●弾幕シューティングとは異なる、戦略要素の強いおもしろさ
『レイディアントシルバーガン』は、多彩なパワーアップとパズル要素の強さが特徴のシューティングゲームである。本作は1998年にアーケードでリリースされ、同年に家庭用としてセガサターンに移植。当時一般的だった弾幕シューティングとは一線を画する、オリジナリティーの高いゲーム性で注目を集めた。
そのシューティングの名作が、新たにXbox LIVE アーケードで完全復活。ファンの期待を裏切らない移植度の高さが話題となっている。その独特の魅力を、ファミ通Xbox 360を中心にレビューや攻略記事を担当してきた古株ライター、石井ぜんじがインプレッションする。
『レイディアントシルバーガン』は、戦略的、パズル的要素の強いシューティングである。7種類の武器が最初から使えるのが特徴で、それぞれの性質を活かして使い分け、敵を倒していく。多彩な武器を駆使して攻撃するのは、それだけでも十分に楽しい。7種類の武器は直進する弾、誘導弾、敵弾を消す剣など、さまざまな性質を持っている。
武器の豊富さに対応し、敵はさまざまな方向から出現する。ぶつかってはいけない地形や敵が多く出現し、自由に動けるスペースは比較的少なくなっている。クリアーするには、敵の出現場所を予測し、正しいルートを通って敵を破壊していく必要がある。
このような戦略要素の強いシューティングは、1980年代の横スクロールシューティングゲームに多く見られたスタイルといえる。本作は横画面の縦スクロールという形式を取っているが、ゲーム性はかつての横スクロールシューティングゲームに非常に近い。実際にゲーム中でも『R-TYPE』へのオマージュととれるボスが出現しており、これらの名作シューティングゲームの影響を受けていることは確かだろう。
戦略的要素の強い本作と対照的なのが、いわゆる弾幕シューティングである。弾幕シューティングと呼ばれる作品は、一般的には縦画面の縦スクロールシューティングで、多量の弾をかいくぐる爽快感が魅力になっている。敵弾に対抗するため、こちらも多量の弾を撃ち出して敵を破壊する。
シューティングの歴史をひも解いてみると、1980年代には弾幕シューティングとともに、戦略的要素の強いシューティングも同じくらい存在していたことがわかる。しかし1990年代以降は、弾幕シューティングのほうが一般的になってきた。そうした流れの中で、シューティングファンに改めて戦略型のおもしろさを思い出させてくれたのが本作、『レイディアントシルバーガン』なのである。
本作は、弾の数はさほど多くないが、地形や敵がプレイヤーの進路を狭めている状況が多い。そのため武器を使い分け、適切に敵を破壊しないと逃げ場がなくなってしまう。また敵の攻撃もただ弾を出すだけなく、アイデアが優れていて感心する。そこにはボスの性質を見極めて、倒していく奥の深さがある。
いわゆる弾幕シューティングに比べ、本作はプレイスタイルがパターン化されやすいという特徴がある。そのため、弾避けの熱さや、爽快感ではやや劣るかもしれない。しかしこれはジャンルの違いであって、どちらが優れている、といったものではないだろう。本作には、パズル性、戦略性、敵のアイデアに対する驚きがある。これは弾幕シューティングにはあまり見られない魅力である。
●独自のおもしろさを生み出す、スコアとパワーアップが一体化したシステム
本作の戦略性をより深めているのが、その得点システムと、経験値(スコアー)によって武器がパワーアップしていくシステムである。本作では敵を倒した武器が強くなるので、すべての武器を強くしようと思ったら、まんべんなく使う必要がある。これはほかには例がないシステムで、本作の独自性がもっとも際立っているところといえる。
本作に登場する敵は、ほとんどが赤、青、黄といった色がつけられている。基本的には、同じ色の敵を連続して倒していけば、ボーナス点が加わり高いスコアが得られる。またそのほかにシークレットボーナスが存在する。それは赤→青→黄の順番に敵を倒すというものだ。こうすると10000点ボーナスが得られるので、その後は黄の敵を連続して倒せばさらにボーナスが続いていく。
