー)のスタジオだったのだ。

 ほとんどの人はご存知だと思うが、『Halo』という偉大なフランチャイズは、かつてマイクロソフトスタジオ(旧マイクロソフト・ゲーム・スタジオ)の傘下にあったバンジーによって2001年に生み出された。それから2010年の『Halo(ヘイロー): Reach』まで、同社は6作の『Halo』を手掛けている。343 Industriesが初めて『Halo』シリーズに関わったのは2011年11月に発売された、第1作目のHDリメイク作『Halo: Combat Evolved Anniversary』から。ただし、スタジオ自体の活動はバンジーがマイクロソフトスタジオから独立した2007年からすでに始まっていた。彼らに与えられたミッションは、『Halo』という偉大なフランチャイズの継続とさらなる拡大。継続だけならまだしも、拡大となると話は途端に困難になる。343 Industriesは、バンジー時代とは異なるアプローチで、シリーズの魅力を伝える手段を求められることになった。

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▲マグショット風のスタッフフォトや、コック姿のチーフの落書きなど、社内は遊び心に満ちている。

 まず行ったのは、シリーズの世界観を意味する“Halo ユニバース”をより強固なものとすること。ストーリーも非常に魅力的な『Halo』シリーズだが、人類誕生以前にまで遡る物語は、数年に一度発売されるゲームタイトルだけで語るにはあまりにも壮大だった。そこで343 Industriesは、2009年にシリーズのポータルサイトとも呼べる“Halo WayPoint”を開設。情報を一点に集約するとともに、世界中にいるユーザーがコミュニケーションをする場も提供した。

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▲『Halo Legends』ブルーレイ版のパッケージ。

そして2010年には、日本のクリエイターも複数参加したアニメーション作品『Halo Legends(ヘイロー レジェンズ)』を投入。オムニバス形式で、複数のエピソードが異なるクリエイターたちによって手掛けられた同作の中では、過去の作品で断片的に触れられていた、古代種族“フォアランナー”たちの姿も詳しく語られている。ちなみに、フォアランナーは『Halo 4』において物語の中心的な役割を担うことになるので、プレイするにあたってぜひチェックしておきたい。

 また、フィギュアへの展開も開発会社が343 Industriesに移ったことでより加速した。なんでも、スタジオ内には玩具に特化した部門もあるそうで、アメリカ大手スーパーの玩具売り場にいけば漏れなくマスターチーフ、あるいはコヴナントに出会うことができるのだ。ゲームを開発するだけでなく、ブランド力の向上にも尽力してきたことが、データとして確認できるのがスタッフの内訳だ。343 Industriesには現在約350名のスタッフが在籍しているが、そのうちの150名程度が、ゲーム開発以外のことに携わっているそうだ。ゲーム開発会社において、この割合は異例と言ってもいいのではないだろうか。そして、最新のもっとも大きな“ゲーム以外の取り組み”として忘れてはいけないが、2012年10月5日よりYouTubeのMachinima PrimeおよびHalo Way Pointに全5エピソードで展開される実写作品『Halo 4: Forward Unto Dawn』だ。コヴナント戦争初期の凄惨な時代、マスターチーフに強い影響を受けたひとりの士官候補が、史上最強の巨大艦“UNSC インフィニティ”に乗り込み、みずからもまた偉大なリーダーとなる姿を描く本作の登場により、Halo ユニバースは新たな一歩を踏み出すことになるだろう。

 ゲーム開発スタジオという枠にとらわれず、『Halo』シリーズと関わってきた343 Industries。本記事の最後では、その舵取りをしてきたフランク氏に完成を間近に控えた現在の心境などを語ってもらう。

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▲フランチャイズ デベロップメント ディレクターのフランク氏。

――いよいよ『Halo 4』の完成が近いですね。
フランク いまは最後の詰めの段階だから神経質にはなっているけど、正直ホッとしているよ。この数年すべてのスタッフが仕事に没頭してきたが、現在の社内は若干リラックスした雰囲気だからね。

――アメリカでの『Halo 4』の盛り上がりはいかがですか?
フランク E3やComic-Conなどでファンには披露したけど、見せれれば見せるほど期待値が高まっているように感じるよ。そして、プレイした人たちはみんな『Halo 4』を気に入ってくれている。それが我々の自信にもなっているね。ただ、実際にパッケージ化されてプレイヤーたちの手に渡るまでは、この作品が成功するかどうかは正直なところわからないよ。

