●ゲームの冒頭を体験リポート

 オープンワールドを舞台にギャング団“サード・ストリート・セインツ”の抗争の日々を描くクライムアクション『セインツロウ』シリーズ。北米では2006年(国内は2007年)にシリーズ1作目が発売されて以降、そのぶっ飛んだ内容などが好評を博した、THQの看板ブランドだ。その最新作にあたるのが、2011年11月17日に、プレイステーション3とXbox 360向けに発売される『セインツロウ ザ・サード』。舞台を、前作までのスティルウォーターからスティールポートに移し、さらにぶっ飛んだアクションが展開されることになる。

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 そんな『セインツロウ ザ・サード』を開発するVolitionにてスタジオマーケティングマネージャーを務めるエリック・バーカー氏が来日。プレスを招いてのインタビューが2011年10月22日に行われた。バーカー氏は極めてアグレッシブな方で、バーカー氏を始めとするVolitionスタッフのパワーがそのまま『セインツロウ ザ・サード』に注ぎ込まれたのでは……と思われたが、バーカー氏へのインタビューの模様を紹介する前に、まずは『セインツロウ ザ・サード』の体験リポートをお届けしよう。

 体験会では、ゲームの最初からプレイ可能だった。冒頭で主人公が投げ出されることになるのは、とあるオフィスビル。何事か……と思いきや、まさに銀行を襲撃しようとするところ。“サード・ストリート・セインツ”のボスである主人公は、仲間ふたりと銀行襲撃のミッションをこなすことになる……という、いわばチュートリアル的なパートだ。とはいえ、チュートリアルと言えど、そこは『セインツロウ ザ・サード』。銀行強盗の方法がまた超大胆で、ヘリコプターで金庫ごと持ち上げて強奪することになる。ところが、持ち上げた金庫にしがみついての空中戦虚しく、主人公たちは敵シンジケートに捕まることに……。ここまでが、最初のミッション“悪夢の銀行強盗”だ。

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 ここで挿入されるのが、キャラクターエディット。『セインツロウ』シリーズと言えば、多岐に渡るキャラクターエディットがおなじみだが、本作も本当に詳細で、本気でキャラクターエディットに取り組もうと思えば、2〜3時間は余裕で楽しめそうだ。『セインツロウ』らしいのが、“アピール”の項目で、こちらは男性キャラクターの場合は股間の膨らみを変化させられる。股間の大小がゲームプレイにどのような影響を及ぼすのか不明だ。なお、女性キャラクターを選択した場合の“アピール”は、胸の大きさとなる。胸を大きくした場合は、乳揺れもしっかりと再現されるそうだ。

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▲英語版の画面写真を使用していますが、日本語版は、もちろん日本語の表記です。

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 続くミッションの“フリーフォール”では、主人公たちは上空を航行する敵組織の飛行機から飛び出し、高度上空からフリーフォールで脱出を図ることになる。ところが、なんとそこには主人公を付け狙う刺客が! フリーフォールのさなかに空中戦が展開される。

 そして、つぎのミッション“武器を取れ”から舞台は、スティールポートに。まずは警備隊の基地に向かい、派手な銃撃戦をくり広げることになる。そこで頼りになるのは“リーパードローン”で、こちらは地上から上空の兵器を遠隔操作して、敵にミサイルの雨を降らせるというスグレモノ。今回のミッションでは、味方ヘリコプターを敵の戦車から援護するために活用することになる。この“武器を取れ”をクリアーすると、主人公は新しいアジトを入手。『セインツロウ ザ・サード』の舞台となるスティールポートで暴れまくることに……。と、まさにジェットコースタームービーを思わせるような息をもつかせぬ展開のあとに、いよいよオープンワールドでの抗争が待っているわけだが、ここでちょうとインタビューの時間と相成った。おつぎは、エリック・バーカー氏へのインタビューをお届けしょう。

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▲実生活と同じく、スティールポートの世界でも携帯電話は欠かせない。今風にスマホ。仲間との連絡やGPS機能などがある。音楽を聴くことも可能だ。

●『セインツロウ ザ・サード』では、“クレイジーさ”をさらなる高みに!