敵の出現順番は、これらのボーナスを意識して配置されている。適当に敵を撃つのではなく、順番を考え、関係ない敵は逃がすことにより、高得点を得られるパターンを編み出すことができるのだ。
前述したように、本作は稼いだスコアが高いほど、武器が強くなっていく。つまり稼げば稼ぐほど耐久力の高い敵を速く倒すことができる。結果として稼ぎパターンを作れば作るほど、ゲームの難度は下がっていくのだ。
このシステムは、一般的なシューティングの得点稼ぎプレイと性質が異なる。たいていのシューティングでは、高得点を稼ぐのは難しいことだ。稼ごうとすれば、単にすべての面をクリアーするよりも、はるかに高いテクニックが必要となる。高得点を稼ぐプレイには、忍耐と苦労が伴うのだ。
それに比べて、本作は点を稼げば稼ぐほど、全ステージのクリアーが楽になっていく。点を稼ぐのは本来マニアの楽しみなのだが、本作では、稼ぐための攻略パターン作りが、爽快で確実なクリアーのためのパターンに直結している。ゆえに、稼ぎパターンのプレイは、全ステージクリアーを目指すプレイヤーにもお薦めできる遊び方となる。稼ぎパターンを構築するおもしろさが、より受け入れやすくなっているのだ。
筆者は、本作のこういうところがとても好きだ。本作の系譜のシューティングとして、同じXbox LIVE アーケードでリリースされている『斑鳩』がある。この作品も名作として多くのファンを得ているが、『斑鳩』はよりパズル要素を突き詰めたシューティングとなっている。それだけに、プレイヤーにより忍耐力と、ストイックさを求めるところがある。だが本作は、稼ぎプレイのパターンを作ると楽になるので、どこかプレイヤーをほっとさせるところがある。その点で本作は、戦略的シューティングの入門として、適した作品なのではないかと思う。
●Xbox LIVE アーケードで『レイディアントシルバ−ガン』の魅力を再発見する
今回移植された『レイイディアントシルバーガン』をプレイしてみると、やはり目に付くのはそのグラフィックの美しさである。グラフィックがHD画質化されているので、その点ではアーケード版、サターン版より強化されているといっていいだろう。それでいて、攻略法はそのまま通用するところがファンにはうれしいところだ。
また本作は、武器の種類の多さを考えるとジョイスティックより家庭用コントローラに向いているといえる。ゲーセンで遊んでいたころとは違い、じっくりとパターン作りができるのがよい。セガサターン版を手に入れられなかったアーケードのファンは、これを機にぜひ家庭で楽しんでもらいたいと思う。
キャラクター、ストーリー性が追加されたサターン版の内容は、本作ではストーリーモードとして収録。アーケード版はアーケードモードで、サターン版はストーリーモードで、それぞれ楽しむことができる。また『斑鳩』の得点システムで遊べる隠しモードがあることも興味深い。このモードは“斑鳩シューティングスタイルモード”と呼ばれ、『斑鳩』の実績をひとつ以上開放しているのが条件となっている。
そのほか、オンライン協力プレイや、オンラインランキングなど、考えうる限りの仕様が実装されている。『レイディアントシルバーガン』のファンなら、誰もが満足できる仕上がりになっているのではないだろうか。
戦略要素、パズル要素が高く、弾幕シューティングとは一線を画す本作。これまで弾幕シューティングしかプレイしたことのない人、またシューティングをあまりやったことのない人も、ぜひ本作を試してもらいたい。さまざまな可能性を持つ、シューティングゲームの奥深さを体験できるはずだ。
筆者紹介 石井ぜんじ
ファミ通Xbox 360誌でクロスレビュー、攻略を担当する古株ライター。ゲームの文章を書き始めてから20数年、飽きずに続けております。過去に『NINJA GAIDEN(ニンジャガイデン)』シリーズ攻略本、『シュタインズ・ゲート公式資料集』『科学アドベンチャーシリーズマニアックス』などに参加。これらからも、ファンが本当に喜んでくれる本作りを目指していきたいですね。
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