3D普及の立役者となるか? 開発者が解説するPSP Engine&3D立体視【CEDEC 2011】

CEDEC 2011、2日目に行われた、ソニー・コンピュータエンタテインメント大戸友博によるセッション“PSP Engineの画像処理技術と3D立体視”の模様をリポートしよう。

●3D立体視ともっとも相性のいいコンテンツは……ゲームだ!

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 2011年9月6日〜8日の3日間、神奈川県のパシフィコ横浜・国際会議センターにて、ゲーム開発者の技術交流などを目的としたCEDEC(コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス) 2011が開催されている。
本稿では、2日目に行われたセッション“PSP Engineの画像処理技術と3D立体視”の模様をリポートしよう。講師として登壇したのは、ソニー・コンピューターエンタテインメント(以下、SCE) ソフトウェアソリューション開発部の大戸友博氏。大戸氏は、2001年にSCEに入社し、おもにゲーム機の半導体の開発を担当。2007年にバンダイナムコゲームスとの合弁会社celliusの立ち上げと同時に出向し、ソフトウェアエンジニアとして3D立体視機能の開発に従事。2009年にSCEに戻り、3D立体視の立ち上げ、現在は3D立体視用ライブラリなどの企画、開発を担当している。

 まず大戸氏は、講演の前提として、奥行き感からくるリアリティーと、ゲームならではのインタラクティブ性とが非常に親和性が高いこと、また3Dオブジェクトで構成されたゲームは、もともと奥行き情報を持っていることから3D立体視化が用意であること、さらにプレイステーション3では全モデルで立体視に対応していることなどを挙げ、3D立体視とゲームは、抜群に相性がいいことを説明した。

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●3D立体視をより手軽に――SCEが満を持して発売する新製品とは?

 そして、それほどゲームと相性のいい3Dなのだから、もっと多くの人に楽しんでもらえるように……ということで、2011年9月6日に発売日や詳細な仕様が発表されたばかりの新製品、3Dディスプレイ“CECH-ZED1J”についての解説が始まった。

 製品概要は【コチラ】で記事にしているので、詳しくはそちらをご覧いただきたい。24インチというコンパクトなサイズで、かつ4倍速フレームシーケンシャル方式を採用している高性能なディスプレイは、ほかにあまり例がないものだ。基本的には個人ユースを想定した設計だが、大戸氏によると、実際に3D立体視対応ゲームを開発している開発者からも、「3Dテレビは大型のものばかりで、開発現場で置き場所に困る」といった声が上がっているそうで、開発者にとっても利便性の高い製品になるだろう、とのことだった。

 ちなみに3D立体視表示方式には大きく分けてアクティブ方式、パッシブ方式の2種類があるが、3Dディスプレイ“CECH-ZED1J”で採用されている。これは、アクティブ方式の特徴である解像度の高さ、視野角の広さが、ゲームにマッチするからだという。

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 高品位な画像、サウンドなどがウリの3Dディスプレイ“CECH-ZED1J”だが、大きな特徴として、“SimulView(サイマルビュー)”という機能を搭載していることが挙げられる。これは、ふたりのプレイヤーが、同じモニター上で別々の映像を観ることができるという機能だ。

 3Dディスプレイは、ご存じの通り右目用と左目用の映像を高速で描画し、3Dメガネで正しくシャッターをかけることで、右目と左目に別々の映像を映し、その視差によって立体視を実現している。SimulViewは、この“ふたつの映像を高速で描き換える”機能を応用したもので、右目用画像と左目用画像を描画する代わりに、1プレイヤー用画像と2プレイヤー用画像を描画し、シャッターを通すことで、1プレイヤーと2プレイヤーに画像を振り分けるというユニークな仕組みだ。画面分割によるふたり対戦には、ひとり分の画面が狭くなったり、比率が変わってしまったり、といった欠点があったが、SimulViewならふたりとも1画面を丸ごと使って快適にプレイすることができる。さらに、相手の画面は見えないので、たとえば麻雀など、相手の状態が見えてしまうと対戦が成立しなくなるようなタイプのゲームでも、簡単に対戦プレイが楽しめるようになるわけだ。

