ケイブの過去、現在、そして未来に迫る!

 2012年5月24日に発売されるXbox 360用ソフト『虫姫さま』と、2012年4月20日に稼動開始したアーケードゲーム『怒首領蜂 最大往生』。これらの新作と、今後の事業展開について、ケイブの浅田誠氏と池田恒基氏に話を聞いた。

『虫姫さま』、『怒首領蜂 最大往生』について、ケイブのキーマン・浅田誠氏と池田恒基氏が語る!_01
左:ケイブ 執行役員兼プロデューサー 浅田 誠氏
ケイブのXbox 360用シューティングゲームを10作以上手掛けている。ファミ通Xbox 360ではコラムを連載している。

右:ケイブ 執行役員 池田恒基氏
アーケード版の『虫姫さま』、『虫姫さまVer1.5』を開発。“IKD”のコードネームで知られる。

アーケード版は“東亜プラン系への原点回帰”がコンセプト

『虫姫さま』、『怒首領蜂 最大往生』について、ケイブのキーマン・浅田誠氏と池田恒基氏が語る!_04

――Xbox 360版についてうかがう前に、まずはアーケード版『虫姫さま』について振り返っていただきたいと思います。アーケード版『虫姫さま』(2004年稼動)は、どのようなコンセプトで作られたのでしょうか?
浅田 アーケード版の開発時は、自分はまだケイブにはいませんでしたね。
池田 当時はですね……『虫姫さま』の前の基板が、性能がちょっと低かったので、「新しい基板を作ろう!」という話になったんです。では、新基板の第1弾タイトルとして、何を作るか。ケイブとしては、それまで弾幕系のシューティングゲームを作ってきていましたが、私は東亜プラン系……シンプルで弾が少ない、ストイックなシューティングゲームのニーズが市場にあるのではと思っていて。そこで、原点回帰を目指して作り始めました。

――独特のファンタジックな世界観は、どのようにして思いつかれたのですか?
池田 じつは、最初は超リアル系の、「ヘリと戦車しかない!」みたいな世界観で作ろうとしていたんです。ところが、どうやら同時期に『雷電』の新作が出るらしいという情報が入ってきて。これは太刀打ちできないだろうという判断に至りまして、真逆の世界観にすることにしました(笑)。グラフィックリーダーの若林に、「ミリタリーじゃなくなったから、何か考えて」と言ったら、ファンタジー系のイメージボードを持ってきたので、「それでいこう」ということになりました。

――ファンタジー系のシューティングゲームが出るということで、当時のユーザーは驚いたのでは?
池田 言うほど「えーっ!?」とは言われませんでしたね。タイトルについては「なんじゃこりゃ」って言われましたけど(笑)。ロケテストを実施したときは、「やっとハードのスペックがまともになったな」という意見を多くいただきました(笑)。

――ところで、主人公のレコ姫って……はいてないんですか?
池田 はい。

――えっ、オフィシャル設定で、はいてないんですか?
池田 はい。
浅田 はいてないって、トイレに行ったら、そのまま用を足せるってこと?
池田 トイレをどうしているかの設定は決めていませんが、物理的にはそうです。

――そ、そうだったんですか! ……ええと、気を取り直して、『虫姫さま』のポイントを教えてください。
池田 最初にも申し上げましたが、「いかにシンプルなシューティングゲームを作るか」というのがコンセプトであり、ポイントでした。2004年のあのタイミングで、東亜プランの『究極タイガー』(1987年稼動)のような、弾のスピードは速いけど数は少ないという、ストイックなゲームが受けいれられるのかな……という懸念はあったのですが、当時の現代流の味付けを加えながら作って。「これなら勝負できるかな」というデキになったのですが、やっぱり不安で、ストイックな“オリジナル”モードに加えて、弾数の多い“マニアック”を作って(笑)。結果、ユーザーさんに受け入れてもらえて、安心しました。

――当時、オリジナルとマニアックは、どちらが人気だったのですか?
池田 ロケテストではオリジナルのほうが人気でしたね。マニアックは、「名前の通り難しいんでしょ?」って思う方が多かったようで。リリースした後は、同じぐらいの人気になっていましたね。

――難度の高い“ウルトラ”は、リリース時はオープンになっていなかったんですよね。
池田 はい。後から解禁される仕組みにしていました。
浅田 どうして隠したんですか?
池田 サプライズ要素があるべきだろうと思ったんです。ゲームセンターのゲームって、リリースしてから最初の3ヵ月でユーザーが離れてしまう傾向にあるんですよね。ですので、3ヵ月後ぐらいに新要素を解禁すれば、皆さんゲームセンターに戻ってきてくれるのではないかと思ったんです。それに、皆さんがゲームに慣れてクリアーできるようになってきて、「物足りないな、もっとかかってこいよ!」と思っているときに解禁されるといいな、と思いまして。

