眼鏡が派手なおじさんの自撮りから失礼します。ファミ通.comのミス・ユースケと申します。訳あって佐賀県に来ています。
※注:いろいろな事情があり、記事内の時系列は訪れた順ではありません。細かいことを気にしない方が大物になれると思う。気にする暇があったらゲームやろうぜ!
佐賀県と言えばこれ。
いきなりすみません。ただ、まずはこれを言わせてほしい。焼酎造りが盛んな九州において、佐賀県は日本酒王国なのである。
たとえば富久千代酒造の鍋島。江戸時代に約300年にわたって佐賀藩を統治した鍋島家に由来し、佐賀県を代表するお酒として全国にファンが多い。個人的には天山酒造の七田が好きでよく飲んでいる。
佐賀県の本気は飛行機で着いたらすぐに味わえる。だって、
九州佐賀国際空港(以下、佐賀空港)3Fの“さがんれすとらん 志乃”に空見酒セットがあるので。上の4連グラスの写真がそれだ。
空港のラウンジやレストランは少し高いイメージがあるが、これは40ml×4で1000円。一般的な居酒屋と同じくらいの価格帯。いいの? ほんとにいいの? あざっす!
うまい。帽子を脱いでぼさぼさになった髪が気にならないくらいうまい。
鍋島と七田は旨味と香りのバランスがよく、東鶴はキレと後味がいい。天吹は超辛口の名に恥じぬすっきり系で、食中酒として活躍しそう。この4人でRPGの固定パーティーを組んでほしい。
僕は佐賀県を満喫しに来たのである。ファミ通.comはゲーム情報を中心としたエンタメサイト。たまにはこういう記事が載ってもいいんじゃないかなと思う。
ここからは浮世を忘れて巡ったおすすめスポットを紹介していきます!
チャオシルで茶を知る
まずは同行者といっしょに車移動。ファミ通.comはよい子も読むメディアなので、初手からお酒ばかり飲んではいられない。佐賀のいいところを全力で浴びに行く。
やってきたのはここ、うれしの茶交流館“チャオシル”!
佐賀県南部の筑紫平野は稲作が盛ん。だから日本酒もおいしいわけだが、お茶の名産地でもあるのだ。
南西部の嬉野町は気候がお茶の栽培条件に適しており、香りと旨味の強い“うれしの茶(嬉野茶)”は全国的に高い評価を得ている。日本酒とお茶。佐賀県は飲み物がうまい。
チャオシルはそんなお茶に触れて学べる施設だ。施設名が“チャオシル=茶を知る”ということで、僕もお茶のことを知りたい。だって、もっと好きになりたいから。おいしいお茶の入れ方を体験させてもらった。
種子島先生の第一声は「お茶は嗜好品。お好きなように飲んで大丈夫です」だった。よかった。生来おおざっぱなので、細かい作法を指導されたら泣いていたかもしれない。
「水道水で十分おいしくなる」のひと言を聞いたとき、脳内に歓喜の歌が流れた。それでも旨味を出すコツは数点あるらしく、たとえばやかんから直接的に急須に入れず、湯のみ経由で入れるだけでも違うらしい。
- やかんで水道水を沸かし、沸騰したらフタをずらして2~3分加熱。カルキ臭を飛ばす。
- お茶に適した温度は70℃。お湯を別の器に移し替えるたびに5~10℃下がるので、だいたい2回移せばOK。
- やかんやポットから湯のみにお湯を入れる(これでお湯を1回移した状態)。
- 標準の1人分の茶葉量はティースプーンちょっと山盛りくらい(3g)。1人分だけいれるときはもう少し多めに。
- 急須に茶葉を入れ、湯のみのお湯を急須に入れる(これで2回移した状態)。
- 急須を揺らさずに1分ほど静かに待つ。揺らすと苦味や雑味が出る。
- 少し注いだら急須の角度を戻し、また注ぐ……と、小刻みに注ぐ。
- 最後の一滴がいちばんおいしいので限界まで注ぐ。
- 飲む。
- So Happy…
なお、これは旨味を抽出する方法。渋みが好きな人は高温のお湯を使うなど、「好みに合わせて入れればいい」のひと言が心強い。旨味が強いうれしの茶は二煎目も三煎目もおいしく飲める。香りが落ち着き、苦味が加わった二煎目が好きな人も多いとのこと。
