セガとColorful Paletteが贈るiOS/Android向けリズム&アドベンチャーゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(プロセカ)が、2023年9月30日をもってサービス開始から3周年を迎えようとしている。
音楽ゲームとしても、そして練りに練られた物語を堪能するノベルゲームとしても評価が高い『プロセカ』は、この3年の間に膨大な数のシナリオを各ユニットごとに配信してきた。
“Leo/need”、“MORE MORE JUMP!”、“Vivid BAD SQUAD”、“ワンダーランズ×ショウタイム”、“25時、ナイトコードで。”。
個性豊かなキャラクターたちの人となりと、その歩みを掘り下げるシナリオは、メインストーリー以外にも“キーストーリー”という形で各ユニットそれぞれ20本(!)も実装。それが、3周年を目前に控えた2023年夏の提供を持ってひと区切りとなり、いよいよ10月からは各キャラが“進級”となって“キーストーリー・第二幕”が始まるのである。
そんなタイミングだからこそ、このとてつもない量の『プロセカ』のシナリオをここで一度収束し、歴史を整理しようと思った。
全メインストーリーと、全キーストーリーのあらすじをまとめ、それぞれについての筆者の考察と感想を交えて、ずっと『プロセカ』を追いかけてきた熱い読者にも、進級を機に改めてこのセカイに入ってこようと思っているルーキーにも刺さる永久保存版の記事をここに刻もう。
この、“【プロセカ3周年記念特集】ユニットごとの全シナリオまとめ!”を読めば、『プロセカ』が歩んできた道筋がすべてわかる。
そんな短期集中連載の最後は、“25時、ナイトコードで。”に締めてもらおう。
※この記事はセガ/Colorful Paletteの提供でお送りいたします。
キーストーリー:“空白のキャンバスに描く私は”
あらすじ
ニーゴのつぎの楽曲に向けて、イラストの制作を進める絵名。ところが、いくら描いてもしっくりと来ず、「奏とまふゆが作った曲に合わない」と思い始める。
そんなとき、ラフ画を見たまふゆに「言いたいことがあるのに、うまく言えてない感じがする。絵名の言いたいことは、これで全部なの?」と指摘され、かつて経験した挫折を思い出す。
それは本気で画家を目指し、絵の勉強をしていたときに感じた焦りと同じものだった。このまま奏とまふゆに先を行かれ、彼女たちが作る曲にふさわしい絵を描けなくなってしまったら……! 絵名は数年前に逃げ出してしまった絵画教室に、再び足を向ける。
かつて厳しいことを言われた先生のもと、遥か先をゆく生徒に混じって絵に向き合う絵名。しかし2年のブランクは大きく、なかなか思うようにいかない。そして迎えた、短期教室の最終日。出された課題のテーマは”自分”という、絵から逃げたときと同じものであった。
それでも、この2年でニーゴの仲間と共有した時間は決して無駄ではなく、絵名は逃げずに課題と向き合い、絵を完成させる。
キーストーリー:“空白のキャンバスに描く私は”を読んで
クリエイターが揃うニーゴの物語は、モノ作りをしている人にはイヤというほど刺さりまくる……というようなことを別のキーストーリーの所感でも書いたが、とくにこの絵名の立場、思考、立ち回りにいたる心情の変化は、心の底から気持ちがわかってしまうんだよな……!
