ライトフライヤースタジオが手掛けるシングルプレイRPG『アナザーエデン 時空を超える猫』(以下、『アナデン』)。本作のメインストーリーは、『クロノ・トリガー』や『クロノ・クロス』などで知られるゲームクリエイター加藤正人氏が手掛けており、2017年4月のリリース以降、長期にわたって紡がれてきた。現在も主人公アルドたちの冒険は続いており、2023年8月には、メインストーリー第3部 虚時層輪象編“時間帝国の逆襲”の中編がリリース。パラレルワールドとはまた異なる時層空間“虚時層” のB.C.20000が舞台となる。
本記事では、加藤氏を始めとするライトフライヤースタジオ開発スタッフのインタビューをお届け。第3部中編をもって、なんと100章を突破したメインストーリーと、今後の展望についてうかがった。
なお、第3部中編のリリースを記念したキャンペーンが、2023年10月31日(火) 23時59分まで実施中。メインストーリーを進めることで☆5キャラクターをゲットできる機会なので、お見逃しなく。
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第3部中編リリース記念キャンペーンは
10月31日(火) 23:59まで!
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メインストーリーを進めると☆5キャラクター最大6人と出逢える!
第3部中編リリース記念キャンペーンは今月まで!
お見逃しなく!
#アナザーエデン https://t.co/HpM684himn
— アナザーエデン 時空を超える猫 (@rpg_AE)
2023-10-17 18:01:46
加藤正人氏(かとう まさと)
『アナザーエデン 時空を超える猫』シナリオ・演出
竹嶋大輔氏(たけしま だいすけ)
『アナザーエデン 時空を超える猫』ディレクター
井上幹氏(いのうえ かん)
『アナザーエデン 時空を超える猫』サウンドディレクター/コンポーザー
第3部前編で、もっとも好評だったのは“船”!
――まずは、第3章前編の反響についてうかがいます。前編では、バディや船での移動が追加されるなど、システム面で大きな変化がありましたが、ユーザーの反応はいかがでしたか?
竹嶋バディに関しては、これまではキャラクターたちの育成面としてスキルなどを縦に伸ばしていく部分が大きかったところに、横の幅を持たせる形で、新要素の“環境”とともに実装しました。これまでに登場したキャラクターの中にも、お供的な存在がいるので、バトルの強さとして以外にも「あのキャラクターもバディになってくれるんじゃないか」といった期待もしてもらえているのかな、と思います。
――海上の冒険も、大きな追加要素でしたよね。
竹嶋前編でいちばん大きかった追加要素は船ですね。生放送で発表したときの皆さんの反応もそうでしたし、実装後も探索を楽しんでいただけたと思います。やっぱりRPGを好きな方が遊んでくれているのもあって、予想以上に好評でした。本当に、入れてよかったなと思いますね。
加藤『アナデン』のコンセプトに、“RPGに冒険を取り戻す”というものがあったんですよね。船というのはやはり冒険に欠かせないものでしたので、前編でそれを実装できて、お客様の皆さんに喜んでもらえたのはすごくうれしいです。「自分たちがやろうとしたことを、『アナデン』ファンの人が求めてくれていたんだ」というのを再確認できたという意味でもよかったですね。
――ということは、船はかなり前から取り入れたいと思っていたのでしょうか。
竹嶋自分がディレクターになる前のタイミングで、「乗り物で世界を探索したい」という企画を出したことがあったんですよ。当時は実現できなかったのですが、第3部で虚時層という新たな舞台に行くとなったときに、「ここで乗り物を入れたいね」となりまして。もちろん、自由に移動出来るということは、メインストーリー以外に多くの探索要素が必要ですので、制作量は多くなって大変だったんですけど、それ以上に「入れてよかった!」という思いがあります。
加藤やっぱり、運営していく中で継続的に発生する作業に対応しつつ、新たなシステムを入れ込んでいくのはかなりキツいんですよね。みんないろいろとアイデアは出すんですけど、それをうまく実装できるかどうかはまた別の話で。今回はみんなががんばってくれたおかげで新システムもちゃんと実装できて、お客様にも喜んでもらえたので、本当によかったです。
――アイデアは出たけれどボツになった、というものはけっこうあるのですか?