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 ただしSimulViewでは3Dメガネをかけることが必須となるため、3Dメガネによるわずらわしさや、画面が若干暗く見えることなどのマイナス点は生じる。さらに、高速描画の機能をふたり分の画面描画に割いているため、当然3D立体視表示もできなくなってしまう。 ちなみにSCEでは、同様の手法で、最大4人までのSimulViewを研究中だとのこと。4人分の3Dメガネを用意するとなると、敷居は高くなってしまう感は否めないが、ひとつのモニターで、4人が自分専用の映像を観てプレイできるとなると、いままでにないゲームのアイデアが無数に生まれてきそうではある。

 なおSimulViewをソフト側が利用する場合、プログラムで対応する必要があるが、SCEが提供するSDK(ソフトウェア開発キット)のライブラリの次回バージョンとしてリリースされるとのことだった。

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▲CEDEC会場には、デモ機が展示されており、自由に視聴することができた。体験してみた限りでは、飛び出し感、クロストークの少なさなど、3D立体視の質はかなりのものだ。

●こんな機能も!? PSP Engineの実力とは?

 続いては、このセッションのもうひとつのテーマである、“PSP Engine”についての講義だ。最初に、PSP Engineの概要についての解説がなされた。“PSP Engine”は、PSPのゲームをプレイステーション3で実行する際に、PSPソフトのゲームプログラムとプレイステーション3のOSとの間の“ブリッジ”となるもの。さらに、PSPの解像度のままレンダリングしたのちに画像処理をする“アップコンバート”と異なり、初めからPSPの4倍の高解像度(1920×1088)にレンダリングする“アップレンダリング”の機能を備えているのが大きな特徴だ。

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 このアップレンダリング時の問題点として、テクスチャはそのまま引き延ばされるため、劣化してしまうという問題がある。もっとも直接的な解決方法はテクスチャを高解像度のものに差し替えることだが、それに対応するべく、PSP Engineでは最大テクスチャーサイズがPSPの4倍に拡張されており、あわせてテクスチャを置くためのメモリも拡張されているそうだ。

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▲UIの表示時などに発生しがちなテクスチャの“ゴミ”を除くためのテクニックなども解説されていた。

 “アップレンダリング”については、週刊ファミ通などのメディアでも大きく取り上げられてきたためご存じの方も多いだろうが、今回のセッションでは、PSP Engineに備わっている“被写界深度フィルタ”、“ライトブルームフィルタ”についても解説がなされた。これらの機能は、プレイステーション3のリッチなグラフィック機能を活かして追加されたもので、これらを利用することにより、遠景をぼやけさせるなどの処理を手軽に行うことができるとのこと。

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 3D立体視への対応についても、PSPのゲームプログラムにいくつかのパラメータを設定するだけで、PSP Engineが解釈して視差のある画像を生成する仕組みになっている。また、ムービーシーンについては、ブラビアにも採用されているソニーの技術“2D3D立体視画像変換”を利用して処理する。この技術は、ゲーム中のムービーシーンを自動的に検出し、自動的に適用させることが可能になっているとのこと。またこの技術は、プレイステーション3開発者向けのライブラリとしても提供されているそうで、プレイステーション3用の3D立体視対応ソフトの製作にも活用されているそうだ。

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▲PSPとPSP Engineの得手不得手については、踏み込んだ部分まで解説されていた。

 以上のように、セッション前半では”3D立体視を楽しむための環境”=ハード面の解説。セッション後半では“3D立体視対応ゲームの開発”=ソフト面の解説、と3D立体視の両面についてまとめる内容となった。正直なところ、ソフト、ハードいずれも普及途上でブレイクしきれていない感のある3D立体視だが、大戸氏が語る通り、ゲームと3D立体視の相性が抜群であることは、一度3D立体視対応ゲームをプレイしたことがある方なら誰でもうなずけるはず。CEDECに集ったゲーム開発者たちが、今後ソフト面を牽引することで、3D立体視の世界が広がっていくことを期待したい。