麻雀の醍醐味を堪能
プレイステーションVita本体と同時発売されたKONAMIの『麻雀格闘倶楽部 新生・全国対戦版』は、麻雀の魅力をこよなく堪能できるシリーズ最新作だ。本作の魅力を、麻雀と麻雀ゲームをこよなく愛するライター、戸塚伎一がお届けする。
ハタチそこらで上京した当時、出入りしていた編集部の先輩に連れ回されたのがきっかけで、麻雀卓を囲む楽しさに目覚めました。一時期は、友人で集まって夕方から翌朝まで打ったり、点数計算も満足にできないくせに単身フリー雀荘に行きまくったりしたものですが、ルールや競技としての奥深さへの理解が深まるにつれ一過性の熱は冷め、ほどよい距離感で付き合えるようになりました。
麻雀をテレビゲームで遊ぶ際に重視しているのは、対戦相手の生々しさ。連続して天和(※読みは「てんほう」。初期の手牌ですでにアガりの形が完成している、超低確率な大物役)でアガる機械的強さの持ち主よりも、腕前は玉石混交で、打ち筋にそれぞれの意思が見える相手と対局する方が、ツキの流れを共有する者としての親しみが湧き、張り合いが出るというものです。
プレイステーションVitaのローンチタイトルのひとつ『麻雀格闘倶楽部 新生・全国対戦版』を始めてかれこれ2ヵ月が経ちましたが、まったく飽きる気配がなく、現在も一喜一憂しながらプレイしています。前述した条件をしっかり満たしている、ということもありますが、遊び続ける理由はそれだけではありません。
アーケードの興奮(と絶望感)がそのまま家庭に
本作は、KONAMIのアーケードタイトル『麻雀格闘倶楽部』シリーズの基本システムに準拠しつつ、独自の機能を搭載した上で、アーケードのシリーズ最新作『麻雀格闘倶楽部u.v.~絆の章~』との連動要素を備えている麻雀ゲームです。CPU相手のひとりプレイも可能ですが、やはり醍醐味は全国対戦モード。ネット接続環境さえ整っていれば、屋内外を問わず、生々しい対戦相手といつでも麻雀を打てます。
操作は、画面の牌やボタンに直接触れるタッチスクリーン方式に対応。このあたりはアーケード版とほぼ同じ感覚です(※本体のボタン/キーによる操作も可能)。このほかにも、背面タッチパッドによる部分拡大表示や、アガり宣言を実際の麻雀よろしく本体を倒すアクションで行えたりと独自の操作も採用されています。使い勝手がいいかというと……ですが、Vitaはこんな風にも使えるんだな、ということがわかります。
ゲームバランス──すごくツいているときと何をやってもダメなときの落差の激しさも、アーケード版そのまま。私自身、『6』あたりまではゲーセンでせっせとプレイしていたので、『麻雀格闘倶楽部』特有のバランスは重々承知していますが、それにしてもドン底時は堪えます。麻雀は、何層にも折り重なって運行するツキの流れを見定め、その上でベストの結果を出しあう競技なので、そういうときにいかに自制できるかも含めて楽しめる度量は必要かもしれません。
さまざまな段階で用意されている“やりがい”
“ベストの結果”を追求する際、本作ではいくつかの指標が用意されています。わかりやすいものとしては、“段位”や“所属リーグ”。戦績によって上下するこれらの要素はプレイヤーの腕前のバロメーターになるので、可能な限りよい状態をキープしておきたいものです。ある程度ネットワーク対戦の回数をこなすと参加できるオンラインランキングの上位を目指すのも、絶好のモチベーションになるでしょう。
目先に限ったことで言えば、「対局チケットを消費しないで続行できるか?」というのも、目標になり得ます。本作でネットワーク対戦するには、対局チケットが必要です。対局チケットは毎月1日に10枚ぶん補充され、1対局ごとに1~2枚消費します。対局終了時に点数が初期点数+5000点以上あれば、新たにチケットを消費することなく、つぎの対局に進めます。トップを取ればほぼ確実に続行できますが、2~3位はケースバイケース。継続プレイのためにどの程度リスクを冒すか、といった判断どころも、醍醐味のひとつです。