加藤そうですね。実際に作ってみたけどボツに、というものもけっこうあります。僕らも試行錯誤でやっている部分があるんですよ。新しいアイデアを出したら、ちゃんと自分たちでおもしろいかどうかを検証して、基準をクリアーしたうえで初めて実装するようにしています。泣く泣く潰れていったアイデアもあるので、いつかうまく復活させられたら、と思って一同がんばっています。
――第3部前編の新システムを作りながら、『テイルズ オブ』シリーズとのコラボなどでも新システムを実装されていますので、『アナデン』チームのスピード感は本当にすごいですよね。
竹嶋メインストーリーも含めて並行していろいろと作っているので、どこにどれだけ人を割いて作り込むか、というところでは難航することもあります。加藤さんが言ったように、泣く泣く諦めたものもあるので、そのあたりは次回に教訓として活かしたり、いつか復活させられたりしたらいいなと思います。
王道は大事にしつつ、虚時層らしさを入れ込んだサウンド
――虚時層という新たな舞台で展開する第3部について、音楽面ではどのように新しさを出していったのでしょうか。
井上メインストーリーでは、音楽面でも『アナデン』としての王道を貫きたいなと思っているんです。一方で、舞台やシステムに感じる新しさをサウンドにも反映できないか、というのはすごく考えました。これまで大切にしてきた楽器やケルティックな要素は大事にしつつ、テーマ曲に変拍子を加えるなどして、虚時層の得体の知れなさみたいなものをワクワク感に落とし込む工夫をしていました。
――第3部前編の音楽に関して、ユーザーからの反響はいかがでしたか?
井上テーマ曲はとくにすごい反響がありました。バトル曲は、第1部でも作曲していただいたプロキオン・スタジオの土屋俊輔さんに作っていただいたんですけど、こちらも好評でしたね。船に乗っているときの音楽も、「世界観にマッチしている」という評価をいただいていて、作り手として素直にうれしかったです。
――第3部前編は、これまでの『アナデン』にはなかったスチームパンクな世界観でした。それらを音楽で表現するにはいろいろなチャレンジがあったと思います。
井上スチームパンクということで、蒸気をイメージするような木管楽器、鉄のイメージを出す金属のパーカッションなどを全体に散りばめたんですけど、それらと世界観のマッチングを評価していただきました。
竹嶋まず「フィールドやボスの見た目を確認したい」とサウンドチームに言われて、そこから「こういう曲はどうでしょう」とサンプルを上げてもらったのですが、そのタイミングで「今回はスチームパンクだからこんな音を混ぜ込みましょう」みたいな話は細かくしていました。長年いっしょに作っていますから、作業や相談はすごくやりやすかったですね。
――曲作りに関しても、長年の連携が活かされているのですね。
加藤そうですね。最近は、メインストーリーのポイントを伝えた後は、サウンドチームに自由に考えてもらうようにしています。
猫人が暮らすB.C.20000。アルドたちは何を見て、何を考えるのか
――第3部前編の実装から約10ヵ月を経て、ついに待望の中編がリリースされました。前回のラストはかなり気になる展開になってしまいましたが、その後、アルドたちはなぜB.C.20000という古代に行くのでしょう……?
加藤もちろん、前編のラストからいきなり古代に飛ぶわけではありません(笑)。“時のなる樹”の上で帝国側が接触してきた後、帝都に移ってまたひとつ事件があるのですが、それをきっかけに古代へ、という流れになっています。
――前編のシナリオを書いている時点で、「つぎは古代だな」と考えていたのですか?