仲間に置いていかれるのではないか……と焦る気持ちは、勉強やモノ作りだけでなく、仕事の上でも感じられることかもしれない。
出世レースとも似ている……なんて書くととたんにチープに思われそうだけど、“自分の実力が足らないがゆえに置いて行かれてしまうかも”と思い至ってしまう恐怖は、やっぱりどんな世界でも共通することなんだと思う。
2年に及ぶブランクにより、まわりと明らかに差が出てしまったことを実感する絵名。それを知ってしまったときに胸に去来したのは、悔しさ、恥ずかしさ、そして「もう取り戻せないかもしれない」という恐怖もあったのではなかろうか。
そんな状況に直面したときに、見て見ぬふりをするのか、逃げるのか、立ち向かうのか……によって、大袈裟じゃなく人生における大きな“何か”が変わるのかもしれない。
そして絵名は、かつて逃げてしまった自分を嫌悪し、3つ目の“立ち向かう”を選ぶ。まだ、ニーゴのみんなといっしょに作品を作り続けたいから。強い言葉で仲間とぶつかることが多い絵名だが、彼女にとってニーゴという場所は、いつの間にかなくてはならないものになっていたんだな。
空白のキャンバスに描く私は【プロセカ公式】
- 書き下ろし楽曲:『ノマド』(作詞・作曲:バルーン)
キーストーリー:“迷い子の手を引く、そのさきは”
あらすじ
再びスランプに落ちかけている奏を見て、気分転換にフェニックスワンダーランドへみんなで遊びに行こうと提案する瑞希。曜日指定のチケットのため制約はあるが、奏と絵名は乗り気だった。
しかしまふゆは模試の日と重なっていたため、どうしようかと思い悩む。それでも、“みんなで”というキーワードが心に引っかかって、「模試が終わった後に合流できるかも」と前向きに考え始めた。しかしそこに、“優しい束縛”を続けるまふゆの母の影が落ちる――。
そして、フェニランツアーの当日であり、まふゆの模試の日でもある日曜日。まふゆの足は模試会場……ではなく、フェニランに向かっていた。奏たちと合流し、いっしょに場内を回り始めるも、気が付けばまふゆはひとりで歩いている。
迷子になった自分を認識したとき、まふゆは子どものころに来たフェニランで、いまと同じように迷子になったことを思い出した。
このキーストーリーで、まふゆは初めて母親にウソをつく。そしてそれが、のちに大きな火種となるのである。
キーストーリー:“迷い子の手を引く、そのさきは”を読んで
まふゆの心が壊れてしまった大本のエピソード……つまり心の原風景が語られるイベントストーリーである。子ども心に遊園地のマスコットキャラクターに惹かれて、母親のもとを離れてしまったまふゆ。迷子になってしまったわけだが、幸いなことにすぐに母親と合流することができた。
しかし、心配そうな素振りとは裏腹に、まふゆ母が放ったひと言は……!
「どうして、お母さんの言うことを聞かなかったの?」
「お母さん、怖かった。まふゆが、お母さんを心配させるような“悪い子”になっちゃったと思って――」
子どもがいなくなった心配ではなく、“いなくなって困らせている”ことに冷たい感情をむき出しにするまふゆ母……。このころから、まふゆは母親の“優しい束縛”にさらされていくことになるのである。言葉巧みに、幼いまふゆを縛り付けていく母親。その“悪意のない恐怖”は、始まったばかりなのである。
そんな母親に対し、模試に向かわずにフェニランに来てしまったまふゆは、この場を取り繕うためにウソをついてしまう。この小さな火種はいつまでもくすぶり続け、のちに決定的な歪みを生み出す原因になるのである。
迷い子の手を引く、そのさきは【プロセカ公式】
- 書き下ろし楽曲:『バグ』(作詞・作曲:かいりきベア)
キーストーリー:“そしていま、リボンを結んで”
あらすじ
母親の問題をはらみながらも、少しずつニーゴのメンバーに心を開きつつあるまふゆ。「ここで作業をしているときがいちばん落ち着く」という言葉に、奏も絵名も瑞希も喜びを感じるのだった。
そして、作業に熱が入る中、映像を担当する絵名と瑞希は、ニーゴに入るきっかけとなった思い出話を始める。
中学時代の自分に思いを馳せる瑞希。学校の屋上と、自分の家にしか心が休まる場所がなくなってしまい、徐々に不登校気味になってしまう。そんなときに出会ったのが、動画編集と“K”の作る曲だった。そう、奏の曲だ。苦しいという感情を音楽に昇華させたかのようなKの曲に瑞希は魅せられ、その曲に合うMVを作り始めるのであった。
