『ゼンレスゾーンゼロ』(以下、『ゼンゼロ』)の第2回クローズドβテスト(CBT2)が終わってしまった……。しかし、筆者の頭の中では早く正式リリースして遊ばせてくれという思いがすでに駆け巡っている。
しかし、中には『原神』や『崩壊:スターレイル』(以下、『スターレイル』)を遊んでいるから、手を付けるか悩んでいる方もいるだろう。そこまでアクション・ゲーム性が変わっていなさそう。『ゼンゼロ』である意味はなさそう。こう思う人は少なくないはず。
実際、筆者も『原神』と『崩壊』シリーズを遊んでいるが、だからこそちょっと待ってほしい。
HoYoverse作品好きの筆者がやっぱり『ゼンゼロ』沼にハマってしまった、そのワケを語っていく。
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本題に入る前にまずは簡単に『ゼンゼロ』について紹介していく。本作は『原神』や『スターレイル』で知られるHoYoverseの新作アクションゲーム。対応機種はiOS、Android、PCのほか、家庭用ゲーム機でもリリース予定だ。
舞台は謎の自然災害“ホロウ”と共生する、近未来都市“新エリー都”。街はホロウに飲み込まれつつあり、内部では未知の物質“エーテル”が充満しており、怪物“エーテリアス”も生息する危機的状況。
そんなホロウと隣り合わせにある文明最後の希望“新エリー都”で暮らしているのが、主人公のアキラ(兄)とリン(妹)。都市の一区画にある“六分街”で、お互い手を取り合いながらビデオ屋を経営している。
ふだんは従業員として働いているが、安全に目的地まで導くホロウのガイド役“プロキシ”という裏の顔も持つ。案内するときはウサギ耳の小型ロボット“ボンプ”を操作する。
ロボットなのにぷにぷに動くので触り心地が良さそうだ。グッズ化を激しく所望する。
主人公といっても戦闘能力は皆無で、剣を振るったり銃を撃ったりすることはない。傍から見れば本当にただのビデオ屋の店員なので、『ゼンゼロ』は終末と隣合わせで生きる人々のありふれた日常を描くゲームなのだと確信した。
そして本作のストーリーでは、3Dキャラクターが並ぶ会話パート以外に、アメコミ調のコミカルなコマ割りで進むパートや、“カートゥーン ネットワーク”のようにぬるぬると動くハイクオリティなCGアニメーションが用意されている。
3種のシーンが交互かつ適度に挟まることで単調にならず、ずっと物語に集中できたのが筆者的にありがたかった。
アメコミ調のシーンでは、ボイスコミックを読んでいるような感覚で楽しむことができる。コマ割りを用いた演出は、これまでのHoYoverse作品にはなかったシステム。イラストも合わさりテンポ感ある掛け合いによって、キャラクターへの魅力と没入感を高めてくれる。
ただ、セリフ毎に“次のページ”を押さなければ進まないのは少しストレスを感じる。せっかくのコマ割りなので、自動読み送り機能などはほしいものだ。
CGアニメーションがハイクオリティなのは『原神』や『崩壊』シリーズのプレイヤーにとって当たり前かもしれないが、それだけに留まらず動きの滑らかさ、表情の豊かさが際立っている。
とくにその象徴として印象的なのが、ストーリー初期から登場するお調子者の機械人ビリー・キッドだ。機械でできているため、アニメーションの際にも硬く動きそうだが実際は真逆。
お調子者ということもあって誰よりも動く。大げさなジェスチャーは、まるでカートゥーンを見ているかのよう。そういったキャラクターの個性や性格に合わせて、機敏に動いてくれるので見ていてまったく飽きないのだ。
その点で考えると『原神』や『崩壊』シリーズとは、ストーリーの演出の仕方やアニメーションの魅せかたが洋風というか、より世界を意識しているのかなと感じられた。
リスクはあるがジャスト回避とパリィは気持ちいい
戦闘は、エージェントと呼ばれる戦闘用のキャラクターを3人1組で編成し、4つぐらいのボタンをひとつ押すだけで、通常攻撃から必殺技、そしてジャスト回避(極限回避)やパリィ(極限支援)まで、誰でも“玄人っぽい”アクションを楽しむことができる。
ただボタンを押しているだけで、格闘ゲームのように派手なアクションがつながっていき、まるでプロゲーマーになったような感覚を味あわせてくれるのだ。
