2013年にプレイステーション3(PS3)にて発売された『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』。2020年にプレイステーション4にて発売された続編の『The Last of Us Part II』、2022年にプレイステーション5(PS5)にて発売された『The Last of Us Part I』と併せ、シリーズ累計3700万本以上(2022年12月時点)を売り上げる大ヒットシリーズだ。
そんな『The Last of Us Part I』が、2023年1月に実写ドラマ化。『THE LAST OF US<シーズン1>』として放送がスタートした。そのクオリティの高さから世界中で大きな話題を集めたほか、すでに『THE LAST OF US<シーズン2>』の制作の決定が発表されている人気ドラマだ。
『THE LAST OF US(シーズン1)ブルーレイコンプリート・ボックス』の購入はこちら (Amazon.co.jp) 『THE LAST OF US(シーズン1)4K ULTRA HDコンプリート・ボックス スチールブック仕様』の購入はこちら (Amazon.co.jp)※PS3版~PS5版など、1作目すべてのバージョンを合わせて『The Last of Us Part I』と表記。
そして2023年8月2日より、『THE LAST OF US<シーズン1>』のBlu-ray、4K ULTRA HDの発売、DVDレンタル、デジタルレンタルが開始。そこで、『THE LAST OF US<シーズン1>』の魅力を、ゲームファンや原作ファンに向けて解説していこう。
なおゲーム、ドラマともに序盤のあらすじやポイントを紹介する都合上、ややネタバレが含まれているので気になる人はご注意を。
ゲーム『The Last of Us』とは
『The Last of Us Part I』は主人公・ジョエルを操作して進めていくアクションアドベンチャー。現代のアメリカを舞台に、突如発生した謎の寄生菌によるパンデミックにより崩壊した世界で、ジョエルと少女・エリーの絆が描かれていく。
凶暴な“感染者”たちとは銃撃や体術で戦うのだが、崩壊した世界ゆえに物資はつねに不足しており、使える銃弾に限りがある。そのため、バンバン銃撃をしていくゲームというよりは、身を隠しながら戦闘を避けたり、こっそり近づいて敵を倒すなど、ステルスゲームに近いタイトルだ。
拾った角材を武器にしたりレンガを投げつけて攻撃するといった、細かなアクションも存在。また、アイテムを集めながら治療キットを制作するなど、クラフト&探索要素もある。
開発は『アンチャーテッド』シリーズで知られるノーティードッグが担当。はしごや木の板を使ったちょっとした謎解きや軽快なフィールドアスレチックなど、アクション全体の手触りは非常の良好だ。
そしてゲームの完成度をさらに高めているいちばんの要因は、本作で語られる重厚なストーリーにある。
ゲーム・ドラマ共通のあらすじ
物語の冒頭で、人を凶暴な姿へと変える寄生菌のパンデミックから始まる。主人公のジョエルは、パンデミック発生時に娘を亡くしてしまうのだった。
そしておもな舞台となるのは、その20年後の世界。人類は寄生菌への解決策を見出しておらず、隔離地域と呼ばれる高い壁に囲まれたエリア内で暮らしていた。隔離地域の外は無数の感染者や人々を襲う賊などが闊歩しており、非常に危険。
ジョエルは相棒のテスとともに、隔離地域をこっそり抜け出すなどして、何かしらの手段で得た物資を販売し、日々の生計を立てていた。そんなあるとき、関わりのある女性から、とある“荷物”の輸送を依頼される。
その荷物が、少女・エリー。エリーは感染者に噛まれても感染者にならない、寄生菌への抗体を持った特別な女の子だった。ジョエルは世界を救う鍵となるかもしれないエリーとともに、どこかにある研究施設を探しながら、危険なアメリカ横断を目指す。
ぶっきらぼうな中年男性のジョエルに対して、エリーは勝気で生意気な女の子。どちらも最初はいがみ合う仲だが、旅の中で次第に絆が深まっていくのが大きな魅力。また、旅の中で出会う人たちとの交流も見どころで、危険な旅路の中で、多彩なドラマが描かれていく。
物語は原作を踏襲
ここからはドラマ版のご紹介。全9話となっており、おおまかなストーリーは原作とだいたい同じだ。前述したあらすじは、ドラマ版のあらすじでもある。制作にはゲームのクリエイティブディレクターを務めたニール・ドラックマン氏も関与。ゲームと大きくストーリーが変わらないというのは、いちファンとしてうれしいところだった。
映像表現は非常にリッチに作られていて、隔離地域の雰囲気や外の世界の荒廃したロケーションなど、ゲームで見たような風景が表現されている。感染者たちはゲーム以上に恐ろしいビジュアルかつ、アップで見せられることも多いので、ホラー感がゲームよりやや増している印象を受けた。
ゲームでは敵対する人間や感染者たちと戦うシーンが多々あるが、ドラマ版では戦う必要のある場面だけ戦うといった感じ。要所以外の道中での戦闘はカットされたような感じで、サクサク物語が進んでいく。そのぶん、描写のひとつひとつがゲームよりも濃密な印象を受けた。
日本語ボイスがゲームと同じ!
