2023年3月30日(木)に、Nintendo Switchで配信予定のアクションシューティングゲーム『重装機兵ヴァルケン DECLASSIFIED』。1992年にスーパーファミコンで発売された『重装機兵ヴァルケン』の完全移植+多数の追加コンテンツを収録して発売される、ファン待望の1本だ。

※本稿は『重装機兵ヴァルケン DECLASSIFIED』の提供でお送りします。

 ……といったお決まりの前置きはそこそこにして。PS2やゲームキューブといった2000年代のゲームハードですら、世代によっては“レトロゲーム”とくくられてしまう昨今。

 1992年のゲームともなると、もはや“スーパーレトロゲーム”。コアなファンやレトロゲーマーをターゲットにした、大人のためのゲームだろうか。

 今回、そんなゲームのレビューを担当させていただく機会を筆者が得たのだが……。先に白状しておきたい。

 僕はSCF版直撃世代でもレトロゲーマーでもありません!

『重装機兵ヴァルケン DECLASSIFIED』レビュー。高難度アクションで1992年の少年たちに想いを馳せる。硬派なリアルロボット戦記は妄想膨らむ1本だった

 むしろレトロゲームは苦手なジャンルと言える。遊ぶなら洗練されたリッチなゲームで遊ぶ派。最近専門にしているのはVR関連コンテンツ。真逆じゃん。

 なぜそんな僕に白羽の矢が立ったのか? 担当編集者によると「作品を知らない世代が、どのように感じるのか、新鮮な気持ちで遊んでみてほしい」とのことだ。そして「大丈夫。おもしろいから」とも言っていた。

 こう書くと、僕がめちゃくちゃ若いライターに見えるかもしれないが、先月31歳になったいい大人だよ。もっと若い子でいいんじゃないかな!? やるけども! ゲームは何でも好きだからね!

 ……ということで、本稿は何の因果か『重装機兵ヴァルケン』と同じ1992年に生まれた僕が、原作発売当時のプレイヤーたちに想いを馳せながらプレイして、本作の魅力に憑りつかれる記事です。

 そして、プレイ動画もお楽しみください。

『重装機兵ヴァルケン DECLASSIFIED』プレイ動画

1992年の少年たちもきっと同じ気持ちだった。

 『重装機兵ヴァルケン』のことをまったく知らないまま、ゲームを手渡された筆者。『ゲームセンターCX』じみてきた。

 簡単に本作の概要を調べつつ、ほぼ予備知識なしでスイッチオン。

「テテテテ~↑ テテテテ~↓ ドゥンドゥンドゥンドゥン♪」

『重装機兵ヴァルケン DECLASSIFIED』レビュー。高難度アクションで1992年の少年たちに想いを馳せる。硬派なリアルロボット戦記は妄想膨らむ1本だった

 重厚でかっこいいテーマソングとともに、無骨なロボットとタイトルロゴがどーんと目に飛び込んできた。おぉ……。かっこいいな! まさに、これから、ロボット戦記が始まるぞという感じがして、コントローラーを握る手にも思わず気合が入る。

 そのまま進めていくとメニュー画面に項目がずらり。ゲーム本編だけでなく、追加コンテンツも楽しめる。

  • 画像集
  • 取り扱い説明書
  • 公式ガイドブック
  • CDブックレットが閲覧できるイメージギャラリー
  • 全17曲のオリジナル音源BGM+リアレンジBGMが収録されたミュージックプレイヤー
  • スタッフのインタビュー
  • スーパープレイが見られるムービーギャラリー

 設定イラストを見て、僕の中の少年が目を覚ます!

『重装機兵ヴァルケン DECLASSIFIED』レビュー。高難度アクションで1992年の少年たちに想いを馳せる。硬派なリアルロボット戦記は妄想膨らむ1本だった

 とはいえ、まずはプレイせねば。いざ、本編開始。

 タイミングもいいので、ここで本作についてざっくりと解説しよう。

 本作は横スクロールのロボットSFアクションゲームだ。舞台は2101年の未来世界。環太平洋合衆国と欧州アジア連邦が戦争をくり広げる中、プレイヤーは環太平洋合衆国の強襲揚陸艦“バーシス”に所属するジェイク・ブライン中尉として、重装機兵(アサルトスーツ)・ASS-117ヴァルケンのパイロットに乗り込み、最前線に身を投じていく。

 主役とも言える重装機兵は量産型の軍用有人操縦機。特別な性能を持つ機体ではない。これには当時の時代背景も影響しているらしい。スーパーファミコン版が発売された1992年と言うと、『超時空要塞マクロス』や『装甲騎兵ボトムズ』といった量産型リアルロボット作品の記憶も新しい頃。少年たちがわくわくする気持ちもわかる。

『重装機兵ヴァルケン DECLASSIFIED』レビュー。高難度アクションで1992年の少年たちに想いを馳せる。硬派なリアルロボット戦記は妄想膨らむ1本だった

 そのためか、できることはシンプルにまとまっている。ガトリング or パンチによる攻撃と5秒間だけ使える(飛べる)ブースター、ダッシュ、ガードのみ。武器はドロップアイテムで能力を強化できるほか、ミサイルとビームという2種類も追加されるが、逆に言えばそれでおしまい。パイロットが突然覚醒したり、機体に秘められた裏機能なんてものはない。己の操縦技術のみで戦場を生き延びるのだ!

