ファンの愛はいいものだ。好きなものに「好き」と言える世界はすばらしい。
そして、自分の好きを語るファンはとても愛おしい。彼らの笑顔にはふしぎな力があり、かつての科学者はここからマイナスイオンの発見に至ったという。
それは嘘なのだけど、ファンの愛が森から出るマイナスイオンと同等以上にすばらしいのは事実なので浴びたい。できればファン歴の長さを煮詰めた濃密なやつがいい。
そこでネクソンのMMORPG『テイルズウィーバー』である。ちょうどいいことに2024年3月でサービス開始から20周年を迎えたばかり。へぇー、そんな偶然あるんですね。
「話を聞かせてほしい」と捜査中の刑事みたいなお願いをしたら、熱い人が出てきてくれることになった。広告を入れるのみならず分厚い愛を僕に叩きつけてくれるとは、何ていい人たちなんだ。札束でビンタされる気分である。
はじめまして。ミスター・グッドナイトと申します。
お身体が薄いんですね。
よく言われます。『テイルズウィーバー』のグラフィックは2Dがベースなのでお揃いなんですよ。
愛情表現が独特。
ミスター・グッドナイトさんは『テイルズウィーバー』が好きすぎて関連業務に関わるようになったらしい。なお、この取材の数日後に転生する予定だと言っていた。
さっそくミスター・グッドナイトさんに『テイルズウィーバー』のいいところを聞くと、悩んだ末に挙がったのは……。
キャラクター!
ストーリー!
音楽!
ふつうー!
テンポよく言うもんだからリズムに乗って本音が出てしまった。その3点はRPGの基本要素だ。スポーツでも勉強でも芸術でもまずは基礎が大事みたいな話だろうか。
言いたいことはわかります。でもですね、ほんとにキャラクターがいいんですよ。
MMORPGはたいてい自分の分身を作るじゃないですか。『テイルズウィーバー』は物語の中の登場人物を操作するんです。珍しいですよね。
それはたしかにそう。えーっと、いまは19キャラクターいるんですね。ちなみに誰が好きなんですか?
私の中で最高のキャラクターはマキシミンです。
もう本当にいちばん好き最初に『テイルズウィーバー』に触れたのはもう20年も前というのにも驚きですが当時はストーリーを前面に押し出したMMORPGが新鮮でキャラクターにスポットが当たったゲームということもありマキシミンの見た目がツボに入り始めました茶色のコート猫背であるく姿口の悪さ気怠そうに戦う姿に幼い私
は「なんてかっこいいキャラクターなんだ!」と沼にはまっていきました(笑)17歳なんだけど大人びた男性像みたいなものを感じられるビジュアルがいいんですよ当時は子どもだったから憧れてしまったんですよストーリー序盤では口が悪くて貴族を毛嫌いしているお金にがめついという印象なのですが『テイルズウィーバー』はストーリーがしっかりあるのでなぜそうなったかという理由を断片的に見られることもあり家族を犠牲にしてまで革命運動にのめり込む父に苦労して大人にならざるを得なかった背景や剣術を習ったわけではないために雑に棒を振るように剣を扱うなどストーリーが進むにつれてマキシミンはなんていいキャラなんだ……最高じゃん!と溜めを作った後に叫びたくなる魅力があるんですストーリーが進むにつれてイスピンとのす
どうしました?
よくわからないけど致死量という単語が思い浮かびました。
圧がすごいので話をそらそう。それだけ魅力的な登場人物を操作する=ストーリーがおもしろいというのも理解できる。好きなエピソードやストーリーを教え……
※以下、食い気味のマシンガントーク内にはストーリーのネタバレが含まれます。「すみません。止まりませんでした」とのこと。
難しいことを聞きますね選び切れるかなとくにEP1のストーリーが好きなんですが大きく分けるとアクシピター側のストーリーとS&A
(シャドウ&アッシュ)側のストーリーで大きく違うんですよルシアンボリスティチエルミラからなるアクシピター側はわりと王道のストーリーといった印象でマキシミンイスピンシベリンナヤトレイからなるS&A側は一癖も二癖もあるといった印象なのですよね原作のルーン
の子どもたちやその後のストーリーを読むとどちらのストーリーもおもしろいので甲乙つけられませんが!私はマキシミンをプレイしていたこともありS&A側のストーリーが好きでした政治や貴族を嫌い生活のために生きるマキシミン本当はオルランヌの公女だがその身分を
隠しているイスピン記憶を失っているが実際はオルランヌの公子であるシベリン苗族最後の生き残りで一族最後の使命を背負いシベリンとともにするナヤトレイいろいろな事情が絡み
キャラ同士の関係の見せ方、エモいな……。
この流れでツッコまずにちゃんと聞いてるの、すごっ。
