2023年8月23日~27日の5日間、ヨーロッパ最大級のゲームイベントgamescom 2023がドイツ・ケルンにて開催。

 会期中に、NetEase Games傘下の新規スタジオに取材する機会を得た。T-Minus Zero Entertainmentだ。お話をうかがったのは、スタジオヘッドのリチャード・ヴォーゲル氏とゲームディレクターのマーク・タッカー氏のおふたりだ。

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リチャード・ヴォーゲル氏(写真・右)

T-Minus Zero Entertainment スタジオヘッド

マーク・タッカー氏(写真・左)

T-Minus Zero Entertainment ゲームディレクター

ひと目見たら忘れられないようなオンラインサードパーソン・アクション・シューターを開発中

――T-Minus Zero Entertainmentはどのような目的をもって設立されたのですか?

リチャードAAAのオンラインマルチプレイヤーゲームを開発して、サービスを提供していく会社として設立しました。今年の4ヵ月前に設立したばかりですね。会社の立ち上げについては、1年ほど前から検討していました。情熱を傾けられるオンラインゲームを開発したいと思っています。

――オンラインマルチプレイヤーゲームに精通しているスタッフが多数在籍しているのですね?

リチャードそうですね。私は、ソニーオンラインエンタテインメントやエレクトロニック・アーツ、ベセスダ・ソフトワークス、Certain Affinityで仕事をしてきました。『ウルティマ オンライン』や『Star Wars: Galaxies』、『Star Wars: The Old Republic』などを手掛けています。

マーク私もベセスダ・ソフトワークスで『Fallout 76』を手掛けました。また、NCSOFTやCertain Affinity、マイクロソフトにも在籍しました。

リチャードスタッフは現在10人ですが、30人~40人に増やす予定です。その前に、ゲームの“ソウル(そのゲームが何であるか)”を確立したいと思っています。

――ゲームのコンセプトはすでにできているのですか?

リチャードそうですね。ゲームの柱や見た目や感じ、プロトタイプはすでにあります。

――どのような方向性なのですか?

マーク私たちは、アクション志向のサードパーソンゲームにフォーカスしています。セッションベースのサイエンス・フィクションを考えています。

 私たちはIPを作っていますが、公有財産(誰も所有していない財産)から大きな影響を受けています。グローバルに認識されている公有財産IPですが、今日はそれが何なのかは申し上げられません。公有財産はほかのメディアでは一般的なコンセプトとしてよく使われているものです。たとえば『クマのプーさん』のような象徴的で誰もが知っているおとぎ話はその一例です。私たちはそのアイデアを自分たちのものにして、アイデンティティを与えようとしています。

――そのようなコンセプトに、どうやって辿り着いたのですか?

マークヒーローファンタジーを作りたいという思いは長いあいだ私の頭の中にあって、とてもクールだと思っていました。ゲームのコンセプトを考え始めたときに、いくつかのアイデアがあり、上層部にぶつけてみたところ、とくに共感を得られたのがこのコンセプトでした。

――NetEase Gamesとはどのような縁で組むことになったのですか?

リチャードスタジオを設立するにあたって最初に取り組むのは資金調達です。株式投資会社やベンチャーキャピタル、そしてNetEase Gamesさんほか、多くの企業と話をしました。その中で株式投資会社はこれまでの経験からつねにお金を追求しているので避けたいと思いました。私たちはゲームを作ることにフォーカスしたい、それだけです。

 NetEase Gamesさんには、これまでにもいっしょに仕事をしてきて知人も多く、すべてがポジティブでした。彼らは私たちが進みたい道を理解してくれたようでした。そしてこのゲームを作る自由を提供してくれたのです。素晴らしいと思いました。

――クリエイティブの自由があるということですか?

リチャード私たちはよく話し合いをしています。彼らはゲーム開発についての知識は豊富ですし、私たちはグローバルに展開したいと考えていますが、クリエイティブ・コントロールは私たちが持っています。

 そして、ふたつめにやらないといけないことは、会社の名前を決めることでした。

――ああ、T-Minus Zero Entertainmentには、どのような由来があるのですか?

