オンラインインタビューに応えてくれたのは、オープンワールドRPG『フォールアウト3』および『フォールアウト4』のリードデザイナー兼ライターでありドラマ版の共同プロデューサーでもあるエミル・パグリアルーロ氏と、シリーズでプロデューサーを務めてきたアンジェラ・ブラウダー氏。
普段の新作についてのインタビューではなかなか聞けない昔の開発の様子や、いまだから語れる失敗談、開発チームに受け継がれているこだわりなどのディープな内容を聞いてきたぞ。過去の取材のレアな写真や昔の素材も引っ張り出してきたので、じっくり読んで欲しい。
エミル・パグリアルーロ
Bethesda Game Studios 『Fallout 3』『Fallout 4』リードデザイナー兼ライター / 『フォールアウト』ドラマシリーズ共同プロデューサー。
アンジェラ・ブラウダー
Bethesda Game Studios『Fallout 3』アソシエイトプロデューサー / 『Fallout 4』プロデューサー / 『Fallout 76』シニアプロデューサー兼スタジオ&プロダクションディレクター
エミル・パグリアルーロ(リードデザイナー/ライター)
それで『フォールアウト3』の始まりですが……トッドがある日「フォールアウトの権利が取れそうなんだけど、これやるべきだと思う? 僕らがやりたいものになるかな?」と聞いてきたんです。「わぁ、もちろん!」という感じでした。
(※『フォールアウト』シリーズディレクターであり、『エルダースクロールズ』シリーズなども手掛けるBethesda Game Studiosを代表するクリエイター)
(※※『フォールアウト3』『フォールアウト4』リードアーティスト。『フォールアウト76』『Starfield』ではアートディレクター)
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そうやって始まり、イストヴァンが『フォールアウト』1と2のアート部分を精査して、どうやったら自分たちのものに変換できるかを研究していきました。一方で自分は両者をプレイし直して、キャラクターたちの感じを掴み直しつつ、どうやったら(旧作とのスタイルの)ギャップを真に埋めていけるか考えていったんです。
(※『The Terminator: Future Shock』(1995)や『SkyNET』(1996)などがあり、若き日のトッド・ハワード氏も参加している)
『フォールアウト3』のまとまった脚本なんてなかった
つまり、全部書き出してまとめたりしてなかったんです。デザイナーがテキストの執筆まで行うので、私たちの手元にあったのは(脚本という形で整理されていない)開発用エディター内に断片的に記録されているセリフだけでした。どうやるかは担当者によって違って、Wordドキュメントに書き出す人もいたけど、大半はエディターで直書きしてました。
でもそうすることで、ゲームプレイとストーリーを結婚させて結びつけることができます。私たちのゲームにはカットシーンがありませんから、すべてのストーリーは一人称視点なり三人称視点のゲームプレイを通じて語られる。
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これはストーリーを重視してないということではありません。実際ものすごく重視してますし、自分たちの物語を愛してます。でもインタラクティブな表現媒体として、プレイヤーはコントローラーなりマウスを手にストーリーをただ見るのではなく、ゲームプレイを通じて“体験”するわけですよね。デザイナーがライターを兼ねていることで、そこに向けて作っていけるというわけです。
――あなた自身が幅広い部分の作業をやられているわけですが、開発の中で好きな作業はなんですか? ライティングでしょうか、世界の構築でしょうか、コンセプト作りでしょうか、それともシステムの設計でしょうか?
