全国各地を歩き、領地を広げていく戦国位置情報ゲーム『信長の野望 出陣』。歴史シミュレーションゲーム『信長の野望』ファンをはじめ、有名な戦(いくさ)をテーマにしたイベントや、続々と登場する武将などで歴史好きからも話題を集め、多くのファンを獲得している。
この記事では、2023年12月7日のサービス開始100日を記念してインタビューを実施(インタビューは11月下旬に行った)。『信長の野望』の生みの親でもあり、公私ともに本作を遊ぶシブサワ・コウ氏、プロデューサーの小笠原賢一氏、開発プロデューサーの菊地啓介氏の3人にお話を聞いた。
インタビュー前半ではシブサワ・コウ氏に本作のプレイスタイルや魅力について語ってもらい、インタビュー後半ではこれまでの開発の手応えやファミ通編集部からのゲーム内容および今後の方針などに関する質問に答えていただいた。
『信長の野望』関連商品の購入はこちら (Amazon.co.jp)シブサワ・コウ(襟川陽一)
コーエーテクモホールディングス代表取締役社長、コーエーテクモゲームス代表取締役会長。いまなお脈々と続く『信長の野望』や『三國志』シリーズといった歴史シミュレーションゲームの生みの親。文中では敬称略。
小笠原賢一(おがさわら けんいち)
コーエーテクモゲームス常務執行役員、『信長の野望 出陣』プロデューサー。『三國無双』のメインプランナーなどを務め、『信長の野望・創造』、『信長の野望・新生』ではプロデューサーを担当した。文中は敬称略。
菊地啓介(きくち けいすけ)
コーエーテクモゲームス執行役員、スマートフォンゲームの開発ブランドであるmidasブランド長、『信長の野望 出陣』開発プロデューサー。『零』シリーズや『影牢』シリーズ、『よるのないくに』シリーズなどのタイトルでプロデューサーを務めた。文中は敬称略。
シブサワ・コウ氏が語る『信長の野望 出陣』の魅力とは?
――まず、シブサワさんの取材時点のレベル/制圧拠点数/総石高を教えてください。
シブサワレベルは50、制圧拠点数が1700、総石高が32000です。
――さすがです。光栄なことに友人登録をさせていただいていて、たまにプレイ状況を覗かせていただいているのですが、いつも“最終プレイ0分前”と表示されるので、シブサワさんがどのようにプレイしているのかとても気になって、今回の取材のオファーをさせていただいたんです(笑)。
シブサワ見られていたんですね(笑)。私にとってこのゲームは完全に日常というか、日課になっていますね。自社のゲームですが、すごく気に入っています(笑)。朝起きたら遠征で領地を獲得して、寝ているあいだに貯まるおにぎり3個で攻城戦に挑みます。そのあとは商店でおにぎりを10個買って……大体寝ているあいだに城をとられてしまっているので、その10個で取り返しています(取材時は攻城戦 第2期が実施されていた)。
――登用や商店などはどのように利用していますか?
シブサワあまり登用(ガチャ)はしないのですが、商店では兵糧と武将経験値、それに茶室の案内状も買います。あとは毎日パックを登用札以外はほぼ購入していますね。交換所では武将の育成アイテムを優先しています。そんな感じで、朝は遠征や育成も含めて1時間ほど触りながら、出勤してからも隙間の時間にプレイしています。
いや、どちらかというと『出陣』の合間に仕事をしているような感じかな。
一同:(笑)
――拠点はどうやって増やしていますか?
シブサワ出張で遠方に行ったりしたときは、必ず拠点を獲得してそこを軸にして広げていっています。休日はてきとうに散歩したりして……あとは土日のどちらかはゴルフをすることが多いので、遠方にあるゴルフ場付近でも領地を拡大できますね。ゴルフ自体もけっこう歩きますから。
――『出陣』がリリースされる前よりも歩く量が増えたということでしょうか?
シブサワそうですね。以前よりも自宅の周りを歩くようになりました。歴史的な名所も行ってみたくなります。最近は早朝……5時くらいに散歩もするようになったんです。一応、朝早いので身分証も持っていきますね(笑)。
――何故、身分証を……?
シブサワ真っ黒な服装で早朝から歩いているので、ちょっと怪しまれるんじゃないかと(笑)。
――そういうことでしたか(笑)。完全にヘビーユーザーです。準備は大切ですよね。支城も使われていますか?