また、敵から攻撃を受けたときの受け身や、追撃の際にはQTE(クイックタイムイベント)が発生するなど、そのときどきにあったアクションが自動で展開されるので、混乱せず攻撃に集中できるのもありがたい。
なかでも筆者が気にいっているのがジャスト回避とパリィだ。「ジャスト回避とパリィって何?」という方のために違いについて簡単に説明すると。
ジャスト回避は、敵の攻撃から一瞬無敵になって避けられるというもの。そのまま攻撃に転じたり、距離を取ることもできる。『崩壊3rd』をプレイしている方にはなじみ深いだろう。
成功すると、キャラクターが青い閃光を出し背景がモノクロになるとともに時の流れが一瞬遅くなる。
パリィは、キャラクターの交代と同時に敵の攻撃を弾き、自動で大ダメージを与えられるカウンター技。パリィのほうが強力な分、連続での使用に回数制限があったりと使う場面が限られる。CBT2から使用できるようになった新アクションだ。
発動タイミングはふたつとも敵の攻撃する直前に発する光(金色の閃光)が合図。ジャスト回避やパリィが決まっときの“お前の攻撃はすべて見切った”と言わんばかりな演出は何度でも使用したくなる。
ただ最初、パリィの回数制限を知らずウキウキで使っていたら、ボス戦で使用できずに焦ったことも。幸いにも攻撃で回復することがわかったからクリアーできたものの、重要な戦闘の前には使いすぎないと心に誓ったのだった。
また、攻撃範囲が広かったり、一撃が重かったりする大型の敵との戦闘になると、ジャスト回避やパリィを駆使する必要があると感じた。スタイリッシュなアクションで気持ちよくなりつつ、ときにはダメージ覚悟の緊張感も楽しめる、このバランスがストレスにならず心地いい。
そして、ずっと使っていたいと感じた筆者おすすめキャラクターも紹介したい。それは長い柄に丸ノコがついた武器を持つメイドのカリンだ。物腰は低いが、「あの、丸ノコの刃が全部むき出しですけど、危ないですよ」とついツッコミたくなるような、物騒な雰囲気を醸し出している。スカートの先に刃が付いているのもふつうに怖い。
攻撃は非常にシンプルで、回転する丸ノコを敵に当てるだけ。しかし、ヒット数がとんでもない。ほぼすべての攻撃が多段ヒットなため、いっぱい飛び出すダメージ数値、ヒットする度にビクビクする敵、ゴリゴリ減っていく敵HP、すべてが快感だ。
また、武器が重いのか腰に力を入れて戦っている姿が、オドオドした性格とは裏腹にギャップを感じ、カッコいいとさえ思い始めてしまった。正式リリース後も、筆者のメインパーティーに入ることは間違いない。
最後に、戦闘画面で気になる点を……。体力や強化特殊スキルのエネルギーゲージが左上に表示されているが、戦闘中は基本的に視線が中央より下に集中しているため変化に気付きにくいのだ。
ダメージエフェクトも少ないため、気がついたら倒れていることも。左下にゲージを移動できるなどの設定が追加されるとうれしい。
また、PC版におけるゲームパッド(PS4コントローラ)とキーボード&マウスでの体感についても書いていく。筆者は基本的にコントローラをメインに使用した。
コントローラ操作ではコンシューマゲームを遊んでいるような感覚でプレイでき、いままで据え置き機で遊んできたユーザーにとってはなじみやすいだろう。ボタンを押すときの誤爆もない。
逆にキーボード&マウスは、PCでFPSやTPSを遊んでいるユーザーにとっては直感的に操作できるはずだ。WASDで動かし、左クリックで通常攻撃、EやQボタンでスキルを発動する。また、回避が右クリックなので避けやすい。
なかでもダッシュ攻撃(回避後に攻撃すると発動)はコントローラよりも発動が簡単だ。コントローラの場合、×ボタンの後に□ボタンを押す必要があるものの、キーボード&マウスなら左右のクリックだけで済んでしまう。
とはいえ、どちらもプレイしやすいので好みに合わせたデバイスを選ぶのがよいだろう。
現代と似た街の光景に終末が迫っていることを忘れる
ストーリーや戦闘以外にも、主人公が暮らす“六分街”を探索でき、新エリ―都での日常風景を味わえる。そこでは、終末と隣り合わせとは到底思えない、平穏な日々が流れていた。