世界を設計するのが好きですし、キャラクターとか場所の名前を考えるのも好きです。そしてシステムの設計をするのも。射撃システムのV.A.T.S.の最初のデザインドキュメント(仕様設計書)を書いた時の事なんかもまだ覚えてます。
解錠ミニゲームとかハッキングミニゲームの初期のコンセプト作成とかもやりました。MSペイントでコンピュータースクリーンとか錠と手の絵を描いてね。描いてみるのは自分の思考作業のやり方なんですよ。
そしてもちろんストーリーの執筆ですよね。メインストーリーを書いたり、リーアム・ニーソンが演じる『フォールアウト3』の父親のセリフを書いたり。そういったことを全部できるのがここでの自分の仕事の一番好きな部分なんです。
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ゲームデザイナーとしてのこだわり、ニューベガスの印象
私たちのゲームは一人称視点でも三人称視点でも遊べますが、早くから一人称視点でそのキャラクターになりきるというのが好きでした。だからLooking Glassで働いている時も『Thief』とか『System Shock』みたいなイマーシブシムが好きでしたし、ベセスダに来てからも「少しこれを取り入れられるかも」と感じていました。ちょっとステルスっぽい要素入れられるかなとか。
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そういったことを通じてとにかく、プレイヤーが本当にその世界にいると感じられるような没入感を与えたいんです。そういうやり方を好んでいます。
(※Looking Glass Studiosはイマーシブシム系ゲームの代表的開発スタジオで、エミル・パグリアルーロ氏は2012年に『ディスオナード』のハーヴェイ・スミス氏らと同スタジオを振り返るトークパネルに出演している。詳細は当時の記事を参照のこと)
それでニューベガスですけども、はい、結構違います。あまり構造化されてないし、作品のトーンもかなり違いますよね。私たちのゲームはもうちょっとダークだったりシリアス寄りのトーンですけど、それは意図的なものです。あれぐらいの感じが好きなんです。
それに対してニューベガスはもう少し『フォールアウト2』っぽいトーンがあります。ちょっと下世話で楽しいというような。わかるでしょう? そしてニューベガスにはそれが合っていた。これってやっぱり、それぞれのスタジオが持つスタイルの違いが活きているということだと思うんですよね。そこが楽しいんですよ。どちらかを選ぶっていうんじゃなく、どっちも楽しさがある。
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『フォールアウト』のサウンドができるまで
これもちょっとLooking Glassの流れがあって面白いんですよ。Looking Glassにはエリック・ブロシウスがいて、エリックも全部やってました。それからあそこにはマークもいて、彼ら(Looking Glass)がもっと人を雇うまでしばらくそんな感じでした。
マークは外に出て環境音とかもよく録ってましたね。私が収集している剣をオフィスに持ってきて、彼が鞘から剣を抜いたり納めたりする音を録ったこともあります。ヌカランチャーを使うと「チーン」って音が鳴るけど、あれは彼がちっちゃなベルをいじくり回して作ったものです。いろんな音で遊びながらあっという間に効果音を作り出すさまは魔術師を見ているようでした。
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それと手がめちゃくちゃ早いんですよ。「うーん、ちょっと違うかな」っていう時も、1時間もすると完全に新しい曲が届いているような、そんな具合に進んでいきましたね。
エラ・フィッツジェラルドとかインク・スポッツとか……インク・スポッツの『I Don't Want To Set The World On Fire』はフォールアウトのメインテーマのようなもので、『フォールアウト3』のローンチパーティーでも演奏してもらいました(※)。ともかくあの雰囲気が私たちの舞台の雰囲気をカチッと決めてくれて、そこから素晴らしい音楽を選んでいったという感じです。
(※オリジナルのバンドは1954年に解散しているため、恐らく派生バンドか一種のトリビュートバンド)
『フォールアウト』のダークなユーモア観について
『フォールアウト3』のリードデザイナーをやることになって、(研究のために)レンタルビデオ屋に行って片っ端からポストアポカリプス映画を借りようとしたらレジの女性に「アンタこれ全部観るなら太陽灯(※)がいるわよ」って言われたんですけど、ぶっ通しで没入したら本当に憂鬱だったんですよ。(※北欧で季節性うつ病の解消などに使われる)
『ザ・デイ・アフター』とか『テスタメント』とか(※)、本当に憂鬱です。それから広島についての素晴らしい小説を読み直したりしました。どれも重々しくて、ユーモアのセンスがどこかになければただ涙を流すしかない。
(※ともに1983年公開の映画。全面核戦争の恐怖を描いたテレビ映画『ザ・デイ・アフター』は非常に高い視聴率を記録し、レーガン政権の対外政策にも影響を与えたとされる)
『フォールアウト3』にも同じような血にまみれたクレイジーなMr.Handy(※)がいた。そういったことがこの非常にダークで混乱した世界をうまく表せていると思うんです。ユーモアがなければ正気を失って誰も生き延びられないような世界なんだと。(※捻挫の治療として足を切断したアンディ?)