――マイクロソフトの反応はいかがですか?
フランク マイクロソフトは、とても協力的だったよ。我々のビジョンをサポートするために、多くの時間とリソースを提供してくれた。『Halo 4』ではリスクのある決断やテクノロジーへの投資もしてきたので、彼らのサポートがなければここまで来られなかったと思うね。

――リスクのある決断とは?
フランク おもに技術面の話になってしまうんだけど……それは退屈だからやめておこう(笑)。わかりやすい点で言えば、『Halo 4』ではユーザーがゲーム内で積んだ経験が、プレイにも影響するようにした。いままでの作品ではそういった取り組みはなかったので、これは大きなリスクと言えるだろうね。

――『Halo 3』は、エンターテインメント業界における記録的数字を達成しました。『Halo 4』でもそれに迫ることはできそうでしょうか?
フランク 自分は迷信的なところがあるので、そのような質問にはとても答えられないよ(笑)。ただし、自分としては『Halo 3』の続編として不足のないエンターテインメント作品になっていると思う。だから、数字を求めるよりは、とにかく触ったプレイヤーに楽しんでもらいたいね。

――『Halo 3』から『Halo 4』で、もっともわかりやすく進化した点は?
フランク シンプルに答えるなら、グラフィックに明確な違いがある。テクノロジーは大きく進化し、ピクセル数、ポリゴン数が増えているので、誰が見ても違いがわかるだろうね。また、熱心なファンから見れば、我々がHalo ユニバースをどのように理解して、アートに落とし込んだか? という部分も進化したポイントに見えるかもしれない。ハードコアなユーザーの人ほど違いがわかる作りになっていると思うね。

――343 Industriesが『Halo』を手掛けるようになってから、とくにプロモーションには力が入っている印象です。それを象徴するのが、実写作品『Halo 4: Forward Unto Dawn』だと思うのですが、これはどういった経緯で作られることになったのでしょうか。
フランク 自分はバンジーの時代から『Halo』シリーズに関わってきたが、ゲーム内容だけでなく市場への見せかたも年々進化してきたんだ。『Halo 4: Forward Unto Dawn』も、そのような流れの中から自然に発生したもの。いままでもテレビCMなどで『Halo』の世界を人々に見せてきたし、実際好評も博していたけど、どうしてもストーリーを語ることができなかった。そこで、CMに近い手法かつ我々がストーリーを管理できる仕組みとして、今回の実写シリーズが選ばれたんだ。

――ちなみに『Halo 4』は初めから三部作であることが明言されています。これによって、開発の流れなどで変わったことはありましたか?
フランク じつは、少し前から三部作ではなく“サーガ”という呼びかたに変更したんだよ(笑)。三部作としてストーリーを構想していることは確かだけど、そうすると少しややこしいことになってしまうからね。たとえば、『Halo 4』に収録される新モード“スパルタンオプス”では、本編とつながったストーリーをかなりのボリュームで描く。じゃあ、これは『Halo 5』なのか? と言えばそうではない。だから三部作という呼びかたはやめたんだ。始まり、中間、終わり、という区切りはありつつも、それ以上の構想が『Halo 4』以降の作品には含まれているんだ。

――では、サーガを描くうえでもっとも注意している点は?
フランク 我々がもっとも注意しているのはキャラクターだね。ビデオゲームではキャラクターにいろいろなことが起こる。そのとき、プレイヤーがキャラクターに親近感を持っていると持っていないでは、まったく状況が異なる。キャラクターをしっかり描くことは、ストーリーでもっとも重要な部分と言えるんだ。

――『Halo 4』を遊び終わった後、プレイヤーの心には何が残りますか?
フランク 10年前に『Halo』を初めて遊んだときと同じような感覚かな。壮大なミステリーや、スケールを感じてほしいんだ。また、スパルタンオプスでは新しい形でストーリーを経験し、新しいゲームプレイをフレンドと楽しめると思う。『Halo 4』では、これまでの『Halo』よりも一層奥深く、ゲームに入り込んで長くプレイしてほしいと思っているよ。