2023年2月24日よりPC(Steam)にて配信中の『Company of Heroes 3』。ミリタリーRTS(リアルタイムストラテジー)のシリーズ最新作である本作は、前作から約10年ぶりの発売となる、ファンにとっては待望の作品だ。
ゲーム内では、ひとりで楽しめる“シングルプレイ”をはじめ、オンラインでほかのプレイヤーと対戦できる“マルチプレイ”、協力してAIと戦う“協力プレイ”などがプレイ可能。今回は、そのなかでも“シングルプレイ”に焦点を当てて、魅力などを紹介していこう。
多様な戦略で無限に楽しめるリアルタイムストラテジー
連合国軍またはドイツ軍の司令官となって部隊を指揮するのが本作の基本。市街地や森林地帯といった戦場で各部隊(ユニット)に指示を出しながら、勝利目標の達成を目指していく。
勝利目標は、特定の拠点を制圧する、ターゲットとなる兵器、車両を破壊するなど、自軍の置かれている状況で異なるのだが、それによって戦略も大きく変化。同じマップでも、目標によって最短ルートで進行して攻略を目指したり、あえて遠回りしてじっくりと攻めていったりと、異なるプレイが楽しめるのがポイントだ。
戦闘では本拠点となる司令部で部隊を生成し、目標達成を目指して行動していく。そのために重要になってくるのが、リソースの管理と各部隊の特性の把握だ。
敵味方には、それぞれ人員や弾薬、燃料といった資源が存在。戦闘では時間経過で少しずつ補給されていくのだが、新たな部隊の生成や戦艦からの砲撃支援といった強力な戦術を用いる際は、それらを消費する必要がある。そのため、味方を強化できるからといって資源が少ない序盤から無計画に消費していると、肝心なときに何もできず、部隊が壊滅するなど悲惨なことに。
逆に資源を貯めていくと、負傷した部隊を回復させられる“医療局”や、強力な武器を装備した部隊、戦車などの車両が生成できるような施設も建設可能。戦略の幅がどんどん広がっていく。
生成した遠距離砲撃できる車両で敵の射程外から一方的に攻撃したり、守りが固い拠点に空爆を要請して突破口を開いたり、資源を管理し効果的に用いてアドバンテージを取っていく戦闘は、一筋縄ではいかない分、とてもやりごたえのあるものとなっている。
部隊の特性は、プレイヤーがどの兵科の部隊を運用するかで変化。たとえば同じ歩兵でも、ライフルとグレネードが使える歩兵分隊、手を阻むワイヤーの設置や撤去ができる工兵分隊などが存在。
また、工兵といっても、所属している陣営などによって持てる武器やできること、部隊の人数も変わってくるので、各部隊の長所、短所をしっかりと理解したうえで運用していくのは、攻略に欠かせない要素となっている。
いっぽうで、各部隊の特性を押さえられれば資源と同様に戦略の幅が一気に広がり、敵装甲車両を歩兵だけでサクッと大破させる、なんてことも。本作は膨大な兵種や戦術があるぶん、それらを知れば知るほど「ああいう戦いかたも、こういう戦いかたもできるな」とアイデアがどんどん溢れてくる。
疲れるくらい頭を使ってもまったく飽きがなく、脳みそをフル回転して攻略を目指すストラテジーゲームが好きな人にはたまらない作品だ。
ターン制パートが醍醐味の“イタリア戦線”
ストラテジーゲーム好きには垂涎ものの戦闘が楽しめる本作。シングルプレイでは、連合軍を指揮して広大なイタリアをドイツから解放する“イタリア戦線”、アフリカを舞台に連合軍とドイツ軍の攻防が展開される“北アフリカ作戦”のふたつからシナリオを選択できる。
イタリア戦線では、敵の猛攻に耐えながら上陸、攻略を目指すシチリア島での戦いに始まり、イタリアからドイツ軍を追い出すための戦いが各地で展開。大きな特徴として、ターン制のパートが存在し、中隊単位でユニットをイタリア各地へと向かわせ拠点となる市街地を攻略していく。