街の雰囲気は日本の都会に近いが、書いてある文字は中国語と英語が多い。でもなんとなく読める。この絶妙なところを突いてくるのがHoYoverseクオリティー。
街を歩く人々も学生からお年寄り、さらには亜人や獣人などさまざま。NPCとの会話では本編と関係のないふつうの日常のことを話したり、プロキシとして依頼されることもある。達成するとガチャアイテムがもらえるのでおいしい。
また、エージェントのオフ姿を見かけることも。ビリー・キッドに話しかけると自分に合うガンオイルを選んでほしいという。ただ、主人公は銃の手入れに詳しくないので、「コインを投げて決めるといいよ」と提案したらナイスアイデアと納得してくれた。
こうした、何気ない会話でもキャラクターの内面が深掘りされているので、操作するときも愛着が湧くというものだ。
そして、街にはラーメン屋、カフェ、CDショップ、ビデオ屋、ゲームセンター、コンビニなどさまざまショップが並んでいる。とくにCDショップとビデオ屋は、音楽や映画をサブスクで満喫できる現実において懐かしい店となってしまった。これが時代の流れか(筆者は20代)。
なかでも筆者おすすめのラーメン屋とゲームセンターを紹介していく。
まず『ゼンゼロ』のラーメンは、ラーメンの悪魔に憑りつかれたのではないかと思うくらい、ラーメンに対するクオリティーが高い。野菜ラーメンから海鮮ラーメン、燻製チャーシュー麺、白湯麺まで種類も豊富。おそらく開発陣に元ラーメン屋がいるのだろう。そうに違いない。
ホロウ探索に疲れたら、いったんすべて忘れてアーケードゲームでひと休み。だが、中毒性がハンパなかった。とくに『ソウルハウンドIII』というミニゲームがお気に入り。
犬を操ってブロックを掘り、アイテムを獲得しながら下へ下へと落ちていくゲームなのだが、深くなるほどトラップが増えるので、早く動かなきゃいけなくなるし、焦りは出てくるしで、いつの間にか画面に釘付け。もはや、ひと休みどころじゃない。でも、ゲームオーバーになったらリトライしてしまう、不思議だ。
ほかにもゲームが用意されており、それぞれに実績やほかのプレイヤーと競えるランキング機能があったので、正式リリース後はプロキシの仕事よりも、ミニゲームに没頭するプレイヤーが現れそうだ。
ちなみに、筆者は初日に『ソウルハウンドIII』でベスト4を記録。なんとなく始めただけなのに、本編よりもかなりの集中力を使ってしまった。けっきょくすぐに順位は抜かされてしまったが、いま思えば一瞬でも1位になりたかったなと後悔している。正式リリース後には本気出す! ってあれ、ミニゲームに没頭するプレイヤーって自分のことだったのか……。
そして『スターレイル』で話題になったゴミ箱ネタは本作にも顕在。なんか物音がして怪しいからなんとかしてほしいと言われたので調べてみると、(ゴミ)箱の賢者が登場。の主人公なら喜びそうだが、『ゼンゼロ』の主人公は違った。まさかのドン引きしての塩対応。でもそれがふつうの反応だ。『スターレイル』の主人公が寛容すぎただけだろう。
ただ、もう慣れたのかつぎに話しかけた際、賢者の反応がなかったからといって、蹴って起こすのが容赦なくて好き。
イベントはそれで終わらず、賢者は特殊なコインを集めているという。ひとまず言うことを聞きコインを渡すと、代わりにキャラクターの強化アイテムなどがもらえた。
ん、待てよ。コインを探すだけでアイテムがもらえるなら、ゴミ箱の賢者だろうがなんだろうと、プライドを捨てお世話になりたい。ゴミを拾う→報酬がもらえる→ 街がキレイになる。こりゃ、いい永久機関が完成しちまったなぁ~~!
『スターレイル』でゴミ箱を隅々まで調べるクセがついてて本当によかった。
『原神』と『崩壊』シリーズを触っている筆者にとって、『ゼンゼロ』はハマれるのか不安だったが杞憂に終わった。新規タイトルの名にふさわしく、新しいHoYoverseはストーリー演出や戦闘体験などあらゆる方法で没入感を演出し、筆者を見事に沼に落としていった。正直な話、まだまだ遊び足りない。
よりスタイリッシュに、アニメチックに描かれており、なによりも都市の日常に焦点を当てているのが新鮮だ。筆者は宇宙と幻想世界への憧れでHoYoverse作品をプレイしているが、現実世界のような街でもファンタジーが展開されるとなると、もう気になって仕方がない。早くゴミを漁らせてくれ。