シリーズ累計2500万本を超える人気シリーズ第1作
いまから30年前の1994年(平成6年)3月11日はスーパーファミコン用ソフト『実況パワフルプロ野球’94』が発売された日。今日で『パワプロ』30周年!
さ、30年? 30年って……30年ってこと!? 1994年から30年。それが2024年。当時ピカピカの小学生だった筆者も立派なおっさんになるわけである。ウソだろ。ぐえー。
さて、『実況パワフルプロ野球’94』はKONAMIから発売された野球ゲーム。セ・パ12球団の選手や本拠地球場が実名で登場する。発売後、本シリーズは『パワプロ』の略称で知られるようになり、2023年12月時点での累計販売本数は2510万本を超えるというから驚き(※)。その第1作だ。
※数字はメーカー発表。
何より特徴的だったのは、タイトル冒頭にも付けられている“実況”要素。
自分のプレーに合わせてアナウンサーがテレビ中継さながらに実況してくれる。そりゃあ気分は盛り上がる。
アナウンサーによる実況のみならず実在の野球解説者による“解説”まで入っている作品がある現代から見ると隔世の感があるけど、当時はスーパーファミコンから声が出るというだけでそこそこ驚きだった時代。刻一刻と変わる試合の場面に合わせて、プレーが行われる、まさにその瞬間「打ったーっ! これは大きい!」、「取った、ファインプレイッ!」、「ガトゥーーーンッッッ!」といった実況音声が流れるシステムは驚愕的だった。
音声はABCテレビの安部憲幸アナウンサーが担当していて、試合が始まる際に「実況は安部憲幸です」と挨拶してくれるので、いまでも名前を覚えている『パワプロ』ファンは多いことと思う。本職のアナウンサーが実際に声を吹き込んでいるんだから当たり前といえば当たり前なんだけど、「マジで野球中継みたい!」と、小学生だった筆者は胸を躍らせたものだった。
安部アナは残念ながら2017年に鬼籍に入られたけれど、「実況! パワフルプロ野球ッ!!」と歯切れよく叫ぶスタート画面の音声がいまも耳に残っている。
野球ゲームが踏み出した革命的一歩
音声以外でも革新的なシステムを多数搭載していて、中でも目新しかったのは投球&バッティングシステム。要するに野球のいちばん大事な基本の部分だ。
投球では、ストライクゾーンに高低差が表現されていること。これにより変化の表現もより現実に近い形になり、たとえばスライダーは横に滑るように逃げて、カーブは斜めにドロンと曲がるというような異なる動きかたになった。
さらに選手ごとに使える(投げられる)変化球が決まっていて、変化量も設定されている。巨人の槙原や桑田は多彩な4球種を投げられたり、ヤクルトの高津はシンカーだけだけど変化量が最大に設定されていたりという具合だ。ゲームで実在選手の特徴を覚えたプレイヤーも多かったと思う。
よりリアルに表現されるようになった変化球を見て、全国の小学生は「佐々木のフォークやべえ!」とか言えるようになったわけだ。ちなみに、前述のヤクルト・高津や横浜・佐々木のほかに西武・潮崎のシンカー、近鉄・野茂のフォークも変化量が最大に設定されている。ロッテ・伊良部は当時の日本人最速158キロのストレートを投げた。1990年代の日本プロ野球に綺羅星のようにつぎつぎと現れた名選手たち。筆者はいまでもその代名詞となる変化球とともによく覚えている。それはやっぱり、『パワプロ』の影響も大きい。
バッティングではミートカーソルが導入されて、“ピッチャーの投球に狙いを定めて振り抜く”というゲーム性が確立していた。打者ごとに大きさが異なり、打率の高い選手はミートカーソルが大きく、そうでない選手は小さく、というふうに選手の個性がひと目でわかりやすく、よりはっきりと表現された。「イチローのミートカーソルめっちゃでかい!」とかね(イチローが出るのは次作以降だけど)。
選手のパラメーターがはっきりと表されるようになったのも『パワプロ』シリーズの特徴で、先日放送されたテレビ番組『ゲームゲノム』では川上憲伸さんが「『パワプロ』のステータス(の落ち込み)を見て引退を決意する選手もいる(笑)」とまで語っていた。
熱い 1990年代のプロ野球を凝縮
1994年3月発売の野球ゲームということで、収録は1993年の成績に基づいた選手データが収録されている。つまり発売は、森監督率いる西武ライオンズと野村監督率いるヤクルトスワローズによる、2年にわたる知将どうし同カードの対戦で「史上最高」と称されることもある1992年~1993年の日本シリーズが行われたその直後ということ。筆者のようなヤクルトファンにはとくにたまらない1本だ。
ヤクルトには古田を始め池山やハウエル、巨人には原や松井、長嶋一茂がいる。中日には立浪、矢野、落合は最終年、阪神には新庄に和田に真弓と後の監督経験者がズラリ。横浜には谷繁やローズ、進藤と1998年の日本一に導く戦力が力を溜め、広島には北別府、大野、佐々岡と歴史的名投手が居並ぶ。
パ・リーグに目を向けると常勝ライオンズには秋山、工藤、潮崎と投打に才能が集結。日ハム西崎、田中幸雄や片岡、オリックスには佐藤義則や星野伸之、田口壮。近鉄には野茂、吉井、ブライアントと有名選手が在籍している。ロッテ小宮山、伊良部、初芝がいて、ダイエー(!)には若田部、下柳やカズ山本……名前を聞くだけで懐かしさが込み上げてくる選手が多数登録されている。
『実況パワフルプロ野球'94』には、熱い時代のプロ野球の魅力がゲームに凝縮されていた。取りも直さず『パワプロ』は、現代日本プロ野球ともに歩んできたのだ、30年にわたって。
ちなみに野球ファンの多い週刊ファミ通編集部でも本作はブームを呼び、編集者を集めた“ファミ通リーグ”なるものが開催されていたらしい。
祝・『パワプロ』シリーズ30周年!