最終的な目標は大都市・ローマの攻略になるのだが、戦場にフォーカスしたリアルタイムの戦闘だけでなく、イタリア全体を盤面にしたターン制での攻略も楽しめるのは、本シナリオならではのおもしろいポイントだろう。
対するドイツ軍側も多数のユニットが支配領域を固めており、拠点防衛やこちらのユニットを排除するため、敵ターンに移行すると行動を開始。ユニット同士が接敵、またはユニットが駐留している拠点に攻撃を仕掛けた際には、リアルタイムでの戦闘へと移行する。
戦闘可能なユニットはターンごとに補充される資源を消費して生成できるのだが、アメリカ軍空挺部隊、イギリス軍インド砲兵部隊など、どの中隊を生成するかで、リアルタイム戦闘時に展開できる部隊なども変化。それによって戦術や敵中隊との相性も変化し、その都度戦いかたも変わってくるので、同じような戦闘はまったくと言っていいほどないのだ。
なお、筆者がプレイした際には、砲兵部隊のユニットが敵機械化部隊と接敵した。装甲車など機動力がある敵に対して自軍は歩兵が中心。とくに資源が少ない序盤は、装甲車両に振り回されて圧倒的不利な状況での戦いを強いられたことも。
しかし、歩兵に対戦車ライフルを持たせ、敵の兵器を奪って返り討ちにするなど、粘り強く戦うことでしてなんとか逆転勝利。劣勢でも諦めず、知恵を振り絞りあらゆるものを利用することで、勝機を引き寄せられるのも本作の魅力のひとつと言えるだろう。
ドラマチックな物語が描かれる“北アフリカ作戦”
イタリア戦線ではターン制のパートが楽しめる一方、“アフリカ作戦”ではドイツに占領されたリビアのベンガジに住む男性イゼムとその家族視点の物語がメイン。ストーリーパートとリアルタイムでの戦闘パートが交互に展開される。
イゼムは連合軍側に付いてドイツアフリカ軍と戦うのだが、戦闘パートではなんと“砂漠の狐”ロンメル率いるドイツ軍を指揮することに。プレイヤーはイゼムの物語を見せられながら、彼らを追い詰める側としてプレイしなくてはいけないのだ。
いっぽう連合軍は連合軍で、イゼムの家族がいる町を空爆し、街はがれきの山に。ドイツ軍を攻撃するためとはいえ、味方によって家族が命の危機にさらされた状況に、どちらが正義かわからなくなってしまうストーリーは、劇的で見ごたえがある。
戦闘のほうはアフリカが舞台ということもあり、戦場は海岸や森林地帯があるイタリアとは異なり、砂漠や荒野がメイン。そのため遮蔽物が少なく、歩兵だけでは攻めにくいマップが多い印象だ。
いっぽうで車両は運用しやすく、戦車で銃弾の雨をものともせず前進し、塹壕に隠れる敵を吹き飛ばす瞬間はじつに爽快だ。むろん、連合軍側も戦車を用いてくるので油断はできないが、砲撃が飛び交うダイナミックな戦闘は、それはそれで見ごたえ抜群。押し寄せてくる敵車両を残らずスクラップにし、手に汗握る戦いを制したときの快感はしばらく余韻に浸ってしまうほどだった。
ドラマ性のあるストーリーはもちろん、リアルタイムストラテジーをじっくりと楽しみたい方には“アフリカ作戦”がおすすめだ。
今回はシングルプレイを中心に『Company of Heroes 3』の魅力を紹介したが、本モードだけでもふたつのまったく異なる要素と魅力を持ったシナリオを楽しむことができ、ひとりだけでも非常にやりごたえのある作品だった。製品版ではこれに加え、先述したオンラインでの対戦、協力プレイも楽しめるので、本作の魅力をより感じることができるはずだ。
アフリカ作戦でシリーズの醍醐味である戦闘を楽しむもよし。イタリア戦線でターン制のひと味違ったプレイを楽しむのもよし。ほかのプレイヤーと対戦、協力するのもよし。ストラテジーやミリタリーに興味がある方は、ぜひ本作をプレイして自軍を将へと導いてほしい。