「スマホで王道のシミュレーションRPGが楽しめる!」
2014年10月に『ファントム オブ キル』(『ファンキル』)がリリースされたとき、シミュレーションRPG好きの編集者と盛り上がった。そして編集部で会うたびに、攻略談義に花を咲かせたのを覚えている。
あれから約9年。『ファンキル』や『誰ガ為のアルケミスト』など、数々のスマホ向けシミュレーションRPGをヒットさせたStudio FgGの最新作が、2023年8月28日にリリースされる。
その名は『アスタータタリクス』(『アスタタ』)。これまでの実績をもとにつくられた、本格的なシミュレーションバトルが楽しめるほか、“分岐”をテーマにしたドラマティックなストーリーが堪能できるスマホ向けタイトルだ。
ストーリーはファンタジー世界のとある学園を舞台に、世界を救う使命を託された存在である継承者に選ばれた主人公ノワールと、人類の敵・バルバロイに対抗する力を持つ武器“キラーズ”と、そのつがいとなる鞘“バイブス”たちの物語が展開されていく。
今回は本作をひと足早くプレイした、シミュレーションRPG好きのライター・ジャイアント黒田によるプレイレビューをお届け。なお、ストーリーのネタバレには十分配慮しているので、安心して読み進めてほしい。
SRPG好きはもちろん初心者にも配慮されたシミュレーションバトル
楽しみにしていたバトルパートで、まず目を奪われたのは戦闘シーンの演出。ハイクオリティーな3Dグラフィックで表現されたキャラクターが攻撃やスキルをくり出す姿は、スマホ向けタイトルとは思えないほどの完成度で、いろいろなコマンドを試したくなった。
3Dモデルや演出のデキがいいだけに、ドット絵で表現されたフィールドマップには、正直、物足りなさを感じたが、すぐに考えを改めた。というのも、フィールドマップの見た目を簡略化することで、視認性がよくなっていると思ったから。
シミュレーションRPGの中には、フィールドマップを立体的に表現したことによって視認性が悪くなり、残念ながらユニットを操作しにくいタイトルも……。
とくに本作のような小さな画面で遊ぶスマホ向けタイトルの場合は、フィールドマップを作り込むことによって見づらくなってしまう可能性が高いので、遊びやすさの点ではアリだと思う。もちろん、簡略化することでほかにリソースを回せる利点もあるだろう。
バトルパートは見た目こそシンプルだが、戦略性は高いのでご安心を。本作のバトルは仲間との連携がカギとなり、味方のユニットを隣接させることで追加攻撃や支援が発生するほか、強力な“ビジョン・チェイン”が発動するといった要素も用意されている。
また、フィールドには“回復砦”や“見張り台”など、ユニットを配置すると特別な効果を発揮する拠点が存在。たとえば、回復砦に配置したユニットは、物防+2、魔防+2、回避+30の補正を得られるうえ、フェイズ開始時にHPを30%回復するという利点も。つまり、仲間を固めて進軍させつつ、拠点に陣取れば、バトルを有利に進めやすくなるのだ。
ほかに特徴的なのは、武器に耐久値が設定されていること。攻撃やスキルを使用すると耐久値が減少し、ゼロになると“破損状態”になってしまう。破損状態になった武器は、ステータスが減少する、スキルが使用不可になるといったさまざまなデメリットが……。
事前に武器を複数装備させておけば、行動選択時に武器を持ち換えることができ、状況に応じて武器を使い分けるといった戦法も可能に。武器が破損するシステムは賛否両論あるだろうが、戦略性を高める要素になっていると感じた。
さらに、“継承念装”という装備品とキャラクターの組み合わせで、固有必殺技の“ヴィジョン・シフト”が発動できる要素や、特定のクエストに強敵の“大型ボス”が出現するのも、バトルを盛り上げる要因になっている。
大型ボスとの戦闘では、マスに表示された攻撃範囲を見ながら敵が放つ大技“レイジバースト”を回避する、ダメージを軽減する“バリア”を破壊してスキを作るといった立ち回りが必要になり、通常のバトルとは違った手に汗を握る展開が楽しめた。
バトルを快適にプレイできるシステムが満載なのもうれしい。敵の攻撃可能な範囲がひと目でわかる危険エリアの表示や、味方がオートで戦ってくれる自動戦闘、戦闘スピードの高速化に加えて、巻き戻し機能が用意されている。
この巻き戻し機能を使えば、たとえ味方が戦闘不能になっても、数手前にさかのぼってやり直すことができるので、シミュレーションRPG初心者のデビュー作としてもピッタリだと感じた。
3Dグラフィックで再現された世界で思い思いの学園生活が堪能できる
キャラクターの育成や装備品の強化要素が豊富なうえ、学園生活を送りながら強化できるのも本作のウリ。メインストーリーの合間には、3Dグラフィックで再現された世界を自由に探索でき、仲間と絆を深めたり、クエストをこなして強化に必要な素材を入手したりできる。
学園生活をどのように過ごすかはプレイヤーの自由。主人公の魅力を表すパーソナルパラメータを伸ばして仲間とのキズナを深めるもよし、アルバイトに精を出してお金を貯めるもよし、学園内や城下町を探索してツボやタル、宝箱からアイテムを収集するもよし……。プレイヤーが思い思いの学園生活を過ごせるようになっている。
キャラクターはレベルアップのほかに、能力値を引き上げる限界突破、レベルをリセットする転生、パネルを解放してさまざまな効果が得られるスキルボードで育成できる。どれくらいコストがかかるかは不明だが、お気に入りのキャラクターを強化できる要素が満載なのはうれしいことこのうえない。
筆者はシミュレーションRPGをプレイするとき、戦略を練って強敵に挑むことにやりがいを感じる一方で、お気に入りのキャラクターをとことん強化し、一騎当千の強さを堪能するプレイも大好物! キャラクターだけではなく、武器や継承念装の強化も行えるので、サービス開始後はパーティーの強化に没頭しそうだ。
メインストーリーのボリュームはスマホ向けゲームの中でも最大級!
今回は序盤しかプレイできていないが、冒頭から兄弟子ランスロットとの再会、亡国の王女ギネヴィアとの運命の出会い、そして主人公をマスターと呼び慕う謎多き少女ティルフィングとの邂逅……と、ドラマティックな展開が数多く用意されており、ストーリーを進める原動力になった。
クオリティーだけではなく、シナリオの量もボリューミー。本作のメインストーリーのシナリオは、『ファンキル』や『誰ガ為のアルケミスト』の6、7年分の量があるうえ、プレイヤーの選択によって3つのルートに分岐し、異なるエンディングが描かれるという。しかもリリース時から実装済み(!)というから、気合の入りようがよくわかる。
ちなみに、序盤に登場したキャラクターの中では、世話好きのウレリーと非行少女のマルディサントが筆者のお気に入り。ふたりとも慌てふためく姿がキュートで、思わず頬がゆるむことも。あ~、筆者も主人公のように、かわいい女の子たちに囲まれた学園生活が送りたかったなあ……。
また、『ファンキル』ユーザーとしては、同作で活躍したティルフィングや、レーヴァテインに似た銀髪の少女の存在も気になるところ……。
今回は時間がなかったので、サービス開始後にメインストーリーをクリアーするのが非常に楽しみだ。シミュレーションRPG好きはもちろん、『ファンキル』ファンも必見の内容となっているので、興味のある方はぜひチェックしてほしい。