それでドラマ版ですが、脚本家たちが素晴らしかったので、やったのは「あ、こっちのダークユーモアが好きですね」というような感じにちょっと方向性を修正するぐらいでした。脚本を読んだり各話をひと足先に観たりしましたけど、すごくいいので実際に調整しなきゃいけないことはほとんどありませんでしたね。
――フランチャイズによっては“ロアキーパー”と呼ばれる人たちがいますね。そのゲームのロア(世界設定や作品内の歴史)を管理していて、村の長老みたいに教えてくれるスタッフのことです。フォールアウトシリーズの場合ではどうでしょうか?
ときどき夜遅くに「明日これを撮影するんですけど、これ整合性はとれてますかね?」とか問い合わせが来たりしたんですよ。たまにギリギリになって知らされる内容もあったりして「あーそれはマズいマズい」となったり。
私たちにとってもっとも重要なことは、ロアとすでに存在するカノンを尊重することです。設定の後付けの変更とか、すでに起こったとしていることを変えるのは好みません。一方で、ロアに何かを追加するというやり方は取りますね。
『フォールアウト76』は前日譚という形なので、この部分でのチャレンジがありました。核戦争後が起きた比較的すぐ後の時代を描くものなので、ロアを拡張する必要がありました。「よし、これが起こったとは言ってないけど、それが起こらなかったのではなく、まだ言ってないだけだね」とか考えていきます。
たとえばエンクレイヴのパワーアーマーを出したいなら“軍のプロトタイプ”という形じゃないと駄目だね、とか。それでも注意してやっていかないといけません。フォールアウトファンは非常に優秀でなんでも細かい所を見つけますから。
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だからそれが本当の歴史、場所のように、物事が本当に起こったように、ファンたちが私たちに望むような形で沿っていかないといけないんです。
――ロアの管理のために社内用のWikiとかあるんでしょうか?
それに対して内部的なデータベースは、まだ一般に明かしていなかったりもする細かいディテールまであります。これはこうなんだと私たちが内部的に議論して決めてあるけど、まだ言っていないようなことがね。
『フォールアウト』とは何か、エルダースクロールズとの違いは
私たちのフォールアウト作品は“アメリカーナ”(アメリカ流の精神や文化)が非常に重要なテーマであり、だからアメリカの中のさまざまな場所を舞台としています。それで、候補となる場所を見て考えるわけです。第二次世界大戦後に時間軸が分岐して、何がうまくいったのか、何がとても間違ってしまったのか。
これは楽しい作業なんですよ。たとえばフォールアウト3でワシントンDCを選んだとき、あそこを舞台にした大作ゲームはあまりありませんでした。『ディビジョン2』とかのずっと前ですからね。
でも現地にある記念碑とか史跡とかを見ていくと、「これはおもしろいことをやれる場所があっちにもこっちにもあるぞ」となる。ワシントン記念塔は巨大なラジオ塔だなとか。メインクエストをどうしようか考えていたとき、ワシントンDCの空撮地図を眺めていて、ジェファーソン記念館とその前のタイダルベイスンのあたりで目が止まって「これだ! 全部水で繋がるんだ」と閃いたのをいまでも覚えています。
そういった感じに、まずはその土地を見ていくんです。そこでどんなストーリーを語りたいか。希望についての、サバイバルについての、そして死に物狂いの物語です。さらに“戦前”はその場所はどうだったのか?
