いよいよ2026年6月3日にスクウェア・エニックスから発売されるNintendo Switch 2版、Xbox Series X|S版、Windows版『ファイナルファンタジーVII リバース』(以下、『FFVII リバース』)。 “FFVII リメイク シリーズ”は完結に向けてマルチプラットフォームへと展開され、今回Switch 2版、Xbox Series X|S版、Windows版が発売されることで、最終作への下地も整うことになる。
本稿では最終章へと続く重要な物語が描かれる『FFVII リバース』の移植について、そのボリュームやクオリティーの高さゆえの苦労や、昨今のマルチプラットフォーム展開への思い、そして最終作への意気込みなどを浜口直樹ディレクターに聞いた。
浜口直樹(ハマグチナオキ)
「ファイナルファンタジーVII リメイク シリーズ」ディレクター
2003年にスクウェア・エニックスに入社し『FFXII』の制作にプログラマーとして参加する。その後、『FFXIII』シリーズ、スマホアプリ『メビウス FF』など、数々の制作に携わる。
『ファイナルファンタジーVII リメイク』では、共同ディレクターとしてチームを牽引。
「どこを削るか」ではなく、「どう成立させるか」を最初から考えなければならない時代
――前作『FFVII リメイク インターグレード』はPS5向けにリリースされたタイトルではあるものの、メインの部分はPS4版『FFVII リメイク』をベースにした作品でした。一方で『FFVII リバース』はPS5版ベースで開発されましたが、移植するにあたってのポイントや難度に違いはありましたか?
浜口
『FFVII リバース』は最初からPS5世代向けのタイトルとして設計していて、広大なオープンワールドやシームレスな探索、常時ストリーミングを前提にゲーム全体を組み立てています。そのため、単純に「スペックを落として移植する」という発想では成立しませんでした。
理由としてもっとも大きかったのは、一画面の中で同時に扱う情報量です。『FFVII リメイク』は比較的リニアな構造だったので、局所的な最適化でも対応できましたが、『FFVII リバース』ではプレイヤーの行動や視線によって負荷そのものが大きく変わります。ですので今回は、「何を削るか」ではなく、「どう成立させるか」という考えかたで向き合いました。そこで背景モデルのLOD(※)やストリーミング、描画負荷の分散まで含めて、オープンワールド全体の構造そのものを見直しています。これは、よく言われるような“マジカルポート”(魔法のように一瞬で終わる移植)ではありません(笑)。問題をひとつずつ洗い出して、地道に潰していく。その積み重ねでしか成立しない開発でした。
※LOD……Level of Detailの略。3Dモデルやオブジェクトの詳細度を調整する手法で、カメラからの距離に応じモデルのポリゴン数を制御することで、シーンの計算負荷を軽減する。 ただ、その経験を通して「この規模のゲーム体験でも、環境を問わず成立させられる」という手応えはかなり得られました。いまは、“どのハードがいちばん高性能か”だけでゲーム体験を語る時代ではなく、プレイヤーがそれぞれの環境でどこまで同じ熱量で世界に没入できるかが重要になってきていると思います。

――スクウェア・エニックスはマルチプラットフォーム戦略に転換しました。『FFVII リバース』のような大規模RPGをSwitch 2やポータブルゲーミングPCなど、携帯できるデバイスでもプレイできる昨今、ゲーム開発の視点で変化した部分はありますか?
浜口
昔は、据え置き機と携帯機で、“ゲーム体験は別物”という前提がありました。でも、いまはそこが完全に変わり始めていると思います。
実際、Switch 2のような環境で『FFVII リバース』クラスの大規模RPGが成立する時代になって、“携帯機だからここまで”という考えかた自体が、かなり古くなってきていると私は感じています。
ゲームファンは、「これは携帯機版だから」と割り切って遊んでいるわけではありません。どの環境でも、ちゃんと同じ熱量で世界に没入したいと思っている。だから作り手側も、「どこを削るか」ではなく、「どう成立させるか」を最初から考えなければならない時代に入っていると思います。マルチプラットフォーム展開は単なる販路拡大ではありません。“ゲーム体験そのものの考えかたが変わってきている”ことに、業界全体が適応し始めている。その表れだと感じています。

――『FFVII リメイク』、『FFVII リバース』の移植作業を経て、今後のゲーム開発の現場におけるフローの変化などの影響はありますか?
浜口
正直、開発フローそのものはかなり変わってきています。以前は「まずひとつのハードで完成させて、その後に移植を考える」という流れが一般的でした。スクウェア・エニックスも比較的その流れの中にいることが多かったと思います。
ですが、今回『FFVII リメイク』、『FFVII リバース』を通して強く感じたのは、いまの時代は、その考えかたではもう成立しにくくなってきているということです。描画、ストリーミング、メモリ設計、アセット構成まで含めて、“最初から複数環境を前提に設計する”必要がある。つまり、「移植チームが後でがんばる」という時代ではなくなってきているのです。
マルチプラットフォームにすると、「特定ハード向けの尖ったゲームデザインができなくなるのでは」という声もよく見かけます。ただ、少なくとも私はその制約を“後から対応する問題”として扱ってはいません。『FFVII リメイク』、『FFVII リバース』の移植を経て、最終作は最初から設計に織り込んでいるので、その点は心配していないとお伝えしていきたいです。

