大胆な新要素で、シリーズの新たな地平を切り拓く

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 イギリス・ロンドンの郊外にあるPlayground Gamesは、今年創業3年目を迎える若いゲーム開発会社だ。ここでいま、Xbox 360を代表するレースゲームのシリーズ最新作『Forza Horizon(フォルツァ ホライゾン)』(日本マイクロソフトから2012年秋発売予定)が作られている。アメリカのTurn 10 Studiosが生み出し、育て、カーシミュレーターとしての地位を揺ぎないものにした『Forza Motorsport』シリーズ。このビッグブランドの最新作を、現時点では未知数のスタジオに委ねた理由とは? 2012年5月下旬に行われたPlayground Gamesのスタジオツアーで見たすべてをお届けしよう。

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▲スタジオの入り口には赤のフェラーリと、青のマクラーレンが。「さすがレースゲームの開発会社!」と思いきや、この日のためにレンタルしたとのこと(笑)。

<Playground GamesとTurn 10 Studiosの出会い

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▲Playground GamesのCCO、トレバー・ウィリアムズ氏。

 スタジオツアーの多くは、簡単なスケジュ―ル説明の後にすぐデモプレイ、あるいはインタビューが行われるものだが、『Forza Horizon』は初お披露目であることに加え、Playground Gamesが初めて手掛けるタイトルということもあってか、関係者の挨拶とタイトルプレゼンテーションにも多くの時間がかけられた。

 最初に挨拶を行ったPlayground GamesのCCO(チーフ オペレーティング オフィサー)トレバー・ウィリアムズ氏は、同スタジオに現在108人のスタッフが在籍し、コードマスターズ、ブラックロック、ビザーレ、Rockstar Northなどイギリスの大手レーシングゲームの開発を経験してきたスタッフが集まっていると説明。「最高のレーシングゲームを作りたい、対象をできるだけ広げたいと思っていたので、スケールの大きいコンソールタイトルの開発ができたのはすばらしい」と、『Forza Horizon』でTurn 10 Studiosといっしょに仕事ができるよろこびを語った。

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▲Turn 10 Studiosのクリエイティブディレクター、ダン・グリーンウォルト氏。

 続いて登場したのは、そのTurn 10 Studiosでクリエイティブディレクターを務めるダン・グリーンウォルト氏。同氏は「ユーザーにもっとたくさんの経験を提供したい、カーカルチャーとゲームカルチャーにインパクトを与えたいという考えかたもあり、パートナーが必要だと思った」と『Forza Motorsport』シリーズの変革を望んでいたときに、Playground Gamesを設立する前のトレバー・ウィリアムズ氏らに出会った。「彼らと話し、すぐれたゲーム、イノベーションに基づいた経験、高いクリティーの追求と本物志向への情熱と使命が共通していることがわかった」。その後、トレバー氏らはスタジオを設立。イギリスにある著名スタジオの閉鎖も重なったことで、Playground Gamesには優秀なスタッフが集い、ダン氏は同スタジオに『Forza』ブランドの最新作を任せることになったのだ。

<“Horizonフェスティバル”からすべてが始まる

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▲プレゼンを行った、デザインディレクターのラルフ・フルトン氏。

 『Forza Horizon』のデザイン ディレクターを務めるラルフ・フルトン氏は、トレバー氏とともにダン氏に会った人物だ(Playground Games側からはそのほかに、デベロップメント・ディレクターギャビン・レイバーン氏も同席していた)。ゲームの具体的な内容については、このラルフ氏がプレゼンを行った。「我々は『Forza Motorsport』の“ゲーマーをカーラバーに、カーラバーをゲーマー”という価値を共有しつつ、テーマと経験を発展させる課題へチャレンジすることになった」。ラルフ氏から明かされた『Forza Horizon』がプレイヤーに提示する新たな『Forza』のテーマと体験、それは“カーカルチャー”と“ユースカルチャー”の融合だ。そして、それはゲーム内で“Horizon フェスティバル”という形で表現されている。「オートショーとミュージックフェスティバルがひとつになった場所だ。このゲームはHorizonフェスティバルからすべてが始まる」。ご存知の方も多いと思うが、イギリスは毎年夏に開催される”グラストンベリー”を始め、音楽を中心としたフェスティバルが盛んだ。開発スタッフはそれをゲーム内に再現するべく、イギリスのみならず海外のフェスにも足を運び、徹底的にリサーチしたという。デモ映像で見たHorizonフェスティバルで、その成果を強く実感することができた。音楽ライブがあり、観覧車があり、バンジージャンプがあり、そして若者がいる――プレイヤーはこの熱狂の中心で、自身のドライビングテクニックを披露する。その経験は、間違いなく『Forza Horizon』でしか得られないものになるだろう。