キャラクターたちのビジュアルは、全体的な雰囲気はゲームとふんわり同じ空気を感じる。一部キャラクターは完全に違う印象を受けたりもするが、概ねゲーム内のキャラクターたちに近い印象。
また、日本語吹替版のボイスをゲーム版と同じ声優陣が担当しているのもファンとしてうれしいポイント。
ジョエル(声:山寺宏一)
エリー(声:潘めぐみ)
トミー(声:高橋広樹)
テス(声:田中敦子)
マーリーン(声:朴璐美)
ドラマならではの魅力
もちろんドラマならではの要素や、ちょっとした設定/演出の違いも採用されており、ゲームを遊んだ人にとってはそこが新鮮な要素に映るはず。以下、序盤を中心にドラマ版の魅力だと感じた点を紹介していこう。
より濃くなった細かな描写
ゲーム冒頭でジョエルは娘・サラから、誕生日プレゼントに腕時計を貰う。ゲームではそれだけの一場面だったが、ドラマ版ではサラが腕時計をお店で直してもらうシーンがあり、“動かなくなった時計をサラが誕生日に直してあげた”と、より描写が濃くなっている。
ほかにもそういったシーンは数多い。たとえばジョエルたちが外に出た瞬間、軍に見つかってしまうシーン。原作同様にエリーがナイフを刺して拘束から逃れるのだが、ドラマ版はそこから少しだけ描写が異なる。
ドラマ版のジョエルは兵士に銃を向けられた際に、娘のサラが兵士に撃たれて死亡した過去を思い出す。そして、“エリーをサラの最後に重ねる”ように兵士を何度も殴打。ゲームでもジョエルは兵士にタックルをするのだが、その隙にテスが射殺して解決していた。
こういった細かい部分が強化されているおかげで、よりグッとストーリーに入り込めるように感じた。
感染者の設定がやや異なる
原作では感染者の発生源や原因は不透明だったが、ドラマ版では食事から感染が広がったことが明言されているほか、ゲームと感染者の設定が異なっている。
ドラマ版の感染者は地に根を張り、独自のネットワークを持っているのが特徴。感染者が襲われたことがネットワークを介して伝わるほか、その根を踏むと位置を特定される場合があるのだとか。ドラマでは根が枯れるまで通れない、という道も登場している。
原作は菌が空中に浮遊しており、空気感染を防ぐためにガスマスクを付けるシーンもあるが、本作ではその設定が“根”という要素に変わった感じ。ほかに“口づけで感染”させるシーンもある。
おなじみの敵たちも登場
感染者はランナー、ストーカー、クリッカーなど、感染段階を踏んでより厄介な存在になっていく。ドラマ版にも感染が進行した感染者たちが登場し、随所でジョエルたちに迫ってくる。
序盤が過ぎたあたりで音に反応するクリッカーとの戦いが勃発。音を出してはいけないシチュエーションでのアクションということもあり、ドラマならではの恐怖演出が楽しめるのが好印象だ。
ゲームでは武器を構える音などにはクリッカーは反応しないので、プレイヤーは足音だけを気にするわけだが、ドラマではそんなわけもなく、リボルバーガンのリロードすら音を出してはならない。各種行動に緊張感が走る、ドラマならではのドキドキ感が演出できていると感じた。
ステージ進行はだいたい沿って展開
ゲームでは下水道やビルの中など、さまざまなスポットを歩きながら進んでいく。ドラマでもそれは踏襲されつつも、一部ステージはオミットされていたり、または別スポットに置き換えられている。
たとえばゲームの地下鉄を進むシーンでは、エリーが泳げないことが判明。ドラマではホテルでそれが発覚し、ゲームの地下鉄とビルが合体したようなシチュエーションになっている。
ゲームを遊んでいるほどに、「あ、このシーンはあのステージの再現なのかな」などと予想できるのも、ちょっとした楽しみだ。