 なお、敵の攻撃やステージのギミックで体力が0になるとミッション失敗。3回までのコンテニューでクリアーしないと、最初からやり直しとなる。こういった妙に高い難度はレトロゲームあるあるだよね。

操作感はひと癖あり。だからこそ自在に操っている気になれる。

 ゲーム本編は、主人公が乗る強襲揚陸艦“バーシス”が、敵のコロニーに文字通り“突っ込む”ところから開始。重装機兵で敵の基地内部へ直接乗り込むというヤンキーもびっくりのカチコミ作戦や、キャラクターたちがくり広げる無線でのやりとりは激熱だ。

『重装機兵ヴァルケン DECLASSIFIED』レビュー。高難度アクションで1992年の少年たちに想いを馳せる。硬派なリアルロボット戦記は妄想膨らむ1本だった

 仲間たちからの信頼が熱い主人公・ブライン中尉は、第68アサルトスーツ小隊・デスワスプの隊長であり、イケメンな一流のパイロット。

 敵陣へと少数精鋭で切り込む部隊の隊長ということで、軍上層部からもさぞ期待されているだろう! そして戦闘技術も超一流なのであろうこの青年!

『重装機兵ヴァルケン DECLASSIFIED』レビュー。高難度アクションで1992年の少年たちに想いを馳せる。硬派なリアルロボット戦記は妄想膨らむ1本だった

 誰も知らないだろうが、中身(筆者)は、訓練すらうけていないずぶの素人である。 

 仲間たちの期待の眼差しを背中に浴びながら、画面ではガトリングを明後日の方向に連射するエースパイロットの姿がそこにはあった。何だこれ! 難しいぞ!

 とにもかくにも、操作感が独特だった。攻撃方法となるパンチと射撃は切り替え式で同じボタンだし、極めつけは銃の照準と移動を左スティックのみで同時にするという、現代では考えられない方式。

 そうか、スーパーファミコンのコントローラーは、十字と6つのボタンしかないのであった。ゲームの要素が増えれば増えるほど、ひとつのボタンに役割が集中するのは必定で、その解決策として生み出されたのがこの操作方法か。昔のゲームは全部これが当たり前だったのか!? スティックを発明した人は天才だ!

 最初は操作感を体に叩き込みつつマップを探索。これほど説明書とにらめっこしたのも久方ぶりの感覚で、これはこれで味がある。

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 最初はしどろもどろだった操作も、10分ほど遊べば体になじんでくる。武器の切り替え、防御、ジャンプに慣れてきて、直感的に操ることができるようになってきた。

 1992年当時、自由自在にロボットを操作して戦場を駆け巡る体験は、きっと多くの少年たちの心をつかんだに違いない。

硬派なリアルロボット作品としてのおもしろさに引き込まれる。

 操作に余裕が出てくると、ゲームの手触り以上に、グラフィックに目を奪われるようになった。

 主人公が登場する重装機兵や強襲揚陸艦“バーシス”をはじめ、敵などの機械や建造物のデザインは無骨だ。だからこそ、ドット絵ながら細部まで描き込まれたひとつひとつの表現に、リアルさが宿っているようだった。

『重装機兵ヴァルケン DECLASSIFIED』レビュー。高難度アクションで1992年の少年たちに想いを馳せる。硬派なリアルロボット戦記は妄想膨らむ1本だった

 加えて、緻密なグラフィックも光る。ガトリングを放つと薬莢が飛び散り、着弾地点は穴だらけ。敵を撃破すれば、爆風だけでなく、パーツが粉々に砕け散り爆発四散。

 ひとつひとつのリアルな描写は、激しい戦場を疾走する主人公たちの姿を想起させ、僕ら少年たちの脳内には、銃弾が激しく飛び交い、爆発が続出する戦場に重厚な機体が激突し、火花が飛び散り、兵士たちの怒号が響き渡る。

『重装機兵ヴァルケン DECLASSIFIED』レビュー。高難度アクションで1992年の少年たちに想いを馳せる。硬派なリアルロボット戦記は妄想膨らむ1本だった
『重装機兵ヴァルケン DECLASSIFIED』レビュー。高難度アクションで1992年の少年たちに想いを馳せる。硬派なリアルロボット戦記は妄想膨らむ1本だった

 そして、物語はより熱い戦いへと加速していく。ブースターユニットを装着した激しい空中戦、無重力下での戦闘、大気圏へと突入しながらの攻防、かっこいいライバルパイロットの登場、大規模作戦への参加など、熱い物語が、全7ステージで描かれていく。

 ラストのステージでは数々の戦場でボロボロになった母艦で敵本拠地へと不時着。最後の決戦へ! ……といった激熱の物語が展開し、さらに、道中の結果によって結末が変わるマルチエンディング。うわーっ! めっちゃおもしろいじゃん! これは何度も周回したくなるやつだ。