ゲーム画面を見ても初代『実況パワフルプロ野球’94』から現代の『パワプロ』とは大きく変わっておらず、野球ゲームとしての完成度の高さを初代作から感じさせられる。違うところと言えば、同じ2頭身ではあるけど、昔の選手のほうがちょっと太めの体型というくらいかな(笑)。
そういえば先日出たガシャポンの景品にこのちょっと太め体型の選手が“パワプロ(初代)”としてラインアップしていて、思わず出るまで回してしまった。
初代作となる『実況パワフルプロ野球’94』は、シンプルにCPU対戦かふたりプレイで対戦を行うだけだったけど、その後1年ぶん試合をする“ペナント”や、『実況パワフルプロ野球3』からはいまでも続く人気モードの“サクセス”が登場して、その後もシリーズ作品が続くに連れて“栄冠ナイン”や“パワフェス”など、多彩なモードがどんどんと増えていった。
『実況パワフルプロ野球9』では、ホームランを打った飛距離のぶんだけ走って12球団の本拠地を巡る(ホームランを約10000本打つ作業が必要)という、ちょっとどうかしているモードである“それいけ!ホームランくん”なる遊びかたがあった。筆者は、筆者以外にこのモードをクリアーした人をリアルでは見たことがない。個人的には楽しんで遊んだけど、『パワプロ9』と『パワプロ9 決定版』以外には収録されておらず、30年に及ぶ『パワプロ』の歴史のなかでも幻のモードと言えるかもしれない。当時は日ハムの本拠地がまだ東京ドーム(札幌ドーム移転前)で、日ハムの本拠地移転が発表されたときは「ホームランくんに札幌ドームが入っていなくて助かった……」と、救われた気持ちがした。
もし最新作『パワプロ2024-2025』にも収録されるなら、北海道・北広島の新球場エスコンフィールドから福岡ドームまで、まさに日本縦断の旅となる。ちょっとだけプレイしてみたい気もする。ちょっとだけ。ちょっとだけね。
『パワプロ』はその後、携帯ゲーム機向けに『パワプロクンポケット』がシリーズ展開されたり、MLBをゲーム化した『実況パワフルメジャーリーグ』や『熱闘!パワフル甲子園』といったスピンオフ作品も多く発売されたりした。『パワフル〇〇』としてはサッカーやゴルフといった野球以外の競技にも発展。
『パワプロ』は多くの機種で発売されたのも特徴で、第一作『パワプロ’94』のスーパーファミコンを皮切りに、その後ニンテンドウ 64やゲームキューブにWii、プレイステーションプラットフォーム、セガサターンやドリームキャストでも展開されていた。ドリームキャスト版はサクセスが社会人野球でけっこう楽しく遊んだ記憶がある。まだ金属バットを使用していた。
現在では、スマートフォン向けにもサクセスに特化した通称『パワプロアプリ』と、高校野球シミュレーションモードの“栄冠ナイン”がアプリとなった『パワフルプロ野球 栄冠ナイン クロスロード』が人気を博している。これだけ長く、多くのゲームハードで愛され続けているシリーズはかなり貴重だ。
筆者自身、スーパーファミコン時代から遊び続けていて、プレイステーション5を手に入れたときは「さて、まずは何を遊ぼうかな?」としばし悩んだ後、気づけばプレイステーション4版『eBASEBALLパワフルプロ野球2022』を改めてプレイしてしまっていた。スーパーファミコン時代からPS5時代まで遊び続けているということは、おそらくこの後も一生遊び続けるだろうと思う。筆者が天寿をまっとうするまでKONAMIにはぜひがんばって開発を続けてほしい。
そんなパワプロ最新作『パワフルプロ野球 2024-2025』はNintendo Switch、プレイステーション4向けに2024年発売予定。30周年記念作品として、いつも以上に力を込めて開発されているとのことだ。
筆者は、2024年シーズンが開幕するのと同じくらいに、『パワプロ2024』の発売も楽しみにしている。
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