2023年1月26日に日本一ソフトウェアよりNintendo Switch、PS5、PS4向けに発売された『魔界戦記ディスガイア7』(以下、『ディスガイア7』)。
キャラクターが巨大化する“弩デカ魔ックス”や“アイテム転生”、やり込みの先にあるPvP要素など、注目の要素が多数実装された本作の魅力をさらに深堀りするべく、開発陣にインタビュー。
今回お話をうかがったのは、日本一ソフトウェアに入社する前から『ディスガイア』シリーズのファンだったという美濃羽俊介氏と城花健人氏。ファンとしてどのような作品を目指したのだろうか。本作の内容について訊いてきた。
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プログラマーとして『ディスガイア4 Return 』、『ディスガイア5』の開発に携わる。本作では責任者として開発を指揮。
城花 健人氏(じょうばな けんと)
過去に『探偵撲滅』の企画、シナリオなどを担当。本作ではシナリオ制作を担当し、魔界ならではのユニークな物語を作り上げる。
おもしろさをとことん追求した最新作
――おふたりはもともと『ディスガイア』ファンだったとうかがいました。
美濃羽はい。『ディスガイア2 PORTABLE』で初めて『ディスガイア』シリーズに触れて、ファンになりました。日本一ソフトウェアに入社したのも同作に熱中したのがきっかけです。
城花私も初めて遊んだ『ディスガイア』は『ディスガイア2 PORTABLE』でした。もともと『マール王国の人形姫』シリーズのファンだったので、その流れで『ディスガイア』もプレイして好きになりました。
――そんなおふたりが考える『ディスガイア』の好きな要素はどこでしょうか?
美濃羽やはり、やり込みの部分がいちばん好きです。レベルやステータスの数字が上がっていく部分がとくにおもしろいと思います。持ち上げ&投げといった移動力を大きく上昇させる要素や、範囲攻撃で敵をまとめて蹴散らしたり、育成後のキャラクターにド派手に盤面を動かしたりするのも好きですね。
城花私は“魔界”という世界観がとくに好きですね。ほかのゲームでは許されない破天荒な展開が『ディスガイア』なら許されます。むしろ、私がシナリオの監修を担当していた『ディスガイアRPG』のユーザーさんの反応を見ていると、ふつうの展開では物足りないファンの方も多いんです。
私自身が『ディスガイア』の破天荒なストーリー展開、ありえない世界観や設定に惹かれて日本一ソフトウェアに入社したので、自分もシナリオを書くときは「どうすればユーザーさんの期待の斜め上を行く展開を描けるか」といったことを考えています。
ライターさんに指示を出すときも、「本当にこの展開でいいんですか?」と言われることがあったのですが、「ここはこれくらいふざけても大丈夫です」と伝えました。
――さまざまな要素がある『ディスガイア7』で、とくに注目の要素を教えてください。
美濃羽システム面では、“アイテム転生”、“弩デカ魔ックス”、“ランクバトル”、“周回スキップ”の4つですね。アイテム転生ではやり込み要素をさらに拡充していて、弩デカ魔ックスは範囲攻撃や移動、投げといった部分に深みを出す要素です。先ほど私が『ディスガイア』の好きな要素として挙げた部分のおもしろさをさらに追求しています。
美濃羽また、『ディスガイア6』で導入した魔心エディットは、AIによる戦闘を「おもしろい」に発展させきれなかった部分がありました。本作では、AI戦闘をより深く楽しんでいただくために、ランクバトルと、前作からさらに磨きをかけた周回スキップの要素を盛り込んでいます。
城花シナリオ面では、フジとピリリカの関係性に注目していただきたいです。いままでのシリーズとは違って、主人公とヒロインではなく、ダブル主人公として描いています。
そのため、どちらかがどちらかを救うというわけではなく、お互いに影響を与えながら旅をするという筋書きになっています。『ディスガイア』は、天使と悪魔であったり、人間と悪魔であったりと、キャラクターたちの価値観の違いを楽しむ部分も魅力だと思うんです。いままでのシリーズのいいところを踏襲しつつ、ダブル主人公という新たな形で物語を描いているので、ぜひ楽しんでいただきたいです。
美濃羽メインとなる物語は1本ですが、ダブル主人公なのでフジ側とピリリカ側の2本の軸があるんです。私はフジ側で描かれる、フジとアオの関係性が感動的で気に入っています。
城花物語を執筆する際、キャラクターのペアやトリオだけでなく、メインキャラクター全員のやり取りや関係性を楽しんでいただけたらなと思い、7人全員のファミリー感を意識して作っています。