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これは楽しい戦前のバックストーリーですけども、それさえも独自の命を持つようになりました。私たちはつまり、フォールアウト世界がどんなだったかという文化をゆっくりと形作っていくんです。そしてそういった要素の多くは場所と結びついています。
私たちには「フォールアウトではなんでもできる」というモットーがあります。スーパーヒーロークエストも、ヴァンパイアものも、ラヴクラフト風ホラーもありました。中国の原子力潜水艦の艦長(4のザオ艦長)もね。クレイジーになりすぎなければなんでもできるし、たまにはクレイジーになりすぎてもいいぐらいです。
『ゲーム・オブ・スローンズ』との類似点は意図したものではありませんでしたが、ファンタジーとしての雰囲気は実際スカイリムと近いところがありますよね。「彼らが僕らのドラゴンをコピーしたんだ、彼らのドラゴンをコピーしたんじゃないぞ」と言ってましたが。(※冗談。両者はともに2011年放送/発売)
私たちにとってエルダースクロールズは、独自の勢力たちを軸にしたストーリーを語る素晴らしい時間です。戦士のギルドはどうなっていくのか? 私がエルダースクロールズでやっていることなら、闇の一党とはなんだろうか? 盗賊ギルドはどうだろう? そしてそれらが世界にどう関わってくるのか? エルダースクロールズでのファンタジーとはそういうものになっています。
『フォールアウト4』でミスったと思っていること
でもですね、開発初期に犯したミスがひとつあると思っていて、自由博物館に行くとそこに生存者がいて、彼らが「サンクチュアリに連れてってよ」という感じなのでサンクチュアリに行ってサンクチュアリを建設しますよね。問題はそれがメインクエストではないということです。
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話を戻すと、マップを見て「なんでこんな上から始まるんだ?」と感じたんだと思いますが、それは本当に地理的な事情とボストンにどう到達してほしいかというのが理由です。そして地形を見てそこから“輝きの海”とかのあたりがキツそうなのとかを察したりしながら――実際難しいエリアなわけですが――通過するといったような体験をして欲しいとか、さまざまな意図の結果ですね。
“子から親への物語”と、“親から子への物語”
そして当時、ゲームで臨場感のある表現が可能になってきて、ストーリーで感情の深い部分からつき動かせるようなことが可能になってきていました。トレンドとは呼びたくないですが、そういった技術革新による新たな機会を見出していたのも事実です。
楽しいビデオゲームを作るというだけでなく、いい本やドラマや映画ストーリーが可能なようなレベルで人を動かす物語を語りたかったんです。フィクションの世界には夫と妻とかパートナー関係とかのロマンティックな関係性の物語はたくさんあるので、ロマンティックではない意味のある関係性の物語にフォーカスしたかったんです。
それでも『Starfield』では“特徴”を選ぶという形で親の要素を入れましたが、それは“仕事中にでてきてちょっとうざい”といったような面白さのためのものですね。そのころには単に楽しむための要素になったというわけです。
――その点、ドラマ版はまたルーシーが子供として親を追う話になっていたり、グールも親子関係が関わっていたりするのは面白いですね。
彼がどう思っているかはともかく、ルーシーにとってちょっと機能不全な父親的存在っぽくなっていくわけですよね。実際の父親が嫌なヤツというのが判明するなかで。それが物語を突き動かす原動力になっているのが面白い。
でもそれだけではなく他の関係性にも焦点があてられていて、Vaultに残してきた友人たちとか、監督官と彼女の下で働く人々の関係とか、弟のノームとの関係がある。ポストアポカリプス(黙示録的)な世界のなかであらゆる種類の人間関係が見られます。とんでもなくひどい世界のなかでも、さまざまな愛の形がどう続いていくのかを。
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業界のトレンドに対する考え
これらは4つの非常に異なるRPGです(※)。そしてそれらすべてに居場所があると思います。そういったなかで『The Elder Scrolls IV: Oblivion Remastered』が出たのは非常に興味深かったです。私たちはあるスタイルのゲームを作ってきましたから。(※一般的には『Arc Raiders』はRPGとは捉えられないが、ここでは恐らくRPG的な要素を指している)