出涸らしになった茶葉はどうすればいいのか。
種子島先生「食べてください」
わかりました。うれしの茶は丸みを帯びた形状から玉緑茶(通称、ぐり茶)と呼ばれ、食べやすいのだそうだ。
もともと茶葉は栄養が豊富。お茶には溶け出していないので食べるのもおすすめという言葉を信じて、ポン酢でいただく。
あ、うまい。味の成分はお茶に溶け出しているのであまり残っていないが、ほんのり苦味がアクセントに。シャキシャキとした食感が心地よく、和食割烹の小鉢にありそう。
ポン酢じゃなくてドレッシングでもいいし豆腐に乗せたらおいしそう。よく知る同級生の私服姿を見たような、不思議な気分だ。つぎから意識してしまう。
体験教室で使われたのと同じ茶葉を買い、ほくほくした気分でつぎの目的地へ。
祐徳稲荷神社の絶景
チャオシルから車で30分ほど東側、有明湾のほうに進むと、目の前に荘厳な光景が広がる。日本三大稲荷(お稲荷さん)のひとつ“祐徳稲荷神社”だ。
年間の参拝者数は、九州では福岡の太宰府天満宮に次ぐ2位(約300万人)。朱塗りの鳥居や社殿がかっこいい。神社の神秘的な雰囲気が好きというゲーマーは多いと思う。僕もである。
滞在時間の予定はおよそ1時間。高いところにある奥の院を目指して、階段を上ることにした。
祐徳稲荷神社では、おもにこちらの三柱が祀られている。
- 倉稲魂大神(ウガノミタマノオオカミ)
- 大宮売大神(オオミヤノメノオオカミ)
- 猿田彦大神(サルタヒコノオオカミ)
大宮売大神の別名はアメノウズメノミコト。ゲームにもよく登場するので、僕らゲーマーにもなじみ深い神様だ。お世話になっております。
あいにくの雨模様だったが、ひんやりとした空気で神秘性が高まっているような気がした。いくつも連なる鳥居は別世界につながっているみたいだ。階段を一段一段踏みしめるたびに気持ちが透き通る。
奥の院まではけっこうな距離がある。焦ってはいけない。目的地に近づくたびに、幽玄な情景に自分自身が溶け込んでいく。
視野が狭まると危険なので、たまに意識的に足を止めて辺りを見渡す。道中には小さなお社がいくつもあって、そこには狐が祀られていた。
狐はお稲荷さんの使い。近隣の人から愛されているのか、前掛けでおめかしをしている子もたくさんいる。かわいい。
ところで、稲荷神を“お稲荷さん”と親しみを込めて呼ぶ感覚はおもしろいなーと思う。稲荷神は“稲”とあることからもわかる通り豊穣の神。お米を主食とする日本人にとって身近な存在なのだろう。何かいいな、そういうの。
この後、足をぷるぷるさせながら降りていくことになる。
古湯温泉ONCRI=すてきなお宿
同行者が「見せたいものがある」と言うので、車で一時間ほどの距離にある温泉地へ。
到着したのは古湯温泉ONCRI(おんくり)。“美人の湯”として親しまれてきた古湯温泉を抱く、湯治&リゾートホテルだ。
温泉の温度は少し低めで、ずっと入っていられる“ぬる湯”。露天風呂、箱蒸し風呂、陶器風呂、寝湯など、男女合わせて15種類のお風呂があるらしい。ほほー。
和室に洋室、半露天風呂付きといくつかの種類がある中で、ONCRIソノテラスというタイプの部屋に案内された。
そこは『リネージュW』コラボルームだった。ONCRIソノテラスは4室あり、それぞれに四龍アンタラス、ヴァラカス、パプリオン、リンドビオルをイメージした装飾が施されている。
枕元にはイメージビジュアルが飾られ、四龍デザインのベッドスロー(足置き)がお部屋のアクセントに。ホテル外観のイメージ通り、室内もおしゃれだった。
ご飯も『リネージュW』三昧ということでレストランを見せてもらう。
どう見ても高級和食割烹。震える。僕にとっての和食割烹と言えば法事だ。じいちゃんの顔が思い浮かぶ。
『リネージュW』コラボプランは和食2食付き。席はどんな感じだろう。
これからお見合いが始まるのか?