シブサワもちろん増やしています。一気に領地を増やせますし、近場でもあと少しで100%制圧できそうなところもあり、指定もできるので便利ですよね。最初に購入したのが支城でした。
――私もです。制圧率も順調に増えていそうですね。
シブサワとはいえまだ関東地方で4.9%ですね。全国で0.7%。ずいぶん動いている感じがするのですけど、これで0.7%なの? っていう感じです。
あと、本作がリリースされてから関西方面への出張がなく、まだ拠点を増やせていないので、JR東海コラボ(※)が開催しているうちに行ってみたいですね。
※2023年11月16日4時~12月15日3時59分の期間、JR東海とコラボしたご当地イベントが開催されている。東海道新幹線“のぞみ”停車駅に設置されたご当地スポットを訪問すると限定報酬を獲得可能。
やっぱり初めは自宅の周辺の制圧率を100%にするのが目標でした。地元を歩いていると、いろいろな人が歩いているんだなとか、こんな場所があったんだとか、新鮮な発見がありますね。
――本当に生活が『出陣』とともにある感じですね。
シブサワそうですね。そうなっています。やっぱり歩くことって人間の基本の機能なんですけども、それとゲームが結びついていて、しかもそれが大好きな歴史の世界と紐づいていますので、まるで戦国時代を歩いているようですごく楽しいですね。
――本作ではリアルのご当地イベント(信玄公祭りや大関ケ原祭など)ともコラボされていますが、こういったイベントに参加したり、足を運ばれたりもしているのでしょうか?
シブサワ残念ながらまだ参加できていないんです。ひとまず、関東近郊をメインに楽しんでいますね。もちろん、ゆくゆくはリアルのご当地イベントにも参加してみたいです。
――イベントごとに、いろいろな武将にスポットがあたるのもいいですよね。
シブサワそうなんですよ。みなさんに戦国時代の有名な武将たちってこういう活躍があったんですよっていうのを、セットでお知らせできるのが、我々としては非常にうれしいことだと思うんですよね。
――個人的には、各武将の“列伝”の説明テキストを読むのが楽しみです。ああいった気遣いはとても嬉しいです。さて、シブサワさんの現時点(11月下旬)の部隊編成と軍団戦力はどのようになっているのでしょう?
シブサワ編成はこんな感じです。軍団戦力は98373ですね。早く10万超えたいと思っているんですが……。
――しっかり編成して育成されていますね! とても参考になりますし興味深いです。ちなみに大将格の武将はどうやって選ばれたのですか?
シブサワ基本的には好きな武将を優先しています。やっぱり『信長の野望』なので織田信長は外せないですよね。それと私が初めて作ったゲームが『川中島の合戦』だったので、上杉謙信と武田信玄も絶対に採用したかったです。それと通常編成では与力に採用していますが、攻城戦では回復効果が欲しいので今川義元を大将に採用しています。あとは回復効果でいうと仙桃院も役立ちますね。
――特性もしっかりチェックして編成している、ということですね。部隊1に採用しているということは、毛利元就もお気に入りですか?
シブサワそうですね。性能的にも優秀で毛利輝元と組み合わせて使っています。ほかの部隊も同勢力・同地域でのボーナスを狙うのを優先していますね。
――確かにかなり連携率も高くなっていそうです。
シブサワ兵種を揃えるなどして、どの部隊も連携率26%は保っています。とくに信長部隊は50%を超えています。割と織田家は勢力をそろえやすいので、連携率を伸ばしやすいですね。ただ、それでもやっぱり軍団戦力10万超えないと攻城戦でなかなか勝てないので……早く超えたいです。攻城戦の上位プレイヤーの方は11万~12万を超えた人も多いですから。
――取材前にお聞きしたのですが、小笠原さんはコーエーテクモゲームスの本社の近くになる横浜駅を制圧しているそうです(笑)。
シブサワえぇ、そうなの!?
小笠原はい(笑)。いつもキープできているわけではないですが、大体狙っています。
シブサワ戦力はいくつなの?(小笠原氏のスマホを覗き込むシブサワ氏)
小笠原攻城戦のときは、バフ込みで13万くらいです。
シブサワそれは勝てないよ!(笑)
小笠原でも、私は15万の人を見かけましたよ。
シブサワええ! すごい方がいるね。
菊地本当にしっかりプレイしていただいている方がいらっしゃいまして。私はバフ込みで11万くらいなので、小笠原さんが弱ったところをよく狙っています(笑)。
――それにしても15万はすごいですね。
小笠原バフも込みだと思いますが、本当によく遊んでいただいていますね。
シブサワほかの方がどういうバフがかかっているのか、どこから確認できるの?