加藤第3部の終わりまでの流れ自体は、漠然と考えていました。ただ、具体的なシナリオの展開については、その都度詰めていっています。第3部をスタートするときに竹嶋さんたちと話し合って考えたんですけど……これまでは過去、現在、未来といった時空で分けていて、時の流れに沿って文明が進化していましたよね。一方、第3部の舞台は虚時層という、各時空がある意味でひとつにつながっているようなものにしよう、と。
――時空どうしの関係が、従来のものとは異なるわけですね。
加藤川の流れのように、過去と現在と未来が一本につながっているのではないけれど、いろいろな時空がひとつのものとしてあるような、特殊な空間ですね。古代と言えば、『クロノ・トリガー』などでは、恐竜人のような別の進化をした生き物がいる原始的な古代を作ってきましたが、虚時層で恐竜人を出すのも違うだろうと。
――そこで出てくるのが猫人だと。
加藤やっぱり『アナデン』は猫にこだわっているゲームなので、今回は「猫が進化した文明を出そう」となりました。機人の世界(第3部前編)から猫人の世界(第3部中編)に移って、さらにもうひとつの世界が後編で登場するわけですが、そこはまだ秘密にしておきます。この3つの文明は、一応は過去、現在、未来という形で存在しているけども、それぞれ軸が違う、別の文明の世界なんです。そんな3つの文明をひとつの世界に閉じ込めてしまう、それが虚時層のイメージですね。
――「ひとつの世界に閉じ込めてしまう」となると、古代の猫人は、自分たちが生きる世界とは別に、機人の世界があるということを把握はしているのでしょうか。
加藤猫人たちがその後どうなってしまうのか、みたいなことは漠然と見えているんですよ。未来に自分たちの文明はないとわかったうえでどう生きているのか、みたいなことを新たに描ければなと思います。そういった独特な猫人文明のなかで、アルドたちが新たな種族、新たな生きかたに接して、何を考えどんな冒険をしていくのか、それを中編における要のひとつにしようと思って作りました。
竹嶋それと、中編は前編よりも時間帝国が物語に絡んでくるので、相手との駆け引きみたいな部分もより体験できると思います。
――そうして新しい世界を旅する中で、システム面でもまた新要素が出てくるのですね。
加藤そうですね。「今回はどんな要素を入れようか」という会議をしたときに、「ロボットを出そうよ」という話がふっと出てきたんですよね。そうしたらもう、「やっぱりロボットか。仕方ない、やるか!」みたいなノリで決まって(笑)。敵も味方も1体ずつのロボットバトルにしたら、どうおもしろくできるだろうか、というところからいろいろと考えていました。
――いままでにないシステムをバトルに取り入れるのは、かなり大きな決断だったのではないでしょうか。
加藤本人たちは楽しみながらやっているんですけど、ヒィヒィ言ってもいます(笑)。じつはロボ以外にも、「巨大戦艦バトルをやりたいね」なんて話も出ていたんですよ。自分が艦長として指揮をして、主砲やレーザー砲を撃ったり、索敵機能を使って防御したり……コマンドを駆使すれば、艦隊シミュレーションができるんじゃないか、って。
――それもまたすごそうですね。
加藤敵は時間帝国ですから、当然相手は複数の艦隊を持っているわけですよね。そこで「こちらも鬼竜なり何かしらの船に乗って、戦艦バトルをしよう」なんてアイデアも出ていました。最初は1対1で、だんだんと戦艦の数が増えて、最終決戦は一大艦隊戦にしよう、みたいな妄想だけは進んでいったんですよ。ただ、考えてみたらやる暇がないと(笑)。
竹嶋ロボットと艦隊戦の両方を入れるのはさすがに無理でしたね(笑)。
加藤ですので、中編はロボバトルに注力しています。艦隊戦のアイデアはいったん置いておいて……それがどこかで実現するかどうかはわかりませんが、いつかのお楽しみということで。そういった取捨選択は、竹嶋さんたちと都度話し合って決めていますが、みんながちゃんと僕を止めてくれるんですよ。『アナデン』が空中分解せずにまとまっていられるのは、本当に周囲のみんなのおかげだと思っています。
猫人の文明と自然が織りなす、カラフルな画面を楽しんでほしい
――古代でありながらもロボットが登場するということは、猫人たちの文明はそれだけ発達しているということでしょうか。
