2023年 10月30日(月)に発売されることが発表された、iPhone/iPad版『バイオハザード ヴィレッジ』。ライブ配信されたカプコンの‟TGS2023 スペシャルステージ”では、『バイオハザード RE:4』も同様の形式で2023年内に発売されることが発表され、話題になっている。
本稿では『バイオハザード ヴィレッジ』のプロデューサーを務める神田剛氏と、『バイオハザード』シリーズプロデューサーの川田将央氏にインタビューを実施。iPhone/iPad版開発の経緯や、新規市場で展開していくうえでの戦略・狙いなどを聞いた。
Apple製品の購入はこちら (Amazon.co.jp)川田将央氏(かわた まさちか)
『バイオハザード』シリーズプロデューサー
神田 剛氏(かんだ つよし)
『バイオハザード ヴィレッジ』プロデューサー
Mac版のノウハウを活かし、REエンジンにて開発
――iPhone/iPad版の開発は、いつごろからスタートしたのでしょう?
川田2021年8月にMac版『バイオハザード ヴィレッジ』の開発を検討したのがきっかけです。同年のうちにはiOS版の開発についても話が出ていました。
――iPhone/iPad版も開発はREエンジン(※)で?
※カプコン独自の開発エンジン
川田その通りです。
――REエンジンは、iPhone/iPad用のゲーム開発にも対応できるよう設計されていたということでしょうか?
川田いえ、それは想定していませんでした。Mac版『ヴィレッジ』の開発を本格的に検討することになり、(REエンジンでも開発できるように)仕込みを始めた感覚です。同作が昨年、無事にリリースでき、「じゃあ次はどうするか?」となったことで、さらに普及率の高いデバイスへの移植を検討し始めて。その進行が比較的スムーズで、このタイミングで発売できることとなりました。
――iOSへの移植したものが初めて動いたのを見たときの感想はいかがでしたか?
川田最初にゲーム画面を見たときの印象は「思っていたよりいい」でした。最適化にはかなり時間がかかるだろうなと思っていたところ、予想を上回る完成度だったため、『ヴィレッジ』に関してはこのままスムーズに発売を迎えられると思います。
iOS市場にて新たなアプローチを試みる意義
――iOS市場にカプコンタイトルが進出ということで、改めて御社の同市場での戦略や狙いをお聞きしたいです。
川田完全な新規市場なので慎重に対応していきたいところですが、だからといって踏み込まないと何も得られないので。『ヴィレッジ』に加え、『バイオハザード RE:4』もiPhone/iPad版を発売するということで、まずはこれらをベースに、今後どういった展開ができるかを考えていきたいです。
――iOSのゲームの場合、販売スタイルは家庭用ゲームとは異なったりはするのでしょうか? たとえば課金要素とか。
川田ゲーム内容はもちろん価格もコンソール版に合わせているので、そこまで大きな違いはありません。ただ、『ヴィレッジ』も『RE:4』も冒頭部分は無料でダウンロードでき、遊べるようになっているので、まずは気軽にプレイしていただいて。そうして気に入っていただけたら、以降のゲーム本編もご購入いただき、お楽しみいただける形になっています。
神田スマートフォンゲームを中心に遊ばれている方からすると、かなり毛色の違うゲームに見えると思います。そこでまずはとにかく遊んでいただくことを意識してパッケージ化しました。
――iPhone/iPad版はタッチ操作になる点が大きな特徴ですが、こちらの仕様にするうえで苦労されたことはありますか?
川田ゲーム体験に関しては、コンシューマ版の内容をそのままの形で落とし込んでいますが、タッチスクリーンへの対応は、ボタンの大きさや位置、配置を自由にカスタマイズできるようにアレンジしています。なにぶん、使用するボタンが多いので、ユーザーさんが遊びやすい環境を自分自身で構築できるよう、こちらの形をとらせていただきました。
――新たなデバイスでの発売ということで、既存のプラットフォームで遊んでいるユーザーとの棲み分けは意識されましたか?
神田iPhone/iPad版の展開には‟新規市場の開拓”という狙いがあります。ライフスタイルに溶け込んだスマートフォンというデバイス向けにコンテンツをご提供し、ボタンのカスタマイズというアプローチも試みる。そうすることで実際に手に取っていただいたり、会話のネタにしてもらったりしていただきたいです。こうした積み重ねを経て、新しいユーザー層にリーチしていければと考えております。
――棲み分けではなく、まずは新規ユーザーの獲得が重要だと。
川田ありがたいことに『ヴィレッジ』は世界中で830万人もの方に遊んでいただいています。そんな中、さらに新しいお客様にプレイしていただくなら、既存の市場より新規市場で求めたほうがいいと考えました。たとえば、iPhone/iPad版『ヴィレッジ』や『RE:4』は、どのような人に遊んでもらえるか? これを調べることは、我々にとっても今後のビジネスにつながる貴重な情報収集になります。そうして得た情報をもとに改善点をクリアーし、再びコンテンツをリリースする。これをくり返す中で得られる知識こそが、今後のゲーム開発おいて大いに役立つものと考えています。
フィードバックが今後の開発の肝になる
――『バイオハザード』シリーズはサバイバルホラーというジャンルゆえに、表現面でもデリケートな面があるかと思います。iPhone/iPadへの移植の際、表現の面で苦労されたりしましたか?
神田ゲーム内容はすでに発売されている製品版に準拠しているので、そういった苦労はありませんでした。それよりもリリース後の反応を見て検討しなければならない部分が出てくるかもしれません。じつは後者のほうが重要だったりするんです。
――仮想ボタンによる操作だとエイムやシューティングが難しそうなイメージですが、そういった部分はチューニングされているのでしょうか?
川田現時点では“カスタマイズの幅を広げた”ことが、我々の考える答えです。とはいえそれが正解ではなく、実際に遊んだお客様からのフィードバックを活かして、次の一手を導き出せれば……と考えています。作り手側の視点だけでは見えてこない部分も多々あるので、そういったところを明らかにしつつ、より完成度の高いゲーム作りを続けていきたいです。
神田ゲームプレイに関しては製品版と同じ体験ができるので、皆様にはいろいろな操作を試していただいて、ご意見を頂戴したいです。
――思いもよらないカスタマイズをしてくる人もいるかもしれないですね。
川田もちろん中には、「どんなに調整しても、自分にはなじまなかった」という方も出てこられるかもしれません。でももし、そこで「こういった遊びができるのであればやってみたい」というご意見をいただければ、それを参考に新たなアプローチを検討できます。そういった意味でもぜひ、ご協力をお願いできますと幸いです。
――ユーザーの意見が反映されて、ゲームがより遊びやすくなっていく構想なのですね。最後にひと言ずつメッセージをお願いします。
川田『バイオハザード』シリーズに触れたことがない方も大勢いらっしゃると思いますが、本商品には無料で遊べる部分も多数ありますので、ぜひ触ってみてください。グラフィックだけでなく、音であったり、キャストの演技であったり、ストーリーであったり。さまざまな遊びを体験していただいて、おもしろいなと思っていただけたら、ぜひ本編をダウンロードしていただければと。
神田まずはタブレットやスマートフォンで『バイオハザード』をプレイできるという感覚を純粋に楽しんでいただいて、率直なご意見を聞かせていただけるとうれしいです。家庭用ゲーム機版と比べても遜色のないゲーム体験をご提供できると自負していますので、ぜひ持ち運んで、いろいろなところで遊んでいただけますと幸いです。