前作を必ずしもプレイしていなくても楽しい続編の作り方とは?
先週サンフランシスコで行われたゲーム開発者の国際会議GDC 2012から、ValveのChet Faliszek氏とEric Wolpaw氏が『ポータル2』の開発について語った講演の模様をお届けする。
ふたりが最初に紹介したのは、映画の“残念な続編”の数々……。映画には確かに「何でこんなもん作ったんだよ」ってなものにしばしば出くわす。「ゲームは映画の続編よりはよくやっている」との主張は、まさにその通り。続編主義はしばしば批判されるが、『タイタニック2』よりはいいだろう。とはいえ、圧倒的な評価を受けた『ポータル』に、それにふさわしい続編を作ることはできるのだろうか?
“ポータルかくあるべし”というデザインドキュメントは用意せず、最初は小さなチームで開発をスタートし、シンプルなアイデアと実験をくり返しながら、徐々に大きくしていったのだという。
しかしまぁ、そこからやったことがスゴい。「Aperture Scienceは残そうと思った」まぁそうでしょう。あの企業は魅力的すぎる。「Chell(主人公)とかGLaDOS(世界で最も偉大かつ万能なコンピューター)とか、一気に削ろう」な、なんだって? そして当時のデモが披露されたのだが……。
結局、ChellもGLaDOSもポータルガンも、それぞれちょっとしたひねりを加えて帰ってくることになる。ペイントなどの新たなギミックを加えて、披露されたデモも、段々現在の『ポータル2』っぽい感じに(ちなみにチューブをタレットとかと一緒にカッ飛んで行く内容)。
しかしここで問題が。いわく「ポータル1の80%はトレーニングだったよな」。確かに! ポータルガンの使い方をステージを通して学び、最後にトラップで殺しにかかってきたところで、それまで磨いてきたスキルで切り抜けていくのが初代『ポータル』だった。前作を遊んだ人にもふたたび新鮮に、『ポータル2』を遊んだ人には難しくなりすぎないチュートリアルは、どうすればいいだろうか?
結論は、“同じ部屋だけど違ったメカニックにする”。ちょっと違ったゲームデザインの部屋にすることで、1をやってもやってなくても学べるし遊べる。Apertureの雰囲気も全体的に変えて、荒れ果てた感じに。こうすれば、前作のプレイヤーも見覚えある部屋に親近感を感じつつ、ちょっと変わったゲームデザインに「お、今度はこうなってるのね」と新鮮さをも味わってもらえるという寸法。WHEATLEYという新たな語り部もゲット。「コイツ落としちゃったらどうするの」とか「アニメーターが入れた仮音声がヒドいんだけど……」といった問題は、ゲームデザインと本番音声の収録で解決。
さて、かくして『ポータル2』はあるべき姿へと収まっていったわけだが、実は大きな要素がカットされている。それはマルチプレイ対戦。どうやら『Speed Ball』×『Portal』という無茶なアイデアの掛け合わせの代物だったらしく、作ってテストはしてみたものの「超カオスで楽しくなかった」とのこと。うーん、そう言われるとやってみたい……。