竹嶋古代なんだけど、テクノロジー的なものもある世界です。これまでの古代、現代、未来とも違った雰囲気にしたくて。ちなみに、ロボットはまた違った軸で登場するものです。猫人の世界において、ロボットは少し異質な存在になります。そのあたりは実際にゲーム内で確認していただければと。
加藤やっぱり古代と言われると、古めかしい、自然の中で生きているような世界を想像するじゃないですか。猫人と言われると、とくにそう想像しますよね。でも、ただの古い文明ではおもしろくないから、猫人たちの素朴さがある中にも、未来的な超文明みたいなものを融合させた新しい古代を作れないか、というのは竹嶋さんの意向でした。
竹嶋テクノロジーレベルは高いので、町や村に行くと文明は見えるんですよ。でも一方で、古代らしい、人の手が入っていないような大自然とも共存してほしかったんです。ですので、フィールドやダンジョンは自然が多いですね。ただ、そのままだとこれまでの古代と雰囲気が似てしまいがちなので、その差別化をどうしようか、というのはアートチームとも相談していました。
――結果的に、どのような差別化が図られたのでしょうか。
竹嶋メインストーリー内にも登場するものですが、ところどころで赤い岩が出てくるんですね。そのあたりにちょっと注目していただきたいなと思います。それと、猫人の文明はテクノロジーが発展しているんですけど、猫ということで、アートチームが“開放的で、カラフルでキュートな印象”にデザインしてくれました。探索していると、猫人の生活感なんかも感じていただけるんじゃないかと思います。
カギを握るキャラクター、カムラナージュとヴェレット
――中編ではカムラナージュ、そして新キャラクターのヴェレットがキーキャラクターになるとうかがいました。カムラナージュについては、第2部で登場させたときから「第3部で重要な役割を任せよう」と考えていたのでしょうか?
加藤最初にカムラナージュを考えたときに、メインに深く絡んできて、設定的にもすごく重要なキャラクターになるだろうな、くらいの想定はしていました。具体的にどの位置に落ち着けるかは考えていなかったんですけど、当初とは少し違った形になったかなと思います。お客様の中にも、「ある種パラレルな世界で、アルドの立ち位置にいるキャラクターなのでは?」と思われていた方が多いかと思います。
――SNSなどを見ると、そのように考察されている方がいますね。
加藤僕としてもそう思っていたんですけど、アルドよりも年齢が低いので、別軸のアルドとはまた違った位置づけになるだろう、という風に感じていました。第3部中編で実際にどのような存在だったかが明らかになってくるので、それはぜひご自分でプレイして楽しんでもらいたいですね。カムラナージュがクロノス一家とどう絡んでくるのか、なぜアルドたちの世界に来たのか、そういった物語の始まりの部分がどんどん明らかになっていきます。
――それだけ、第3部中編ではカムラナージュが物語の深い部分に関わってくると。
加藤そうですね。これまで「こいつは何者なんだ」と思っていた人たちは、すごくワクワクしながらプレイできるんじゃないかと思います。ある意味、中編の主人公と言っても過言ではないなと。
――では、新キャラクターであるヴェレットについてはいかがでしょうか。
加藤中編の冒頭で、いったん時間帝国に行くという話を先ほどしましたが、ヴェレットは帝国側の人間として絡んでくるキャラクターですね。しかも、“帝国の人間だけど、一歩引いたところにいる”という存在です。そういう立ち位置のキャラクターをアシュティアと絡めたいなという考えが自分の中にあったので、ヴェレットはアシュティアの幼馴染にしています。そうなると、アシュティアは子どものころから天才的な存在だったので、ヴェレットもそういった方向になるだろう、と。
――学者としての側面を持つキャラクターになったわけですね。
加藤ただ、アシュティアと同じ科学者にするとおもしろくないので、ヴェレットは逆に、考古学者的な位置づけになっています。帝国で科学を追求するのではなく、むしろ異端の存在として帝国から離れて現地調査をしているような感じだとおもしろいな、と思ったんですよ。結果として、アシュティアとやり合える、個性の強いユニークなキャラクターになりました。
――ヴェレットが連れているバディも気になります。説明文に“お湯をかけると元に戻る”とありますが、これはいったい……?