『重装機兵ヴァルケン DECLASSIFIED』レビュー。高難度アクションで1992年の少年たちに想いを馳せる。硬派なリアルロボット戦記は妄想膨らむ1本だった

高難度アクションでゲーマーとしての腕を試される手応え。

 グラフィックが、演出が、少年の心を揺さぶる一方で、本作はゲームとしての難度が高く、プレイヤースキルを存分に発揮し、達成感が味わえる内容となっている。

 そもそも敵の数が多く、ダメージを受ける理由が多く、回復アイテムが少ない。シンプルに難しいのはもちろん、いわゆる初見殺し要素の多さが難度上昇に拍車をかけている。現代の高難易度タイトルによくある、死んで覚えるゲームにカテゴライズしてもいいくらいだ。

 たとえば、ステージ1のボスでは一定時間以内にターゲットの撃破をしないといけないのだが、武器を強化していないと難しい。それを何とか超えてたどり着いたステージ2では冒頭から高速で強制右スクロールしていくミッションが突如始まって、眼前に現れた巨大な岩で即死。

 その後も、慣れない無重力操作にてんてこ舞いになったり、近づかれる前に倒さないとにっちもさっちも行かなくなる敵が突然現れたりと、判断力と操作精度を求められる要素がてんこもり。何度もゲームオーバーになった。

『重装機兵ヴァルケン DECLASSIFIED』レビュー。高難度アクションで1992年の少年たちに想いを馳せる。硬派なリアルロボット戦記は妄想膨らむ1本だった

 セーブポイント的なオブジェクトもないので、ミッションに失敗するとステージの最初から基本的にはやり直し。これを3回くり返すとステージ1からリスタートとなる復活制限が増えることもないため、ものすごい緊張感だ。

 ゆえに、突破できたときの喜びはひとしおで、命をかけて作戦を遂行するパイロット気分を存分に体感できるものだった。

『重装機兵ヴァルケン DECLASSIFIED』レビュー。高難度アクションで1992年の少年たちに想いを馳せる。硬派なリアルロボット戦記は妄想膨らむ1本だった

 そのカタルシスは何物にも代えがたい。とはいえ、いまは令和の時代だ。“難しさ”は、カジュアルに遊びたい場合はハードルを上げる要素にほかならない。

 でも大丈夫。あくまで本作は“令和”のゲームだ。『重装機兵ヴァルケン DECLASSIFIED』では、そこもしっかりカバーされていて、セーブ&ロード機能が標準搭載されている。

 “-”ボタンを押せば好きなときにセーブとロードができるので、実質残機は無限だ。もちろん、原作同様の緊張感を楽しみたいプレイヤーは、この機能を使わずにプレイすればいい。

『重装機兵ヴァルケン DECLASSIFIED』レビュー。高難度アクションで1992年の少年たちに想いを馳せる。硬派なリアルロボット戦記は妄想膨らむ1本だった

 さらに特典として本作には公式ガイドブック(電子攻略本)が付属しており、これがまたすごく重宝する。当時の本をベースに再現したものだそうだ。

 ゲーム本編しかないと、ゲームシステム説明やアドバイスがほぼない状態で戦場に放り込まれてしまうが、公式ガイドブックにしっかりとシステム解説が記載されているので、困ったらとにかくこれを見ればいい。

 さらに、先ほども説明したように、攻略には前提知識がある程度必要なものの、それもこの1冊でカバーされている。その内容は当時の攻略班が時間をかけてプレイと検証を重ねたことがわかる内容で、筆者も今回のプレイにあたり、とってもお世話になった。当時の攻略班にこの場を借りてお礼を伝えたいものだ。

 硬派なゲームなので、始めてのプレイでは行き詰まるもあるだろう。ぜひその際にはこの1冊を頼ってほしい。

激熱なロボット戦記をみずからの腕で駆け抜けろ!

 熱くて硬派なロボット戦記を緊張感ある高難度アクションゲームとして楽しめる1本。

 「原作を知らない世代が、どのように感じるのか、新鮮な気持ちで遊んでみてほしい」というオーダーへの解答は、これである。

『重装機兵ヴァルケン DECLASSIFIED』レビュー。高難度アクションで1992年の少年たちに想いを馳せる。硬派なリアルロボット戦記は妄想膨らむ1本だった

 重厚な世界感を全身で浴びて暴れ回るのがたまらない。

 とくに世界観やシナリオは激熱。筆者は過去に『スーパーロボット大戦』シリーズの攻略本に携わるくらいにはロボット作品というものに縁がある人生を歩んできたのだが、その目から見ても、令和のこの時代に遊んでも色褪せない魅力が山ほどあった。やっぱり、リアルロボットはいいよなぁ……! 1992年当時、このゲームにかじりついて遊ぶ少年たちにとって、本作がどれだけ魅力的に映ったのかは想像に難くない。

 メカが好き。SFが好き。高難度のゲームが好き。レトロゲームが好き。そんな人にとって刺さる多くのエッセンスが詰め込まれた一本なので、まだ本作を未体験の方もぜひプレイして、少年の心を宿してほしい。

『重装機兵ヴァルケン DECLASSIFIED』ストアページ(Switch)