業界がある方向に進み始めると、開発者がトレンドに従うのを目にしますよね。過去6年ぐらいにどれだけソウルズライクなゲームをプレイできたか。でもそうするとほかのタイプのゲームが恋しくなってくるものですよね。そういった意味で、すべてのジャンルに居場所があると思います。
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『Starfield』を見てみると、戦闘とかコアのRPG要素は好まれましたが、エルダースクロールズにあった探索を恋しがっていました。私たちのゲームでのその種の探索要素を持っているゲームはそう多くありません。
私は私たちのゲームを「AAA(超大作)のシミュレーションの最後の砦」と形容することがあります。単なるゲームではなく、人々が彼らのスケジュールで動いて、仕事に行ったり食事をしたり犯罪を犯したりといった、ライフシムゲームのようなシミュレーションをベースとしているからです。そういった世界でとても長い時間過ごすことができる。
そういうゲームを作るところは今や多くありません。10年前と比べると減っています。だからこそ、私たちが作るゲームは一定のレベルで人々の心に響くと思います。まぁ、私たちは他の人がすでにやっているようなことはやりたくないんです。
だから『Starfield』は“宇宙船を作っていろんなところを飛び回って行ける、スキルやセリフがあるRPG”というものになっています。AAA、特にコンソール(家庭用ゲーム機)ではこういったものはあまりありません。いつもちょっと違うものをやりたいという欲求も満たしながらそれをやれる、いいポジションを掴めていると思います。
――『Starfield』ではシューティング体験がすごくよくなって、スムーズかつ正確に撃てます。高度な技術を持つスペースSFの設定に合っています。一方で『フォールアウト』は崩壊した世界のジャンクな銃が特徴であり、なので改造やV.A.T.S.が必要なのは自然です。『フォールアウト』が『Starfield』の銃のシステムを取り入れることは可能だと思いますか?
私たちが『フォールアウト3』でV.A.T.S.を考えだした大きな理由は、ターミネーターのゲームについて先ほど触れましたけども、それ以降のベセスダは剣と弓のゲームが主で銃の戦闘システムを持っていなかった。イチから作らなければいけなかったので、そこで用意したのがV.A.T.S.だったというわけです。フォールアウト3にはアイアンサイト(いわゆるADS。照準の覗き込み動作)すらないですからね。
『フォールアウト4』では確実にシューティング要素そのものを改善しました。『コール オブ デューティ』レベルとまでは言いませんが、シューターとしてプレイすることができます。
そして『Starfield』ではV.A.T.S.がないので、本当に向上させないといけないとわかっていました。そういった経緯を踏まえて、『Starfield』の戦闘要素を取り込んだ『フォールアウト』を作るとしたら、それは素晴らしいものになると思います。
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好きなキャラはニック、場所はメガトン
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そしてボストン出身なので、フェンウェイ・パークにあるダイアモンドシティは特別です。フェンウェイ・パークそのものではありませんけども。ダウンタウンにフリーダムトレイルがあるのとかも好きです。でもやっぱりメガトンですかね。フォールアウトらしいので。
――日本ではメガトンまわりのクエストには制限があったので、海外版を入手したりしたのもいい思い出です。
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なのですべての日本のファンの皆さんに感謝したいですね。このシリーズをサポートしてくれて、ここまで連れてきてくれて本当にありがとうございます。店に入ったらVault Boyのぬいぐるみが売られてるとか、自分が関わったものがドラマに出ているのを見るなんて、完全にまったく思ってもみませんでした。奇妙な気分です。私はあまり深く考えないようにしています。
ありがたいなぁと思っているのは、私は別に権利を持っていないし、ベセスダの従業員として作ってきましたが、それがひとを楽しませているということです。今やAmazonがドラマを作っていて、そこに自分が貢献できていて、それが将来的にも楽しまれていく。私抜きでも続いていくだろうものの一部として重要な局面を担えたことは、本当にかけがえのないことです。
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アンジェラ・ブラウダー(プロデューサー)
