2017年よりサービス中のサンドボックスMMORPG『Albion Online』(『アルビオン・オンライン』)。本作はベルリンのSandbox Interactiveに開発・運営されている基本無料タイトル。対応ハードはPCのほか、iOS、Androidでも遊ぶことができる。
そんな『アルビオン・オンライン』に、アジアパシフィック向けの新サーバー“アルビオン・イースト”が新設される。一般公開日は2023年3月20日で、有償アイテムの“ファウンダーパック”購入者は、2023年2月20日より開始されるクローズドベータに参加できるほか、パックによって異なるアーリーアクセス権を得られる。ファウンダーパックを購入すれば、いまからでもクローズドベータに参加可能だ。
本記事では、間もなくアジアサーバーが正式サービスを開始することにあわせて、『アルビオン・オンライン』の開発者へインタビュー。回答してくださったのは、Sandbox InteractiveのCEOであり、本作のゲームディレクターも務める、ロビン・ヘンキス氏だ。
ロビン・ヘンキス 氏(Robin Henkys)
15年以上の業界経験を持つゲームデザイナー。キャリアのほとんどをRPGのデザインに費やし、シングルプレイRPGやオンラインアクションRPGなどを手掛けてきた。現在はSandbox Interactive CEO兼ゲームディレクターとして、サンドボックスMMORPG『アルビオン・オンライン』をデザイン。
古きよきMMORPGをもう1度
――『アルビオン・オンライン』を制作しようと思った経緯・発端などを教えてください。
ロビン2012年の『アルビオン・オンライン』開発当初、Sandbox Interactiveは、昔のオンラインゲームに感じていた楽しさをもう1度取り戻したいMMORPG愛好家が集まった非常に小さなチームでした。
当時のMMORPGは、創造性や自由に楽しめる余地がほとんどないタイトルが多かったと、チーム全体で思っていました。それらのタイトルよりも遥かにやりがいのあるゲームを作ろうと考えたのです。
私たちが当初から目指していたのは、サンドボックス型ゲームらしい自由度と、深くて高度なプレイシステムを兼ね備え、プレイヤーにコンテンツの膨大な選択肢を与えるゲームでした。それを念頭に開発を進めていたのですが、当初システムを理解してもらうまでは正直厳しかったです。ただ、1度理解していただければ、非常にやりがいのあるMMORPG体験を味わえるでしょう。
――本作はMMORPG黎明期の『ウルティマ オンライン』を彷彿とさせる、まさにオンライン“ロール”プレイングゲームのシステムだと感じました。自由度の高いゲームシステムはどのようにして考えていったのでしょうか。
ロビン『アルビオン・オンライン』は、まさに『ウルティマ オンライン』のような老舗のMMOにインスパイアされたタイトルです。ゲーム側ではなく、プレイヤーの選択がゲームの最前線に立っていて、プレイヤーの選択には相応の結果が待っています。
たとえば『ウルティマ オンライン』はプレイヤーそれぞれが独自のプレイスタイルを構築し、どのようにプレイするのか考えて遊んでいたので、熱心なプレイヤーにとって非常にやりがいのあるゲームでした。ただ自由度が高いぶん、何かあったときのリスクも高く、ときには敗北や挫折を味わうこともありました。そのうえで何かを成功したときの爽快感は格別のものでした。
私たちはその経験を『アルビオン・オンライン』に活かしたいと考えました。最新のMMOに期待される機能を追加しつつ、ゲームプレイのほか、遊ぶためのデバイス・ハード面も昨今のゲーム事情に合わせています。そういった配慮をしながら、MMORPGの原体験のようなものをできるだけ感じてほしく自由度の高いシステムを構築しました。
――2012年から開発がスタートしたこともあり、長い開発期間を経ています。その間にどのような苦労があったのでしょうか。
ロビン2012年にプロトタイプから開発をしました。すぐにプレイヤーからのフィードバックや経験を取り入れるようにして、比較的早い開発間隔でアルファテストを実施し、システムの改善や完成度を高めていきました。
本作では“You are what you wear(あなたはあなたが作り出す)”システムや、リスクとリターンの考えかた、プレイヤー主導で広がる世界など、いくつかの核となる柱がありました。それ以外の要素は、自分たちの観察とプレイヤーのフィードバックに任せて開発を進めていましたね。
課題となったのは、私たちの意欲的なアイデアが実際にゲームとして成り立つのか? という部分です。そこは何度もくり返して、何がうまくいき、何がうまくいっていないのかを観察しました。そして最終的には、恒久的に世界を稼動させる準備ができたと思える現在のバージョンに到達しました。
