2024年1月19日にプレイステーション5向けに発売予定のアクションアドベンチャーゲーム、『The Last of Us Part II Remastered』。その新モードである“No Return”をカリフォルニア州サンマテオにあるソニー・インタラクティブエンタテインメントの米本社でプレイしてきたので、その内容をお伝えしよう。

あらゆる手段を駆使してランダム要素を乗りこなす、ローグライトな新モード

 No Returnは、1ラウンドごとにさまざまなシチュエーションをサバイバルしていくという、ローグライトな要素の入った戦闘メインのモード。各ラウンド(エンカウンター)終了後には拠点に戻って強化を行ったり装備を整えていき、やられずに最後に待つボスを撃破すればクリアーとなる。

 各ラウンドで使用されるマップや遭遇する敵のタイプ、そしてゲームルールや、“敵を倒すとその場に爆発物が落ちる”とか“近接攻撃で敵が炎上する”などさまざまな効果を持つ“MOD”などがランダムに適用されるので、毎回ちょっと異なるシチュエーションでプレイできるのが特徴だ。

『The Last of Us Part II Remastered』No Returnモード
『The Last of Us Part II Remastered』No Returnモード
アビーとしてジャクソンで感染者と戦うなど、本編にはなかったシチュエーションで遊べる。

ポイント1: ちゃんと本編同様にプランニングとステルスが大事

 記者は最初は、戦闘の比重が大きいモードということで単に正面からドンパチ撃ち合うだけなのかと思っていたのだが、実際にプレイしてみると本編同様にプランニングとステルスが結構大事なのに気がついた。

 たとえば各ラウンドの開始直後には猶予時間があって素材アイテムをいくらか回収できるし、敵もこちらの居場所をわからずに出現して索敵してくる。なので瓶やブロックを投げての誘導や、背後からのステルスキルも有効。「敵がまだ固まってるから、火炎瓶作るためにあっちの部屋入って布探すか」なんていう行動もちゃんとできる。

『The Last of Us Part II Remastered』No Returnモード
WLF兵士+犬のコンビやブローターなんかは火炎瓶で効果的に対処していきたいところ。となると素材アイテム回収が大事になってくる。

ポイント2: Modやギャンビットなどのサブシステムでさらに面白く

 そして一部の例外を除き、拠点から次のラウンドに進む前にその内容をちゃんと確認できるのも大きい。どちらに進むか選択可能な分岐がある時も、「今の装備ならWLF相手の方がやりやすそうだな」とか「銃強化の工作マニュアル欲しいからこっちをやろう」と事前に判断できる。

 そしてこのプランニングを面白くするのが、ゲームを進めていくと増えていくModの存在だ。Modにはフォトフィルターがかかるものなど戦術に直接影響がないものもあるが、爆破トラップがマップ中に設置されるModや、膿疱がランダムに炸裂するModなどは影響受けまくり。

 そんな中で「いや、コレ行けるっしょ!」とか「このモードとこの敵との組み合わせはキツくね?」と考えたり、現地でModのギミックをどう有利に活かすか考えながら立ち回りを変えたりするのも楽しい。面白そうなModがあったりすると、つい攻略を抜きにして選んじゃったりもする。

『The Last of Us Part II Remastered』No Returnモード

 そしてゲームをプレイしていくとMod以外にも“ギャンビット”や“ボックス”などの追加システムがアンロックされていき、よりローグライトっぽさが出てくる。

 ギャンビットは各ラウンドで1回のみ登場する追加目標で、“ステルスキルで2人倒す”などのお題をクリアーすることでさらなる報酬を得られるというもの。ボックスは同様に、マップ内の郵便箱に特定のアイテムを納品することでこちらも報酬を増やせる。

 報酬が増えるということは、それだけ拠点での武器強化や“サプリメント”によるキャラの能力強化、追加のアイテム購入などを行えるので、より先のラウンドに向けて準備を整えられる。

 本編をプレイした人は大体好みのプレイスタイルがあると思うけども、No ReturnではそこにModの影響などを考慮した方向修正が必要となるなかで、さらにこれらの追加目標にトライするか……という駆け引きになってくる。