加藤ヴェレットのお供となるバディを登場させるなら、やっぱりヴェレットが発掘した存在だろうと考えたのですが、“発掘”と言うくらいだから、出てきた段階では生き物ではないわけじゃないですか。それなら、遺物のようなものが出てきて、ヴェレットが何かのきっかけでお湯をかけたら生き返った……みたいな話だったらおもしろいな、とふと思っちゃったんですよね(笑)。
――なかなかすごい話ですね(笑)。
加藤冷静に考えたらヤバいなと思うんですけど、「おもしろいからいいじゃん」って。チームメンバーからとくに文句も出てこなかったので、あとは実装するスクリプターがうまくやってくれればいいや、と(笑)。
竹嶋補足しますと、“しょっちゅう干からびるので、お湯をかけて都度戻す”というわけではないです。ヴェレットがバディと出逢った時に、という感じですね。
加藤そこにもね、仕掛けがあるので。このバディが、ああいう形で蘇ったのはなぜかというところでもびっくりしてもらえると思うので、楽しみにしていただければと思います。
――ちなみに、ヴェレットはストーリーを進めると仲間になるのでしょうか。
竹嶋いえ、前編のミナルカと同様に、メインストーリー上でいっしょについてきて、話に参加するような立ち位置ですね。
加藤メインの話にはしっかり絡んでくるので、“出逢い”で仲間にしなくても、キャラクターの魅力は楽しんでいただけると思います。
既存のシステムを活かしつつ、ダイナミックさが楽しめるロボバトル
――先ほども少し触れましたが、改めてシステム面のお話を聞かせてください。「やっぱりロボットか。仕方ない、やるか!」となったとのことですが、ロボットのアイデアがでてきたそもそものきっかけは?
竹嶋大前提として、『アナデン』ではこれまでも、大きなアップデートをするときには、それまでのアナデンに無い新しい体験作りをしてきたんですよね。たとえば第2部ではわら坊の育成や、分割パーティーなどを入れて、先ほどお話しした通り、第3部前編でもいろいろと新要素を盛り込みました。じゃあ今回はどうするかとなったときに、「乗り物」にスポットをあてました。
――前編では船が追加されましたが、また新たな乗り物を出そうと。
竹嶋第3部前編から、中編にも乗り物は用意する想定でした。ただ、前編とは違う新しい移動手段であり、かつ体験的にも新しいものということで、ロボットがあがりました。そして、ロボットを出すなら、やっぱりバトルも入れたいとなりまして。
――なるほど。移動でもバトルでも使えるものとしてロボットは登場するんですね。
竹嶋ストーリー上、アルド一行が扱えるロボットは1体ですが、ロボット用にまったく新しいバトルシステムを作るというのは、タイミング的には難しかったんです。そこで、システム自体は既存のものを基本にしつつ、パーツごとに分けるというアイデアが出てきたんですよ。遊び慣れているルールの方が、分かりやすいという点もありますね。
――ロボットの腕部や頭部などが集まって、ひとつのパーティーのようになると。
竹嶋そうですね。両腕や頭部などにそれぞれスキルを設定して、ロボットバトルとして作り込んでいきました。完全に新しいバトルシステムが入るというよりは、『アナデン』のバトルがベースでありつつ、ロボットらしい大規模な戦いが楽しめるようになるという感じです。
――右腕はビーム、左腕はパンチ、というようにコマンドを選択しながら戦っていくのですね。
竹嶋あとは腕などの部位をフレームと呼んでいますが、それを修復、回復するようなコマンドもありますし、剣や銃、盾などを装備することで使えるスキルも増えます。また、各フレームの破壊判定のようなものもあって、コアとなるボディを壊されると敗北になるので、そうならないように守りつつ戦っていくことになります。
――移動手段としてのロボットについてもお聞かせください。つまり、フィールドでロボに乗って移動できるということでしょうか。
