2023年春配信予定の、セガの新作スマートフォン向けRPG『404 GAME RE:SET -エラーゲームリセット-』。本作はセガのクラシックゲームなどのIP(※)を使用したタイトルで、ゲームタイトルが美少女の姿となり、セガが世界を支配しているというユニークな舞台で活躍をくり広げていく。
※IP:Intellectual Propertyの略。ゲームタイトル、シリーズ作品などの知的財産を指す。
クリエイティブディレクターは『ニーア』シリーズなどで知られるヨコオタロウ氏が担当し、キャラクターデザインは『アトリエ』シリーズなどで活躍する、ゆーげん氏が務めている。本記事では、プロデューサーの中村豪介氏へのインタビューを掲載する。本作の企画のコンセプトや、女の子たちがどのように描かれるのかなどを、詳しくお聞きした。
中村豪介氏(なかむらごうすけ)
『エラーゲームリセット』プロデューサー。他社でソーシャルゲーム開発に10年以上関わり、王道RPGから女性向けタイトルまで幅広く担当。その後、セガに在籍となり、本作のプロデューサーを務める。
セガIP×他社IPがヨコオ流の女の子に!
――セガなどのゲームが美少女化するタイトルと聞いて、驚きました。『エラーゲームリセット』はどのような経緯で企画が始まったのでしょうか。
中村僕がセガに入ったときには、すでにこの企画の根本は存在していました。ただ、“セガのIPを使って何かやる”ということしか決まっていなかったんです。企画を形作っていく中で、かつて人気を博した、あるいは今も燦然と輝くレジェンド級のゲームIPたちを、ヨコオさんのディレクションを通してリブランディングすることで、いまの若い世代に届けられるのではないか、という狙いがありました。
もともと僕はヨコオさんの作品が大好きでほぼすべての作品に触れていたので、独自性の強い尖ったクリエイティブになると確信していました。
――では初期から、ヨコオさんが関わる前提でスタートしている企画でもあるのですね。
中村そうなんです。ただ、ヨコオさんは多忙な方なので、じつは最初にお願いしたときには、1度お断りされてしまいました。ですが、ヨコオさんから「セガのIPを自分が自由に使っていいなら、やります」という返事をいただきまして。もううれしくて「ではお願いします!」と、ふたつ返事でしたね。じつはその返答を受けたとき、社内では何の許可も得てなかったんですが(苦笑)。
――きちんと許可を得られたようで安心しました(笑)。本作にはセガの名作IPから、さらに他社タイトルまで参画すると聞いていて、かなりハードルが高いようにも思えます。“リブランディング”とは、具体的にどのようなことをしていくのでしょうか。
中村セガには“セガ・ハード・ガールズ”という、セガハードの美少女擬人化プロジェクトがあります。ざっくりとしたイメージとしては、それのゲームタイトル版という感じです。たとえば『アフターバーナー』などが、女の子のキャラクターとなって登場します。
ただ、『アフターバーナー』を擬人化して美少女にしただけでは、『アフターバーナー』を知らない人には、なんのことやら分からないと思うんです。そこに、ヨコオ節全開の味付けが入っている、というのが本作の特徴です。
――たしかにビジュアルだけでは、『アフターバーナー』らしさを感じ取るのは難しそうに見えます。
中村まず魅力的なキャラクター・世界観を作り、そこから「ああ、この子のバックボーンにはこういうタイトルがあるのか」と感じてもらえるような仕組みにしています。往年のファンはもちろんですが、まったく知らない人がそこからクラシックタイトルに興味を持っていただき、もし原点を遊んでいただけるようなことがあれば、リブランディングとしてはひとつの成功なのかなと思います。
――ただの美少女化ではない、というところでも苦労が多そうですね。
中村その作品の魅力となる部分へのリスペクトは大前提にあります。それでいて、ヨコオさんらしい尖ったキャラクターにするのは、ある意味相反する要素です。そこのバランスを取る部分は、開発でいちばん苦労したポイントかもしれません。プロジェクトが継続していくのであれば、ここの苦労は一生消えないでしょう。
――わかりました。本作の舞台は設定的には“セガ一社独裁国家”の世界観となっています。これはヨコオさんの発想ですか?