なるほど。こんなに熱く語れるほど魅力的なゲームだということか。いい。ここで深呼吸したいくらい、いい。胸やけしそうではあるが。
この流れで音楽の話も聞こう。今度は落ち着いて話してください。
音楽もいいんですよ。穏やかな曲は人気が高いですね。“Good Evening, Narvik”っていう、ナルビクの街の夜のBGMですとか。
RPGの曲は戦闘とかドラマティックなBGMの人気が高い印象がありますけど。
『テイルズウィーバー』には昼夜の概念があって、夜はしっとりした曲が多いんですね。これを聴きながらだべるのがいいんです。だらだらチャットしたりして。
MMORPGの原風景だ。
20年ほど前、MMORPGには“ネット用のコミュニケーション装置”としての役割もあった。ここに来れば誰かがいる。交流が苦手だったとしても、漠然としたにぎわいを感じられると安心するものだ。いまその役割を担っているのが各種SNSなのだと思う。
これは僕個人の感想なのだけど、落ち着いた時間の流れているゲームはいい。
何かいい。
理由を問われても明確な答えが見つからず、曖昧な回答になってしまう。競うようにプレイするゲームよりこっちが優れているとか、そういう話ではない。
何もしないことを許容できる空間は、忙しい現代社会に必要な優しさなんじゃないかと思う。
私はPKマップの激しい曲も好きなんですけど。
やる気まんまんじゃねえか。
BGMは思い出と結びついてるんですよね。大音量で聴いて浸りたいな。
あー。そういうのいいですね。だったらオーケストラコンサートやりましょうよ。
やりましょう、オーケストラコンサート。
こんなこともあろうかと『テイルズウィーバー』運用チームのGM暁月とGMネフニルを呼んでおきました。
よかった。急に打ち合わせに入ってきたやべえやつかと思いました。
急に打ち合わせに入ってきたやべえやつではございません。
いったん落ち着いて20周年施策のことを聞く
というわけでGM暁月さんとGMネフニルさんにも話に加わってもらうことになった。オーケストラコンサートをやるなんて、そんな安請け合いをしてもいいものなのか。
任せてください。がんばって準備を進めています。
信じるしかないコメントだ。
いまから準備を進めたとして、開催予定時期はおそらく2024年の冬頃。GM暁月さんもGMネフニルさんもオーケストラコンサートやオケコンではないく“冬の音楽会”と呼んでいた。穏やかな語感がいい。
2023年12月に(同じくネクソンが運営する)『メイプルストーリー』でもコンサートを開催したんです。社内にそのときのノウハウもあるので、チケットを販売して、本格的なホールで開催できたらなと。どれくらの規模がちょうどいいのか、検討中ではありますけど。
グッズも用意したいですね。キービジュアルを用意すると思うのでそれを使ったり、音楽に関連した小物なんかも。難しいかもしれないけど、小さなオルゴールなんていいと思うんですよ。あとは、カスタネットに……オカリナとか?
うわー、とてもいい。飾る用スタンド付きの小さな楽器。絶対かわいい。実際に生産&販売できるかどうかは置いておいて、“おれの音楽会グッズ”プレゼン大会でも開きたいくらいである。
冬開催だとすると、たとえばこの記事を読んだ方の「これがほしい」も参考にできるかもですね。
実物大のアーティファクトを作ってください。
無茶言うね。
いま「音楽を題材にしたグッズがあったらかわいいね」って盛り上がったところじゃん。
この後、ミスタ―・グッドナイトさんは「ミニチュアでもいいですから!」と食らいついていた。
さて。『テイルズウィーバー』にとって2024年は20周年イヤー。これだけサービスが長期に渡るMMORPGは非常に珍しい。
ここまで歴史があるとプレイヤーにとっては日常の一部。だからこそリアルでの取り組みも重視する動きがあり、そのひとつが“冬の音楽会”というわけである。
20周年という大きな節目を迎えることができ、ほっとしています。ここまで長くサービスを継続できたのは、ひとえに遊んでくださるユーザーさんのおかげ。改めて感謝の気持ちでいっぱいです。まだ『テイルズウィーバー』を担当して1年3~4ヵ月ほどですが、20周年という節目のタイミングで関わることができて本当にうれしく思っています。
そんな時期に担当するようになり、「プレッシャーは?」と聞くと「超あります」とすぐに返ってきた。でしょうね。
私は『テイルズウィーバー』に関わった期間としては今年で9~10年ほど。15周年のときに「つぎは20周年を目指します!」なんて宣言して、本当に20周年を迎えてしまいました。感慨深いですね。
リアルの施策はほかにもあります。夏にはオフラインイベントを開催。今年は例年よりも会場を広くする予定です。内容はまだ秘密なんですけど、大型アップデートとコラボの詳細を発表できるはず。