シーズン1でそれを学んだので、今回はシーズン2に備えた準備もできました。『フォールアウトシェルター』をアップデートしたばかりなんですが、ファンを驚かせられたようです。
旧作でもドラマ版のおかげで復活して新しい命を得たりするのを見るのは素晴らしいです。もちろんそれはドラマ版のクオリティーが高いだけでなく、フォールアウトというIPに忠実に作っていただいたからだと信じています。幸運なことです。ドラマ版でやってきた人々がゲームのために留まってくれた。ありがたいことですね。
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なので私たちの観点からすると、ドラマ版の成功は端的に“今やもっとファンがいる”ということに集約できます。そこにたくさんのフォールアウトコンテンツを出せているので、非常にラッキーと言えます。『フォールアウト3』も『フォールアウト4』も遊べて、『フォールアウト76』も定期的にアップデートできていますし、『フォールアウトシェルター』もアップデートしたばかりです。
遊べるゲームがこれだけあって、それを楽しんでいただけているようですので、あわててやり方を変えるというようなことはしたくありません。自分たちを見失わないようにしたいんです。
フォールアウトとは“最悪な世界で描く希望の物語”
チームにとってまったく新しいことをする機会を得られたんです。『フォールアウト』の権利を取った時、チームの多くの人はすでに『フォールアウト』1と2をプレイして愛していましたし、それまでプレイしていなかった人も遊びました。
でもそれだけでなく、“愛されている作品に自分たちなりのひねりをかけて新しい世代に持ち込む”という機会が得られた興奮がありました。新しいことをやっている、試している、こういうゲームプレイのメカニクスを追加しよう、そういうことのすべてです。
会議がいつも、興奮と無数のアイデアと可能性でいっぱいだったことを覚えています。だからその時を振り返ると、とてもクリエイティブで本当に楽しかった記憶ですね。
――あなたの観点から、『フォールアウト』を特別なものにしているコアの柱ってなんでしょう? 単に「エルダースクロールズのポストアポカリプス版」ということではないと思うのですが。
『フォールアウト』をプレイすると、最悪の時、たとえ核戦争後の荒野を歩いている時でさえも人生にはまだ楽しく享受できるものがあるのだと安心させてくれると思います。『フォールアウト』のユーモアと黙示録的な世界とともに歩んでいくさまは、希望についての奇妙な物語だと思うんです。
それに対してエルダースクロールズはどうなのかということですけども、エルダースクロールズは(自分たちとの)自然な類似性を見出すのが少し難しいですよね。みんなドラゴンと戦ったり魔法使いになったりしたいけど、そうなることは恐らくありません。
でも私たちはどこかで物事がおかしくなったらフォールアウトになり得ると感じている。現実の生活と並行する類似点を見いだせるかどうかが違いだと思います。でも私たちはそれを希望を与えるような方法で行います。もしそこに至ってしまったとしても、私たちはまだ大丈夫なんだと。
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トッド・ハワードは今でもあらゆることに関わっている
ですから、フォールアウトの世界で展開されるストーリーやロア(世界設定や作品世界の歴史)の何がカノン(正史)となるのか、そのすべてを決定づける中心人物は今後もトッド・ハワードであり続けるということです。
――今でもあらゆることに関わっているとなるとめちゃくちゃ忙しいのでは? プロデューサーとして開発作業に引き戻すのは大変なんじゃないですか?
――「War Never Changes」(※)だしトッド・ハワードも変わらないと。
※シリーズの象徴的なイントロのセリフ「人は過ちを繰り返す」の原文。直訳は「戦争はけして変わらない」
――『The Elder Scrolls IV: Oblivion Remastered』はゲームの仕組みをGamebryoエンジンで動かしてグラフィックはUnreal Engine 5で動かすという方式でした。同じGamebryoを使っている『フォールアウト3』で技術的に同じことが可能か聞いてみたいのですが。
プロデューサーとして「コレで行ける」と感じる時
でも間違いなく「ああ、これは何かあるな」と思う瞬間もあります。部屋を見回して人々がなにかに反応する様子を見て、そういう手応えを感じるんです。
『フォールアウト3』でBloody Mess(倒した敵が爆発して飛び散るようになるPerk)を作って入れてみた時のことを覚えています。部屋にいる人が全員爆笑していたんです。あちこちで脳が飛び散っていて、みんながただ笑い転げている。それを見回した時に「これは何かあるな」と感じるでしょう。