中村はい。ヨコオ節、ですよね(笑)。セガが自分の会社を絶賛するような作品よりも、思い切って大きな悪者にしたほうがおもしろいだろうと、ヨコオさんが考えてくれたものです。ですので、本作はセガ独裁国家が舞台となっています。
――そんな世界を牛耳るゲーム内のセガですが、セガタワーもあるんですよね。これはセガ本社……? または旧本社ですか?
中村東京のどこかにある、セガの本拠地となるタワーです。それが大崎なのか、大鳥居なのかはわかりませんが、どこかにあります(笑)。
――気になります! また、オリジナルキャラクターも登場するんですよね。
中村リボンというキャラクターがいまして、一見可憐な少女なんですが、やはりヨコオさんの手が入っているのでクセのある人物です。リボンはプレイヤーの案内役という感じで主人公が彼女からいろいろな情報を貰いながら、ゲームを進めていきます。
――なるほど。キャラクターデザインはゆーげんさんが担当されていますが、なぜゆーげんさんを抜擢されたのでしょうか?
中村まず、本作ならではの世界観を描くために、納得感や統一性を重視することにしました。そのため、複数のイラストレーターさんにキャラクターを作ってもらうのではなく、ひとりの方に絞るべきだというのは、企画初期から決まっていたことです。腕のあるイラストレーターさんをリストアップしながら、ヨコオさんといっしょに選定していったのですが、やはり腕があると人気もあって、皆さんスケジュールが空いてないんですよね。
ゆーげんさんも最初からリストアップはされていたのですが、すでに人気タイトルのキャラクターデザインを担当されていますから、「きっとお忙しいから無理だろう」と、勝手に躊躇していたんですね。ですが選定が難航したこともあり、声を掛けるだけならとダメ元でお願いしてみたところ、ゆーげんさんもセガが大好きだったこともあり、引き受けてくれました。
――ゆーげんさんとは、どのようなやり取りをしながらキャラクターを作っていったのでしょうか?
中村ゆーげんさんが中心となって、プランナーやデザイナーが「こういった切り口がいいんじゃないか」と話し合いながら決めていきました。元となるゲームの要素を一度分解し、魅力となる部分を抜き出してみたり、当時の時代背景をバックボーンに加味してデザインに起こす、などもやっています。その工程の途中で、他メーカーの場合は他メーカーにもチェックしていただき、ヨコオさんにも見てもらうという作りかたです。
ちなみにセガタイトルに関しては、社内イチのセガマニアでもある奥成洋輔が中心となってチェックしています。当時のプロデューサーなどスタッフが残っている場合は、本人にチェックしてもらっています。ときにはインタビューを行って、開発当時の想いやエピソードを語ってもらい、デザインに落とし込んでいますね。
――実際にゆーげんさんから上がってくるデザインを見て、いかがでしたでしょうか。
中村ゆーげんさんならではの繊細なタッチが、世界観にぴったりだなと、頼んで正解だったなと思いました。ゆーげんさんは絵のうまさだけではなく、とにかくキャラクターデザイン性が高いんですよ。しかも、3Dモデルにしたときのことまで考えてくださり、キャラクター背後などにもこだわりを持ってデザインしていただきました。
もはや規模はクラシックゲーム大戦!?
