バンダイナムコエンターテインメントは、2022年12月26日に『アイドルマスター』(アイマス)シリーズの新事業戦略“3.0 VISION”を発表した。
同取り組みについて、バンダイナムコエンターテインメント 第3IP事業ディビジョン 765プロダクションゼネラルマネージャー 波多野 公士氏にインタビューを実施。同プロジェクトの展望や反響について聞いた。
※本インタビューは、2020年2月11日、12日に東京ドームで開催された、『アイドルマスター』シリーズ5ブランド合同ライブ“THE IDOLM@STER M@STERS OF IDOL WORLD!!!!! 2023”(MOIW2023)のDAY1公演前に実施しました。
波多野公士(はたのこうじ)
バンダイナムコエンターテインメント 第3IP事業ディビジョン 765プロダクションゼネラルマネージャー。
2009年バンダイナムコゲームス、現バンダイナムコエンターテインメント入社。
アプリゲーム開発、ビジネスデベロッパーを経て、2018年より新規事業、イベント制作担当へ。東京ドームにて実施された“バンダイナムコエンターテインメントフェスティバル”のプロデュースを担当。
2021年に設立された巨大4面LEDとxR設備を備えた自社スタジオ“MIRAIKEN studio”の全体統括とプロデュースを担当。
2022年より第3IP事業ディビジョン 765プロダクションゼネラルマネージャーに就任(文中は波多野)。
――“PROJECT IM@S 3.0 VISION”発表から1ヵ月半ほど経過しましたが、プロデューサー(※『アイドルマスター』シリーズのファンのこと)の反応をどう受け止められていますか?
波多野基本的には、本当にわくわくしていただいている反応をひしひしと感じています。ただ、いろいろ準備は進めているものの、まだいつ何をやりますというように具体的な発信ができていないので、不安と言いますか「これからどうなるんだろう?」というよう声をいただいていることもすごく理解しています。
また、“MOIW2023”に向けて、“2nd VISIONの到達点”という言葉を使わせていただいてこともあって、「2nd VISIONが終わるんだ。じゃあ、3.0 VISIONはどうなるんだろう?」というような期待と不安が入り混じった状態になっているのかなと感じてします。
――続報も楽しみにしています。1st VISONが2005年から2009年、2nd VISIONが2009年から約13年ものあいだ続いていましたが、なぜこのタイミングで3.0 VISIONの発表となったのでしょうか? というのも、3.0 VISIONの発表は事業戦略の転機という意味合いがあると思いますが、そういった意味では、『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』(デレステ)や『アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ』(ミリシタ)でのスマホアプリへの挑戦、『アイドルマスター シンデレラガールズ ビューイングレボリューション』のVRへの挑戦、『アイドルマスター シャイニーカラーズ』(シャニマス)のブラウザゲームへの挑戦、そして、3.0 VISIOの目標のひとつとしても掲げられている“MR”にも、2018年にDMM VR THEATERで挑戦していたり、これまでにも変わるタイミングがあったのかなという印象もありますが。
波多野おっしゃる通りだと思います。結論としてはふたつありまして、ひとつは時代性が変容してきたというのが大きいところです。私たちはプロデュース体験というものを楽しんでいただくことをがんばって作っているのですが、時代が「好きだからこそ見る」とか、「好きだからこそゲームをプレイする」というような色が濃くなっているのかなと思っていまして、その時代の変化に合わせて、私たちの考えをアップデートしなければいけないということがひとつです。
もうひとつは、先ほど挙げていただた通り、DMM VR THEATERでのMRライブや、『シャニマス』でブラウザゲームに挑戦にしましたが、そのときよりも現在のほうがより技術の変化するスピードが早くなって、ようやく技術が追い付いてきたのかなと思います。あと、これは社内的な話になりますが、MIRAIKEN studio(未来研スタジオ)の存在も大きいです。コロナ禍になり、どうすればエンターテインメントをお届けすることができるのか考えた結果、ソリューションとしてMIRAIKEN studioを作ったのですが、完成から約2年が経過して、アイドルたちの実在性をどうやってお届けするのかという議論もようやく成熟してきたのかなという印象があったので、技術が追い付いてきたという言葉を使わせていただきました。
――3.0 VISIONが発表された“PROJECT IM@S カンファレンス”もMIRAIKEN studioから行われていましたが、天海春香が出てきたときは実在性がすごくて驚きました。続いて、3.0 VISIONの表記につきまして、これまでは1st VISION、2nd VISIONでしたが、今回は3rd VISIONではなく、3.0 VISIONとなっているのは、Web3.0を意識されてのことでしょうか?
波多野そうですね。Web3.0も考えかたと技術の両方のアップデートがあってしかりだと思っていて、コミュニティ論で言うとDAO(Decentralized Autonomous Organizationの略。日本語では分散型自律組織という意味)だったり、技術面で言うとブロックチェーンだったりがありますが、私たちはそのブロックチェーンを取り込むことではなく、コミュニティのありかたの変容とかも含めて、3.0という数字を使いました。
――なるほど。では、ポータルサイトについて段階的にアップデートを行っていくということですが、現状、以前の公式サイトに比べ、自分の好きな情報を集めやすくはなりましたが、まだあくまでポータルサイトという印象です。目標として掲げられている「デジタルを活用したプロデュース活動」という部分がまだいまいちピンときていないのですが、現時点で具体的にお話できることはありますか?
波多野ポータルサイトに関しては、バンダイナムコIDというグループ共通のIDを行動の起点にすることが目標です。バンダイナムコIDは、エンタメコマースサイトとしてのアソビストア、配信プラットフォームである“ASOBISTAGE”、ゲームなど、さまざまなサービスに対応していて、それらをどこで遊んでいてもプロデュース活動に還元されるような遊びかたにしたいなと思っています。IDの連携という面では既にスタートしていて、本当に多くのお客様に登録していただいています。今後は、プロデューサーさんの活動の起点がアイマスポータルになるようにさまざまなアップデートを行っていければと思っています。
――今後のアップデートも楽しみにしています。本筋から少し離れる部分にはなりますが、気になっている方もいるかと思いますので質問させてください。1st VISIONと2nd VISIONの変化のひとつとして、アイドルの年齢が1歳上がったりもしました。アイドルたちも300人以上に増えたり、当時とは状況が違うのでないような気がしていますが、3.0 VISIONで年齢が変わる可能性はありますか?
波多野確かに気になっている方もいらっしゃると思います。結論を言うと予定はありません。
――わかりました。では、最後に3.0 VISIONの展開を楽しみにしているプロデューサーの皆さんにメッセージをお願いします。
波多野本当に今日の日を迎えられて何よりでしたし、ここまで連れてきていただいたのは、プロデューサーの皆さんのひとつひとつのプロデュース活動のおかげです。私たちスタッフとしては、「たいへんお待たせしました」という意味合いがいちばん強くて、それに応えられるライブ公演になればいいと思っていますし、それが2nd VISIONのある意味の到達点を作れればと思っています。
月並みにはなりますが、先日のカンファレスで“CRE@TE POWER WITH YOU(クリエイトパワーウィズユー)”というスローガンを打ち出させていただきました。そこに“あなたらしさ”という言葉を使っているのですが、アイドルらしさであったり、プロデューサーご自身のらしさだったりの積み上げの多様性を持って、遊びやプロデュースができるように努力してまりますので、ぜひ引き続きプロデュースのほうよろしくお願いいたします。