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▲フェスティバルにいる人も、らしさが出たデザインとなっている。
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▲ロブ・ダ・バンク氏。

 フェスティバルを扱うからには、音楽にも当然こだわっている。本作ではフェスのライブ会場へ実際に足を運ぶ……ということはできないが、その代わりカーラジオに3つのチャンネルを設け、BBCラジオのDJで、イギリスの大規模音楽フェス“Bestival”のオーガナイザーでもあるロブ・ダ・バンク氏が楽曲をセレクト。ラジオ ステーション1のテーマはダンスで、ダブステップ、エレクトロからドラムンベースまで、最新のエレクトロニックダンスミュージックをリミックスしている。インディーズ音楽がテーマのラジオ ステーション2では、インディーズ フェスティバルで人気の幅広いセレクションをリミックス。ギターベースのロックがお好みならばラジオ ステーション3がオススメだろう。最新のヒットバンドから伝説的アーティスト、グループの楽曲が揃っているという。ちなみに、ロブ氏はミュージック スーパーバイザーとして楽曲リストの監修を行う以外に、クリエイティブ コンサルタントとしてフェスティバルのデザインなどついてもアドバイスを行っている。プレゼンに登場したロブ氏は「Horizonフェスティバルは、現実にはまだないジャンルのフェスティバルだが、まるで実在するかのように表現できていると思う。カーファンにとっては夢のフェスティバルになるだろう」と話し、完成度の高さにみずから太鼓判を押した。

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<舞台はコロラド、シリーズ初のオープンロード

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 すさまじい意気込みで作られているHorizonフェスティバルだが、それが『Forza Horizon』のすべてというわけではない。盛大なフェスティバルの中でレースをすることは、確かにすばらしい体験だが、初めから終わりまでずっとソレが続くのでは、そこがいかに魅力的な場所であろうとも飽きが来てしまうだろう。フェスティバルが人々を惹きつける理由は、フェスティバルそのものの魅力はもちろんのこと、フェスティバルまでの道中の楽しさも大きい。記者は日本国内で行われるフェスに足を運ぶこともあるが、気の合う仲間たちとともに向かっているときの雰囲気は何物にも代えがたいものだ。『Forza Horizon』では、その“フェスティバルへ向かう高揚感”もゲームに取り入れている。「Horizon フェスティバルを構築するに当たって決断したことは、まずオープンロードにすることだった」(ラルフ)。

 オープンロードのモデルに選ばれたのはアメリカのコロラド。同エリアを選んだ理由をラルフ氏はつぎのように説明した。「コロラドにはすぐれたドライビングロードがあり、ユタ州との境にある砂漠やロッキーマウンテンなど環境も多様だ。ビジュアル経験、ドライビング経験という意味でコロラドは魅力にあふれている」。また、オープンロードの採用によって、『Forza Horizon』はシリーズで初の本格的なダート経験を提供する。道路から外れ、柵を破壊してショートカットするなどの荒々しい走りは本作ならではもの。しかし、走行中に見る息を呑むほどに美しい景色(夕陽が反射する川面、延々と広がる砂漠、グランド・キャニオンを思わせる赤く染まった渓谷など)は、本作があくまで『Forza』シリーズであることを強く主張してくる。いまの時代にゲーム映像の美しさを改めて褒め称えるというのもどうかと思うが、それでも『Forza Horizon』のグラフィックはやはり美しいとしか言いようがない。

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 ちなみに、マップは現地で撮影した60000枚以上の写真を元に作成。いわく「マップ内には実在する街をベースにしたエリアが複数ある」とのことで、その広さは推して知るべしといったところだ。昼夜の概念も取り入れられており、同じ場所でも時間によってはまったく違う表情を見ることができるだろう。広大なマップの移動では、一部Kinectを使った操作も取り入れる予定とのこと。ボイスコマンドでGPSを呼び出し、行きたいエリア名をKinectセンサーに伝えれば、そこまでの道のりが表示されるのだ。

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▲スタジオ内には現地で撮影した写真が貼られていた。

<名声を重ね、チャンピオンになれ

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 『Forza Horizon』のテーマと体験に続いては、具体的なゲームプレイの部分に触れていこう。ゲームの基本的な流れは、オープンロードを走りながら各地で行われるレースや突発的に発生するストリートバトルに勝利し、名声を高めていくというもので、最高峰の舞台として前述のHorizonフェスティバルが用意されている。「シングルプレイでは、無名のドライバーが実績を重ね、Horizonフェスティバルのレースでチャンピオンになることがゴールだ。そのためには、フェスティバルで最高の人気を誇るドライバーにならなくてはいけない。スピードだけではなくてスタイルも必要だ」(ラルフ)。本作ではレースシーンに限らず、走行中にドリフト、きわどい追い抜きなどのテクニックを披露することでもポイントが獲得できる。そして、それらはフレンド(Xbox LIVE上のフレンドではなく、ゲーム内の設定上のフレンド)によって評価され、プレイヤーの人気に反映。ドライバーとしての人気が高まると、Horizonフェスティバルへ招待されるようになるのである。