――では、今回発表されたキャラクターたちのコンセプトをお聞かせください。一問一答のような形になってしまいますが、まずは『アウトラン』について。
中村『アウトラン』は、赤いスポーツカーをモチーフにした女の子です。高飛車な性格で、速さには自信があります。ただ、『アウトラン』は王道のレースゲームではなく、ドライブゲームです。ですから王道のレースゲームを目の前にすると、ちょっと自信を失くしてしまうんですね。
髪色が金髪なのは、ゲーム中に隣に座っていた女性が金髪だからです。当初はセガカラーの青髪だったりしたのですが、いろいろな理由もあり金髪になりました。ちなみに、モジュールという女の子たちの背後にある装備がありまして、これもすべて作品をモチーフにした何かになっています。
――『アフターバーナー』は、かなりわかりやすいように見えますね。
中村『アフターバーナー』は、まず戦闘機のF-14をモチーフにしています。ちなみに、F-14を製造しているノースロップ・グラマン社には許諾を得ています。また、『アフターバーナー』自体に某戦闘機映画がエッセンスとして入っているので、そこの要素も取り入れています。
正義感の強い女の子なんですが、そのぶん傷つきやすさも持っています。ゲームも当たると1発で撃墜されてしまいますしね。しっぽのようなモノは空母の発進システムであるアレスティング・フックがモチーフです。モジュールのガトリング砲も、実在するF-14をモチーフにしています。
――前者ふたつはゲーム全体をモチーフにしていますが、『バーチャファイター』はアキラ要素が強いですね。
中村基本的に本作は“ゲームタイトル”の擬人化です。ただ、初代『バーチャファイター』は人間が主役ですし、キャラクター性も強いです。そのため、アキラがメインのモチーフになっています。3Dゲーム黎明期のタイトルゆえ、ポリゴンがカクカクしていたので、モジュールや衣装のデザインもカクカクしている要素が入っています。
性格としてはシンプルで、とにかく真っ直ぐに、強さを追い求めている女の子です。ちなみに、背後にはSEGAのロゴと、『バーチャファイター』の開発を務めたAM2研のロゴがあります。
――『バーチャコップ』は、1Pカラーの青いガンコンが「おっ」と思わせてくれますね。
中村『バーチャコップ』はストレートに、警察官をモチーフにしたキャラクターです。仰る通り、筐体のガンコントローラの要素も取り入れています。
彼女も正義感の強い性格なんですが、セガのことを妄信的に信じている設定です。モジュールは昔のパソコンみたいな感じで、そこにパトランプなどが付いています。
――今回は4名だけでしたが、どれくらいのバリエーションのセガタイトルが女の子になるのでしょうか?
中村もっとたくさん存在します。皆さんがあっと驚くような、往年のセガファンも「そこに行くのか!」というようなタイトルが、多数女の子となって登場しますので、ぜひご期待ください。
――楽しみにしています。また、他社タイトルまで女の子になるんですよね。
中村はい。本作は、すべてのタイトルがコラボです。セガタイトルであろうと、当時関わったスタッフや奥成などといった詳しいスタッフたちから監修を受けてますから、ただ単に作っただけでは終わりじゃないんですよね。ここまで全キャラクターがコラボなのは、かなりチャレンジングなことです。ちなみに、かなり多くの他社さんの協力を得ています。1~2社程度で済むレベルではないですよ。
――もうクラシックゲーム大戦、くらいのイメージでしょうか?
中村それくらいの規模感かもしれません。ちなみに他メーカーにお願いする場合は、かなり慎重にお願いしています。単に「キャラクターを貸してください」で終わる話ではないので、企画の趣旨を丁寧に説明させていただきました。タイトルを貸していただいて、しかも女の子にさせてくださいと。さらに、そこにヨコオ節が入るわけですから(笑)。
僕としても「まあ無理なお願いをしてるんだよな」と自覚しつつお声掛けするのですが、これが意外と「おもしろい企画ですね」と好反応してくださる会社さんが多くて驚きました。もちろん、各社それぞれのブランディングやお考えがあるので、お断りされてしまうこともあったんですが、予想以上に多くのゲーム会社さんに協力いただいています。
――現在の開発状況を教えてください。
中村80~90%くらいです。ほぼ完成している、と言ってもいいでしょう。あとは磨き上げていくだけですので、2023年春のリリースまでに、細かいところまでしっかりブラッシュアップしていきます。
――では最後に、本作に期待を寄せるファンの方々にメッセージをお願いします。
中村本作はヨコオタロウらしくもあり、セガらしさも詰まった、かなり尖った挑戦的なタイトルです。ゲームの中ではセガが世界を支配しているという、IFの現実世界を疑似体験できます。リリース前からその世界観を楽しんでいただけるようなコンテンツを多数用意していますので、続報を楽しみにお待ちください。