V.A.T.S.の時もそうです。みんながプレイしているのを見て「あ、これは何かあるかも」と。現実的にいきなりすべてが変わるというよりも、毎日の中にそういった一瞬の小さな輝きだけがあって、「これは行けるかも」、「成功するかも」、「プレイヤーに刺さるものになるかも」となっていく。
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さまざまな部分を集めて全体が成功するように懸命に働くわけですけども、単にずっと「きっとすべてが成功する」と盲信して進んでいたら、それはしばしば間違った方向に行くことがあると思います。
「ここは惹きつけるものがある、プレイヤーが楽しんでくれるんじゃないか」、「こういうタイプのプレイヤーは好むだろう」とか具体的に言えなければなりません。自分たちのゲームをプレイしていると、そういう具体的な実感が得られる瞬間があります。
巨大化するゲーム開発、変化する市場の中で、どうアイデンティティを維持するか
一方で超高解像度のグラフィックとかは、一種のアートスタジオとしてそれを実現できるよう日々努力しています。美しいアートを作り出したいですから。テクスチャーとかも高解像度なもので出したい。私たちのアーティストは自分たちの仕事に誇りを持っています。
でも時が経つに連れてプレイヤーが求めるものも変わっていくなかで、私たちがスタジオとして目指すものと、プレイヤーが期待するもののバランスを取っていかなくてはなりません。それが私たちのものも含めたゲームの多くが切り替えのオプションを持つようになってきている理由です。
パフォーマンスモードとグラフィック優先のモードとか、私たちにとっては大事なものですが遠景の木の描写を気にしないならLOD(描画密度)を下げられるとか。市場の好みを知っていて、それに合わせる能力も持ちつつ、自分たちがなんであるかに忠実でいたいんです。
そういったなかで、プレイヤーに「ノー」と言わないようにするには懸命に努力しなければなりません。しばしばそれはネガティブに見られることもあります。こういったことに忠実であるためには犠牲にしなければならないものもありますから。
プレイヤーに決して「ノー」と言わないことに忠実であり続けるか、それとも最もバグのない美しく敷かれたレール上を走るようなゲームを目指すのか? 難しい線引きだと思います。そして常に変化していると思います。
――あなたのキャリアを通じてオープンワールドゲーム開発はとんでもなく大きくなってきたわけですが、どうやってフランチャイズやスタジオのDNAを失わないように巨大なチームと長い開発サイクルを管理していますか? 誰もまだ正解を知らない問題かもしれませんが。
ひとつには、何十年もここで働いている人がたくさんいるということです。私はベセスダに20年いますし、私のチームメンバーのひとりは35年ここにいます。なのでコアとなるグループは本当に長いあいだ一緒に働いてきていて、DNAがまだここにあります。
一方でBethesda Game Studiosのゲームで育った若い開発者たちのまったく新しいグループもいます。彼らは私たちを変えようというのではなく、ベセスダのゲームづくりの一部になろうとしてやってきている。
だから私たちが成長するに連れて、この種の仕事に情熱がある人を雇うよう、採用を注意深くやるようにしています。私たちのゲームで育ってきた彼らはすでにDNAを持っているわけですが、『メン・イン・ブラック』でエージェントJが言ったようにそこに「新しくてイケてる」要素(New Hotness)を持ち込んでくれる。
なので、そういったことの組み合わせでなんとかやっているという所です。長期間の開発サイクルは誰にとっても大変なものですが、まぁそういうものです。私たちが何者でありなにをしているのかの一部なんです。私たちは時間がかかるゲームを作りますから。
本当に長い間一緒に働いてきたチームがいることのボーナスとして、私たちは長い開発サイクルをやっていく方法を知っています。それが私たちが私たちであり続けられるよう助けていると思います。
フォールアウトのイッちゃってるロケーションの作り方
どうやっているかというと、“クラッターパス”(小物を配置する工程)というのをやっていて、アーティストがモノを散らかして置くことでストーリーを語るという作業があるんです。
でも「骸骨を置いてストーリーを作ってね」と指定するわけじゃないんです。フォールアウトとはこういうもので、ユーモアのテイストはこうで、こういうのが目指しているところだという枠組みを共有できたら、あとはクリエイティブにやってくれるよう任せます。そしてその担当たちがそれを真剣に受け止めてやってくれた。チームが巨大になった今でも続けられているのは、この工程を開発プロセスの一部として組み込んでいるからですね。