人間たちとの戦いは少し控えめに
ゲームではジョエルたちに敵意を向ける人間たちとの銃撃戦がたびたび発生していたが、ドラマ版では少々控えめに。人間たちが敵意を向けてくることは少なく、ゲームで執拗に迫って来た軍の追手は出番自体がほぼない。
たとえばテスは、原作では軍の追手を食い止めつつも撃たれて最期を迎えたが、ドラマ版では追ってくる感染者たちを巻き添えに自爆してジョエルたちを助ける味付けに変わっている。個人的にはドラマ版のほうからより強いテスの覚悟が伝わってきた。
ほかにもゲーム中盤以降に登場する食人集団がマイルドに変わっていたりもする。が、中身自体のエグさはそのままなのでご安心を(?)。
強くてニューゲーム
冗談的なツッコミだが、ジョエルの初期装備がスゴい。ゲームでは進行に応じて新しい武器を獲得していく。序盤はハンドガンをメインに進めていくのだが、ドラマ版では序盤からアサルトライフル装備となっている。強い。
なお、細かい装備面も変更が見られる。懐中電灯が手持ちタイプのものになっていたりして、ゲームの再現性よりも、見栄えや演出効果などを重視しているように感じた。
第7話でDLCが展開
ドラマの7話では、エリーがジョエルと出会う前を描いた追加ダウンロードコンテンツ“Left Behind -残されたもの-”の物語が展開する。薬を探すエリーの行動と恋心を抱く女の子・ライリーとの回想が混ざって進んでいくのがゲーム版の流れ。ドラマではライリーとの回想パートのみで進む構成で、7話だけでまるっと“Left Behind -残されたもの-”が楽しめるようになっている。
第3話に驚いた!
筆者がとくに驚き、そして感動したのは第3話だ。本ドラマは全体的にゲームをなぞりつつも、細かな部分で設定やキャラクターに肉付けをしていくような作りになっているのだが、第3話だけは異なる。
ゲーム的には、クルマを必要とするジョエルが、知人のビルを訪ねるパート。ドラマ版でジョエルが到着したのはビルが他界した後。ジョエルたちには置き手紙と物資だけが残されていた。そのため、展開が大きく違うのだ。
第3話の内容はジョエルたちの旅路にほぼ関係のない、ビルのお話。パンデミックが起きたころから物語は始まり、隔離地域に行かずに自宅で隠れ住んでいたビル。生活用品をかき集め、野菜を育て、たったひとりで悠々自適な自給自足生活を送る。
ある日ビルは、感染者用のトラップに引っかかったフランクと出会う。ビルとフランクは次第に愛し合い、ともに暮らすようになっていくのだが……。
という感じで、ビルの完全新作スピンオフストーリーが展開されていく。本編にはほぼ関係ないのだが、これが美しい映画1本を見たような感覚。ゲームをプレイした人には、第3話だけでもぜひチェックしてほしい。
ぜひご視聴を!
ゲームでは語られなかった情報が補完されているのもおもしろい。たとえば、“エリーはどうして感染者にならなかったのか”。ドラマではエリーの母親が登場してその謎が明かされることになる。
ちなみにエリーの母親を演じているのはゲーム版のエリーの英語ボイスを担当しているアシュレー・ジョンソン。ほかにもゲーム版の声優が出演しているシーンがあるので探してみるのもいいだろう。
ゲームを遊んだ人にとっては「なるほど」と思える要素が盛りだくさんだ。
気になる人は2023年8月2日に発売・レンタル開始となる『THE LAST OF US<シーズン1>』を、ぜひ視聴してほしい。
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