『The Last of Us Part II Remastered』No Returnモード

ポイント3: キャラによって異なるプレイ感と強化方針

 No Returnでは、本編では使えなかったキャラで遊べるというのも特徴になっている。キャラクターは最初にエリーとアビーが使用可能になっていて、一定ラウンドをそのキャラでプレイすると次のキャラがアンロックされていくという形だ(ちなみにクリアーするかゲームオーバーになるまでは変更できない)。

 登場キャラは“エリー側”と“アビー側”に分かれていて、前者はディーナ・ジェシー・トミー・ジョエルが、後者はレブ・ヤーラ・メル・マニーらが登場。それぞれ初期武器や最初から強化可能な項目が異なるだけでなく、ディーナは工作が得意だったり、ヤーラは常にレブとセットで出撃可能だったり、特性も異なる。

『The Last of Us Part II Remastered』No Returnモード

 たとえばレブなら弓矢の静音性とダメージを活かした立ち回りになるし、自然とそれに合わせて武器やキャラ強化の方針、どんな追加武器を取るかなども変わってくる。本編のエリーとアビーの切り替えよりもプレイ感が結構ガラッと変わるので、新キャラがアンロックされた時はぜひ積極的に使ってみて欲しいところ。

『The Last of Us Part II Remastered』No Returnモード

リマスター版のゲームディレクターにインタビュー

 というわけでプレイする前は「戦闘メインのおまけモード?」ぐらいに思っていたのだが、実際遊んでみたらラスアスのサバイバル部分のエッセンスを凝縮しつつランダム性を取り込んだものになっていて想像以上に面白く、現地の担当PRに止められるまでガッツリプレイした次第。

 なお今回は通常モードをノーマル難度でプレイしたのだが、高難度設定もあるしデイリーランでスコアアタックできたりもするので、コアなラスアス強者の人はそちらで極限に挑むといいだろう。

 さて、現地ではリマスター版のゲームディレクターを務めるマシュー・ガラント氏にインタビューできたので、引き続きそちらの内容もお届けしよう。

マシュー・ガラント

『The Last of Us: Part I』に引き続き、本作のゲームディレクターを務める。オリジナル版である『The Last of Us: Part II』ではリードシステムデザイナー。

No Returnの設計方針について

――No ReturnモードではModで時間制限が出てきたり、本編でのステルス的なアプローチなどがあまり使えないこともあります。どのようにバランスを取って設計したのか教えてください。

ガラント通常のエンカウンターには4種類のモードがあります。まずはアサルト。これはウェーブごとに出現してくる敵の一団を倒すもの。そしてハンテッド。これは敵がわき続けるなかで一定時間耐えきるもの。

 それに加えてホールドアウト。これは仲間を守りながら一緒に建物などにこもって迎撃するものです。最後にキャプチャー。これは人間の敵が陣取っている中で、時間内に突破して金庫を開けるものです。

 このようにバリエーションを用意したのは、さまざまな戦術が活かされるものにしたかったからということがあります。ステルスも、銃も、近接メインも、工作を活用するのもね。

 その上で、ここにキャラクターの特性や出てきたModが加わることで、特定のプレイスタイルが有利になったりします。ステルスが好きなプレイヤーがいたとして、「ステルスが厳しそうな設定だけどそれでも貫きますか?」と尋ねるわけです。そうすることもできるし「オーケー、このシチュエーションはやっぱ近接で行くべきだな」とか判断することもできる。

 このシリーズの戦闘にはさまざまな仕掛けが入っていますから、ランダムに出てきた特定の組み合わせに対してどういう戦術を見出して対応していくか、プレイヤーの皆さんを揺さぶってみたいんですね。そしてこれが楽しいところです。ちょっとしたパズルみたいな部分があります。「いまの手持ちの素材から何ができる?」とか「この状況からなにかいい戦略はあるか?」とか「この先ボスラウンドに行くまでに何を強化すればいい?」という感じですね。

――この先でどんな内容が出てくるかミッションボードでちゃんと確認できるのはフェアでいいなと思いました。あれはいつもああなっているのでしょうか?

