●『アトリエ』シリーズ最新作の目指すものとは!?

 週刊ファミ通2012年4月12日号(2012年3月29日発売)に掲載された、ガストのプレイステーション3用ソフト『アーシャのアトリエ~黄昏の大地の錬金術士~』(2012年6月28日発売予定)のディレクター・岡村佳人氏インタビューの完全版をお届け。

ガスト
岡村佳人氏
『ロロナのアトリエ』、『トトリのアトリエ』、『メルルのアトリエ』、の“アーランド3部作”のディレクターを担当。本作でもディレクターを務めている。

■コンセプトは“イメージの転換”
――『アーシャのアトリエ~黄昏の大地の錬金術士~』は、岡村さんが手掛けたこれまでの『アトリエ』シリーズとはずいぶんとイメージが異なりますね。
岡村佳人氏(以下、岡村) 本作では、“イメージの転換”を大きなコンセプトとして掲げています。おかげさまで、これまで手掛けたアーランド3部作はたくさんの方々からご支持をいただいたのですが、その一方で、「この方向性の『アトリエ』でできることはやりきった」という思いがあったんです。また同じ方向性でゲームを作っても、いままで以上のインパクトを皆さんに与えるのは難しいだろう、とも感じましたし。そこで、すべての要素を一新し、別のベクトルで勝負することを決意しました。

――方向性を大きく変えるのは、勇気のいることだったのでは?
岡村 確かに、同じ方向性で作れば、一定の評価をいただけるとは思います。でも、それではシリーズがどんどん先細りになってしまいますし、ほかのゲームの中に埋もれていってしまいます。でも、私たちはそうしたくなかった。新しいユーザーの皆さんにも、もっと『アトリエ』シリーズを遊んでもらいたいと思ったんです。それで、より多くの人々に受け入れていただけるような、正統派ファンタジーの『アトリエ』を作ることに決めました。

――世界観の転換とともに、キャラクターデザインも変わりましたね。
岡村 今回は、イラストに独自の空気感があって、かつ本作の世界観に合う方ということで、左(ひだり)さんにデザインをお願いしました。アーランド3部作でキャラクターデザインを担当してくださった岸田メルさんの持つ華やかさとはまた違う、シックで落ち着いた色味が魅力ですね。また、動きのあるイラストが得意な方なので、イベントで表示される一枚絵も、キャラクターの動きが活きるように描いていただきました。

――今回は、アーシャとニオというふたりのキャラクターが公開されましたが、ふたりはどのような性格なのですか?
岡村 アーシャは、自分の目標に向かって真っすぐ進んでいく、素直な女の子です。おとなしめですが、妹のことになるとまわりが見えなくなってしまうこともあります。妖精をイメージしてデザインしてもらいましたので、杖に花がついていたり、半透明のふわっとした服を着ていたりします。

――アーシャ役に井上麻里奈さんを起用された理由は?
岡村 本作では、“その役を自然な形で演じていただけること”を第一にキャスティングを行いました。井上さんなら、17歳の等身大の少女を、自然に演じてくださると思い、お願いさせていただきました。

――おとなしめのアーシャとは対象的に、ニオは活発的なイメージですよね。
岡村 チーフデザイナーが「ショートカットがいい!」と主張しましたので、シリーズ内でも珍しい、ショートカットのキャラクターになりました(笑)。ふだんちょっとふわふわしているアーシャを支える、明るくしっかり者の妹です。元気な妹役にぴったりということで、声は伊瀬茉莉也さんにお願いしました。

――ふたりの3Dモデルも公開されていますが、イラストと見分けがつかないぐらい、すばらしい完成度ですよね。
岡村 アーランド3部作から引き続き、フライトユニットさんがキャラクターモデリングを担当してくださっています。“イラストレーターさんの絵を、3Dモデルとしてさらに発展させた形で作る”ということをコンセプトにしていまして、『メルルのアトリエ』からさらにクオリティーアップしています。今回は表情やモーションの種類がかなり増え、すべてのイベントシーンが3Dモデルで表現されます(※1枚絵のシーン除く)ので、期待していてください。

――アーシャの髪の毛など、細かいところまでしっかり再現されていますよね。
岡村 フライトユニットさんは、もとの絵の印象を活かして3D化する方法を独自に習熟されているので、本当にイラストと見紛うばかりのモデルを仕上げてくださるんです。また、少し話がそれますが、左さん起用の理由のひとつに、フライトユニットさんが推していたということもあるんです……フライトユニットさんは、“左さんの絵を3Dモデルにしたら映える”ということがわかっていたんでしょうね。

