「日本での『FIFA』シリーズはまだまだこれから」(Matt)

ついに日本で『FIFA』が花咲く!? GREE版『FIFA』成功の勢いは『FIFA 13』につながるか『FIFA』シリーズGMインタビュー_01

 エレクトロニック・アーツのサッカーゲーム『FIFA ワールドクラス サッカー』(以下『FIFA』)シリーズ。同シリーズは、世界のサッカーゲームではトップシェアを誇るシリーズに成長したが、日本では成功したとは言い難いセルスルーとなっている。だが、ここに来てそんな状況に変化が! GREE Platformでサービスが開始された『FIFA』が、GREE Platform Award 2011で総合大賞に輝き、会員数は現在200万人を突破するなど、ついに日本でもブレイクの兆しを見せつつあるのだ。そんな『FIFA』シリーズを制作するEAカナダのシニア・バイス・プレジデントMatt Bilbey氏が来日し、GREE版『FIFA』を制作したPlayfish シニアプロデューサーの里吉洋樹氏とともにインタビューに応じてくれた。ここでは、そのインタビューをお届けしよう。

――まず、Mattさんが『FIFA ワールドクラス サッカー』でどういった役割を担われているのか教えてください。

Matt Bilbey氏(以下、Matt) 私は、エレクトロニック・アーツではシニア・バイス・プレジデント、『FIFA』シリーズではゼネラルマネージャーという肩書きを持っています。エレクトロニック・アーツに入社したのは1995年になります。EAスポーツシリーズの開発拠点があるカナダのバンクーバーに住んでおり(出身はイギリスですが)、そこで400人のチームスタッフとともに働いています。『FIFA』シリーズのプレイステーション3版、Xbox 360版、プレイステーション Vita版、Wii U版などはすべてバンクーバーで制作していますが、唯一の例外として、GREEでサービス中のソーシャルコンテンツ『FIFAワールドクラスサッカー』は、日本でPlayfish(世界最大級のソーシャルゲーム会社で、2009年EAの傘下に入り、現在はEAの部門/スタジオとして、ソーシャル/デジタルコンテンツの制作を行なっている)が制作しています。欧州の市場では現在、『FIFA』シリーズがシェアを獲得できていますが、日本では『ウイニングイレブン』が強いですよね。ですので、GREE版『FIFA ワールドクラス サッカー』で日本のユーザーからこれほどの支持を得られるとは思っていませんでした。

――GREE版『FIFAワールドクラスサッカー』が日本で成功した要因はどこだとお感じですか?

Matt ゲームデザインが優れていたことはもちろんでしょうが、『FIFAワールドクラスサッカー』の強みでもある実在のリーグやチーム、選手でゲームを楽しめる、その両輪がうまくハマったからではないでしょうか。

――コンシューマー版で、もっといい結果を残すには何が必要だとお考えですか?

Matt 『FIFA』シリーズは、本物のサッカーが楽しめるシミュレーターに近いゲーム性を目指してきました。ただ、日本で人気を得るにはそれだけでは十分ではない、というのは理解しています。と同時に、いまの『FIFA』シリーズが受け入れられ始めている、ということも感じます。今後は日本のユーザーが好む見た目や操作性などの傾向も踏まえ、それらを重視して制作していきたいと思っています。

――コンシューマー版とGREE版は、ゲーム内容は違いますが、『FIFA』シリーズとしてこれは外せない、という要素はどこになるのでしょうか。

里吉洋樹氏(以下、里吉) リアルなサッカーというのが『FIFA』シリーズのブランドだと思うので、演出はリアルに、ゲーム性は親しみやすいカジュアルなコンテンツというところを意識して作りました。

――GREE版『FIFAワールドクラスサッカー』は、Playfishさんのみで制作を担当したのですか?

里吉 gumiさんという、GREE Platformで多数のソーシャルコンテンツを作られているデベロッパーとPlayfish Japanとの共同開発になります。

――GREE版は選手名なども日本語表記で、わかりやすくしている配慮もヒットした要因かと思うのですが、コンシューマー版でも日本語表記に変えるといったお考えはありますか?

Matt まさに、そういう話を今朝のミーティングでしていたところです(笑)。今後、取り組んでいくべき課題だと思っています。

――GREE以外にも、MobageやZynga.comなどソーシャルコンテンツのプラットフォームは多数ありますが、今後それらのプラットフォームにも『FIFA』シリーズのコンテンツを提供する予定はありますか?

里吉 エレクトロニック・アーツという会社は、あらゆるプラットフォームを最高のゲーム体験を提供する、というのがポリシーの会社です。ですので、将来的にさまざまなプラットフォームで展開していくというのも当然考えていくべきかなと思っています。

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『FIFA 13』で目指すもの

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――『FIFA 13』の開発でこだわった点は?

