ファミ通.comの編集者&ライターが2023年夏のおすすめゲームを語る企画。今回取り扱うタイトルは生きるために戦うことを課せられたシリアスな王道RPG『ゼノブレイド3』です。
【こういう人におすすめ】
- シリアスな世界観・群像劇に心を打たれたい
- 広大で自然あふれるファンタジー世界を旅したい
- ロボットものが好きな人
ルーラ石田のおすすめゲーム
『ゼノブレイド3』
- プラットフォーム: Switch
- 発売日:2022年7月29日
- 発売元:任天堂
- 開発元:モノリスソフト
- 価格:パッケージ版8778円[税込]、ダウンロード版7749円[税込]
ゼノブレイド3 紹介映像
大人になって気づいた。「もっと王道RPGを遊んでおけばよかったな」と。なぜなら家にいながらにして新鮮な感動を味わえて、クリアー後にはなんだか人生レベルが上がったような気にさせてくれるから。心揺さぶる展開にこれでもかと涙を流し、泣き止んだ後の目じりの熱さにはまだ熱が残っている。「あれ、クーラーつけてたよね?」と錯覚するほどの熱が。
今年の夏もクーラーの真下であの熱さを味わいたい。そして全人類にも味わってほしい。そこでおすすめしたいのが王道のRPG『ゼノブレイド3』です。
『ゼノブレイド3』(switch)の購入はこちら (Amazon.co.jp)少年少女6人が世界の理に抗う群像劇
物語の舞台となるのはアイオニオン。自然豊かで広大な世界です。主人公ノアたちが属する“黒のケヴェス”と、ミオたちが属する“白のアグヌス”という軍事国家によって、生存戦争が行われています。
戦争の理由はいたってシンプルで残酷。兵士たちの寿命は10年。その命をまっとうするために“命の日時計”に敵の命を吸わせて、自身の生きる時間を確保するために戦うのです。
ゲーム開始直後から主人公ノアのコロニー(拠点)とアグヌスのコロニーが争う様子が描かれます。そこでプレイヤーは戦いの雰囲気や語り手ノアの口調から、殺伐とした重苦しい空気と世界観を感じることに。
戦いの果てに勝利したコロニーの兵士たちは、同胞だった多くの骸を見渡しながら帰還します。その表情は戦いに疲弊しきっているように見えます。勝っても負けても何かを失う。前作『ゼノブレイド2』には「酷い世界だろ ここは」というセリフがあります。まさにその通りとしか言えません。
そんな悲しい世界で男女6人の主人公たちにスポットライトを当てた、“生きるために戦う”物語。それが『ゼノブレイド3』です。
垣間見える残酷さに思わず鳥肌が立つ歪な世界
兵士たちは生きるために戦うことを疑わず、命を奪う行為に関して人間も動物も関係ないのです。生まれながらに兵士として育ち、常識として植え付けられたためでしょうか。自身の運命がいかに残酷で異常なのか、知るよしもありません。
ただ、プレイヤー目線ではその違和感を何気ない会話の中から伺えます。たとえば、物語冒頭の主人公ノアとランツ、ユーニの入浴シーン。戦いの後に汗を流すわけですが、混浴にも関わらず互いに躊躇がありません。
異性の裸を気にしない文化は現実でもありますし、“仲間は家族のようなものだから”という感覚なのかもしれません。でも、ここまでノーリアクションなのはさすがにどうだろう。
彼らには性別の認識こそあるものの、互いの裸体を見る(見られる)ことに羞恥心がない=生殖機能について無知とも考えられます。
シリアスな物語であることは発売前から既知の情報でした。『ゼノブレイドDE』みたく、残酷なシーンでもあるのだろうかと身構えていた筆者は、思わず「うわぁ気持ち悪い……」と声を漏らしてしまいました。絶句とはまた違う、体の芯からジワジワと鳥肌が立つような感覚。ですが、たまらない。この意味ありげで激重な感じが。
なるほど今作も酷い世界だ。おもしろくなってきた。まだ片足を付けた段階の日常風景から、この世界の“ずれ”は戦争だけでないんだぞとナチュラルに認識させる演出には感服しました。さすがです。
そんなおかしな世界で物語が始まるのです。不穏でしかないですよね、覚悟していきましょう。