小笠原ここです、ここ(出陣時に画面右下に表示される“攻城効果”のこと)。
シブサワあ、本当だ! 早く教えてよ~(笑)。
――皆さんすごい戦力ですね。せっかくなので、軍団戦力の基本的な上げかたについても教えてください。
菊地各武将の育成や編成はもちろんですが、じつは内政がも重要ですね。かなり軍団戦力の数字に影響します。また、武将を覚醒させることも大事です。あとは攻城戦ですと、ゆかりの武将でボーナスを狙うといいですね。
――内政、本当に大事ですよね。軍団編成のやり繰りの楽しさは本作の大きな魅力だと感じています。では、シブサワさんのほうで、「ここを改善してほしい」、「ここが気になる」といったプレイヤー目線のご意見、ご要望などはありますか?
シブサワもちろんあります(笑)。まず、友人になった人といっしょに遊べる要素が欲しいですね。現状ではプレイ状況の確認くらいしかできないので。リアルタイムでなくてもいいので、データ上で連携できたらおもしろそうだなと。リアルタイムだとどうしても会話機能が必要ですが、データだけなら会話も必要ないので、なにかお礼のメッセージみたいなのを送れるだけでいいですし。
菊地そういったご意見はほかにもいただいていますので、現在いろいろ検討中です。また時期が来たらお知らせできればと思います。
シブサワよろしくね(笑)。あとは名城の数でしょうか。いまは100ですが、いずれは200とか300とか増やしてほしいな、と。
菊地歴史にゆかりの深い城や名所はたくさんありますので、いずれは追加していければいいと思っています。また、これからも歴史にちなんだイベントは開催していく予定なので、そのたびにリアルなスポットを拡大していければと考えています。
小笠原できればイベントに際して何か特別なものが手に入ると、さらによいかなと思っています。
菊地小笠原さん、あまり言いすぎないでください(笑)。
シブサワあとは戦場をもっとフィーチャーしてほしいよね。日本は有名な合戦場がいっぱいあるし、実際に歩けたら感慨深いよ。
――確かにそうですね。戦場でイベントがあったら足を運んでみたくなります。シブサワさんからは、このあたりで大丈夫そうでしょうか?
シブサワはい。みんながんばっているから、あまり言っちゃうとかわいそうだからね(笑)。
拠点戦の合戦省略など気になる部分のアップデート要望をぶつけてみた
――ここからは、私および編集部の有志から集めた本作に関する要望についてお聞きできればと思います。まずは地図について、制圧していない残りの拠点数などが分かりやすくなればと。
菊地地図の利便性に関してはズームレベルの追加などはしましたが、本日12月7日のアップデートで空いている拠点を探しやすくする機能を追加予定です。地図周りに関しては引き続き改善を重ねていきます。
――それから、武将を一括覚醒する際に、各武将がどこに編成されているかが表示されると便利だと思うのですが……。
菊地はい。武将の強化や編成に関してはユーザーの皆さんからの要望も多いので、今後改善を検討中です。
――よかったです。これも同様の意見が多いと思うのですが、拠点戦で合戦省略ができるようになるか、または倍速スピードがもっと上がらないかについてはいかがでしょう?
小笠原両側面から検討中です。ただ、合戦をして領土を広げていくのは『信長の野望』としてメインコンテンツだと思っているので、そこを省略してしまうことで『信長の野望』らしくない形にはしたくないなと。
あとはすべての合戦を省略してしまうと、武将の活躍をちゃんと見られなくなってしまうので……。もちろん、プレイヤーの皆さんの要望も把握はしているので、よい落としどころを見つけられればと思っています。
――私も拠点戦は見たい派です。倍速スピードは上げてほしいですが(笑)。つぎの質問としてGPSの精度を上げることは難しいですか?
菊地GPSは機種の性能にもよるので改善するのは難しい部分もありますが、アプリ側でどう処理するかについては課題も残っています。プレイヤーの皆さんからは通信中でボタンも押せないというご意見もいただいていますので、そこに関しては丁寧に対応していきたいです。
通信に関しては少し直すと何かの拍子に動かなくなってしまったり、テストや調査に時間がかかったりで申し訳ないですが、確実に改善はしていく予定です。
――ありがとうございます。歴史紀行の追加は将来的に予定されていますか?