フジを例に挙げると、彼はアオに対しては微妙な距離感ですが、ピリリカに対してはツッコミや面倒見のいい一面を見せます。そして、師匠である彼岸絶勝斎(ひがんぜっしょうさい)に対しては、若干気を使うこともあるんです。同じキャラクターでも、接する相手との関係によって違った表情が見えるところが魅力だと思っています。
――シリーズ初の要素と言えば、和風の魔界である“日ノ本魔界”が舞台になりますが、和風をテーマに据えた理由を教えてください。
城花『ディスガイア5』、『ディスガイア6』と、いろいろな魔界を渡り歩くスケールの大きな舞台設定が続いていたので、私から美濃羽に「今回は原点回帰ということで、ひとつの魔界で、多様性のある世界観を描きましょう」と提案しました。でも、じつはこれは建前で、本音を言ってしまうと私の趣味なんです(笑)。
城花完全にファン目線になってしまいますが、前作の開発前から、「和風の『ディスガイア』を作ってみたい」、「原田たけひとさんが描く和風のメインキャラクターを見たい」とずっと思っていたんです。以前提案したこともあったのですが、そのときは却下されてしまいました。
それでも、本作は“7”という数字つながりで時代劇映画の『七人の侍』を連想して、和風の『ディスガイア』が実現するような世界設定を仕上げたところ、オーケーが出て開発を進めることになりました。
――モチーフのひとつに『七人の侍』があったのですね。
城花そうですね。もともとかっこいい英雄劇を書いてみたいという思いがありました。メインキャラクターは7人で、メインキャラクターが扱う“始祖の七振り”も7に関係していて、そのほかにも7にこだわっている部分がたくさんあります。
ただ、『七人の侍』をモチーフにしているからと言って、メインキャラクターがつぎつぎに死んでいくといったことはなく、『ディスガイア』らしいところに落とし込んでいるのでご安心ください。
ちなみに、“始祖の七振り”は戦闘中に各々のキャラクターが条件を満たすと発動できるシステムで、武器の特性に応じた技を使えるようになります。『ディスガイア5』の“魔奥義”のようなイメージで楽しんでいただけると思います。
育成のやる気を削がない、いろいろなキャラクターを気軽に試せる育成システム
――『ディスガイア7』ではキャラクター育成の要素がかなり充実している印象がありますが、基本的な育成の流れを教えてください。
美濃羽本作では、まずアイテム界に潜ってアイテムを強化しつつ、ステージの自動周回などで消費する“魔ソリン”を集める。その後、集めた魔ソリンを使ってレベル上げや転生をする、というのが基本的な流れになると思います。
レベル上げとアイテム強化は、やり込んでいくとさらに深い育成要素を楽しめるようになっていくので、ぜひプレイして体験していただきです。
美濃羽全体の難易度としては、育成をしなくてもクリアーできる、少し難しいシミュレーションRPGといったイメージです。ふつうにプレイすると、クリアーまで30時間程度掛かりますが、『ディスガイア』はプレイ時間のほとんどがクリアー以降の育成に割かれると思うので、ファンの皆さんには長く楽しんでいただけるのではないかなと。
――やり込みの部分ですね(笑)。新システムの“アイテム転生”に必要な条件も教えてください。
美濃羽前作でのアイテム界は、無制限に何度でも潜れる仕様でした。本作では、このアイテムは10階まで潜れるといった具合にレアリティーに応じて潜れる階層が決まっていて、最大まで潜ることでアイテム転生が可能になります。
転生先のアイテムは、ある程度同じ種類のものになりやすいですが、ごく一部を除けば、どんなアイテムにでもなる可能性があります。アイテムランクという強さの指標があり、そのランクが同じ、もしくてひとつ上のランクのアイテムのうちランダムなどれかに転生するんです。
――アイテム転生をくり返していけば、キャラクター以上にアイテムが強くなることもありそうですね。
美濃羽本作では、キャラクターの育成要素より、アイテムの育成要素をメインに据えています。というのも、キャラクターの育成に時間が掛かるようにした場合、イチからキャラクターを育成しなおしたときに掛かるコストやストレスが大きすぎると思ったんです。
その点、アイテム育成をメインにすれば、育てたアイテムを流用するだけで、新しいキャラクターを気軽に試すことができます。
美濃羽キャラクターの転生は過去シリーズと同じく、基礎ポイントの割り振りや装備適正、汎用キャラクターならば6段階あるクラスやクラスそのものを変更できます。汎用キャラクターの声は3種類、カラーバリエーションは、全部で10種類あります。
――もうひとつの目玉の新要素である“弩デカマックス”をすると、戦闘にはどんな変化が起きるのでしょうか?