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▲Volitionのスタジオマーケティングマネージャー、エリック・バーカー氏。

――まずは、3作目を作るにあたって心がけたことを教えてください?
エリック “クレイジーさ”をさらなる高みに持って行きたかったです。『セインツロウ ザ・サード』は前作までに比べ、さらにぶっ飛んだ感じになっています。これから年末にかけてたくさんのゲームがリリースされますが、ぶっ飛びさ加減でいったら、『セインツロウ ザ・サード』に勝るものはないと思いますよ(笑)。全裸でスカイダイビングをしたり、怪しいバットで人を殴ったり、SMクラブから仲間を救い出したり、脱落すると死んでしまうテレビのバラエティー番組に参加したりとか……盛りだくさんの内容になっています。いわゆる、トリプルAタイトルにあるような要素を盛り込みながらも、ほかにはない『セインツロウ ザ・サード』流のスタイルを重視したわけです。

――『セインツロウ』シリーズと言ったら、やはりクレイジーというのは外せないですね。
エリック そうです。シリーズ2作を見てもらえればわかるのですが、ぶっ飛んだ、ありえない内容が特徴になっています。それが、この『セインツロウ ザ・サード』では、さらにリミッターを外したものになっているんですよ。いま、毎日のようにたくさんのすばらしいゲームがリリースされていますが、あまりにもマジメ過ぎるというか、少しナルシシズムに陥っている傾向があると、個人的には思っています。そういう意味では、『セインツロウ ザ・サード』は相当に毛色の違ったものになっています。

――『セインツロウ』シリーズのクレイジーさを愛しているファンにとっては、最新作はさらにうれしいということですね。
エリック もちろん、そればかりではありません。『2』から『ザ・サード』に移行するにあたっては、世界観や設定なども全部作り直しています。それは、オープンワールドのゲームにとってはかなりたいへんなことです。『セインツロウ ザ・サード』では、アート部門とゲームデザイン部門が、「まったく新しいゲームを作ろう」ということで、いっしょになってやってきています。すべてを作り直したといっても過言ではありません。

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――なぜ、作り直したのですか?
エリック もちろん前作もすばらしいゲームだったと思います。でも、いまのゲーム市場には、前のバージョンに少しだけ要素を追加してリリースした……というゲームがとても多い。ファンの方も目が肥えてきて、「前作に要素が追加されただけだから、これは買わなくていいのでは?」ということになると思うんです。でも、『セインツロウ ザ・サード』はそうではありません。これはぜんぜん違います。「シリーズでいいと思ったものが、まったく新しくなって入っている!」って思っていただけるハズなんです。『セインツロウ ザ・サード』には、『2』のマップはまったく入っていません。今回は前作までのスティルウォーターからスティールポートへと舞台を移したわけですが、「まったく新しい冒険が待っているんだ!」と期待していただいていいと思います。

――ファンの方は、新たな気分で楽しめるということですね。
エリック マップを一新したことには、さらに大きなメリットがあります。さきほどアート部門とゲームデザインの部門がいっしょになってゲームを作ったと言いましたが、マップを作るに際しても、ゲームデザインを前提としたマップを作ることができる。ゲームプレイの部分の構成が設計の部分でもいっぱい詰まった密度の濃いものになっているんです。たくさんのオープンワールドタイプのゲームは続編が出るたびに、徐々にマップが大きくなっていくわけですが、けっきょくはスタート地点から目的地へ移動する距離が延びただけ……ということも多い。それはゲームを楽しくするというよりも、大きくするために大きくしたというだけのことに過ぎないんです。わざわざクルマで遠くにドライブに出かけるだけではイヤになってしまいますよね? 我々としては、アートの部門とゲームデザインの部門がいっしょになって、見た目はもちろん、どうすればミッションやアクティビティにあった街の構成にできるか?という点を考え抜きました。だから、『セインツロウ ザ・サード』では、どこかにちょっと移動するだけでも、ちょっとした要素含まれていて、これまでよりも移動することも自体が楽しくなると思います。