そこに、同じようにKの曲に惹かれた絵名が合流し、ふたりは映像担当のクリエイターとしてニーゴで活動を始めるのである。
キーストーリー:“そしていま、リボンを結んで”を読んで
瑞希の中学時代からの歩みが掘り下げられるイベントストーリー。ニーゴの他のメンバーとは異なり、自分の存在そのものに疑問を持つ瑞希の原点がどこにあるのかを、この物語で浮き彫りにしているのである。
謎の多いニーゴだからこそ、それぞれの歩み、出会い、そして繋がった経緯を丁寧に説明してくれるストーリーは、非常にありがたいと思う。
とくに、彼女たちは、いかにもいまどきっぽい刹那的な関係からスタートし、いつしか互いの存在にのめり込んで放っておけなくなる……という、稀有な歩みをしている。
その行きつく先がどこになるのか、現時点ではまったく見えていないが、どんな結末になるにせよ、いまのこの段階で彼女たちの過去に思いを馳せることは決して悪いことではない。なぜなら、瑞希を始めとするニーゴの子たちを、もっともっと放っておけなくなるから――。
そしていま、リボンを結んで【プロセカ公式】
- 書き下ろし楽曲:『君の夜をくれ』(作詞・作曲:古川本舗)
キーストーリー:“この祭りに 夕闇色も”
あらすじ
シブヤをあげたお祭り“シブヤ・フェスタ”が開催されることを知ったまふゆ。ちょうどその日の夜、セカイに集まった瑞希からシブフェスの話題が出され、意外なほど共通の友人たちがステージに出演することがわかった。
当然、「みんなで見に行こう」という話になる。まふゆは母親の監視が気になったものの、担任教師からシブフェスのボランティアになってくれないかと頼まれ、最終的には参加することになった。
そして始まったシブフェスは、想像以上の盛り上がりとなった。ステージではオープニングアクトのモモジャンを始め、レオニやビビバス、ワンダショもパフォーマンスを披露していく。
ボランティアとして会場整理をしながら彼らのステージを見ていたまふゆだったが、目標に向かって懸命にがんばる友人たちの活躍を見て、心の内で言い知れぬ感情が浮かんでくるのを感じるのだった。
そのさなか、ショーで使う小道具の実験を行っていた類が足をくじいてしまい、救護が必要となる。しかし、混み合う救護室に担当はおらず、まふゆが対応することに。手慣れた様子で手当てをする様子を見て類は、「朝比奈さんは、やりたいことがあるのでは」という言葉を伝える。戸惑うまふゆ。
シブフェスの終わり間際、今度は膝を擦りむいた少女を見つけたまふゆは、またしても率先して治療にあたった。そして、「おねえちゃん、ありがとう!」とお礼を言われ、まふゆは心を取り戻したかのように少しだけ笑うのだった。
キーストーリー:“この祭りに 夕闇色も”を読んで
全10話に及ぶ、非常にボリュームのあるイベントストーリー。それもそのはず、ここではニーゴだけでなく、モモジャン、レオニ、ビビバス、ワンダショのそれぞれのユニット目線での話も展開するので、そう簡単にはおさまりがつかないのである。
もちろん、各ユニットともシブフェスは非常に重要な位置付けにある。それぞれがシブフェスの裏側でどんな立ち回りをしていたのかが垣間見える、スピンオフのような構成になっているので、目を奪われてしまった人も少なくないはずだ。
とはいえ、これはやはりニーゴの……いや、まふゆがカギを握る物語である。
後半、ボランティアの救護班のヘルプに入ったまふゆは、ステージのリハーサルで足をくじいてしまった類を治療するために懸命に走り回る。
そしてそのとき、母親に言われて“自分の意志で”目指していると信じ込んでいる医者の道ではなく、“看護”という道があることを思い出すのである。
このシブフェスでの出来事は、今後のニーゴの進む道に大きな影響を及ぼす気がする。母親の呪縛から逃れ、自分のやりたいことに気づいたとき、まふゆはこのときのことを思い出すのではなかろうか。本当にやりたかったことに、初めて向き合えたシブフェスの日のことを。
この祭に 夕闇色も【プロセカ公式】
キーストーリー:“願いは、いつか朝をこえて”
あらすじ
かつて通っていた絵画教室に、再び足を向けた絵名。しかし、自分がいなかった2年間でまわりの生徒たちは劇的に成長し、絵名は実力の差に圧倒されてしまう。
それでも、「ニーゴの仲間に置いていかれたくない」という一心で、恥をかくこともいとわずに課題に取り組む。そして“孵化”をテーマにした課題にもっと真剣に向き合いたいと、家に持ち帰って描き直す許可を得るのだった。