――では、そんなキャラクターたちが生活している黄昏の大地はどのようなところなのか、教えていただけますか?
岡村 “滅びに向かっている世界”ということで、キャラクター同様、シックな色味で描いてもらっています。この世界には、高度な技術を用いて作られた遺跡や、世界の知識が集められた書庫など、過去の栄華の時代を感じさせる場所が多々あります。アーシャの目的はあくまで妹を見つけることなので、旅の途中で世界の過去にまつわる真実が明かされることはありませんが、その片鱗に触れることはあるかもしれません。

――この世界に暮らしているモンスターも、これまでのシリーズ作品では見たことのない姿形をしていますよね。
岡村 モンスターも一新しています。今回紹介した2体のモンスターは、マスコット的な存在ですね。この世界には“スラグ”という不思議な生命体がいるのですが、その中でもいちばん格下のスラグが、水色の丸っこい生物“スラグ サーバント”です。もう1体の小動物のようなモンスターは、“フルーツハムスター”といいます。果物が好物ですが、戦闘はその果物を投げつけて攻撃してきます。遺跡の近くに住んでいるのですが、ときどきアトリエの近くまでやってきて、アトリエの食べものを盗んだりもするんですよ。ちょこまかとした動きがかわいいので、ぜひモーションに注目してください。

――どちらも、ペットにしたくなるようなかわいらしいモンスターですよね。
岡村 そう言っていただけるとうれしいです。とはいえ、かわいいモンスター以外にも、大きくてカッコいいモンスターも出てきますので、楽しみにしていてください。

■新しく構築されたシステム
――妹を見つけるまでの物語は、どのように進行するのですか?
岡村 ゲームスタート時は、“妹を見つける”という目標以外は提示されません。ただ、ゲームを進めるうちに、物語の区切りとなる時期が見えてきて、ある時期が来るとエンディングを迎えます。

――今回は新たに、“想い出を紡ぐ”というシステムを採用されていますね。
岡村 『トトリのアトリエ』での冒険者免許システムや、『メルルのアトリエ』での開拓システムを、より密接にストーリーと結びつく形に進化させたのが“想い出を紡ぐ”システムです。旅の想い出を振り返ることで、さまざまな恩恵が発生します。新しい場所に行けるようになったり、新しいレシピを覚えたり。

――アーシャは、アトリエを拠点にして旅をするのでしょうか?
岡村 基本的にはそうです。とはいえ、調合ができる場所は世界にいくつかありますので、どこを拠点にするかはプレイヤーの皆さんに委ねられています。ある場所でしか採れない材料を使った調合がしたい場合は、そこにいちばん近い場所を拠点にするなど、遊びかたは自由です。荷物はペットの“うし”が運んでくれますので、引越しの心配はいりませんよ。

――アーシャが行う調合では、過程が楽しめるようになっているとうかがいましたが。
岡村 はい。同じ材料を使って作っても、釜に材料を投入する順番や、使用するスキルによって、結果が大きく変化するようになっています。詳細はまだヒミツですが、スキルの効果は一定のルールに従って発動しますので、ルールを理解して上手に使えば、より強いアイテムを作れるようになります。こう言うと難しく聞こえるかもしれませんが、初心者の方のためのシステムも用意していますので、ご安心ください。

――作り出したアイテムはもちろん、戦闘でも使えますよね。
岡村 はい。前作では錬金術士のキャラクター3人が戦闘中にアイテムを使えましたが、今回はアーシャだけがアイテムを使えます。

――戦闘では、移動の概念が新たに追加されたということですが、これは戦況にどのように影響してくるのでしょう?
岡村 行動を選ぶとキャラクターは自動的に移動しますので、プレイヤーの手間は増えていません。あまり複雑だと、戦闘の爽快感が損なわれてしまいますから。行動対象の近くにいるときにしかできないことや、逆に遠くにいるときしかできないことがあり、それらを把握していくと、戦闘が少し有利に進められます。

――どんな戦闘になっているのか、実際にプレイするのが楽しみです。それでは最後に、読者にメッセージをお願いします。
岡村 本作は、新シリーズということで、ビジュアルもシステムもすべてリセットして作っています。アーランド3部作とはまた違った形で、新しいおもしろさを必ずご提供しますので、シリーズファンの皆様も、まだシリーズをプレイしたことがない方も、ぜひ続報にご期待ください!