ガラントひとつだけミステリーマップというModがあって、それが適用されている時はプレイするまで内容がわかりません。その代わりにクリアーすれば高報酬になっています。武器パーツもサプリメントも通貨も多く手にはいるんですが、その代わり未知の内容に飛び込まないといけないというModです。

 先の内容がわかるようになっているのは意図的に設計した部分になります。先の内容を開示することで、そこにあるリスクとリターンについて戦略的に考えてほしかったんです。

 たとえば分岐があって一方が簡単だけど低報酬、もう一方が難しそうだけど高報酬という時に、「武器や弾丸は今の手持ちで足りるかな?」とか「前のエンカウンターで消耗しちゃったから安全な方にするか?」とか、さらに「じゃあ低報酬の方に行くとして、アグレッシブに追加報酬を狙っていかないとボス戦の準備が整わないぞ」といった中長期的な戦略も出てくる。

 そういった具合に、プレイヤーにこの先に何があるかを示すことで、モードを深く理解していく中でその情報を使ってどう判断していくかというプランニングスキルを習得していってほしいですね。

カスタムモードでもアンロックは進行可能

――No Returnのカスタムモードについて教えてください。カスタムモードでもアンロックのためのチャレンジを進行できるのでしょうか?(「イエス」)では合わない要素があったりしても、それをオフにして遊びながら進行できると。

ガラントそうですね。カスタムモードを入れているのはいくつか理由があって、まぁ特定の組み合わせを出したり特定の要素を外すための仕組みを開発用に作ってあったんですね。なのでそれをプレイヤーの皆さんにそのまま提供してもいいじゃないかということです。皆さんに私達が試すために使っているツールをそのまま渡して、あらゆる変な組み合わせや面白い組み合わせを試してもらったり、通常の限界を超えてModをめちゃくちゃ積んでみたり。

 でもそれ以外にも特定の要素が好きじゃないとか、これはキツすぎて楽しくないとかあったらそれはオフにしちゃえばいい。私たちはプレイヤーに体験のコントロールを委ねることに不安を感じません。好きなように設定をいじってもらって構わないし、難易度やアクセシビリティの点で自分に最適なように調節して楽しんでもらいたいという哲学があります。

『The Last of Us Part II Remastered』No Returnモード

No Return登場キャラの選考理由

――No Returnでは本編では遊べなかったメルやマニーといったキャラが使えます。どういう基準で選んだのか教えてください。なぜオーウェンではないんですか?

ガラントキャラクターの顔揃えは、エリー側とアビー側でバランスが取れるように考えました。その上で人選をするにあたって、まずひとつはファンの人気という要素がありましたね。トミーとかレヴとかヤーラは特に愛されているので、この3キャラは決まりでした。

 もうひとつ、各キャラのプレイ感がちゃんと違うものになるように注力しました。同じようなキャラがかぶるのはやめたかったんです。それぞれちゃんと個性的な特性を持っているような顔ぶれにしたかった。

 そしてそれぞれの能力はちゃんとストーリーに紐づいたものにしたかったんですね。レヴなら弓矢をずっと持っているのでステルス向きとか。あるいはディーナは本編で無線機を直してましたよね? だから工作が得意だとか。ストーリー上の特徴を戦闘能力として反映しているわけです。

 ヤーラの場合はストーリーではいろいろなことがありましたが、兄弟のレヴへの愛は象徴的なものです。なのでヤーラでプレイする時は常にレヴが仲間としてついてきます。レヴを強化する能力アップグレードなんかもあります。その代わりにピストルだけでスタートするので序盤が大変です。それはやっぱり「装備を揃えていくにはどれをプレイする?」という戦略に関わってきます。

――ところで、No Returnモードでアンロックしたスキンは本編でも使えますか?

ガラントはい。ただしエリーとアビーだけです。

『The Last of Us Part II Remastered』No Returnモード

“メインストーリー体験の決定版”

――これはキャンペーンモードについてですが、基本的なゲームプレイと物語そのものはオリジナル版と同様ということでいいですか?