――タイトルが、『3』ではなくて、『ザ・サード』になったのも、そのへんとの兼ね合いが?
エリック 『1』と『2』はギャング団の“セインツ”が底辺からのし上がっていくという内容でした。3作目では頂点にいる状態からゲームが始まっていくんです。多くのゲームが底辺から物語を初めて、徐々に威力の大きな武器を使えるようになったりするわけですが、『セインツロウ ザ・サード』ではスーパースターになった状態から始める。武器も最初からいっぱいもった状態でゲームを始めるわけですが、そんな意味合いをタイトルに込めたくて、“セインツ三世”みたいな威風堂々とした気持ちを込めたくて、『セインツロウ ザ・サード』にしました。

――アクティビティ(いわゆるサブミッション)について聞かせてください。本作では、アクティビティはどんな感じに?
エリック 『セインツロウ』には強力なコミュニティーがありまして、ファンのフィードバックをそこで集めて、アクティビティ収録の際の参考にしました。“保険金詐欺”などがその代表例ですが、皆さんが気に入ってくれたものは収録して、さらなる高みに達するようにしています。たとえば、“保険金詐欺”は稼げるお金をさらに増やせるようにしたりとか……。さらに、『セインツロウ ザ・サード』ならではのクレイジーさに見合ったアクティビティも追加していますよ。“天才ゲンキ博士の超絶有頂天倫理委員会”というテレビ番組などがそれにあたりますね。アーノルド・シュワルツェネッガーが主演した映画『バトルランナー』を想像してもらえるとわかりやすいのですが、ぶっ飛んだテレビ番組が展開されるわけです。“エスコートミッション”では、虎を助手席に乗せてドライブをすることになります。虎はスピードが大好きで、早く走っているうちは何ともないのですが、スピードを落とすと途端に機嫌が悪くなる(笑)。プレイヤーは虎に食べられないように、なるべく早く移動しなければならないわけです。

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――よくそんなアイデアが思いつきますね(笑)。
エリック Volitionには才能溢れるスタッフが揃っていますからね。クレイジーになることに対しては、すごい才能をもった人材がたくさんいます(笑)。我々でブレインストーミングをして、その中で最高だと思ったアイデアが残る感じです。クレイジーとはいえ、『セインツロウ』流のスタイルは、一貫して貫かれてないといけないというのは当然あるのですが。

――では、あまりにもクレイジー過ぎて、ボツになった要素なんてあります?
エリック そういう意味でのボーダーラインはないですね。“入れるか入れないか”の基準になるとすれば、バカをするためだけにバカをするようなことはしたくない。しっかりとバランスを考えて、ミッションとして意味のあるものを収録しています。エキサイティングなミッションなんだけど、突拍子もないものですね。さらに言うならば、前提としてあるのはゲームプレイ。『セインツロウ ザ・サード』はあくまでゲームなので、ゲームプレイがここではいちばん。ちゃんとプレイして成り立たないアイデアであったならば、けっきょくはダメです。クレイジーな思いつきを入れ込んでみても、遊んで楽しくなかったら意味がないわけです。逆に言うと、いまのゲームはマジメ過ぎてナルシシズムに陥っているケースがあると思います。あまりリアルを欲して“本物感”を追求しても楽しくないケースがありますよね。けっきょくゲームは楽しさが第一なので……。

 ちなみに、アクティビティについて補足をすると、本作には『セインツロウ2』で好評だった“正義の汚水”は収録されていない。海外ユーザーのあいだでも“正義の汚水”は人気が高かったそうだが、バランスなどを考慮のうえ、今回はあえて外したのだとか。とはいえ、『セインツロウ ザ・サード』には、“正義の汚水”に負けないおバカなミッションが満載らしいので、そのへんは楽しみにしてもらってもいいだろう。

