大手ソフトウェア会社の取り組み――震災復興支援技術特別セッション その2【CEDEC 2011】

ここでは、アマゾンとグーグルという2大IT企業の震災復興支援をお届けする。

●アマゾン――最後は“人”が重要

 2011年9月6日〜8日の3日間、神奈川県のパシフィコ横浜・国際会議センターにて、ゲーム開発者の技術交流などを目的としたCEDEC(コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス) 2011が開催されている。

 今回のCEDECでは、“震災復興支援技術特別セッション”と称して、3日間で5本のセッションが組まれており、言うまでもなく東日本大震災後を受けての、ゲーム業界の取り組みにアプローチする内容となっている。開催初日に行われた“「ゲームデザイン」技術の応用”が(⇒記事はこちら)、社会に寄与するための試論を披露する内容だったのに対し、2日目に行われた“大手ソフトウェア会社の貢献”は、アマゾンとグーグルという2大IT企業の震災時の取り組みを紹介するという内容となっている。

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▲アマゾンジャパン 渉外本部長の渡辺弘美氏。

 まず行われたのが、“アマゾンだからできること。震災復興支援活動を通じて”。登壇したのはアマゾンジャパン 渉外本部長の渡辺弘美氏と、アマゾン データサービスジャパン マーケティングマネージャーの小島英揮氏。アマゾンジャパンで実施した復興支援は“ほしい物リスト”。こちらは被災地の住民がほしいものをほしい数だけアマゾンに登録すると、全国のボランティアからの支援を受けられるというもの。震災からしばらくすると生活支援物資は提供されてきたが、一方で、個々の被災者の細やかなニーズに応え切るまでには至っていなかった。この“ほしい物リスト”は、被災地の個別のリクエストに対応し得るものだ。小口のニーズに応えるということで、当初自治体などに働きかけるも、懐疑的に見られていたという“ほしい物リスト”は、徐々に口コミで広がり始める。広がるきっかけとなったのはTwitterだ。Twitterによるあまりの反響ぶりに、トイレに行く間もないほど忙しくなったと、渡辺氏は活き活きと語る。草の根で広がった“ほしい物リスト”のいいところは、数量の設定ができるので、ほしい物をほしい數だけ入手できること。必要のなくなった支援物資際限なく届いて困るという状況はなくなるのだ。

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▲Twitterの口コミで広がった“ほしい物リスト”(左、中央)。被災地では、お風呂を作ることができた人も(右)。

 さらなる取り組みとして行ったのが、写真などで支援者からのフィードバックを紹介すること。これは支援する側と支援される側の信頼関係の構築に役立てるためだ。支援物資を手にうれしそうな表情をしている被災地の皆さんの写真を見たら、もちろん支援したほうもうれしくなるというものだろう。「さらなる支援を」との気持ちにもなるかもしれない。

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▲アマゾン データサービスジャパン マーケティングマネージャーの小島英揮氏。

 IT企業向けにクラウドコンピューティングのサービスなどを提供するアマゾン データサービスジャパンによる支援は、自社のクラウドサービスを活用して、震災後アクセス増などでサービスが継続できなくなったサイトへITリソースを支援すること。高い評価を得たのは、ITリソースの支援だけではなく、人的支援も行ったことだ。アマゾンの“中の人”とコミュニティー内の有志でボランティアの“タイガーチーム”を結成。支援を必要とするサイトへの呼びかけなどを行ったという。「デベロッパー、エンジニアの高い社会貢献意識には驚かされた」と小島氏。活動の結果、震災後約2ヵ月で、40を超えるサイトへの支援が実施されたそうだ。そこで認識したのは、支援すべきサイトと自助努力を促すサイトの区分けの難しさ。支援することが必ずしもそのサイトにとって正しいとは限らないわけで、「最後は“人”が重要」との小島氏の言葉は、震災支援の際のひとつの大きなテーマなのかもしれない。

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●グーグル――小さいことをコツコツと、そして計画ではなく適応

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▲グーグル シニアエンジニアリングマネージャーの賀沢秀人氏。

 一方、“Google クライシスレスポンス‐未曾有の事態にいかに対応したか‐”では、グーグル シニアエンジニアリングマネージャーの賀沢秀人氏が登壇。“パーソンファインダー(消息情報)”や“自動車通行実績情報マップ”、“東日本大震災 被災地生活支援サイト”などをいち早く展開したグーグルだが、賀沢氏が講演のテーマとして取り上げたのは、「なぜGoogleは動いたのか?」ではなくて、「なぜGoogleは動けたのか?」というもの。未曾有の危機は未曾有(かつてない)だけに対処は不可能。そこでなぜGoogleは「呆れるくらいぶっ飛ばせたか?」(賀沢氏)というと……。そこで賀沢氏が例として出したのが、“キマイラ”と“ライト兄弟”。頭がライオン、体がヤギ、尻尾がコブラというキマイラは、まさに見たこともない架空の怪物。つまり未曾有の存在ということで対処は不可能……かと思いきや、個々のパーツを取れば見たことのある存在なので、けっこう対処はできる。「小さいことからコツコツとやっていけばなんとかなるんです」と賀沢氏。一方、ご存じの通り、飛行機の発明者として知られるライト兄弟。ライト兄弟の発想は「飛行機は飛ぶもの」ではなく、「何かあったら制御すればいい」というもの。もともと飛行機は素直に飛ぶものだとは思っていなかったのだ。ここから導きだされる結論は“計画ではなく適応”。

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▲小さいことからコツコツとこなし、計画よりも適応。ゲーム開発にも当てはまりそうだ。

▲ちなみに、Googleで「だれかをたすける」と入力するとこの通りの結果に。困ったときのGoogle頼み。Googleの言うことに間違いはない。

 そしていま、グーグルではコツコツと震災活動を展開している。東日本ビジネスサイトを立ち上げたり、被災地のかつての風景を写真データとして集めたり、被災地のストリートビューを集めるという作業だ。「これが何を生むかはわかりません」と賀沢氏。とはいえ、行為がないところには何も生まれない。「緊急事態での備えは日常でもできることです。いまの延長で緊急時の対応ができる。グーグルの支援活動も日常業務をやっただけです」と賀沢氏。

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 ちなみに、賀沢氏は「いままでに一度もなかったことをあらかじめ経験できる」ものとして、ゲームの可能性を挙げてみせる。ゲームやエンターテイメントは災害対策になれるというのだ。MMORPGなどで災害のシミュレーションを行い得る可能性に言及して、賀沢氏は「ゲームで災害訓練を行う技術的な要素はある。これを何とか実現してほしい。これで救える命があるんです」と来場者(ゲームクリエイター)に熱く語った。「人は学ぶことで強くなれます」との賀沢氏には迫力があった。

 アマゾンとグーグル、2大IT企業の取り組みにゲーム業界も見習うべき点は多い。