誤りに初めて気づいた後に見られる関係性の変化。それこそまさに人間らしさ
主人公の6人は任務遂行中に鉢合わせることになります。交戦中に世界の謎を知る化け物“メビウス”が出現。その際、ある人物から託された融合して戦う力“ウロボロス”で共闘し、その場を切り抜けます。
その後、互いの身を守るという利害の一致もあり、ケヴェスとアグヌスの面々はともに旅することになります。道すがら度々敵と戦うことになり、ときには自国の仲間たちと剣を交えるなど、心苦しい場面も見られます。
当然、もともと敵どうしですから、序盤はメンバーどうしでも口論が続きます。とくに目立つのが、タイオンがユーニやランツと対立するギスギスした雰囲気。そのほとんどがタイオンからの一方的な皮肉なのですが……。
たいていは最年長のミオになだめられて「し、仕方なくだ……(汗)」と渋々引き下がる展開に。なぜかノアのことは序盤から信頼している様子で、我が強いタイプが苦手なだけなのかも? といった考察も捗ります。
争いの理由がないことや極端な短命という異常さを徐々に受け止めていく一行。言葉を交わすうちにだんだんと打ち解けていく姿から人間らしさが滲み出ます。
とりわけ尖っていたタイオンは感情表現が苦手なだけ。実際はやさしくてかわいいやつ。後にこれがパーティーメンバーの共通認識になっていきます。それぞれ扱いかたもわかり、冗談を交えて会話しているところを見たときは、なんだか近所のおじいちゃん気分でした。「こんなに立派になって」と、ポカポカした気持ちに。
迫力あるアクション、圧巻のカメラワークを駆使した最高のムービー
メビウスや敵対コロニーとの戦闘シーンは心苦しいほどにシリアス。そのうえで熱い展開を見ることができます。ハイクオリティな長尺ムービーが用意されており、感情豊かな表情や掛け合いによって、手に汗握る展開の連続。
戦闘とムービーの頻度は程よい塩梅で、ゲームプレイに飽きを感じさせません。バトルのアクションシーンは「うおお、かっこいい。なんかバチバチすごい」。と、精神年齢-10歳くらいの感覚で見てしまいます。それほどまでに少年心をくすぐる熱さです。
とくにウロボロスとなって戦闘するシーンは、モーションキャプチャーを使用したリアリティかつハイスピードなアニメーションに要注目です。リップシンクによって心の機微が伝わり、また迫力あるカメラワークとも相まって臨場感満点です。シリーズ最高のクオリティと言っても差し支えないでしょう。
もちろん重たい展開ばかりではありません。道中の会話ではキャラクターどうしの関係性が垣間見え、これは癒し要素と言えるでしょう。料理などを行える休憩ポイントでは、ストーリー進行や場所に応じて数種類のムービーがランダムで流れます。ノアとミオが親しげに笛の音を奏でたり脳筋コンビが筋トレしたり、ムービーはどれも心に安らぎを与えてくれます。
じっくり遊びたいRPGということで、一直線に突っ走ってもクリアーまで40時間前後とボリューミー。長旅の疲れを癒すついでに、そしてちょっとした休憩ついでに、キャラクターの関係性の変化を確かめて一喜一憂しましょう。
操作が忙しいけれど、その分コンボが爽快な大人数戦闘
演出面はもちろん、RPGとしてのシステム面についても語らせてください。『ゼノブレイド』シリーズはアタッカーやヒーラーなどの“クラス”に就いたキャラクターを操作して戦うコマンドRPG。本作ではシリーズ最大人数の7人パーティーでバトルをくり広げます。
操作はバチバチのアクションゲームとは異なります。動き回る必要はなく、オートアタックとアーツ(いわゆるスキルや必殺技)発動で敵を攻撃するのみ。
敵をダウンさせるなどのデバフ・バフ効果がアーツそれぞれに備わっており、その発動条件はさまざま。たいていは敵を指定された方向(正面・側面・背面)から攻撃することで発動します。
これら特殊な効果を持つアーツをキャラクターに合わせてセットし、ダウンやスタンといったコンボを発動させて戦うのがセオリー。ひとりにつき最大6+ひとつのアーツをセット可能で、デバフなどの効果を持つものはふたつまでと個数制限があります。