●サバイバルバトルの“千人切りモード”も収録

 さて、今回の体験会では“千人切りモード”が体験可能だった。こちらは、迫り来る敵を相手に戦うという、いわばサバイバルモード。近年は多くのゲームでこの手のサバイバルモードを収録しているが、そこは『セインツロウ ザ・サード』。ウェーブ(敵の波)ごとに武器やルールが異なったり、襲ってくる敵の種類がまるで変わったりと、あくまで『セインツロウ』流。たとえば、巨人になって敵を倒したかと思えば、つぎのウェーブでは戦車に乗って敵を殲滅したり、おつぎはチェーンソーでゾンビを刻んだり……と飽きさせない。ちなみに、体験プレイでは、ステージは“エンジェル・カジノ”、“ダイダロス”、“ゾンビアイランド”の3つが用意されており、キャラはひと癖もふた癖もある5人から選択可能だった。

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――なぜ、“千人切りモード”を入れることにしたのですか?
エリック ゲームファンの皆さんって、ちょっとしたひと口サイズのゲームって好きじゃないですか。オープンワールドタイプのゲームだと、どうしても時間を取られてしまうわけですが、“千人切りモード”があると、箸休めのような感覚で、気軽に楽しめる。気分転換に“千人切りモード”を遊んで、本編に戻る……ということもできるわけです。いろんなことがちょっとずつ楽しめるように入れています。群れをなして攻撃してくる敵を凌ぐ……というモードは、最近見かけるようになってきたゲームモードですが、“千人切りモード”は、そういったサバイバルモードに対する我々なりの表現というか、オマージュでもあります。

――“千人切りモード”は、ルールや敵など、いろいろなバリエーションがあって楽しいですね。
エリック そこもバランスですね。ゲームの構成+おバカなところ。「それ、ありえないだろう!?」みたいな。スナイパーライフルで狙って……というよりも、笑いながら楽しんでほしいですね。“千人切りモード”で象徴的なのは、最初のウェーブかもしれません。最初のウェーブには娼婦が敵として登場するのですが、Horde(群れ)を“千人切りモード(英語名:Whored)”とかけておりまして、Whoredは娼婦(Whore)からきているんですね。それで最初のウェーブは、襲ってくる娼婦の群れを大人のおもちゃ系の“怪しいバット”で倒すしかない!ということになりました。

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――そ、それはなんとも(笑)。ところで、ゲームの冒頭は、『スター・ウォーズ』を思わせるナレーションが流れていたのですが、映画に対するオマージュが込められているのですか?
エリック まさにその通りです。『セインツロウ ザ・サード』には、けっこうな数のオマージュやインスピレーションが盛り込まれています。映画に限らず、ポップカルチャーやプロレスなどもそうです。キャラクターの動きにも随所にプロレス技が取り込まれているんですよ。プロレスファンは、その動きをご覧になると、「ああ、あの技か!」と喜んでいただけるんじゃないかな。アクティビティの“天才ゲンキ博士の超絶有頂天倫理委員会”も、日本のバラエティー番組に刺激を受けて入れたものです。“Genki”という博士の名前は、スタッフのあいだで「日本語の名前を入れよう」という話になって、日本に滞在していたことのあるスタッフにつけてもらったんです。そのほか、日本のアニメやコミックには相当な影響を受けていますよ。日本のエンターテイメントに慣れ親しんでいるスタッフは多いです。

――最後に日本のファンに向けてメッセージをお願いします。
エリック 『セインツロウ ザ・サード』は、日本のカルチャーに大きなインスパイアを受けています。それを見て、日本のゲームファンが喜んでくれるといいなと思います。

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▲天才ゲンキ博士には鎧のコスチュームも用意されている。このへんにも日本に対するオマージュが。

 バーカー氏がインタビュー中によく口にしていて印象的だったのが、“バランス”という言葉と“ゲームとしておもしろいか”というコメント。おバカな要素がフィーチャーされがちな『セインツロウ』シリーズだが、しっかりとゲームとしてのおもしろさを追求したうえに、おバカ要素が計算され尽くした形で盛り込まれているのがわかる。バーカー氏いわく「ユーザーの皆さんに対しても、ひとつの限定した感情を味わってもらうよりは、もっと幅広く、喜怒哀楽を抱いてもらいたいです」とのこと。大人だからこそ楽しめる、おバカ要素が『セインツロウ ザ・サード』の魅力のようだ。

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