そうそう。6月に大型IPとのコラボを発表するんですよ。
何とコラボするんですかと聞いてもいっさい口を割らなかった。ネクソンは守秘義務を大切に考えるきちんとした会社である。せめてアップデートのコンセプトくらい教えてほしい。
夏と言えば、って感じです。これ以上は想像にお任せします。
プレイヤーの皆さんなら想像つくかな。大型アップデートならではのあれが来ます。
みんなが待ち望んでいたものが実装されるという。“あれ”でOKなあたり、長く愛してくれるプレイヤーへの信頼が限界を超えている。
20年もサービスが続くと、新しい世代も入ってくる。運用チームとしてもオフラインイベントでも多くのプレイヤーと会ってきたはずだし、いろいろな思い出や感慨深いエピソードもあるはずだ。
最近はお子様連れのプレイヤーさんが増えてきた印象があります。一方で「子どもが大きくなるまではイベント参加は難しいかも」という方も。イベント会場はプレイヤーさんたちの同窓会みたいな雰囲気になりますね。
「20年だもんなー」と、みんなでしみじみしてしまった。『テイルズウィーバー』のサービス開始当初に18歳だった人はいまや38歳。お子さんといっしょに遊んでいたとしてもおかしくない。
そして、そういう人も実際にいる。微笑ましい光景に出会えるのなら、サービスを提供する側も気合が入るというものだろう。
今年の施策として“カフェ”も予定しています。時期の発表はもう少しお待ちください。
いいですね。ゲーム内のアイテムを再現したり?
(『テイルズウィーバー』に出てくる)ビーフジャーキーは食べたいですよね。マグノリアワインも飲んでみたい。
お酒を出すのが難しい場合は、マグノリアワイン風のぶどうジュースにするのもありだろう。ゼリッピをはじめとするかわいいキャラクターたちを店内に飾るのも華やかでいい。
とはいえ、この辺は会話中に出た単なるアイデアである。続報を待ちたい。
ゼリッピは飲みたいですよね。
あ、食材側なんだ。
リアル関連の施策と言えば、ゼリッピマートのリニューアルオープンも控えている。『テイルズウィーバー』の公式グッズが購入できるショップだ。
リニューアル前はマグカップやタンブラー、アクリルスタンド、キーホルダーなどがラインナップされていた。リニューアルでは商品ラインアップが一新される。
より皆さんに喜んでいただけるアイテムを揃えられるよう、商品を一新して現在鋭意準備中です。コンセプトは“推し活”。推しごとがはかどるデスクテリア系商品と、キャラクターのかわいさや実用性を活かしたコレクション商品のラインアップで生まれ変わります。
21年目の『テイルズウィーバー』では、この通り多くの施策が用意されている。ちょっと野暮かもしれないが、どんな意図があるのか聞いてみる。
ゲーム内のアップデートでは安心感を持ってもらいたんです。これまで続いてきて、これからも安心して遊べるゲームですよって。逆に、ゲーム外では驚きやふだんとは違う楽しみを感じてもらいたい。その一端がカフェ施策です。
どんどん変わったことをするのもいいんですけど、そのためにはやっぱり“安心して遊べるゲーム”が必要だと思います。いろいろ考えた中で、突拍子もないネタでいうと、全国行脚みたいな案もありました。
制作コスト等の観点から、大規模なオフラインイベントは関東圏に集中しがちだ。仕方のないこととはいえ、関東圏以外のプレイヤーと会いたい気持ちもある。
「せめて大阪や愛知、福岡などの大都市だけでも何とかならないか」という意見はちょくちょく出るらしい。
あとはリアル脱出ゲームもやってみたいんですよねー。音楽と謎を絡めたらおもしろそうだし、ストーリー展開を重視するんだったら世界観を活かせそう。
まずは安定したゲームを提供したうえで、いろいろなことをしてみたい。それが20年も続けられた秘訣なのだろうか。そう聞くと、GM暁月さんとGMネフニルさんは少し困った顔をした。
秘訣ですか……。なんでしょう。そういうのはあまりなくて、結局はユーザーのみなさんのおかげとしか言えないんじゃないかと思います。
もちろん一生懸命やっている。でもそこをアピールするのはおこがましい。謙虚な姿勢を感じる。
みなさんが『テイルズウィーバー』を日常化してくれたことが大きいと思います。ゲーム内でフレンドが待っているからログインしよう、ここのダンジョンはとりあえずクリアしとこうみたいな。これはもう日常ですよね。毎日が難しくても、週末くらいは遊ぼうと思ってくださる。そういった皆さんに感謝したいというのが秘訣……というのは、ちょっといい話すぎますかね。
『テイルズウィーバー』は日常。だから続いていく。何かいいな、そういうの。