リチャードT-Minus Zeroの由来ですが、人類を月に送り込んだ古いパワーロケットにはカウントダウンシリーズがありました。カウントダウンのあいだにさまざまなイベントが発生するわけですが、担当チームが多数のシステムを同時に制御することでロケットが発射されて軌道に乗るわけです。

 ロケットを支える上部アームがまず離れ、そこから順番にほかの支えも離れていって、“T-Minus Zero”のカウントでロケットを最後まで支えているクランプ(固定台)がロケットを離し、自身のエネルギーで飛んでいき上昇するか、あるいは下降するかになりますが、できれば、上昇していってほしいです。

 “T-Minus Zero”でクランプがリリースされ、ミッションコントロールは“We have lift-off”とアナウンスし、ロケットが上昇します。私たちは、このロケットが発射して速度を上げて軌道に乗るまでというのは、ビデオゲームを開発する過程に似ていると思いました。

 ゲームを作るのは非常に難しいですし、最後まで調整して、売り上げてこそ、素晴らしいゲームができるのです。ここから会社の名前が出てきました。

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公式サイトより

――素晴らしい社名の由来ですね。どんなタイトルになるのか、本当に気になるところです。

リチャードいまはゲームについてあまり話さないようにしています。それは多くのことが変わっていくからです。お話した通りのゲームにはならないかもしれないので、誤解を生みたくないです。ゲームの“ソウル”、つまり最初のプレイアブルゲームができたときに、すべてお話しします。

マーク私たちは既存のゲームとは明確に異なるものを作りたいので、非常に野心的なことに取り組んでいます。野心的な部分には多大なリスクと課題があり、これを乗り越えて実現できることを確認する必要があります。

――とは言え、ゲームのコアとなる部分は変わらないと思うので、それをひと言で言うとどうなりますか?

マークサードパーソン・アクション・シューター。セッションベースのサイエンス・フィクション。いまはこれくらいしか言えません。

リチャードいずれにせよ、ひと目みればわかるタイトルになっています。

――気になりますね。本作の完成はいつくらいになりそうですか?

リチャードプレイアブルが完成してプレイしてもらえるようになればお話しできるかと思いますが、それは2年後くらいになりそうです。

 これまで設立してきたスタジオではリスクのあることもやってきました。そのおかげでゲームは成功したと言えます。私の意見では、さまざまなノイズがある中で乗り越えられる唯一の方法は、プレイヤーが遊んだことも見たこともない体験を提供して、魅力を感じてもらうことです。

 もっとお話しできればいいと思うのですが……。もしかしたら予定は早まるかもしれませんし、情報は少しずつ公開できるかもしれません。いずれにせよ、画面写真を1枚お見せすれば、誰でもわかっていただけると思います。

――完成までのスケジュールはどれくらいですか?

マーク思い描いているスケジュールはありますが、ゲーム開発はつねに予測が難しい事業です。日程発表は注意深く進めたいです。現時点では明確にはお答えできないですね。

リチャードいずれにせよアーリーアクセス版の配信は考えています。プレイしてもらって、コミュニティーからフィードバックを返してもらいたいと思っています。

――PC版でのリリースを想定しているのですか?

リチャードPCとコンソールの両方でリリースして、その後はモバイル版も配信して、みんなでいっしょにプレイできるようになりますよ。

マーク道のりは、まだまだこれから……ですね。PCとコンソールはクロスプラットフォームになります。

――何人くらいがいっしょにプレイできるようになるのですか?

マークどうでしょうね。それは私たちがプロトタイプを使って答えを出さなくてはなりません。

――タイトルが世に出るのはしばらく先のことになるかと思いますが、最後に今後に向けての抱負をお願いします。

リチャード私たちのタイトルにご期待ください。ひと目見てプレイしたいと感じていただけると思います。

マーク私たちが作っているタイトルは、グローバルな魅力を持っていますし、必ずや日本の方たちにも魅力を感じていただけると思います。ご期待ください。

 T-Minus Zero Entertainmentはアメリカ・テキサス州オースティンに本社を構えつつ、リモートワークスタジオとして、才能のある人材を積極的に募集しているという。Linked Inに投稿したところ、けっこうな反響があったそうだ。

 T-Minus Zero Entertainmentが手掛けるタイトルが世に出るのは、しばらく先のことになりそうだが、正式発表を心待ちにしたい。

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