行方不明の娘を追って霧に包まれた町“サイレントヒル”へ
いまから24年前の1999年(平成11年)3月4日は、プレイステーション用ソフト『サイレントヒル』が発売された日。
『サイレントヒル』はコナミ(当時)から発売されたホラーアドベンチャーゲームで、人気シリーズの第1作目。当時ホラー系といえばカプコンの『バイオハザード』が一世を風靡していたこともあって、発売前からコナミがどんな作品を作るのか大きな話題となった。
ちなみに、ディレクターの外山圭一郎氏は本作を制作したあとにソニー・コンピュータエンタテインメント(当時)へと渡り、『SIREN』や『GRAVITY DAZE』などを手掛けたことでも知られている。現在はゲームスタジオBokeh Game Studioを立ち上げ、新作ホラーゲーム『野狗子: Slitterhead』を制作中だ。
さて、話を『サイレントヒル』に戻そう。本作の物語の序盤のあらましはこうだ。主人公のハリーが娘のシェリルと夜道をドライブしていると、突如クルマの前に少女の姿が。驚いたハリーは避けようとするも、ハンドル操作を誤ってクルマもろとも崖下に転落してしまう。意識を取り戻すと、助手席に乗っていたはずのシェリルの姿がどこにもいない。そうしてハリーはシェリルの消息を追って濃い霧が漂う“サイレントヒル”と呼ばれる町へ足を踏み入れていくことに……。
本作をプレイしていると、何とも言いようのない恐怖が絶えずまとわりつく。何しろ霧で数メートル先までしか見渡せないうえに、街のいたるところを異形のクリーチャーが徘徊している。クリーチャーは形状もさることながら動きもグロテスク。犬や猿といった動物型のほか、人型、さらには飛行タイプまでおり、静かにぬるぬると迫って来る様は非常に不気味。
途中で手に入るハンドガンや鉄パイプで戦っていくわけだが、武器をめり込ませたときの動きや音すらも気色悪く、正直相手にしたくない。そんなクリーチャーが近くにいると携帯しているラジオが“ジリジリジリ……”と静かに音を発するので、恐怖が倍増する。
町にはさまざまな仕掛けがあり、これが意外と骨太で発想力と思考力をフルに使って解き明かしていく必要がある。それと同時に要所でアレッサという少女に関する情報が手に入るのだが、宗教めいた要素や人体実験を窺わせるものばかり。おまけに断片的な内容しかわからないので、ただただ不穏。
また、不意に足を踏み入れる“裏の世界”も、非常に気味が悪い。血と錆に彩られたおぞましい様相を呈しており、本能が長居をしてはいけないと警告するような世界だ。前述したように謎が謎を呼ぶ仕掛けが多いので、視覚からの情報も相まってまるで精神が蝕まれていくような感覚にすら陥る。
とはいえ、ゲームを進めていくうちにすっかり世界に引き込まれてしまうから不思議だ。とはいえそこに心地のよさがあるわけはなく、“怖いけれど先を知らなければならない”という強い衝動によって突き動かされている感じ。それだけ本作には人間の本性を刺激する魅力がある。
見どころは、何といってもエンディング。プレイの内容によってGOOD+、GOOD、BAD+、BADのいずれかにたどり着くのだが、GOOD+とGOOD以外は絶望感が漂う内容。さらに隠しエンドも用意されており、こちらはあまりにも突飛な内容で、言葉を失ってしまうほどの衝撃がある。この隠しエンドの世界観は一部のシリーズ作品を除いて踏襲されており、ファンのあいだでは語り草になっているほどだ。
ファンの語り草といえば、角錐状の赤い鋼を頭に被り、強靭な肉体を持つ三角頭が挙げられる。その見た目と圧倒的な強さからシリーズを通して人気の高いクリーチャーだが、三角頭は『サイレントヒル2』から登場するので覚えておこう。
『サイレントヒル』の世界観は人の心を惹きつける特別なものがあるようで、その後は新作やリメイク作品、映画など数多く展開されていく。2022年10月20日には、KONAMIが『サイレントヒル』シリーズの新情報を公開する番組“SILENT HILL Transmission”を配信。その中で竜騎士07氏がストーリーを手掛ける完全新作『サイレントヒルf』が発表されたほか、『サイレントヒル2』リメイク版が発売されることが判明した。また、Annapurna Interactive、 NoCode、KONAMI共同制作による『サイレントヒル Townfall』のリリースも決定している。
『サイレントヒル』を検索 (Amazon.co.jp)※本記事は、2022年3月4日にアップした記事を再編集したものです。