そのため、効果の異なるアーツをキャラクターごとに分けてセットし、チェンジしながら戦うのが定石です。少し忙しいですが、コンボがキマったときは絵的にも鮮やかで爽快。強敵と戦ううえでも有効な手段となります。
バトル中にウロボロス化した後も基本操作は変わず、アーツとオートアタックで攻撃します。ただ少し異なる点は、コンビの相手と入れ替わってウロボロスのアーツを変更できるということ。たとえばノアからミオへスイッチして、違うアーツ攻撃をくり出せます。
加えて、ウロボロス化前に通常アーツを一定回数使用しておくと、インタリンクレベルが上がります。0~3までのレベルがあり、上昇した分だけウロボロスの性能が強力になります。
融合前に積極的にアーツを使用し、なるべくレベルの高いウロボロスで戦いたいところ。
アーツを自由にセットする以外にも、ある程度ストーリーを進めることでキャラクターのクラスも変更可能。たとえばアタッカーのノアをミオと同じディフェンダーに切り替えることができます。
変更するとそのクラス限定のアーツも使用可能になり、戦闘時には就いているクラスの熟練度が上昇。すると、元のクラスでも別クラスのアーツをセットできるようになります。アーツの幅が増えたことで、さらにテンポよくコンボを発動できるでしょう。
主人公6人とは異なるクラスも存在します。それが“ヒーロー”。クラス継承の幅が広がる7人目のパーティーメンバーとして、“ヒーロークエスト”という特別なクエストクリアー後に迎え入れることができます。
重要人物となる数人は、ストーリー内でヒーロークエストが発生。それ以外のヒーロークエストはストーリーでは訪れないエリアに隠されています。数十人の全ヒーローを仲間にすることは、探索を進めながらのやりこみ要素となっています。
熱い展開には欠かせないBGMは涙腺を緩める名曲揃い
心をズタズタにされるような激重展開で泣き崩れ、ムービーの繊細な心理描写に共感して泣き崩れ、キャラクターの表情やセリフに泣き崩れ。感情移入しっぱなしです。
ストーリー展開も見事ながらBGMが涙を誘う名曲ばかり。ムービーが白熱した際に流れ出す『命を背負って』は『ゼノブレイド3』の代表曲と言えるでしょう。特徴的な笛の音色を取り込みつつ、切ないイントロからサビに入り、勇気を振り絞るような旋律へ移り変っていきます。アップテンポな曲調がストーリー展開と呼応して、涙腺を徐々に緩めてくる……。
さらには『敵との対峙』や『Counterattack』といった『ゼノブレイドDE』と『ゼノブレイド2』の名曲アレンジが随所に散りばめられています。これは“過去作2つの世界をつなぐ”という本作のテーマに相応しいアレンジ曲。泣けないはずがない。
BGMの「命を背負って」をご紹介しますも。静かなメロディから一転、緊張感のあるアップテンポな曲調に胸が高鳴りますも!それぞれの想いを秘めながらも戦い進む6人の心情が表れた、ここ一番という場面で流れる曲ですも!#ゼノブレイド3 https://t.co/ULIGyd8Udl
— ゼノブレイド総合 (@XenobladeJP)
2022-06-16 15:10:23
THE GAME AWARDS 2022でのオーケストラ演奏もされていますのでこちらも合わせておききください。
もちろん名曲はほかにもあります。ノアとミオが奏でるおくりびとの笛の演奏、シリーズ恒例の強力なユニークモンスターと対峙した際に流れる『名を冠する者たち』。そしてあのメビウスとの戦いで流れるやるせなさを感じる戦闘BGM……などなど。
これらBGMにも耳を傾けながらストーリーを進めていくと、なぜだかぼやけた視界の中、鼻水を啜って戦うこともしばしば。裏切りに闇落ち、そして逆転などなど荒波のように訪れる物語は全7章の構成となっています。
「あ、ここからやばそう」という山場に差し掛かったと感じたら、箱ティッシュを手元に用意しながらプレイすることをおすすめします。
『ゼノブレイド3』(switch)の購入はこちら (Amazon.co.jp)