「ご趣味は」
「『リネージュW』を少々……」
「え、じつは僕も『リネージュW』が好きなんです」
「まあ! 結婚しましょう!」
ということなのか? おめでとうございます。結婚式には呼んでくれよ。
朝ごはんは九州食材中心の和食。夕ごはんのメニューは佐賀県の食材を使った本格和会席料理。以下は夕ごはんのお品書き。
- 先付:彩り野菜のバーニャフレイダ
- 前菜:黒豆厚焼き真丈、紅鮭小川巻き、春菊の真砂和え、酢取茗荷、川魚の山椒煮、牛牛蒡八幡巻き、岩蛸炙り
- 刺身:お造り盛り合わせ
- 小鍋:山と海の寄せ小鍋
- 煮物:海老湯葉巻きと蕪の炊き合わせ
- 蒸物:小柱と百合根の玉地蒸し
- 焼物:佐賀牛の陶板焼き 旬菜
- 食事:佐賀県産夢しずく、雑魚としめじの炊き込み御飯、赤出汁味噌汁、香の物
- 甘味:檸檬蜜煮林檎と薩摩芋蜜煮
上質がバッファローの大群のように迫って来る。鍋料理なんて山と海が寄せられているんだからたいへんだ。それはもはや地球そのものではないか。
ここにはもう佐賀の日本酒という最後の1ピースをはめるしかないだろう。理想郷も黄金郷も天竺も、九州北西部にあったのである。若者よ、自分探しの旅なんかやめて佐賀県に来い。
古湯温泉ONCRI×『リネージュW』コラボ宿泊プラン概要
- 部屋:ONCRIソノテラス(4室)
- ひとり当たりの参考料金:26000円~42000円
- 宿泊可能期間:2024年2月1日(木)から3月3日(日)チェックアウトまで
- 宿泊プランに含まれる特典
君主風マント(先着70名様)
手ぬぐい 「リネージュW × SAGA Edition 強化の巻物」
ロングTシャツ「リネージュW仕様」
※特典は1名様につき1セットずつ用意。
※特典の付与対象は小学生以上。
お気づきかと思いますが
これは佐賀県とMMORPG『リネージュW』のコラボ紹介記事だ。しかも広告記事でも何でもないというから、人生とはふしぎなものですね。
古湯温泉ONCRIのお風呂も本気でレポートしたかったが、おじさんの入浴シーンを載せるのはたいへんリスキーな行為である。九死に一生を得たと言えるだろう。
佐賀県と『リネージュW』のコラボは2024年3月3日まで実施中。空港内には特設ギャラリーが設置され、記念グッズも販売。県内にはARフォトスポットが用意されている。わざとらしく撮っていたチャオシルと祐徳稲荷神社のほかには3ヵ所。
佐賀空港内のそこかしこに『リネージュW』。
2024年1月31日には佐賀空港でオープニングセレモニーが実施された。山口祥義佐賀県知事が登壇するなど、本気度の高さが伺える。
佐賀県では“サガプライズ!”というコラボ事業を推進しており、今回の件は第37弾企画。『リネージュW』は韓国や台湾で人気のタイトルだ。日本のプレイヤーのみならず、海外のお客さんを呼び込む狙いもあると思われる(そもそも九州と韓国・台湾は距離的に近く、佐賀空港との直通便もある)。
『リネージュ』シリーズは韓国の国民的ゲームだが、意外にも韓国国内においても自治体とコラボしたことはなく、今回が初の試みらしい。にも関わらずけっこうなボリュームでグッズを用意するなど、こちらも本気度が高い。
ところで、コラボ企画のメインロゴを見て気になった点がひとつ。ゲームのキービジュアルをもとにデザインされたもので、もともとは麦畑で佇む君主というキャラが描かれている。手には1本の麦。
だが、コラボのメインロゴをよく見てほしい。君主が持っているのは麦だろうか。僕には稲穂に見えるのだ。
佐賀県は九州を代表する米どころだ。だからこそ日本酒醸造文化が発展し、佐賀県はいまの姿になった。このロゴには『リネージュW』を開発・運営するNCSOFTから佐賀県へのリスペクトが込められているのかもしれない。
古湯温泉ONCRI以外の宿もいい
僕ら取材班が泊まったのは古湯温泉ONCRIではなく、嬉野温泉 大正屋という老舗旅館。今回のコラボとは無関係だが、チャオシルや祐徳稲荷神社に近いので。
冒頭の写真は、あまりにも部屋の雰囲気がよすぎて思わず撮ったものだ。もはや旅館のイデア。僕の部屋だけ少し広めということだったが、“少し”で片付けていいレベルじゃない。
この記事では『リネージュW』のことを押し過ぎず、佐賀県方面から書いてみた。佐賀県のお酒やお茶、グルメ、温泉を楽しんで、その流れで『リネージュW』をプレイしてみるのもいいと思う。