Matt 『FIFA』ユーザーのサッカーファンは、土曜の夜に贔屓のチームのサッカーを観戦したあと、または試合がない日は、持て余したサッカー熱を発散するために『FIFA』をプレイする人が多いんです。また、イギリスでは、パブなどに行ってサッカー話で盛り上がります。そういった傾向を参考に、『FIFA 13』では、サッカーファンのために、サッカー話でコミュニケーションが取れる場“EA SPORTS フットボールクラブ”(オンライン対戦や友たちとコミュニケーションできるソーシャルネットワークサービス)をさらに進化させたいと考えています。リアルでもゲームでもサッカーをもっと楽しめる環境を提供したいんです。

――その楽しみかたをJリーグファンも楽しみたいのですが(笑)。

Matt 現在は契約上の問題で難しいですが、もし契約が結べるのなら、喜んで(笑)。

――『FIFA 13』の新情報は? また、Ultimate Teamモードは遊べるのでしょうか。

Matt 新しい情報は2012年8月15日からドイツで開催されるgamescomで発表する予定です。Ultimate Teamモードに関しては、まだまだ公開していないことがありますので、期待していただければと思います。いま言えることは、Ultimate Teamモードは、iPhoneアプリを利用することで、出先でもオークションに参加したり、プレイヤーカードの売買などができ、もちろんそれらのデータはコンソール版に反映されるということです。ちなみに、Ultimate Teamモードは英語表記になります。

――現在、『FIFA』のサッカーゲームにおいての世界でのシェアはどれくらいなのですか?

Matt 『FIFA 12』の例で言うと、販売本数は世界で1300~1400万本。これは、サッカーゲームのシェアで言うと80~85%くらいになります。プレイステーション3版、Xbox 360版を合わせたオンラインで行われた試合数は約18億試合、一日のユニークユーザー数は約200万人となっています。ありがたいことに、月別の試合回数は、発売された当初の2011年12月より、2012年7月のほうが多い、という結果になっています。これは、いかに長く『FIFA 12』を遊んでもらうか、という我々の施策が実を結んだ結果として、とてもうれしく思っています。

――今後、シェアをもっと拡大するポイントはどこだとお考えですか?

Matt 現在、サービスを実施し、結果も出ているオンラインサービスがポイントだと思いますので、より充実させたいですね。もちろん、新しいマーケットの開拓も重要です。たとえば、アメリカでは徐々にサッカーファンが増えていますので、アメリカ人が楽しめるゲーム内容というものも考え、『FIFA』シリーズを展開していきたいです。長く遊べるサービスの展開+新しいマーケットの開拓、このふたつがシェア拡大に必要なことだと思います。

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――『FIFA 13』のパッケージはメッシ選手になりましたね。

Matt メッシ選手は、世界でもっとも優れた選手ですし、個人的にも、長年、友だち付き合いをさせてもらっているので、とてもうれしく思っています。ただ、メッシ選手は優れたプレイヤーというだけではなく、チャリティーなどにも積極的で、人間的にもすばらしいんです。そういったメッシ選手の意向もあって、バルセロナにストリートキッズ向けのトレーニングスタジオを、彼とEAスポーツ共同で設立しました。今後もそういうものをメッシ選手とやっていきたいですね。

――『FIFA 12』で初めてプレイステーション Vita版のリリースがありました。タッチパネルや背面タッチパッドなど、据え置き機とは違う入力方法も採用されていましたが、『FIFA 13』のプレイステーション Vita版では、操作系に何らかの変更、もしくは変わったタッチ操作を活かした何かを盛り込んだりする予定は?

Matt 新しいハードというのは、喜ばしい反面、たいへんでもありました。『FIFA 12』のプレイステーション Vita版は開発期間が限られていたので、短い時間で実現可能なことだけを盛り込みました。『FIFA 13』は、開発期間に多少の余裕があるので、作り込みを進めているところです。

――新しいハードといえば、今年、Wii Uという新ハードも登場予定です。『FIFA』をリリースするとしたら、どんな要素を盛り込もうとお考えですか?

Matt たとえば、ひとりがボールを持った選手をテレビを見ながら操作し、同時にもうひとりがWii U Game Padの画面を見ながらフォーメーションを変更するといったようなことが可能になると思います。

――最後にメッセージをお願いします。

Matt 『FIFA』シリーズは、KONAMIさんの『ウイニングイレブン』シリーズとライバル関係にありますが、日本においては、『ウイニングイレブン』シリーズをまだ超えることはできていません。ですが、ソーシャルコンテンツのサッカーゲームでは、『FIFA ワールドクラス サッカー』が初めて優位に立つことができました。そういう意味で、日本での『FIFA』シリーズはまだまだこれからだという認識を持っています。GREE版の成功は、今後、コンソールの『FIFA』シリーズを展開していくうえでも大きな自信になりましたし、より力を入れてやっていきたいと思っています。また、香川選手がマンチェスター・ユナイテッドに入団しました。日本の選手が海外で活躍することができれば、日本代表も強くなり、Jリーグのレベルも上がり、いい循環で日本サッカーが盛り上がっていくでしょう。我々も日本サッカーのさらなる発展は喜ばしいことなので、大いに期待しています。では、『FIFA 13』を楽しみにお待ちください。最後にもうひとつ。日本で『FIFA』の制作にチャレンジしたい方は、ぜひPlayfish Japanの人材募集に応募してください(笑)。

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