ガラントそうですね。そこについては他のリマスターと同じように考えてもらえればと思います。アート部分でPS5で可能な限りの表現を引き出す、たとえば影のクオリティやLoDがかかる距離とかテクスチャーのクオリティとかそういったものです。

ただオリジナル版は今でも十分に綺麗なゲームですが、それでも高速なローディングやコントローラーのハプティクス機能など、PS5ならではの恩恵を受けられる部分があります。

 個人的にはハプティクスの大ファンです。従来の振動は大きな衝撃などには向いていますが、ハプティクスは微細な振動で繊細な瞬間を伝えられる。たとえばジョエルがギターをクリーニングしている場面で、彼が何があったのかトミーに話している非常に感情的な場面で、ジョエルがギターのフレットなどを拭いているのがハプティクスで伝わります。

 これは一例ですが、全体的にハプティクスによって没入感を高めています。なので本作はメインストーリーを体験するという部分でも決定版と言えると思います。

 それに加えて解像度とフレームレートの点でも強化しています。クオリティモードとフィデリティモードがあり、前者はネイティブ4K解像度で30fps動作、後者は60fpsを優先して内部解像度は1440pでアップスケール出力するものになります。VRR対応のテレビをお持ちの場合はフレームレート制限なしでの動作も可能です。

開発の裏側を明かすLost Levelsとシネマティックコメンタリー

――Lost Levelsも新しい要素になります。製品版には入らなかった3つのステージが入るそうですが、どうしてこの3つが選ばれたんでしょうか?

ガラントこれらは開発のちょっと後の方まで残っていたものですね。収録するステージを絞り込もうという時はもっと早い段階、まだブロックだらけでコンセプトを探っている段階とかでカットしてしまうことが多いのですが、これらはそれなりに後まで生き残っていたものです。

 なぜ最終的にカットされてしまったのかは、それぞれ「このステージはストーリー上こういう役割を担う予定だったんだけど……」といった具合にコメンタリーで語られています。ここの範囲がちょっと長すぎたからとか、話のペースに合わないからとか、ここでやろうとしていた感情の流れは他の場所でやることにしたからとか、そんな感じですね。

 コメンタリーは2種類用意していて、ひとつはニール・ドラックマンによるイントロ映像で、彼の視点から何をやりたかったのかが語られます。そしてもうひとつそのステージの中に入ると、いろんなところに吹き出しのようなものが浮いていて、そこでボタンを押すことで追加のコメンタリーを聞けます。

 後者はそこを担当したゲームデザイナーによるものとなっていて、どんなアイデアだったのか、どんな意図があったのかとかの詳細が明かされるという仕組みです。プレイヤーの皆さんには、開発中のゲームがどんなものなのか見る面白い機会になると思います。仕上げ前なので結構ラフな部分がありますからね。

 それとは別に、本編のシネマティックカットシーンに対してのディレクターによるコメンタリーも収録しています。これはオプションとして本編のカットシーン音声をコメンタリーに切り替えられるというものです。

「No Returnは戦闘システムを把握していた自分でも発見がある」

――No Returnで使うのが好きなキャラクターは?

ガラントいくつか好みはありますが、自分はステルスプレイヤーなのでレヴは間違いないですね。アダプティブトリガーで弓を引いている感覚が得られるので彼が持っている弓矢も好きですし。

 それと仲間とプレイするのも好きなのでヤーラでしょうか。信頼する相手に背中を任せられるという安心感がありますし、プレイ中のレヴとのやり取りなんかも楽しいです。

 もうひとりはトミーですね。トミーは特製のスナイパーライフルを持っていて、これは強力で使っていて楽しいです。

 でも自分の好みのプレイスタイルとは逆のキャラクターも楽しいですよ? たとえばディーナなら工作スキルを活かさざるを得ないですから、自分の殻を破って「お、スモーク投げてから拘束して連続して倒していくのは意外といいね」といった感じに遊べます。

 これ、リードシステムデザイナーとしてオリジナル版の開発中も相当遊んだ上でですからね。システムは全部把握しているのに、No Returnモードで実際普段と違うことに挑むとなると発見があります。