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彼らはこの作業が大好きなんですよ。アーティスト側から自分たちで物語を語れる手段のひとつですからね。なのでネットの反応を見て興奮して「もっとやろう」となっています。なので、ゲームやチームが大きくなってもそれを続けられているのは、それをプロセスの一部にしているからなんです。
――じゃあ朝の会議で「あなたは今日は5つジョークコンテンツを作ってください」とか伝えられるわけじゃないんですね。
プロデュース側でどうやっているかというと、区画のリストをそこの担当ゲームデザイナーとアーティストに渡して、「担当ゲームデザイナーとココでどんなストーリーをやるか話して、あとはクリエイティブにやってください」と伝えるんです。そうすると、ときどき面白いものや誰も思いつかなかったようなネタが出てくるという感じですね。
――せっかくロケーションの作り方の話が出たので、ひとつのロケーションをゲームデザイナーとアーティストがどうやって作っていくのか教えてください。
POIだと通常はアーティストに自由にやらせますね。彼らがそこを使って好きなことをやります。シンプルなダンジョン用ロケーションだと、まずレベルデザイナーがレイアウトします。それができたらアーティストが入って、スペースの内容を固めるために一緒に作業し、そこに必要な素材などがでてきたらそれを作る。そしてライティングとか先ほどのクラッターパスとかをやっていきます。
クエスト用の場所はそれらと異なります。まずはクエストデザイナーがそこで何をしたいかを書き上げることから始まります。そこから街のような場所の場合は街担当のアーティストと組んで組み上げていき、ダンジョン型だとレベルデザイナーがレイアウトをやる。それぞれの工程が終わったらアーティストがチームに入るという形ですね。
クエスト用の場所の制作はそのように非常に協力的にやっていきます。すべての部分が一体となってストーリーを語る必要があるからです。3人チームのこともあれば、大きな街だとかなり大きなチームになったりもします。『フォールアウト3』のテンペニータワーのような場所をふたりで担当したりはしません。
このように、作業の流れ自体は場所によりけりという形ですが、アーティストとデザイナー陣のあいだで本当に協力的に作っていきます。
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なので選ばなければならないとしたらトランキル・レーンですね。次点がテンペニータワー。あれも楽しかったので。
――Vault Boyの絵文字とかアニメーションGIFとかを使ってTwitter(X)とかに投稿できる『Fallout C.H.A.T.』アプリが好きだったんです。ちょっと早すぎた気もしますけど、ああいった非ゲームのものをまたやる可能性は?
でもすべてにおいてそうですが、トッドがよく言うように私たちはなんでもできるけどすべてをやることはできないので、なにをするか集中しなければなりません。
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ドラマ版についても「どうせゲーム原作だからひどいんだろ?」なんて片付けずに受け入れてくれたから、それがまったく新しい層につながるドアを開くことを許してくれました。いまや私の義母が私が何をやって食べているか知ってるんですよ。どうかしてますよね? それはドラマ版のおかげです。
私がファンの皆さんに伝えたいのは、「本当にありがとうございます」ということです。皆さんが私たちとともにいて、私たちの作品をつねに向上させるよう応援してくれていなければ私たちの今日はありません。この道のりの一部になれたことに非常に感謝しています。クレイジーな時間でした。
そしてこれからの未来にワクワクしています。次の10年間がどうなるのかほとんど想像できません。『フォールアウト』はとても大きくなって、もうちょっと理解が追いつかないレベルなので。
ビデオゲームを作ることは本当に素晴らしいことです。でも多くの人が気にかけてくれるようなビデオゲームを作れるのは、もう言葉で表すのが難しいほどです。物事をやることはできますけど、誰も気にかけなかったらそれは虚空に叫んでいるも同然ですからね。だからその一部になれたのは私にとって素晴らしいんです。長年にわたって多くのファンにお会いし、たくさんのイベントを共有できて幸運でした。カッコ悪いかもしれませんが、本当に感謝しているんです。
正直に、日本に行ってカフェを見たいと思ってます。すごく最高なことですからね。「仕事として現地に行かなきゃ」と言って誰かを説得できるか試してみましょう!