菊地まだまだ日本には有名な街道もありますし、将来的には追加したいと考えています。すでに東海道を踏破して2周目に突入しているユーザーも多いので。
小笠原おくのほそ道とか巡ってみたいですよね。
菊地小笠原さん(笑)。確約はできかねますが、え~……いろいろと……機能を追加しているので、ゆったり、ぜひゆったりとお待ちいただけますと……。
――はい(笑)。あとフィールドのBGMを選択できるようになると楽しそうですよね。
菊地アンケートでも同様の意見はいただきましたので、こちらも現在検討中です。
――最後に、いわゆる小判茶会があるとはいえ、現在はSSR武将の覚醒のハードルが高いように思います。何か覚醒しやすくなるような要素を導入される予定はありますか?
菊地特定のSSR武将を狙って引きたい、という声は多くいただいていますので、今後も特定武将をピックアップした登用を随時開催予定です。
――それはありがたいです。喜んで登用にチャレンジします。
12月7日のアップデートではユーザーレベルの上限解放をはじめ、多数の新要素を追加
――12月7日のアップデート内容についてお聞きしてもよろしいでしょうか?
菊地下記のようなアップデートを実施予定です。
各種上限解放
- 施設レベルの上限解放
- 民忠の上限解放
- 具申が上限に達している場合、ポイントを取得して育成アイテムを交換可能に
- ユーザーレベルの上限解放
新要素・改修系など
- 部隊編成が記録可能に
- 副将・与力の戦法が連携成功時に配下戦法として発動可能に
- メインミッション最新章の追加
- 各種UIの改善
12/14追加の新要素
- 群雄リーグの実装
――副将・与力の戦法が発動可能になると、編成にも大きく影響しそうですね。
菊地より編成する楽しさが増してくると思います。
副将・与力で真価を発揮するSSR武将も出てくると思いますし、過去のイベントで取り逃したSSR武将の再入手方法についても検討中です。
――副将・与力の配下戦法の効果はどのくらいになりますか?
菊地大将の効果がいちばん大きくなり、副将・与力はそれより少なくなります。将来的には、副将・与力の戦法を強化するような要素も入れていきたいですね。
――新イベント“群雄リーグ”についてお聞かせください。
菊地毎日、自動的に合戦が行われ、ランキングを競い合うイベントになります。最初の数日は本拠がある地域を基準に地方リーグを戦い、その結果に応じて全国リーグに参加できます。ちなみに第1回目の“群雄リーグ”は、甲信地方の武将が活躍しやすいです。
――かなり大規模なアップデートですね。
菊地ほかには、UI関連も改修予定です。カジュアルなプレイヤーにはより便利に。コアなプレイヤーには“群雄リーグ”で腕試しをしてもらえればと思います。
コアユーザーだけでなく、カジュアルユーザー向けの改善もしていく
――サービスインから100日が経ちますが、実際に運営が始まってからの手応えや感想はいかがですか? 想定どおりだったこと、想定どおりではなかったことなどお聞かせください。
菊地カジュアルユーザーから本格的なゲーマーまで、幅広い方に遊んでいただいている印象です。こちらで想像力が足りなかった部分として、車を使って長距離を移動したり(※)マイペースに自宅の周りを歩いたりと、ユーザーごとのプレイの幅に対応できていないと感じている部分はあります。
※目的地まで移動して歩くことを指します。運転しながらのスマートフォンの操作は道路交通法で禁止されています。
小笠原とくにコアユーザーの方が想定以上に多くて、レベル50に達している方々のパーセンテージも我々の想定以上です。予定よりも早く新要素を拡張していく必要があると実感していますね。とはいえそれだけではなく、逆に通勤通学時のプレイが中心になる方は基本的に日常の移動ルートが変わらないので、やれることが増えていかないのも問題ですよね。なので、毎日同じ道を通るからこその充実感を感じられるような要素も入れていけたらいいかと思っています。
シブサワユーザーの皆さんの継続率も、当社のほかのゲームと比べると高くてありがたいですね。私自身も『出陣』がなかったら近所を散歩しようとは思わなかったので、楽しく遊ばせてもらっています。
菊地やりたいことがたくさん出てくるゲームはよい傾向にあると思っています。開発し甲斐もありますので、満足度や地域貢献も重視しつつ、皆さんが喜ぶゲームにしていきたいです。まだ始まったばかりで、解決しなければならない課題も多いのですが、着実に取り組んでいきたいと思います。ユーザーの皆さんには末永くお付き合いいただけると嬉しいです。
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