竹嶋前編の船と同様にワールドマップの自由移動ができますが、今回はアルドがいつも歩いているフィールドをロボに乗って歩ける場所もあります。通常よりも速く移動できる快適さがありつつ、フィールドには通常のパーティーでは戦えない巨大な敵が歩いていたりするので、そういう敵に対してロボットで立ち向かうこともできます。そうして素材を集めて、さらにロボットを強化していくようなイメージですね。
――ロボバトルは、イベント時以外でも楽しめるんですね。
竹嶋基本的に(第3部中編のバトルの)7割くらいは通常のパーティーメンバーで戦って、要所要所をロボットで戦っていく形になります。今回、ロボバトルで味わっていただきたいのは、“成長と壁”なんです。個人的にはRPGの体験には“成長と壁”があると思っていまして。
――キャラクターを育てることで、これまで勝てなかった相手に勝てるようになる、ということでしょうか。
竹嶋はい。ただ、運営型ゲームを長く続けていると、キャラクター育成が進みすぎてしまって、それを体験できなくなってきます。そこで、このロボットバトルで、再び成長と壁を味わってもらいたいんです。もちろん、ここまで育ててきた仲間が意味をなさないのはダメなので、全部が全部ロボバトルではないですし、さすがに今から雑魚敵を何回も倒して少しずつレベルを上げて、という形にするのも手間が勝ってしまう状態にもなりますので、戦う敵は大量ではありません。
――ところで、今回登場するロボットの見た目はスタイリッシュなものになっていますよね。ロボットのデザインにもいろいろな方向性があると思いますが、どのように方針を決めていったのでしょうか。
竹嶋最初にいくつかデザインを出してもらって、加藤さんがそこから選んでいきました。アートチーム側としては、『アナデン』らしいヒロイックなロボとは何かを詰めていくなかで、無機質すぎず、でもオモチャには見えないようなバランスを取るのがたいへんだったようです。ロボットの手のひらにギリギリ人が乗れるくらいのサイズ感で作ってもらいまして、そういった演出に違和感が出ないようなデザイン、というのも意識して決めていきました。ポージングにも拘っていて、可動域が大きくてポーズの自由度が高い、いい仕上がりになったと思います。
――このロボットが動くと、また迫力がありそうです。
竹嶋アニメーションもこだわって作ってくれているので、そこは楽しみにしていてください。バトルも含めて、迫力のあるグラフィックを楽しめると思います。
加藤ロボットのムービーはしびれるよね。これだよこれ、みたいな(笑)。本当に、少年の心が燃え上がっちゃうんですよ。
竹嶋ムービーは3Dと2D、どちらでロボットを表現するかという点がありましたけど、3Dで作れてよかったと思います。
――中編のキービジュアルにも、ロボットが大きく描かれています。これは、前回同様にコンセプトアーティストの幸田和磨さんが描かれたものですよね。
竹嶋前編はスチームパンク世界で暗鬱さもあるイメージで描いていただきましたが、中編ではそこからガラッと変えて、青空が見える、爽やかさのあるアートに仕上げていただきました。雲を突き抜ける滝やロボットなど、インパクトのあるものになっていると思います。細かい要素もいろいろと散りばめられているので、ゲームをプレイしてから見ると、また理解が深まると思います。
加藤ちなみに空と言えば、今回の世界では、空の向こう側に土星のリングのようなものが見えるんですけど、そのリングが何を意味しているのか、というのもストーリーでは重要なテーマになってきます。そこも含めて楽しくプレイしていただけるのではないかな、と。
未来的な印象と、自然が溢れているさまを曲の中でまとめる
――今回の舞台は、古代らしい自然がありながらも文明があり、さらには猫人もロボットも登場するということで、音楽で表現するのはなかなか難しかったのでは?
