フライハイワークスが2023年5月25日に発売する2Dアクションゲーム『Shinobi non Grata』を紹介しよう。本作の対応プラットフォームはPCで、日本時間の25日0時よりSteamで配信される。価格は1500円。

リアルよりもカッコよさ優先の“架空のレトロ”

 さて本作は、2Dドット絵の忍者アクションゲーム。主人公の忍者“腕”(カイナ)は魑魅魍魎が跋扈する陰謀を食い止めるため、「招かれざる忍」(シノビ・ノン・グラータ)として突き進んでいくことになる。全5章のステージクリアー型で、各章はそれぞれ数体のミニボス戦(倒すとチェックポイントになる)とチャプターボスで区切られているという感じだ。

Shinobi non Grata

 画面を見れば一目瞭然、ファミコンや一部スーファミ世代あたりのグラフィックやサウンドにオマージュを捧げたレトロテイストなゲームなのだが、今どきの16対9のワイド画面を大きく使って、当時の実際のゲームではありえない“盛大にはみ出した表現”をブッこんでいるのが特徴。

 章の始まりやボス戦の開始時には毛筆で章タイトルや「勝負」といった文字がどデカく出て、巨大なボス敵が派手に動き回ったり、大量のザコ敵や弾幕が所狭しと出現したりする。リアルさで言ったらかなりの“嘘”が入っているのだが、これがもう笑っちゃうほどカッコいい!

Shinobi non Grata
この堂々たるハッタリ感、大好き。

“捏造”はじまりが故のこだわり

 企画とゲームデザインを担当したピコピコ256氏いわく、当初は同氏が趣味的に公開していた架空のゲームの「捏造」画像が発端だったのだという。

 同氏が公開しているnoteにはその経緯やゲームとして開発を進めるに至ってからの企画書が掲載されているのだが、それを読むと派手な演出の一方で完全な嘘にならない「ギリギリのリアリティ」(ピコピコ256氏・談)を維持するために、キャラクターグラフィック上のドットと移動上のドット単位を一致させたり(※)、ドット絵スプライトの斜め表示などがないようなこだわりを入れていることがわかる。

(※現代のドット絵ゲームで起こりがちな、いわゆる「0.5ドット」などの1ドット以下の単位の移動をなくすこと)

Shinobi non Grata
大量のクナイが弾幕として飛び、背景が回転&スクロール。世代がスーファミになっている感じがするがカッコイイのでオーケー。

ゲームデザインも実はユニーク。プレイが自然とカッコよくなる

 ユニークなのは演出のコンセプトだけではない。ゲームデザインも一見グラフィック通りに(往々にして高難度な)レトロな設計をイメージするかもしれないが、実は結構違う。カッコいい忍者アクションの粋な部分を満喫できるよう、めちゃくちゃ合理的に再構築されているのだ。

 特徴的なのが、最初からサブウェポンをすべて持っていること。カイナはメイン武器の刀以外に手裏剣や鎌や大筒などのサブウェポンを持っており、敵を倒した際などに入手する“魂”を消費して使用できる。

Shinobi non Grata
手裏剣は3Wayで飛ぶ。エネルギーはかなり回収できるので積極的に使ってオーケー。

 メイン武器とサブウェポンをうまく使い分けて戦っていくのはレトロアクションゲームではよくある作りだと思うが、リアルな当時のゲームを攻略情報なしに遊ぶと、適切なサブウェポンの選択や使い方を発見するまでに時間がかかったりするもの。リトライ回数が制限されてたりするとマスターするまでに心が折れちゃう人もいるだろう。

 だけど本作ではサブウェポンだけでなく二段ジャンプやドッジ(回避)などの移動アクションも含めて使えるツールは最初から全部渡されているし、エネルギーとなる“魂”も回復しやすく、チェックポイントからボス/ミニボスまでの各セクションも短いので試行錯誤をやりやすい。

Shinobi non Grata
ボス“忌蜂”は周囲から送り込んでくる蜂にどう対処するかが重要になる。

 雑魚は一撃で倒せたりするので難度的には最初は割と簡単なのだが、次第に大量の敵が出てきたり、嫌らしいムーブをするボスも出てきて、段々とハードになっていく。

 でも試行錯誤して「このサブウェポンで邪魔な雑魚を追い払えるな」とか「落ち着いて二段ジャンプを制御して攻撃をそらしてから急降下ドッジで逃げればいいのか」といった感じに的確な対処法を見つけると、とんでもなくシビアな操作をしなくても意外になんとかなるようになっているのだ。この「完全にヌルいわけではないが、ちゃんと見極めれば見た目ほど難しいわけでもない」というバランスが個人的にはなかなかいい感じ。

Shinobi non Grata
地面には火炎が走り、上からクナイが投げられてくるという状況だが、ジャンプの落下速度が遅くて二段ジャンプにいつでも切り替えられるので、落ち着いて対処すると意外と切り抜けられる。

 とまぁそんな感じに遊んでいって、気がつくと腕利きの忍者として的確に敵の中を駆け抜けていく、うまくてかっこよさげなプレイに自然となっている。実はあんまり大したことしてないんだけど、気持ちよさはしっかり味わえる。

 なので、この手のゲームが気になっていたけど手を出す勇気がなかった、という人にこそトライしてみて欲しいなぁと思う。手練れの忍者諸氏はまぁ、大体の感じを把握したら一発も食らわないノーヒットクリアーのタイムアタックでも狙ってみるといいだろう。いずれにしても、変に気負わずに「こんな演出のレトロゲームあったらいいな」の世界をサクッと気持ちよく体感できるだろう。

Shinobi non Grata
章の合間のカットシーンもカッコイイ。