とはいえ、『アルビオン・オンライン』の開発はまだまだ終わってはいません。それどころか、開発チームはいままでにないほど大きくなり、いまもゲーム内容に変更を加え、絶えずゲームにシステムを追加し続けています。
――昨今MMORPGはプレイヤーキル自体が嫌われる風潮にありながらも、本作はPvPが大きな要素である、好きな人にはたまらないチャレンジングなタイトルだと感じました。
ロビンプレイヤーキルやPvPが万人向けでないことは承知していますが、リスクとリターンのトレードオフがもっとも真価を発揮する場であると考え、『アルビオン・オンライン』の中核機能にPvPを取り入れています。
『アルビオン・オンライン』ではゾーンシステムを採用しており、フィールドには安全地帯(ブルー)、PvP可能だけど比較的安全な地帯(イエロー)、手に汗握るPvPが楽しめる地帯(レッド)、そして完全無法地帯(ブラック)があります。
レッドゾーンやブラックゾーンに足を踏み入れたばかりのプレイヤーは、その厳しさに気付き、死んでしまったり、装備を入手し直す必要が出てくるかもしれません。悔しいかもしれませんが、多くのプレイヤーは何度も足を運んでいくうちに、そのうちにPvPがうまくなり、PvPエリアで生存できるようになっていきます。
それが、この種のゾーンの魅力です。自分の行動が重要であり、リスクを負うことで大きなチャンスにも恵まれるというわけです。また、危険な地帯には適度な装備で挑むのも重要です。貴重な装備は持っていかないようにしましょう。
――今後の展開でどのようなことを予定しているのか、言える範囲で教えてください。
ロビン現在、私たちは大きく3つの開発ラインを走らせています。“Better Basics”(よりよい基本)、“Constant Content”(継続的なコンテンツ開発)、“Fantastic Features”(素晴らしい機能)です。
“Better Basics”とは、UI、フィードバック、既存機能のバランスと利便性を改善することで、ゲームのコアシステムの向上を目的としています。
“Constant Content”とは、“You are what you wear”システムを中心に、つねにコンテンツを拡張していくことを目指しています。
“Fantastic Features”は、ほかのMMOでは見られないような機能を本作に追加していくことです。現在は、プレイヤーが作った要塞を使った攻城戦や、『アルビオン・オンライン』の歴史の一部となる伝説のアイテムを登場させるなど、新機能の計画を進めています。これらの機能がすぐにゲームに登場するかはお約束できませんが、1年に何度もエキサイティングなアップデートと拡張があることは間違いないでしょう。
――2019年にプレイが無料となり、2021年にモバイル対応をしました。無料化・モバイル対応でプレイヤー層は大幅に増えたと思いますが、どのような狙いで無料化や対応ハード追加を考えたのでしょうか。
ロビン『アルビオン・オンライン』は当初のから基本無料タイトルを予定していましたが、とある事情により、じつはリリース間近で有料タイトルとして1度配信することが決まりました。
かなりハードコアでニッチなゲームであるため、初期の開発では熱心なプレイヤーに最高の体験を提供しつつ、その後はくり返しのアップデートをしながらも、プレイヤー数を拡大するのが重要でした。
そして、ゲームの主要部分の完成に自信を持ったところで無料タイトルに変更しました。基本無料タイトルへと移行する前も後も、オプションのプレミアム契約は存在し、ゴールドなどの販売もおこなっています。
そしてモバイル対応に関してですが、基本無料タイトルの案が最初にあったように、『アルビオン・オンライン』は開発の初期段階からクロスプラットフォームで遊べるゲームとして設計されていました。
ですが、モバイルとPCをシームレスに切り替えられる完全なMMO体験を実現するのは、かなりたいへんな作業でした。そのため、iOS、Android向けに提供できるよう最適化するのに、10年近くも掛かってしまいました。
そのおかげで『アルビオン・オンライン』が進化する大きな一歩となりました。これら要素と2020年以降にアジアの5ヵ国語に対応したことも重要でした。アジアにおいて、日本でのプレイヤーも増えましたね。
モバイルで遊べる本格的なMMORPGであることと、対応言語がどんどん増えていくことで、今後アジアでさらに多くのプレイヤーが『アルビオン・オンライン』を楽しんでくれることを期待しています。
アジアサーバーと日本について
――2022年に日本語化に対応しました。日本のプレイヤーにも遊んでもらいたい思いがあったのでしょうか。