井上そうですね。先ほどお話しした通り、第3部が始まってからは、『アナデン』の王道からブレない一方で、新しいことにチャレンジしてきました。虚時層の古代は、これまで登場した過去、現在、未来というのとはまた少し違います。以前は時代に合わせたサウンドを重視していたんですけど、第3部に入ってからは、目に見えるもの、風景から受ける印象を重視するようにしました。
――その世界で描かれているものを音楽に落とし込むと。
井上ですので、前編はスチームパンクらしく、鉄や蒸気を思わせる音を取り入れました。この取り組みかたは、『アナデン』としてもこれまでになかったものかなと思います。中編ではロボットやテクノロジーの未来的な印象と、大自然や巨大生物が持つ印象をまとめて曲の中に落とし込んで、「時代というよりも見た目の印象にマッチするようなものにしよう」とがんばって作りました。
――たとえば、シンセサイザーで未来的な部分を表現しつつも、民族的な要素を含んだような音楽になる……とか?
井上まさにその通りですね。これまで『アナデン』を遊んでいただいた方は、古代と言えばティンホイッスルやアコースティックギター、パーカッションのような生っぽい音を連想されると思いますし、未来だとシンセサイザーの印象があると思うんですよね。そこをうまく組み合わせて、大自然が広がるさまをパーカッションなどで感じさせつつ、その奥に見える機械的なオブジェクトを、シンセサイザーのフレーズで表現しています。
竹嶋第3部中編の曲作りは、本当に難しかっただろうなと思っています。世界観が特殊ですし、文明に寄せるのか、古代に寄せるのか? というところが悩ましかったと思いますが、ロボバトルの曲も含めそれぞれが本当にいいものになっていると思います。子どものころからRPGを遊んできた身としては、新しくも懐かしくもある雰囲気を感じたりして、RPG好きの方には気に入ってもらえるBGMが多いんじゃないかと思います。
井上ロボバトルの曲はスキルのSEもかなりリッチに作っていますし、ロボットや敵のスケール感、そのテクノロジー感などもうまく表現できたと思います。
ユーザーの意見を受けて、細かいところも遊びやすく
――ここまで、中編のメインストーリーや目玉となるシステムについて伺ってきましたが、ほかにはどんな追加要素がありますか?
竹嶋いろいろなところを探検したくなるような寄り道要素は用意しています。今回はトレジャーハントという、宝探しのような要素だったり、ちょっとしたミニゲームや、前編のバウンティハンターのようなバトル関連のものも用意していますので、探索の一環として遊んでいただければと思います。
――そのほか、既存要素の改修なども行われるのでしょうか。
竹嶋新規要素ほど大きなポイントではないのですが、前編で「遊びにくい」という声があった部分には手を入れています。たとえばシンボルエンカウントについては、エンカウント操作系のグラスタの付け替えなく、敵を自分で避けられるというメリットがあるものの、「素材を集める際、マップを切り換えて敵を復活させないといけないのが面倒」という意見をいただいていました。それを受けて、今回はモンスターが湧き出てくるスポットも用意しましたので、素材集めをしたいときに利用してもらえればと。ほかにもいくつか調整を入れています。
第3部は、後編で終わりではない!?
――気の早い話ですが、中編の後のストーリーは、すでに固まってきているのですか?
竹嶋これは公式生放送でもお伝えしたのですが、前編、中編ときて次回は後編なんですけど、後編で終わりではなく、もうひとつ(ストーリーが)あるイメージでいます。
加藤後編だけでは収まりきらないだろうな、という予想はしています。おそらく、後編では機人や猫人に続く新世界が出てきて、その後に、時間帝国やアルドたちの現実も含めての最終決戦が必要になるんじゃないかなと思っています。
竹嶋アルドとクロノス一家の最後を描かないといけませんからね。
加藤『アナデン』がスタートした当初から、自分の中では3部作でやりたいという想いがあったので、クロノス一家の物語としてはここから一気に盛り上げながらまとめていって、その後は、また別のテーマやコンテンツでの『アナデン』を続けていければと思います。
――加藤さんはこれまでさまざまなゲームのシナリオを担当されてきましたが、ここまで長く続く物語を書くのは初めてではないですか?
