日本一ソフトウェアから2024年2月29日に発売されたNintendo Switch、PS5、PS4向けソフト『BAR ステラアビス』。さまざまなジャンルの魅力がカクテルのようにミックスされた完全新作ローグライクシミュレーションRPGだ。

 プレイヤーは主人公のサマヨイを操作し、お酒に酔った人が見る夢の世界である“ヨイの世界”とバーを行き来しながら、個性的なキャラクターと交流を重ねていく。

 本記事では、開発の中心人物へのインタビューをお届け。『BAR ステラアビス』の開発秘話をさまざまな角度から語っていただいた。

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『BAR ステラアビス』インタビュー。酔ったときの“面倒くささ”もキャラクターの個性に昇華。クセ者揃いのローグライクシミュレーションRPG

美濃羽 俊介氏(みのわ しゅんすけ)

本作のディレクターで、開発責任者を務める。カクテルには明るくなかったが、本作の開発に関わったことで、勉強のために飲み始めたとのこと。好きなカクテルはXYZ。文中は美濃羽。

溝上 侑氏(みぞかみ ゆう)

本作の企画発案者。グラフィックのディレクションをはじめ、さまざまな役職を担当する。美濃羽氏いわく「かなりお酒が好きなほう」とのこと。好きなカクテルはマリブコーク。文中は溝上。

勝又美桜氏(かつまた みお)

本作のキャラクターデザインを手掛ける。過去には『探偵撲滅』などのタイトルも担当。お酒はあまり飲めないため、バーではノンアルコールカクテルのサラトガクーラーを愛飲。文中は勝又。

多くの要素を快適にプレイできるように

――『BAR ステラアビス』という特徴的なタイトルですが、どのような意味が込められているのでしょうか。

溝上本作が持つさまざまな要素を含めています。“BAR”は言葉の通りバーを意味していて、“ステラ”も本作の戦闘で使うスキルにあたるステラをそのまま入れ込んでいます。そして、ダンジョンを深く潜っていく要素もあるので、“アビス”という言葉で表現しました。

――アビス=ダンジョンだったのですね。本作はさまざまな要素がミックスされていますが、開発でとくにたいへんだったことは?

美濃羽本作ではシミュレーションRPG形式の戦闘を行いますが、ローグライクなダンジョン探索の要素も盛り込んでいます。どちらもプレイに時間が掛かる要素なので、開発ではいかにしてスムーズに遊んでいただけるようにするかが課題になりました。

『BAR ステラアビス』インタビュー。酔ったときの“面倒くささ”もキャラクターの個性に昇華。クセ者揃いのローグライクシミュレーションRPG

――たしかに、シミュレーションRPGもダンジョン探索も、腰を据えてプレイする必要がある要素ですよね。

美濃羽その解決策として、シミュレーションRPGの移動から攻撃までの動きを簡略化する操作方法を導入し、戦闘を快適に遊んでいただけるようにしました。

 ほかにも、ダンジョンから途中でバーに帰還できるアイテム“目覚まし時計”を追加することで、体感的なダンジョン探索の時間を減らす工夫をしています。

――そういった工夫をするうえで、過去のシミュレーションRPGタイトルでのノウハウも活かされているのでしょうか?

美濃羽そうですね。『屍喰らいの冒険メシ』で行っていたことに、さらに磨きをかけています。

――ステラは約130種登場するとお聞きしました。バトルの調整も難しかったのではないでしょうか?

美濃羽ステラはランダム性の強い要素でもあるので、強くなりすぎてしまったり、逆に弱すぎて使い物にならなかったりと、運によって強さにバラつきが出てしまい、バランス調整に苦労しました。

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美濃羽そのバラつきを抑えるために、ダンジョン探索前にカクテルを飲むことでプラスの効果を発動させたり、装備でキャラクター自体を強くしたりできるようにしています。

――たとえ運が悪くても、カクテルや装備といった骨組みの部分を強くすることで十分に戦えるようにしたということですね。

美濃羽はい。そういった、積み重ねることで強くなれる要素を入れ込み、ランダム性に左右されすぎない構造にしました。先ほど挙げたカクテルや装備以外にも、ダンジョンで力を貸してくれる常連客との絆レベルなど、全滅しても引き継がれる要素は多いので、ローグライクに不慣れな方でも楽しんでいただけると思います。

キャラクターが持つ“面倒くささ”も個性の一部

――常連客は外見も内面も個性的なキャラクターが揃っていますが、デザインで苦労されたことはありますか?