ロビン私たちはつねにゲームの新しい言語への対応を検討しています。もちろん、新しい言語への対応は継続的なサポートが必要なため、戦略的に言語を選択し、『アルビオン・オンライン』のコミュニティを成長させる可能性がもっとも高い言語を選択する必要があります。
2021年にiOS、Android版に対応したとき、日本のMMORPGの熱烈なプレイヤーの間で本作に高い関心が寄せらていました。ですが実際には言語の壁があり、経験の浅いプレイヤーが『アルビオン・オンライン』を始めるには難しい状況だったのです。
そこで日本語に対応したところ、日本でのプレイヤー数が大幅に増加し、動画でのプレイガイドや掲示板でのコミュニケーションも大幅に増えました。日本のプレイヤーの皆さんがアジアサーバーにどのように反応し、今後どんなゲーム世界を作り上げてくれるのか、とても楽しみにしています。
――今回、アジアサーバーを作ることになった狙いや経緯を教えてください。
ロビン2017年のリリース時からとくにこの数年のあいだで、アジアのプレイヤー数が驚異的に伸びています。全世界のプレイヤー数の伸びとともに、アジアでのこの成長にとくに影響を与えたのは、2021年のモバイル公式対応と、2020年以降のアジア5言語への対応です。
モバイルで利用できる本格的なMMORPG体験と対応言語の増加は、この地域において非常に強力な成長要因です。ただ、本作はもともとアメリカ東部にある単一のゲームサーバーで遊ぶゲームでした。このことは、快適なプレイを阻害する大きな要素でした。サーバーへの接続速度の問題もあるほか、メンテナンスやゲームイベントがアジアのプレイヤーに最適な時間ではないですから。
新サーバーのアルビオン・イーストは、アジア・オセアニア地域のプレイヤーにより高速な接続と最適化されたスケジュールで展開していきます。そして何より、全プレイヤーがイチから始められる、まったく新しいゲーム世界です。
それとサポートも手厚くなります。多くの地域に合わせたアジアサーバー専属サポートスタッフも用意しました。これまで『アルビオン・オンライン』の中心プレイヤー層からやや外れていると感じていたコミュニティにも、より密接につながることができるでしょう。
――日本のプレイヤーにはどのような期待を寄せているのでしょうか。
ロビン日本には非常に深く多様なゲーム文化があり、もちろんどのプラットフォームにもゲームコミュニティが存在しますが、私たちは『アルビオン・オンライン』に対して非常にポジティブな反応を見てきました。
とくに、2021年のモバイル対応、2022年の日本語対応以降、その傾向は顕著で新サーバーやタイマーの最適化などと合わせて、さらにコミュニティを発展させたいと考えています。
もちろん、友人やお気に入りのストリーマー、インフルエンサーから聞いたりする口コミが非常にいい露出になりますので、これらすべての要素がコミュニティを成長させるだけでなく、コミュニティが自ら成長するきっかけになればと願っています。
――アジアサーバーならではの要素なども今後登場することはありますか?
ロビンアルビオン・ウェストサーバーと、アルビオン・イーストサーバー。ふたつのワールドで展開されますが『アルビオン・オンライン』としてはどちらも変わらない体験を提供していきます。
ただ、将来的には若干異なる限定的なイベントや、サーバーならではの細かな要素を提供する可能性があります。また、ギルド関連のシーズンについては、そのサーバー固有の結果になるため、必然的に異なるものとなるでしょう。たとえば、『アルビオン・オンライン』のシーズン優勝者には、各都市に記念の像が建てられますが、アルビオン・イーストではベータ・シーズンの優勝者からまったく新しい形でスタートします。
コミュニティ機能については、前述のとおり、アルビオン・イースト専用のサポートスタッフがいます。多くのプレイヤーと同じタイムゾーンでサポートしますから、質問や問題に対してタイムリーに対応してくると思いますよ。
また、アジア地域のコミュニティのために、オンライン・コミュニティ・イベントを開催することも考えていますが、これは今後の展開を見守ってからとなります。全体としては、また新たにイチから描かれる『アルビオン・オンライン』の世界がどのように進んでしていくのか、とても楽しみにしていますし、コミュニティが何を必要としているのか、注意深く見守っていきたいと思います。
――アジアサーバーのおかげで、本作を初めて遊ぶ日本人も増えるかと思います。正式サービス開始を待つファンの方々にメッセージをお願いします。
ロビンこれまで『アルビオン・オンライン』に注目していただいたことを光栄に思うとともに、アルビオン・イーストによって提供される、エキサイティングな新しい体験をお楽しみください!