ちなみに対局チケットは、ストックがなくなったらその月はもう遊べない……というわけではなく、PlayStation Networkや、KONAMIの電子マネーPASELIで購入することが可能。基本的にセット販売で、チケット1枚あたり25~30円ほどです。アーケード版同様のプレイを好きな場所で楽しめる料金としては妥当というか、むしろお得にさえ感じますが、それでもチケット1枚、1対局、1打の“重み”を感じるには十分。お金をつぎ込めばつぎ込むほど勝率アップ、というゲーム性でもないので、節度ある課金でそこそこの緊張感をキープしながら遊ぶのがいいでしょう。
ノーガードの殴り合い的展開を楽しめる三麻戦
本作は通常ルールの東風戦、半荘戦以外に、三人打ち麻雀“三麻戦”も可能です。その名の通り、本来4人で遊ぶ麻雀を3人で遊ぶための特殊ルールで、使用する麻雀牌の種類が少なくなっているぶん、アガるための役を作りやすくなっています。加えて、アガり時に動く点数がインフレ傾向で、よくも悪くも大味な展開になりがちです。
『5』以降のアーケード版で慣れ親しんだ人や、豪快な応酬戦が好みであれば存分に楽しめるでしょう。個人的には、気分転換でたまに遊ぶぶんにはいいけど、連続プレイはほどほどにしておきたいと思いました。「ギャンブル性が高過ぎる三麻戦にハマッたら、自分の性格上大変なことになる」と、体内危機センサーが知らせてくれたからです(笑)。プレイする際は、段位や勝率の上昇・下降は全ゲームモード共通……といった仕様も納得した上でプレイするのがいいと思います。
生々しい対戦相手が“24時間体制”で待っている!
去る2012年1月19日から同29日にかけて、本作用のイベント“第1回 新生・全国大会”が開催されました。連続する4対局ぶんの東風戦の成績を競い合う……というルールで、私も無事入賞(上位40パーセント未満)することができました。賞品は、ゲーム内ポイントのボーナスや、ゲーム画面のカスタマイズ用アイテムだったりとささやかなものですが、大会ランキングに自分の名前が残り続けるのは悪い気がしません。大会は今後もさまざまなルールで開催される予定とのことで、単純に“現在進行形の麻雀大会開催場”としての魅力もあります。
2012年2月末日現在、スコアランキング参加者は3700人を突破。ソフト発売日から日時を問わずプレイしてきた経験からすると、まったく誰ともマッチングされない時間帯はありませんでした(※対局チケットを消費しない待ち受けCPU戦を何度かしているうちに挑戦者出現……というケースを含む)。このあたりは、外出先やトイレ、あるいは寝床でもプレイ可能な携帯ゲーム機ならではのメリットといえるかもしれません。新規参入と思わしきプレイヤーとも日々マッチングされるので、当面の間、対戦相手探しに困ることはないと思われます。自身の腕前はさておき、生きた対戦相手と緊張感ある麻雀を打ちたい人は、本作を見逃す手はありませんよ!
■戸塚伎一プロフィール
ファミ通Xbox 360誌でクロスレビューを担当する文章&まんが書き。対局数を重ねたり、ガチャコインを回し続けるとアンロックされるゲーム内アクセサリー──とくにサウンド関連が楽しみでなりません。アーケード版『麻雀格闘倶楽部』の歴代シリーズ作のBGMセットはもちろんのこと、『グラディウス』、『グラディウス2』(※MSX用ソフト)、『悪魔城ドラキュラ』、『悪魔城伝説』、『XEXEX』といったおっさんゲーマーにやさしいラインアップが勢揃いです。
麻雀格闘倶楽部 新生・全国対戦版
メーカー | KONAMI |
---|---|
対応機種 | PSVPlayStation Vita |
発売日 | 2011年12月17日 |
価格 | 4980円[税込] |
ジャンル | テーブル(トランプ・将棋など) |