前作を必ずしもプレイしていなくても楽しい続編の作り方とは?

GLaDOSがクビ? ポータル対戦モード? 無茶な『ポータル2』のつくりかた【GDC 2012】_01

 先週サンフランシスコで行われたゲーム開発者の国際会議GDC 2012から、ValveのChet Faliszek氏とEric Wolpaw氏が『ポータル2』の開発について語った講演の模様をお届けする。

 ふたりが最初に紹介したのは、映画の“残念な続編”の数々……。映画には確かに「何でこんなもん作ったんだよ」ってなものにしばしば出くわす。「ゲームは映画の続編よりはよくやっている」との主張は、まさにその通り。続編主義はしばしば批判されるが、『タイタニック2』よりはいいだろう。とはいえ、圧倒的な評価を受けた『ポータル』に、それにふさわしい続編を作ることはできるのだろうか?

 “ポータルかくあるべし”というデザインドキュメントは用意せず、最初は小さなチームで開発をスタートし、シンプルなアイデアと実験をくり返しながら、徐々に大きくしていったのだという。

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 しかしまぁ、そこからやったことがスゴい。「Aperture Scienceは残そうと思った」まぁそうでしょう。あの企業は魅力的すぎる。「Chell(主人公)とかGLaDOS(世界で最も偉大かつ万能なコンピューター)とか、一気に削ろう」な、なんだって? そして当時のデモが披露されたのだが……。

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▲Apertureはキープ。うむうむ。よろしいことである。
▲なんかいろいろカットしちゃってるよ。アレか、パンクなことしないと気が済まないタイプか。
▲新しい次代のApertureね。まぁ、それはいいんだけどさ……。
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▲というわけでデモの様子。え、『ポータル2』は南国なの? よし、海だ海、わーい!
▲と思ったら壁が出てきて周囲を塞がれはじめ……。
▲せっかくのヤシも引っ込み、「もう絶対ココ海じゃないじゃん……」パターン。その後、広大な部屋をゴゴゴゴと運ばれていきます。
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▲「うーん、もう全然ポータルじゃないじゃん……」とっととリテイクだリテイク!

 結局、ChellもGLaDOSもポータルガンも、それぞれちょっとしたひねりを加えて帰ってくることになる。ペイントなどの新たなギミックを加えて、披露されたデモも、段々現在の『ポータル2』っぽい感じに(ちなみにチューブをタレットとかと一緒にカッ飛んで行く内容)。

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▲というわけで、もういろいろ戻す! 戻しまくる! もちろんちょっとずつひねって!

 しかしここで問題が。いわく「ポータル1の80%はトレーニングだったよな」。確かに! ポータルガンの使い方をステージを通して学び、最後にトラップで殺しにかかってきたところで、それまで磨いてきたスキルで切り抜けていくのが初代『ポータル』だった。前作を遊んだ人にもふたたび新鮮に、『ポータル2』を遊んだ人には難しくなりすぎないチュートリアルは、どうすればいいだろうか?

 結論は、“同じ部屋だけど違ったメカニックにする”。ちょっと違ったゲームデザインの部屋にすることで、1をやってもやってなくても学べるし遊べる。Apertureの雰囲気も全体的に変えて、荒れ果てた感じに。こうすれば、前作のプレイヤーも見覚えある部屋に親近感を感じつつ、ちょっと変わったゲームデザインに「お、今度はこうなってるのね」と新鮮さをも味わってもらえるという寸法。WHEATLEYという新たな語り部もゲット。「コイツ落としちゃったらどうするの」とか「アニメーターが入れた仮音声がヒドいんだけど……」といった問題は、ゲームデザインと本番音声の収録で解決。

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▲シングルプレイとCo-op(協力)プレイのプロットの違いも頭を悩ませた部分のようだ。なんせシングルプレイには表に出てくるもの出てこないもの含めてプロットが山ほど。「これは一体なんなんだ?」と背後を想像させることも多い。でもCo-opは……楽しくなきゃね。だからストーリーはシンプルに。

 さて、かくして『ポータル2』はあるべき姿へと収まっていったわけだが、実は大きな要素がカットされている。それはマルチプレイ対戦。どうやら『Speed Ball』×『Portal』という無茶なアイデアの掛け合わせの代物だったらしく、作ってテストはしてみたものの「超カオスで楽しくなかった」とのこと。うーん、そう言われるとやってみたい……。

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▲きみはスピボーを知っているか? ちなみにスピボー2の出来は聞かないでくれ!
▲パズルは難しすぎないようにするというのも大事なポイント。
▲ラストはスッキリしているChell! ちなみにエンディングについての話もあったのですが、ネタバレを避けるために伏せさせていただきます。