その日の夜、セカイに集まったニーゴの面々は、まふゆから思いもしなかった言葉を聞かされる。「お母さんが私のパソコンを勝手に開いて何かしていた」。衝撃を受ける3人。
それでも煮え切らないまふゆの態度に、絵名は苛立ちを抑えきれずにいた。翌日、絵名は街で体調を崩して座り込むまふゆと出会う。折しも、空からは雨が落ちてきたがまふゆは動けない。業を煮やした絵名は、まふゆを自宅へと連れ帰るのだった。
そこでまふゆが目の当たりにしたのが、憎まれ口を叩き合いながらも、ほんのりと温かい東雲家の雰囲気。なぜこれほど違うのかがわからず、まふゆは戸惑ってしまう。
25時、ナイトコードをつないで作業を始めるまふゆと絵名。いつもとは違い、会話のキャッチボールをしながらの作業ははかどり、ふたりは順調に作品を作っていった。
そんな中、まふゆは絵名に「今は、みんなと曲を作りたい、と思う」と告げる。石膏像のようだった表情に変化を見た絵名は、スケッチブックを取り出してまふゆの絵を描くのだった。
キーストーリー:“願いは、いつか朝をこえて”を読んで
ふだんはツンツン気味ながら、困っている仲間を放っておけない情熱の人・絵名の“らしさ”が前面に押し出されているイベントストーリー。絵名の機転と頭の回転の速さにより、母親から伸びてきた束縛の魔手を一時だけかわす……という物語が展開する。
表には出さないが、絵名の巧みな立ち回りによりひと晩だけでもあの母親から解放されたまふゆは、束縛下にあるとはいえ、かなりの心の安らぎを得られたに違いない。
それは、東雲家の賑やかな雰囲気にあてられたときの、まふゆのモノローグからも垣間見える。冷たい空気が漂う自分の家とは違い、憎まれ口を叩き合いながらもどこか“温かい”絵名の家の空気に戸惑うまふゆ。
とくに、同じようなことを言っている両者の母親を比較しても、明らかな温度差があることに気づくのだ。こういった小さな積み重ねにより、まふゆは自分の心を取り戻していくのではないか……? 進級前に、何らかのいい兆しが見られるのではないか……!?
“願いは、いつか朝をこえて”を読了したときは、そんな淡い期待を抱いていたんだけど……。
願いは、いつか朝をこえて【プロセカ公式】
- 書き下ろし楽曲:『Iなんです』(作詞・作曲:れるりり)
キーストーリー:“イミシブル・ディスコード”
あらすじ
まふゆが学校に行っているあいだに部屋に入り、勝手にパソコンを起動して何かを探している母。まふゆが勉強をおろそかにして音楽に夢中になっているのでは……と疑い、それらしいファイルを漁っているのである。そしてついに、ニーゴの作業用フォルダとナイトコードのアカウントを見つけられてしまう。
その日の夕方、奏のナイトコードに謎のフレンド申請が。その主はもちろんまふゆの母で、「まふゆのことで話がしたい」と接触してきた。まふゆ母の要望は、「まふゆとの音楽活動をやめてもらいたい」。奏はまふゆ母と直接会って、説得を試みようと動き出す。
そして、奏とまふゆ母は初めての対面を果たす。まふゆ母の表情と口調は穏やかで、物わかりのよさそうな雰囲気を醸し出していたが、やはり奏はところどころに違和感を感じてしまう。
そんな中、まふゆ母は告げるのだ。「音楽もサークル活動も、あの子の人生には必要ないと思うのよ」。その、言い知れぬ冷たさに戦慄する奏だったが、ここで引き下がったら本当にまふゆがダメになってしまうと確信し、奏は意を決して、
「わたしは……あなたのことを、信じられない。だから……今、決めました。わたしは――あなたにどう言われても、まふゆのそばから離れない」
と、まふゆ母に想いをぶつけるのであった。
キーストーリー:“イミシブル・ディスコード”を読んで
“悪意なき束縛者”であるまふゆ母が、いよいよ本領を発揮してくる衝撃の展開から目が離せない。
子どもが大切にしている楽器を捨てたり、パソコンを覗いて行動を探ったり、あまつさえ勝手にSNSのアカウントを掘り出して交友関係にまで手を突っ込んでくるとなると、さすがに目を疑いたくなる。ひたすらまふゆのことがかわいそうだわ……。
しかもタチが悪いのが、冒頭で書いた通りまふゆの母の行動の源泉は、決して“悪意”ではないということだ。……いや、これからどうなるかはわからないけど。
少なくとも“イミシブル・ディスコード”の段階では“まふゆの将来を心配してこその行動”ということが見て取れ、だからこそまふゆも母親を突き放しきることができず、されるがままになっているのであろう。