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 Horizonフェスティバルで開催されるレースは、ただスピードを競うものだけではない。ラルフ氏いわくフェスティバル内には「それぞれ捻りやテーマが異なる」15個のカーイベントがあり、勝利報酬として新車を手に入れられるものもある。そのほか、クルマの購入や、ガレージで自身のクルマのアップグレード、ペイントなどもHorizonフェスティバル内で可能だ。なお、気になる収録車種については「リストについてはまだ話せないが、フェスティバルに持っていきたいクルマ、すばらしいコロラドのドライビングロードのよさを感じてもらえるもの、自由を楽しめるものを中心に選んだ」とのこと。

<操作、挙動、AIはあくまで『Forza』シリーズ

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 数多くの大胆な新要素が取り入れられているものの、本作はあくまで『Forza』シリーズだ。前述した通り、美しいグラフィックを見たときにそれを改めて実感させられるわけだが、それ以外にもクルマの操作や挙動などからも“らしさ”は感じられる。「最高の物理エンジン、ハイクオリティーのハンドリングを通じ、リアルで重量感のあるドライブを提供している。『Forza Horizon』は気軽にクルマを走らせることができるが、妥協はしていない」(ラルフ)。本作では物理演算を1秒間に360回アップデートし、タイヤとサスペンションはすべての路面の凸凹と角度の変化に対応しながらクルマを走らせている。また、AIシステムは過去の『Forza』シリーズと同じものを採用。レースで競い合う車両はいずれもクレバーな走りをするし、オープンロード内を走る一般車両も状況に応じた反応を見せてくれるのだ。そのほか『Forza』シリーズと共通する点としては、ベストな走行ラインを視覚的に表示する“グリーンライン”、時間を戻してリトライできる“リワインド”を採用している。

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▲スタジオツアーで会った開発スタッフは、いずれもすばらしい経歴を持っていた。

<オンラインマルチなど、そのほかの情報も

 スタジオツアーの中ではオンランマルチに関する情報も公開された。現時点でわかっているのは、レースで競い合うといった一般的な楽しみかたのほかに、オープンロード内をいっしょに走ることも可能だという。また、ゲーム内で出したすべての記録をフレンドと共有することができ、さらに毎月新しいチャレンジがアップデートされるとのこと。そのほか気になる情報として、クルマの破損表現についても紹介しておこう。昨今のレースゲームでは一般的となった破損表現は、『Forza Horizon』でももちろん取り入れられているが、描写はやや控え目になっているそうだ。その理由はオープンロードを採用したことに拠る。「テストプレイをした結果、数分間のレースにおける破損表現と、オープンロードの破損表現では、感じかたが違うことに気付いた。長時間乗車することもあるオープンロードにおいては、自分のクルマはできるだけよく見えていてほしいもの」(ラルフ)。本作では破損よりも、車体への景色の映り込みや光の反射といった方面にこだわり、プレイヤーがより快適なドライブが楽しめるよう注力している。

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▲こちらがソフトのパッケージ。なお、北米では2012年10月23日に発売を予定している。

 以上が、Playground Gamesのスタジオツアーで見たすべてだ。記事冒頭でPlayground Gamesのことを「現時点では未知数のスタジオ」と説明したが、取材をしてみるとそれが大いなる誤りであることに気付かされた。スタジオの歴史は浅いものの、そこに在籍するスタッフの多くは、近年のレースゲーム文化を築き上げてきたとも言える経歴の持ち主だ。Turn 10 Studiosが大事に育て上げてきた『Forza』というブランドを、初めて外へ出すに当たって、Playground Gamesほどふさわしいところはないだろう。『Forza Horizon』はTurn 10 Studiosのベン氏が望んだ通り、シリーズの新たな地平を切り拓く作品であり、同時に“Horizonフェスティバル”という大胆な切り口がレースゲームにまったく新しい興奮をもたらしてくれそうだ。しかし、実際に触ってみると本作はあくまで『Forza』シリーズであった。ふたつのスタジオのDNAが混じり合った本作が、最終的にどんな姿になるのか非常に楽しみである。

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