溝上本作ではお酒の席でキャラクターを酔わせたり、仲を深めたりすることで、キャラクターの本性が明らかになっていきます。各キャラクターが持つ二面性をデザインでも強調したいという思いがありました。

『BAR ステラアビス』インタビュー。酔ったときの“面倒くささ”もキャラクターの個性に昇華。クセ者揃いのローグライクシミュレーションRPG
ゲーム中のバーで出会うことができる8人の常連客たち。

勝又デザインでいちばん難しかったのはキャス(上画像の左から4番目)ですね。設定はわかりやすいキャラクターなのですが、『BAR ステラアビス』らしさを出すために長いあいだ溝上と相談しながらデザインを固めていきました。

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溝上私はレオナ(上の画像の左から5番目)のデザインが印象に残っています。彼女が隠し持っている部分を適度なバランスでデザインに落とし込んでもらいました。いちばん最初にデザインしてもらったキャラクターだったこともあり、常連客たちのデザインを固めていくうえでも重要な存在でした。

――攻撃のモーションもそれぞれ違いますが、こだわったポイントをお聞かせください。

溝上攻撃モーションを制作するころにはキャラクターのデザインと使用武器が決まっていたので、キャラクターごとの個性を持たせるためにそれぞれ別のモーションを作りました。

 常連客たちはお酒を飲んでヨイの世界にやってきているので、モーションが真面目すぎると本作の世界観とはズレてしまいます。本作ならではのモーションにするために、私からもさまざまな案を出しました。

――常連客たちの武器は設定の段階から決まっていたのですか?

溝上各キャラクターが持ちそうなものを武器にして戦うという設定で、勝又に決めてもらいました。その結果、ぬいぐるみや香水瓶、筆など、ユニークな武器で戦うキャラクターが生まれました。

――カジが斧を持っているのは意外でした。

溝上初めて見たときは私も「なんで?」とツッコみました(笑)。

勝又常連客たちは特殊なキャラクターが揃っているのですが、カジはその中でも頭ひとつ抜けていて、ちょっと怖いんですよ(笑)。その個性を武器でも表現しています。

――常連客にはそれぞれステラが設定されていますが、こちらもデザイン段階で決めていったのでしょうか。

勝又設定段階から決まっているキャラクターもいたのですが、決まっていなかったキャラクターはそれぞれの性格や持っている信念とマッチする星座を割り当てて、デザインにも落とし込んでいきました。

――会話パートではキャラクターの二面性に戸惑ってしまうこともあったのですが、展開をいい方向に進めるコツを教えてください。

美濃羽最初のうちは基本的にキャラクターの意見を肯定してあげて会話を盛り上げるといいのですが、裏の顔が見えたときには、そのキャラクターが正しい道に進めるように、しっかり自分の意見を表明することが大事です。

溝上会話の中でキャラクターの思わぬ一面が見えて困惑するという反応は狙っているんですよ。実際、開発の際にも会話パートでキャラクターの性格が「面倒くさい」という声が上がったのですが、そういった面倒くさい一面を描くことで、キャラクターにリアリティーを与えています。

――たしかにお酒あるあるというか、現実のお酒の席でもよくあることですよね(笑)。

溝上面倒くさい部分も乗り越えることで、さらにキャラクターを好きになってもらえると思うので、キャラクターそれぞれの本音に向き合っていただけたらうれしいですね。

さまざまなおもしろさを持つシミュレーションRPG

――ゲーム中に登場するカクテルはそれぞれフレーバーテキストが用意してあって驚きました。

溝上いろいろなパターンを試した結果、マスターが個人的な感想を述べているという形になりました。ふだんお酒を飲まない方でも、ゲームの中で飲めば実際のカクテルに興味が湧くような内容になっていると思うので、ぜひ読んでいただきたいです。

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――ゲーム内のバーでBGMを聴ける要素がありました。この要素を実装した意図についてお聞かせください。

溝上ひとりで飲んでいるときに“チル”みたいな雰囲気が出たらいいなと。それから、マップごとに違う曲を用意しているのですが、同じ曲でも探索パートと戦闘パートで曲調が変わるので、すべて合わせると膨大な数になるんですよ。それがダンジョンでしか聴けないのはもったいないなということで、バーでも聴けるようにしました。

――常連客と飲むときとは違った雰囲気で飲めそうですね。最後に、読者へのメッセージをお願いします。

勝又キャラクターはみんなそれぞれ違う方向に表情豊かなので、グラフィック面にも注目していただけたらなと思います。

溝上アドベンチャーやローグライクなど、さまざまな要素のおもしろさを併せ持つ、珍しいタイプのシミュレーションRPGに仕上がったと感じています。ふだん弊社のゲームで遊んでくださっている方にも、そうでない方にも楽しんでいただけると思うので、ぜひ手に取ってほしいです。

美濃羽新作ということでどういうゲームかわからず手を出しづらいという方もいらっしゃると思いますが、体験版を配信しているので、気になる方はぜひそちらをプレイしていただければと思います。

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