2023年9月15日(金)より公開された、映画『グランツーリスモ』。映画公開を記念し、『グランツーリスモ』シリーズの生みの親で映画のエグゼクティブプロデューサーでもある山内一典(本文では、山内)氏へのインタビューを実施したので、その模様をお届けする。
本作は、ゲーム『グランツーリスモ』のトッププレイヤーが“GTアカデミー by 日産×プレイステーション”(以下、GTアカデミー)”にて、本物のプロレーサーを目指す実話をもとにしたストーリー。ベストプレイヤーたちが世界中から集められ、ゲームの腕はもちろん本物の車にも乗りこみ数々のトレーニングやテストを乗り越えて本物のレースに挑む成長する姿が描かれる。
『グランツーリスモ7』(PS5版)の購入はこちら (Amazon.co.jp) 『グランツーリスモ7』(PS4版)の購入はこちら (Amazon.co.jp)映画『グランツーリスモ』予告2 9月15日(金)全国の映画館で公開
山内一典(やまうちかずのり)
『グランツーリスモ』シリーズ クリエイター。ポリフォニー・デジタル 代表取締役 プレジデント。ソニー・コンピュータエンタテインメント(当時)在籍時に『GT』を開発する。その後、独立してポリフォニー・デジタルを設立。2001年からは、日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員も務めている、。
――GTアカデミーの成り立ちの経緯を教えてください。
山内2004年ドイツのニュルブルクリンクで、日産のグローバルモータースポーツ・ディレクター兼マーケティングのダレン・コックス氏に出会いました。そのときに「『グランツーリスモ』のプレイヤーはレーシングドライバーになれるだろうか?」と、聞かれたので、「絶対なれる」と答えました。それが、発端です。
――山内さんは当時すでにレース活動はされていたのですか。
山内まだです。ただ、そのとき日産のフェアレディZにのって実際にコースを走りました。すると、ほかの車がとまって見えるほど速く走れ、追い抜くことができました。一周15キロメートルという長いコースでしたが、ゲームでやりつくしていたおかげでコースを覚えていたのが大きかったです。
――その体験もあって『グランツーリスモ』のプレイヤーが、実際のレーサーにもなれると確信があったのでしょうか。
山内そうですね。より強い確信を持つようになりました。
――『グランツーリスモ』は“ドライビングシミュレーター”ですが、プロのレーシングドライバーに使ってもらいたいという想いはあったのでしょうか。
山内使っていただくというよりは、正しいドライビングテクニックを学べるものを作りたいという想いが初代『グランツーリスモ』(プレイステーション用ソフト)を制作したときからあります。
――映画についてお話を聞かせてください。制作の協力はされたのでしょうか?
山内映画には映画の世界があるので、いっしょに最後まで作りあげていくものではないと思っていました。なので、私が協力したのは脚本の第1稿までです。
――山内さんのほうから、ここを変えてほしいというようなことはありましたか。
山内変えてほしいというところはありませんでしたが。脚本家の方からあるレースの展開を相談されました。
――どのようにお返事したのですか。
山内レースの世界では、長年経験を積んでいる方が多いからこそ、コースのここを通ったほうがよいという定石みたいなものがあるんですよね。チーム監督やエンジニアの方から「ここを走ると速い」と指示されることがよくあるのですが、ただゲームで何回も走行していると、「こっちのほうがいいんだけどな」と思うことは多々ありました。とくに、リアルレースでは年に一回しか走れないようなコースにはそのようなポイントがたくさんあります。なので、「ゲーマーならではの視点でライバルたちを抜くってのはどうか」と提案しました。実際どうなったかはぜひ、ご自身でお確かめください。
――今回の映画で山内さんがカメオ出演されていたのに驚いたのですが、どのような経緯だったのでしょうか。
山内制作側からオファーがありどこで出たいかを聞かれました。なので、東京のシーンで主人公とヒロインがデートするシーンがあるのは知っていたので、そのデート場所を寿司屋にして、そこに私がいるのはどうかと提案しました。
――出演場所は山内さんからの提案だったんですね。映画を観ての感想をお聞かせください
山内映画はいい脚本、監督、キャスティングなどさまざまな要素が揃わないといいものにはなりませんが、それがすべてそろったすばらしい映画になったと思います。またこの映画は、観た人がポジティブな気持ちになるエンターテインメント的な作りになっています。そして、このような映画の作り方として、観客だけでなく映画の制作者にとっても教科書になるようなすごく丁寧なつくりをしていると思います。
――映画をみたときに、実写とCGの区別がつかないほどの技術や、それらをうまく組み合わせて作られていたのが印象的でした。このあたりはいかがでしょうか。
山内じつは、ニール監督は特殊効果を制作するキャリアを持っていたんですね。なので、CGなどの技術にくわしくて好きなんです。
――GTアカデミー自体は現在活動を終了していますが、その経緯はどのようなものなのでしょうか。
山内実際にプロのレーサーを輩出して、一定の成果を残したことでひと区切りと考えています。そして、その使命を果たしてあとに、公式世界大会であ“グランツーリスモ ワールドシリーズ(GTWS)”といういわば、第二期の活動に移行しました。
――なるほど。
山内GTWSでは世界各国・各地域の言語で大会をリアルタイムに配信しています。その際に起用しているコメンタリーは全員GTアカデミー出身者なんです。リアルなレースに進むかは本人次第ですが、新たな才能を発掘できたらいいですよね。たとえば、リアルレースの“スーパーGT”で活躍している冨林勇佑選手やイゴール・大村・フラガ選手のように、現在ではGTアカデミー出身の選手でなくとも自分でリアルレーサーへの道を切り開いていく人もいます。
――いろいろな関わりかたがあるということですね。
山内世界一になる人は、頭もいいし、努力家でアプローチもロジカルで、何をやっても成功するタイプの人間だと思います。そういう人と人との縁が繋がる場所を提供できたのが、私はこのGTアカデミーにとっていちばん大事なテーマだったと思います。
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