マルチプラットフォームに方針転換したことによる変化
――その最終章で気になるのは、機種ごとの発売時期ですがマルチプラットフォームで展開することで、このあたりにも変化はありますか?
浜口
発売タイミングについては、現時点で具体的なことはまだお伝えできません。ただ、今回マルチプラットフォーム展開を進める中で強く感じたのは、「ユーザーは同じタイミングで盛り上がりたい」ということです。3作目をマルチプラットフォームでどう展開していくことが、ファンの皆さんにとっても、ビジネスとしてもベストなのか。そこについては、かなり真剣に向き合っています。いまのゲームファンは、開発側が思っている以上に、“同じ時間を共有したい”と思っている。その感覚は、今回かなり強く実感しました。だからこそ、私たちが最終的に出す答えについても、期待に応える形で提示します。

――Switch 2版の『FFVII リバース』の体験版はPS5版とは異なり(※PS5版の体験版はゲーム冒頭のニブルヘイム編とワールドマップの探索要素が体験できるジュノンエリア編)、ゲーム冒頭からChapter 2までとなっています。人によっては10時間近く遊べてしまうと思いますが、その仕様にした意図は?
浜口
今回の体験版は、「触りだけを遊んでもらう」という発想では作っていません。『FFVII リバース』は、実際に世界へ出て、寄り道し始めた瞬間から本質が見えてくるゲームなのです。ですから今回は、「気づいたら何時間も遊んでいた」という状態になってもらいたくて、あえて開放しました。
最近は、動画を見ればゲームの内容自体はすぐわかります。でも、「気づいたら時間を忘れて寄り道していた」という感覚だけは、自分で遊ばないと絶対に伝わらない。
あと、クイーンズ・ブラッド(カードを使ったミニゲーム)はぜひ触ってほしいですね(笑)。本編そっちのけでハマる人が出るくらい、このゲームの“寄り道の楽しさ”を象徴しているコンテンツだと思っています。


――Switch 2ならではのJoy-Conやマウス操作への対応は考えましたか?
浜口
このシリーズ全体において、私たちがいちばん強く意識しているのは、「どのハードで遊んでも、ゲーム体験そのものは変えない」ということです。なので、Switch 2独自機能を前提にした“別の遊び”を作る方向には、あえて振っていません。
一方で、Joy-Conやマウス操作の可能性自体は、もちろん開発チーム内でも話題にはなりました。とくにクイーンズ・ブラッドみたいなコンテンツは、「絶対相性がいいよね」という話もかなり出ました(笑)。ただ、私たちは「Switch 2だから特別な遊びを入れる」というより、“どの環境でも同じ熱量で没入できること”を優先しています。最近は、“ハードごとの差別化”を強く打ち出すより、“どこで遊んでも自然に同じ世界へ入れること”のほうが、むしろ大事になってきていると感じています。

――プラットフォームごとにユーザーのタイプが違う傾向にあると思いますが(PCはコアなユーザーが多く年齢層は高め、一方でSwitchはライトなユーザーが多く年齢層も低い傾向があると思います)、Switch 2版、Xbox Series X|S版『FFVII リメイク』発売後、既発のPS5やPCユーザーとは異なるフィードバックなどはありましたか?
浜口
プラットフォームごとのユーザー層については、かなり違いは感じています。ただ、正直に言えば、開発側が思っている以上に、いまのゲームファンはもう“プラットフォームで分かれてはいない”とも感じました。
Switch 2版では、「『FFVII』を初めて遊んだ」という声がすごく多かったですし、Xbox版では、「ようやく自分の環境に来てくれた」という反応も強かった。「Switchユーザーだからライト」、「PCユーザーだからコア」みたいな見方自体が、もう少し古くなってきているのかもしれません。

3作目は絶対に中途半端な形では終わらせない
――最後に、3作目の開発も進んでいると思いますが、『FFVII リバース』をこれからプレイする人、もうクリアーした人へ向けてメッセージをお願いします。
浜口
いまは“どのハードで出るか”より、“どれだけ同じ熱量で遊べるか”の方が、ずっと重要な時代になってきています。三部作についてもそこを重視しています。「AAAゲームは、一部の限られた環境だけのもの」という時代から、かなり変わり始めています。
だからこそ、3作目は絶対に中途半端な形では終わらせません。「“FFVII リメイクシリーズ”を、最後までやり切った」と、私自身が胸を張って言えるところまで持っていく。その決意で、いま開発しています。ご期待ください!!