「それこそが束縛の手法だ」と言われればそれまでだが、こういった真綿でじわじわと首を絞めるような行動をされたら、気づいたときにはまふゆのように心を失くしてしまうのかもしれないな……と寒気を覚えた。
ただ、このまふゆ母の行き過ぎた行動があるからこそ、ニーゴのストーリーは他のユニットのそれとはまったく違う、まるでサスペンス小説のようなハラハラ&ドキドキを内包できているのは間違いない。
イミシブル・ディスコード【プロセカ公式】
- 書き下ろし楽曲:『ザムザ』(作詞・作曲:てにをは)
キーストーリー:“ボク達の生存逃走”
あらすじ
奏がまふゆ母との邂逅を果たしてから数週間。まふゆはニーゴでの活動を以前のようにはできなくなり、奏たちは今後の対策を練るためにセカイに集合した。しかしいくら相談しても根本的な解決策は出てこず、議論は暗礁に乗り上げてしまう。
そんなとき、瑞希は少しでもまふゆが安心できる時間を作ってやろうと、学校の昼休みを利用してニーゴの作業をしようと提案する。まふゆも「なんとかやってみる」と前向きで、その日からニーゴは昼の時間に活動するようになった。
しかし、まふゆ母は追及の手を緩めることなく、ついに、まふゆのパソコンに飲み物をこぼして実質的に破壊してしまう。
それでも、まふゆは立ち向かえない。まるで自分に言い聞かせるように、「お母さんは、自分のためを思ってやっているんだ」と思い込もうとした。
そんなまふゆに手を差し伸べたのは、瑞希だった。「直接会って、伝えたいことがあるんだ」と言い、まふゆを遊びに連れ出す。スポジョイパークでローラースケートやゲームで息抜きをしたり、ショッピングに付き合わせたりとまふゆを振り回した瑞希だったが、別れ際にしっかりと告げるのだ。
「もう無理だって思ったら、逃げていいって、ボクは思うんだ」と。この言葉は静かにまふゆの中に沁みこみ、つぎのキーストーリー“仮面の私にさよならを”で大きな意味を成すのである。
キーストーリー:“ボク達の生存逃走”を読んで
風雲急を告げる、ニーゴとまふゆの物語。「もたもたしていると、強硬手段に出られるかも……!」と瑞希が予感した通り、まふゆ母は物理的な破壊行動に打って出てきた。もう対処療法では追いつかず、抜本的な治療に着手しないと、本当にまふゆは壊れてしまうかもしれない……!
ますますサスペンスドラマの様相を呈してきた、ニーゴのイベントストーリー。ただでさえ問題を抱える者たちの集まりなのに、まふゆ母の登場により、その深刻さは日に日に増してきてしまっている。
序盤のイベントストーリーの感想で、「ニーゴの物語は、まるで水の底でたゆたっているようだ」というようなことを書いたけど、いまや彼らは、もっと深いところにまで落ち込んでしまっているのではなかろうか。
この状況を打開できるのはまふゆ本人しかいない……と、ニーゴのメンバーも、そして読者全員もわかっているのに、心を縛られているまふゆは1歩を踏み出すことができない。
まさに、“呪縛”。
進級目前のこの段階でも、ニーゴは前に進むことが出来ずにいた。
ボク達の生存逃走【プロセカ公式】
- 書き下ろし楽曲:『キティ』(作詞・作曲:ツミキ)
キーストーリー:“仮面の私にさよならを”
あらすじ
多くのストレスを抱え、集中力を切らした状態で受けた期末テストで、まふゆは想像以上に低い点を取ってしまう。これをそのまま母に見せたら、何をされるかわからない。まふゆは「まだ採点が終わっていないみたい」と母にウソをついてしまう。つぎの模試で取り返すために、まふゆはニーゴの活動を休むと奏に伝える。
しかし、まふゆ母はさらに動く。なんと学校に乗り込んできてふだんの様子を担任から探ろうとし、じつは期末テストの結果をまふゆが隠していることを知ってしまう。
さらに予備校にも探りを入れて、当日欠席をしている事実も判明し……。テスト結果を隠していたことを追求し、スマホまで取り上げようとする母。この“最後の砦”を守るために、まふゆはついに、母に本当の気持ちをぶつける。
「本当は、ずっと、苦しいの」
「でも、奏達と一緒にいて、少しずつ……わかってきた気がするの」
「自分の……私の、本当にやりたいことが……!」
それでも、まふゆ母には届かない。娘が自分の思うようにならないと悟り、強硬手段に出ようとする。
まふゆは激しい雨が降る外に飛び出した。瑞希の言った、「もう無理だって思ったら、逃げていいって、ボクは思うんだ」という言葉を胸に。
まふゆが向かった先は、奏のもとだった。
「もう……なにも……なにもわからない…………」
涙雨に濡れる、奏とまふゆの向かう先は……?