――ユーザーのプレイ実績が一定値を超えると、解禁されるように設定されたんですよね。
池田 はい。その形式なら、盛況なお店から解禁されますよね。そのほうがクチコミで拡がるのでは、と考えたんです。もちろん、解禁方法を書いた紙は、すべてのお店にファックスで送ったんですけどね。
浅田 もしかすると、ファックスを見逃したお店では、永遠に解禁されなかったかもしれないってこと?
池田 その懸念もありましたので、ユーザーさんにも解禁方法を公開しました。
浅田 新しいですね、ユーザーが解禁って。
池田 ケイブのゲームは全部そうだよ(笑)。解禁してもらえなかったらユーザーさんが困るでしょ?

満を持して『虫姫さま』Xbox 360で登場!

『虫姫さま』、『怒首領蜂 最大往生』について、ケイブのキーマン・浅田誠氏と池田恒基氏が語る!_07

――そんな『虫姫さま』がHD画質になって、Xbox 360で2012年5月24日に発売されますね。
浅田 『鋳薔薇』か『虫姫さま』、どちらを移植するかで悩みましたね。

――Xbox 360版は、浅田さんが手掛けられたんですよね。
浅田 そうですね。とはいえ、開発当初は『インスタント ブレイン』にかかりっきりで。そちらが一段落したので、よし『虫姫さま』をやるぞ、と状況を確認したら……これはヤバそうだな、と思って巻きで行動し始めたんです(笑)。でも、全体を通してみると、いまだかつてないほど順調な開発でしたね。
池田 うん、つつがなく進んだね。

――移植のノウハウが培われていたからでしょうか?
浅田 それもありますし、個々で前倒して動いていたものがあったおかげで、スムーズに進みました。

――本作には3つのモードが収録されているほか、初回生産分特典として“虫姫さまVer.1.5”が遊べるダウンロードカードが付いてきますよね。それぞれのモードについて、解説していただけますか?
浅田 まず、アーケードを基準にして、HD画質化したものが“Xbox 360”モードです。処理落ちも、アーケード版をそのまま再現できていると思います。

――処理落ちも、ですか。
浅田 処理落ちしないと、弾が避けられなくなりますから(笑)。すべてアーケードに準じて作っています。

――続いて“ノービス”モードですが、これは初心者向けのものですね。
浅田 そもそも、ケイブがなぜ初心者向けモードを作るようになったかというと……『デススマイルズ』のアーケード版を出したとき、難易度のレベルが1から3まであったのですが、プレイ中ずっと1を選び続けることができないので、クリアーできないという人がけっこういたんですよね。そこで、Xbox 360版では、全ステージでレベル1を選べるようにしたんです。それで「クリアーできるようになった」というお声もいただいて。それから、『デススマイルズ』でシューティングゲームに入った人がほかの作品もクリアーできるよう、初心者向けモードを入れるようになったんです。それに、やっぱりワンコインクリアーって楽しいじゃないですか? ですので、初心者の方には、最初にノービスモードでその楽しさを味わってもらって、それからほかのモードで地獄を見てもらおうと思ったんです(笑)。

――(笑)。では、“アレンジ”モードについて教えてください。
浅田 これはプレイステーション2版『虫姫さま』に収録されていたアレンジモードに、少し改良を加えたものです。プレイステーション2版のアレンジモードは評判がよかったとのことなので、それをどう発展させようか? と考えながら再調整しました。また、楽曲をアレンジモード用に作り直していただいたので、そこも楽しんでいただけるかと。

――プレイステーション2版をプレイした人も、違う感覚で楽しめるのですね。
浅田 そうですね。今回、アレンジモードの調整にあたって、上手なプレイヤーさんにあらためてプレイしてもらい、「どこがヌルい?」と聞いたんです。ですので、そこそこ難しくなっているかと思いますが、クリアーできないほどではないかと……。これがクリアーできないなら、シューティングゲームはやめちゃいましょう!(笑)
池田 いやいや、それはない!(笑) それはノービスモードの話!(笑)

