あなたならどう殺る?

 もしあなたがヒットマンだったら、屈強なボディガードに守られているターゲットを、どんな方法で殺害するだろう? 【その1】ボディガードなんて気にせず、とにかく力押しで銃をぶっ放してカタをつける。【その2】ターゲットが動くまでじっとガマン。相手がトイレで用を足している隙に襲いかかる。【その3】ターゲットが所有するクルマに爆発物を仕掛け、ターゲットが近寄った瞬間に爆殺する。【その4】建物の屋上に上って、スナイパーライフルで狙撃。【その5】ターゲットが常用するドラッグのディーラーに変装し、人気のないところに誘い込んで暗殺【その6】食料マーケットでフグの毒を入手し、その毒をターゲットの食料に盛って毒殺。……じつはコレ、性格判断の類とかではなく、ゲーム『ヒットマン アブソリューション』のデモプレイのひとつのステージで主人公エージェント47が実際に実行できることをリストアップしたものだったりする。

『ヒットマン アブソリューション』は、エージェント47となって、さまざまなターゲットを殺害していくアクションゲーム。そのウリは、何と言っても"フリーダム・オブ・チョイス"と呼ばれるゲームシステムだ。上に挙げたように、じつにバリエーション豊かな殺害方法を実行することができる。これにより、ターゲットの前に絶対に姿を現さない神出鬼没の殺し屋にもなれるし、目的を達成するためには一般市民を巻き添えにすることも辞さない卑劣な殺し屋になったりできる。プレイヤーそれぞれが持っている“殺しの美学”を貫くことができる、自由度の高いゲームデザインがスゴイ! 記者としては、“殺し屋といえばスナイパーライフルっしょ!”という妙なこだわりがあるので、スナイパーライフルでの狙撃に挑戦。あらかじめ逃走経路を確認しておき、ターゲットを暗殺したら誰にも目撃されないようにそっと現場を離れる……。こうして自分好みの殺し屋を演じられるのがいい感じ。2回目のプレイでは爆殺にチャレンジしてみたが、ターゲットが爆弾に接近するまでがドキドキで、なかなかのおもしろさ。同じステージでも、暗殺のアプローチを変えるだけで何度も楽しめるのがアツい。なお、今回、試遊台で出展されていたステージ2のチャイナタウンは、まだまだゲームの序盤である。この先のステージでどんな殺害方法が用意されているのか。いまから楽しみだ。

開発者に訊く! 『ヒットマン アブソリューション』の魅力

 ここからは、本作の開発に携わるTore Blystad氏のインタビューを掲載しよう。アートディレクターとしてビジュアル全般をチェックしつつ、ゲームのコアな部分まで調整しているという氏に、本作の魅力についてうかがった。

IO Interactive
アートディレクター
Tore Blystad氏

――Toreさんは、開発チームでどのパートを担当しているのでしょうか?

Tore ゲーム内のビジュアル全体を統括しているアートディレクターです。それ以外にもレベル(ステージ)のバランスなども調整しています。アクションやアニメーションなどの各部門と連繋しているかの確認もしています。このゲームはバランスを取るのが難しいので、ゲームデザイナーとアートディレクターがしっかり連繋を取ることが重要だと考えています。

――ゲーム開発会社“IO Interactive”について教えてください。

Tore 規模としてはそれほど大きくはなく、だいたい200人ほどの会社です。いちばん最初に作ったのが、2000年の『Hitman』のシリーズ1作目で、その後『ケイン&リンチ』シリーズなども手掛けました。私たちのポリシーとして、自由なものを作りたいという気持ちがあるので、つねに意見交換をして斬新なアイデアを出しています。あとは映画業界から来たスタッフが多いので、シネマティックなゲーム体験ができる作品作りを得意としています。

――ゲームをプレイしましたが、オブジェの数や画面上に表示される一般市民の数など、ステージの作り込みがすごいですね。

Tore 多くの一般市民がいるなかで、どうやって目撃されないように暗殺するかということに頭を働かせてほしいので、一般市民はとにかくたくさん登場します。一般市民のAI(人工知能)はそれぞれが独自に設定されており、リアルな挙動を見せます。本作のために開発した新しいゲームエンジンのおかげで、細かい部分まで作り込むことができました。フリーダム・オブ・チョイスでいろいろな暗殺方法を実現するためにも、細かいオブジェをあちこちに設置する必要があったのです。

――毒殺したり爆殺したり、殺しかたを考えるのがたいへんだったのではないでしょうか?

Tore そうですね(笑)。殺しかたのバリエーションを考えるのがたいへんでした。見たこともないような殺害方法を楽しんでもらいたいという気持ちがあったので、スタッフどうしで意見交換を重ねました。

――フグの毒で殺せるのが、ある意味衝撃的でした。

Tore フグの毒はドラッグにも混ぜられます。毒入りのドラッグをターゲットが吸入すると、相手はラリった直後に死ぬことになります(笑)。そういったコミカルな部分もこのゲームの楽しみのひとつです。

――なるほど。それでは街の作り込みに関して、アート的なこだわりはありますか?

Tore ビジュアルに関してはものすごく努力しています。とくにスクウェア・エニックス作品のビジュアルのクオリティーはすごく高いので(笑)。そこをクリアーできるように苦労しています。

――先日、エージェント47がシスターに扮した美女たちと対決するトレーラーを拝見しました。個人的には、本作はクールで落ち着きがあってシブいゲームだという印象を持っていたのですが、それがガラリと変わりました。ああいった、ド派手かつキャッチーな要素を含んだゲームだったのですね。

Tore すごく静かなパートがあったり、すごく激しいパートもある。本作はまさにフリーダム・オブ・チョイスで、ユーザーの進めかた次第でその印象が変わっていきます。人によってはスニーキングメインのサイレントなゲームですし、またある人にとっては派手なバトルが連続するゲームになります。シスターたちが登場するステージは実際に用意していますが、トレーラーと同じように派手な立ち回りで彼女たちと戦うこともできますよ。

――彼女たちのように手強いボスも登場するのですね。

Tore ええ。いろいろな特徴を持ったボスキャラ的な殺し屋と戦うステージもあります。彼らはさまざまな方法でエージェント47を殺害しようとするので、知恵を絞って対抗することになります。

――最後に日本のゲームファンに対してひと言お願いします。

Tore 日本では『ヒットマン』シリーズはまだまだあまり有名ではありませんが、今回はスクウェア・エニックスがプロモーションを担当してくれるので、魅力をうまくアピールしてくれると思います。皆さん、ぜひプレイしてみてください。