2022年11月12日に福岡県・九州産業大学にて開催された、CEDEC+KYUSHU 2022。本イベントは、日本最大のコンピューターエンターテインメント開発者向けのカンファレンスとしておなじみのCEDEC(コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス)の九州版だ。

 その中で、サイゲームスによるセッション“ゲーム業界を目指す学生必見! Cygames流 最高のコンテンツを生み出すデザイナーへ成長する方法~実際の作品もBefore/Afterでお見せします ~”が披露された。登壇したのは、サイゲームスのデザイナー推進部・部長の中村ふじ子氏。

 セッションではサイゲームスのデザイナーとしての役割のほか、新卒研修をテーマにデザイナーとして上達する方法や、『プリンセスコネクト!Re:Dive』や『ウマ娘 プリティーダービー』をモチーフにした作品などが披露された。

サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】

ゲーム制作はコミュ力!

 ゲームの“デザイナー”と言ってもゲームの内容を考えるゲームデザイナーの話ではなく、イラスト、グラフィックなどに関する“デザイナー”に関する本セッション。内容としては、おもにデザイナーを目指す学生向けといった感じだったが、イラストレーターやモノづくり、チーム制作に対しての姿勢なども感じられるだろう。

 会社によってもまちまちではあるが、サイゲームスのデザイナー職は細分化されている。ゲームの高いクオリティを保つために、2Dイラスト、3DCG、UI(ユーザーインターフェイス)デザインなど多岐に渡る。また、以前サイゲームスのデザインチームを取材した際には、イラストだけでも線画を描く人、色を塗る人、トータル調整する人などが語られていたので、実際的には本講演で語られた分類よりもさらに細分化していると思われる。

サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】

 デザイナーに求められていることは、まず基本的なグラフィックやデザイン能力の高さ。そして、チームとのコミュニケーション能力だという。ゲームのクリエイターを目指す人にとって壁になりがちだというのが“コミュ力を上げる”こと。コミュニケーションが大事なのはわかっているが、どうすればいいのかわからない人も多いのだとか。

サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】

 そこでデザイナーにとってオススメの取り組みかた・勉強の方法が紹介された。それは“作った作品に意見をもらって、その反映をくり返す”ということだそうだ。

 最初に、課題・目標・コンセプトを決めるのが大事だという。最初に作りたいものを決めないと、途中で方向性がブレがちになるという。迷ったときに立ち返れる要素として、目標を決めるべきなのだとか。

 意見をもらう際には、その目標に合わせた質問や相談をすべきだという。「この絵なんだけどどう?」と聞いても、「この絵はいいね!」程度の感想しかもらえないという。

 だが、本来聞きたいことは褒め言葉ではなく、“目標に到達しているのかどうか”ということ。しっかりと「こういう目標で作った絵なんだけど、それに合ってるかな?」などという聞きかたをすると、より具体的な答えが得られるのだという。

サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】

 その意見を反映するのにもコツがいるという。ここで「いい意見をもらえたな」で終わってしまう人が多いのだとか。それはもったいないので、もらった意見を踏まえて“何をすべきか”ということを再整理するのが重要だそうだ。

 そして、その意見は必ず作品に反映するのもポイント。どんな意見だろうと意見の取捨選択の経験になるし、作品の結果が悪くなろうと、つぎの作品に取り組む際の知識にもなるそうだ。

 そして最後に意見をもらった人に作品をみせて、認識のズレがあったかどうかという擦り合わせ。これら4つの工程をとにかくくり返せば、コミュニケーション能力は上達し、チームでの制作に活かせるとのこと。

サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】

新卒研修の例

 それらについて、サイゲームスのデザイナー新卒研修をもとに実例が語られた。サイゲームスの新卒デザイナーは研修内で課題を制作するというカリキュラムがある。職種ごとに実際に担当する作業と、自身が担当する業務の前後に行われる工程についても学ぶそうだ。

 「担当作業だけ学べばいいんじゃ?」と思いがちなところだが、チームで関わる制作の前後も知ることで、「こうくるだろう」、「後ろの作業のためにこうしよう」などという問題点や連携ポイントが分かるそうだ。その間、サイゲームスではすでに現場で仕事をしている先輩がトレーナーとして付くという。といった中で、2Dイラスト、3DCG、UIデザインの3つの例が披露された。

サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】

 2Dイラストの課題は、『プリンセスコネクト!Re:Dive』をモチーフに、じゃんけんミニゲームのようなもののキャラクター制作、UI制作、ゲームへの反映をすべて経験するというもの。キャラクターをデザインし、それをSDキャラクターにデフォルメ。それをアニメーションで動く形にし、UIを作ってゲームに反映するという流れ。

※以降のゲームモチーフのスライドは、すべて研修用のもので、ゲーム内に実装されるというお話ではないのでご注意を。

サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
といった感じの一連のグラフィックを差し替える、という課題のようだ。

 まずイラスト制作では、指定された設定をもとに、1枚絵やデザイン用の立ち絵を作成。実際に研修した新卒スタッフたちの実例が紹介されたが、そのまま『プリンセスコネクト!Re:Dive』でユニット化されてもおかしくないくらいのクオリティ。絵柄は自由とのことで、ここまで持ってくるのにトレーナーとのやり取りを経ているという(以下のすべての工程も)。

サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】

 それを、『プリンセスコネクト!Re:Dive』においてのルールに従う形で、デフォルメしていく。さらにボタンや文字などもデザインして、ゲームに反映。

 この過程で「こうやってゲームに反映するのか」と知り、ゲームとしての統一性を取るためのコツが学べるという。

サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
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サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
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サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
UIは制作未経験の人も、サイゲームスでUIデザイナーをしているスタッフがトレーナーになるので、しっかり作品が作れるという。
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
実際にトレーナーとのやり取りで、ブラッシュアップされたポイントなどが紹介された。

 モバイル3DCGの研修では、3DCGモデルの作成はもちろんのこと、モーションとエフェクト、背景の制作までが課題となっている。モーションデザインを専門に学んでいた人もしっかりと3Dモデリングができるようになっている。

サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】

 UIデザインでは『プリンセスコネクト!Re:Dive』や『ウマ娘 プリティーダービー』をリズムゲームに見立てて、ゲーム画面やUIパーツを作るという課題のようだ。こちらはゲームのコンセプトに合わせてロゴの制作からアイテムアイコンなどもひと通り制作するという。

サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】
サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】

 以上でセッションは終了。デザイナーを目指している人はもちろんのこと、何かしらのチーム制作の勉強をしてみたいという人は、参考になったのではないだろうか。

サイゲ流・デザイナーの育成方法。『プリコネR』や『ウマ娘』などでキャラクターやUIデザインを学ぶ実例を披露【CEDEC+KYUSHU 2022】