――やめちゃいましょう、は言い過ぎですよ(笑)。最後に、初回生産分特典として付いてくる“虫姫さまVer.1.5”ですが、これはもとは池田さんが開発されたものですよね。
浅田 昨年“虫姫さまVer.1.5”という基板を、ケイブオンラインショップで2日間の限定で販売したんです。業務用として販売したので、遊んでいないユーザーさんも多いだろうと思い、収録することに決めました。でも池田は当初、収録に前向きではなくて……。
池田 基板を買ってくださった方に申し訳ないな、と思ったんです。もちろん、多くのユーザーさんに遊んでいただけるのはうれしいのですが……。
浅田 ところがプログラマーの市村が、ゴーサインが出る前に、勝手に“虫姫さまVer.1.5”のデータを解析して入れていたんです(笑)。じゃあ動くから入れちゃえ、って。
池田 どうして社内で解析なんてやってるのか、意味がわかりませんよね(笑)。
浅田 プレイできていない方が多いだろうとも思いましたし、昨年亡くなられた作曲家の梅本竜さんがこの“虫姫さまVer.1.5”のために作ってくださった曲があったので、ぜひ聴いていただきたかったんですよね。考えてみると、Xbox 360版の『虫姫さま』は、3バージョンも楽曲があるんです。すごいですよね。

――“虫姫さまVer.1.5”は、どんなところが“Ver.1.5”なのですか?
池田 原点回帰を目指して作った『虫姫さま』ですが、あらためて振り返ってみたところ、「なんて敵が少ないんだろう」と感じてしまいまして。当時はそれが狙いだったんですけどね。そこで、敵の数と配置を変えて、得点が稼げる要素を付け加えたのが、“虫姫さまVer.1.5”です。今風のケイブのバージョンと言いますか。

――おふたりのお気に入りは、どのモードですか?
浅田 自分はアレンジですね。“なんとなくでも進められる”難易度になっていて、プレイしていて楽しかったです。“Xbox 360”モードのウルトラについては、「作ったの誰だよ!」なんて思いましたけど(笑)。1面、クリアーできます?
池田 うーん、どうだったかなぁ……。
浅田 1面はかろうじてクリアーできましたよ、自分。もうね、受注会で「ウルトラをプレイしてください」と言われたりするんですが、恥ずかしいですよ? 「こんなものか」って思われて(笑)。
池田 社内でウルトラをクリアーできる人間はいないですね……。もちろん、理論的にクリアーできるように作ってはいますが、当時から「中途半端な難易度の上げかたはぜったいにおもしろくない」と考えていたんです。もう笑うしかないぐらいの難易度にしなければダメ、「始まって5秒で終わっちまった(笑)」って笑ってもらえなければダメかな、と。

――池田さんのお気に入りのモードは?
池田 私は、やっぱり最後に作った“虫姫さまVer.1.5”ですね。
浅田 でも、あれを作ってるときの池田さん、辛そうな顔してましたよ。
池田 いや、じつは楽しかったんだよ、あれ(笑)。

――(笑)。ところで、これがケイブのXbox 360最後のパッケージ作品になりそうとのことですが……?
浅田 パッケージ作品としては、おそらく最後かと思います。これからは、スマートフォンを始めとするさまざまなハードでの展開を考えていく……という感じですね。

ついに稼動! 『怒首領蜂 最大往生』

――先月、『怒首領蜂 最大往生』が稼動しましたね。
浅田 僕はサウンドぐらいしか関わっていないんですよね。並木学さんに依頼するというぐらいしか……。
池田 『怒首領蜂 最大往生』のサウンドについては、歴代のシリーズ作でも作曲してくださった、並木さん以外は考えられませんでした。

――ユーザーからの反応はいかがですか?
池田 想像していたより、かなりよいですね。ロケテストのときも、正直不安だったのですが、よい反応をいただけて、リリース後もさらに高評価をいただけて。本当にうれしいです。
浅田 一時期は、開発中止の危機すらあったんですけどね。無事リリースできてよかったです。
池田 それ、言っていいのかな?(笑)
浅田 無事にリリースできたから、いいじゃないですか(笑)。

――そんな危機があったのですか。
浅田 無事に乗り越えましたが……。でも、この基板でアーケードゲームを発売するのは、これが最後でしょうね。
池田 もう単純に基板の部品がありません。とはいえ、これでアーケードゲームをスッパリ止めるというわけではありません。

――NESiCAでの提供などの可能性は?
池田 そうですね、視野には入れておりますが、いま具体的にお話できることはありません。

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ケイブの今後の展望

――御社の今後の展開について、教えていただけますか?
浅田 自分は、これまではXbox 360メインで作ってきたのですが、今後は少し目線を広くして取り組んでいこうかなと考えています。

――具体的に動いている企画はあるのですか?
浅田 個人的に、いくつか考えていますけどね。スマートフォンで考えている企画が、そろそろ発表できるかな……と思いますので。ご期待ください。

――池田さんの今後のご予定は?
池田 ひとりで楽しむゲームというより、誰かとつながって遊ぶゲームに取り組んでいかなければならないと、会社全体で考えています。いままでとはちょっと違った形のゲームを制作することになると思いますが、ユーザーさんの心に刺さるものにしたいと思っていますので、楽しみにしていてください。

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