加藤ゲームとしても7年目に入っていますし、僕はゲームがリリースされる2年前からシナリオを書いているので、もう10年近い付き合いになりますね。ここまで続くとは当初予想もしていませんでした。メインストーリーは、シナリオの展開ごとに章分けがされているじゃないですか。今回の中編で、これが100章を突破するんですよ。
――100章はすごいですね!
加藤これまでに書いてきた家庭用のRPGは、だいたい30章くらいで終わるんです。しかも僕はシリーズものをあまりやらないので、基本的に1本書いたら別の話を作ってきたんですよ。その僕が100章も書くとは思いもしなかったので、感慨深いものがありますね。本当に、この中編でひとつ、やり遂げたような感覚があります。
竹嶋初期から遊んでいるお客様からしても、100章というのはちょっと胸にくるものがありますよね。
加藤カムラナージュがここまで重要なキャラクターになるとは……という思いもあります。第1部を書いたころには、カムラナージュの存在を想定もしていなかったんですよ。最初はクロノス一家のアルドとフィーネの物語だったのが、母親マドカについて語られて、だんだんとクロノスの影が大きくなって、そして今度は虚時層という流れの中で、別のクロノス一家が出てくる。そこにアルドとフィーネが絡んでいくことで、彼ら一族の物語が最後どうなっていくのか……。自分の中では最後のオチだけは見えているので。
――そこに向かってどう物語を紡いでいくか、ということですね。
加藤クロノスの物語、アルドとフィーネの物語、そしてカムラナージュの物語。いっしょに旅をしてきた仲間たちとの物語がどう決着するかを、早くお見せしたくてワクワクしています。どんどん書き上げていこうと思ってはいるんですけど、毎回遅くなってしまって、ごめんなさい(笑)。できるだけ早く決着に持っていけるようにがんばりますので、楽しみにしていてください。
――長い物語が紡がれる中で、たくさんの音楽も生まれましたよね。7月には、『アナデン』のオーケストラコンサートが行われました。
井上『アナデン』としては初のコンサートだったんですけど、第1部から第3部の前編までの、あらゆる曲をオーケストラアレンジで上演しました。第1部から関わっていただいているプロキオン・スタジオのマリアム・アボンナサーさんと土屋さんにも編曲で参加していただき、大盛況で終えることができました。じつはいま、このコンサートの音源化を進めているので、どこかで配信ができれば、と考えています。
加藤ロック系のライブもまたやりたいですね。コラボカフェなども含めて、お客様といっしょに楽しんでいける活動をやっていきたいです。
――では最後に、プレイヤーの皆さんへのメッセージをいただければと思います。
竹嶋ストーリーを楽しんでいただきたいのはもちろん、これまでの冒険での出来事、伏線が回収される場面や、懐かしさを覚える場面もあると思うので、そのあたりも楽しみにしてください。前編同様に世界の探索を楽しめるように作っていますし、難易度も含めて、キャラクターが成長しきっていてもRPGとして楽しめるように、というところを個人的には意識していますので、そのあたりも楽しんでもらえたらと思います。
井上サウンドとしては、世界観をどう音に落とし込んでいかというところにこだわっていますので、そこを感じていただけたらうれしいですね。音楽的にも尖ったことをやっているので、楽曲に耳を傾けていただければと思います。
加藤第3部で虚時層という新たな舞台が登場し、これまでになかった世界観の中で物語を描いてきました。今回の中編では猫人の世界で、また新しい『アナデン』の一面を楽しんでもらえると思います。その中で、第1部から描いてきたクロノス一家の物語もクライマックスに向けて盛り上がっていきますので、ぜひプレイして楽しんでもらえるとうれしいです。