キーストーリー:“仮面の私にさよならを”を読んで
ニーゴの物語がひとつの区切りを迎える衝撃のストーリー。にこやかな仮面の下で冷徹なナイフをチラつかせる母に対し、ついにまふゆが感情を爆発させるシーンが描かれる。
まふゆのスマホは水槽に落ちて水没してしまったため、半ば壊れた状態。そのため、“誰もいないセカイ”のミクやKAITOたちも容易にアクセスすることはできなかった。
誰の助けも得られないまま、まふゆはこのまま母の言いなりになってしまうのか? それともギリギリのところで踏ん張れるのか……?
ひりひりと胸が焼け付くような、いっぱいいっぱいの展開。こういうとき、プレイヤーはゲンキンなものだから心のどこかでは、「とはいえ、なんとかなるんでしょ?」なんて考えたりもする。
しかし、これはニーゴの話……。そんな安っぽい希望的観測を裏切り続けて、ここまで話をこじらせてきたのである(※褒めてます)。
「ニーゴだと……何が起こってもおかしくないんだけど……」
そんな恐怖感にも似た感情が、画面をタップする指を後押ししてくる。早く結末を見ないと……安心して寝ることもできないよ!
そしてやってくる、衝撃のラスト。
まふゆの懸命な言葉は、この“優しい束縛者”に届くのだろうか……?
ぜひここからは、ご自身の目で確かめてもらいたい。
仮面の私にさよならを【プロセカ公式】
- 書き下ろし楽曲:『演劇』(作詞・作曲:ナノウ)
25時、ナイトコードで。の物語を読んで
途中の所感でも書いたが、ニーゴの物語に最初から最後まで付きまとうのが、
“呪縛”
である。これは、ほかのユニットの物語では“想い”や“夢”という単語に置き換えられるのかもしれないが、ニーゴのそれは……決して生易しいものではないのだ。メンバーそれぞれが違う呪縛にさらされ、もがき、足掻き、解き放たれようとする姿が描かれている。
ゆえに、ニーゴのストーリー……いや、世界観そのものが非常に重く、痛い。
自分の父を壊してしまったと思い込んでいる奏、才能のなさに打ちのめされている絵名、ニーゴのメンバーに未だ秘密を打ち明けられずにいる瑞希、そして“悪意なき束縛者”である母親の呪詛に縛り付けられているまふゆ……。それぞれが抱える闇が読者の琴線に触れまくるからこそ、ニーゴの物語からは目が離せなくなってしまうのだと思う。
イベントストーリーの所感でも書いたが、筆者にもっとも突き刺さるのは、絵名が抱えている呪縛だ。何かを作ることを目指したその瞬間から、その者を縛り始める“才能”という名の呪い。
天才たちに囲まれた環境において、「お前は凡人だ」と尊敬する人から烙印を押されてしまった人間が、どうして這い上がることができようか……。ついつい当事者目線で見てしまうからこそ、絵名の物語はクリエイティブを志す人に刺さりまくるのである。
これはあくまでも筆者の例で、同じように奏が、瑞希が、そしてまふゆの感情が、読者それぞれに流れ込んでくるのだと思う。それは確かに重い波動ではあるのだが、
「彼女たちだったら、きっとなんとかしてくれる!」
と心のどこかで信じて、この水の底でたゆたうような物語を追ってしまうんだよな。
この先に待っているのは、歓喜か? それとも破滅なのか……?
正直、読むのが怖いが……。画面をタップする指は、やっぱり止まらないんだろうな。
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