美濃羽弩デカマックスをしたキャラクターは攻撃範囲に制限がなくなり、マップのすべての場所に攻撃できるようになります。攻撃範囲が5x5マスと圧倒的なパワーを持っているので、育成した強いキャラクターを弩デカ魔ックスすれば敵を一掃することもできます。
また、弩デカ魔ックスすると、そのキャラクターが持つ“弩ビリティ”が発動し、マップ全体に効果を及ぼします。たとえば、プリニーの弩ビリティはキャラクター全員が投げられたら爆発する状態になります。弩デカ魔ックスは、戦況が不利になるにつれて増加するゲージが溜まると使えるようになります。
アイテム界では少し特殊で、弩デカ魔ックスのゲージは全階層で共通です。面倒な階層は弩デカ魔ックスで解決することもできます。
ただ、弩デカ魔ックスがあるからと言って、シミュレーションRPGとしてのおもしろさを損なうことがないように調整しています。あくまで、戦略の幅を広げるひとつの機能といった感じで、強くしすぎないように注意しました。
――さまざまな新要素が追加されていますが、開発の苦労などはありましたか?
美濃羽アイテム転生はあらかじめ仕様を固めてから開発に着手したので、あまり苦労しませんでした。ただ、AIによるオンライン対戦は、経験がなかったのでかなり難しかったです。
『ディスガイア』はキャラクターのレベルを上げやすいので、育成の度合いによって、強さもケタ違いになります。そのため、ある程度キャラクターを育成した人どうしが戦っても楽しめるように、テスターさんを数多く呼んで強すぎる魔ビリティー、特性の調整などを行いました。
その中で、対戦が成り立たなくなるものは削りましたが、『ディスガイア』はメチャクチャなバトルも魅力のひとつなので、あえて残したものもいくつかあります。現状では発売後の調整は予定していませんが、もしゲームにならないレベルの戦略が見つかってしまったら、調整することがあるかもしれません。
――発売後にはダウンロードコンテンツの配信も予定されています。そちらでとくにこだわったポイント、ファンにアピールしたいポイントをお聞かせください。
城花ダウンロードコンテンツの試みとして、3人セットというところが目玉になっています。これまでは、たとえば初代のラハール、エトナ、フロンだったり、『ディスガイア2』のアデル、ロザリー、アクターレといった具合に、シリーズごとの組み合わせが多かったのですが、今回はこれまであまりなかった組み合わせのキャラクターたちの会話を楽しめるようになっています。
城花コンセプトは“旅行に来た悪魔たち”です。キャラクターごとの日ノ本魔界群という世界に対するスタンスの違いを楽しんでいただきたいです。
――ヴァルバトーゼとアルティナのふたりの組み合わせが好きだったのですが、今回は別々なんですね……。
城花その点は本当に申し訳なく思っています……。ただ、別々になってしまったぶん、お互いが近くにいないからこそのヴァルバトーゼの一面、アルティナの一面を描いているので、そういったカップリングの組み合わせが好きな人もぜひ楽しみにしていてほしいです。
――楽しみです! 最後にファンに向けてメッセージをお願いします。
美濃羽『ディスガイア』らしい『ディスガイア』をテーマに作りましたので、ファンの皆さんには楽しんでいただきたいです。
城花ファンの皆さんからすると、新川(日本一ソフトウェア元代表取締役の新川宗平氏)が辞任して初めての『ディスガイア』ということで、不安に思われている方も少なからずいらっしゃると思います。それでも、『ディスガイア』を遊んで育ったファン世代が、最高に楽しい『ディスガイア』を目指して作ったので、ファンの心に響く作品となっていると思います。ぜひ手に取っていただけるとうれしいです。
[2023年2月7日14時10分修正]
キャラクター名の記載に誤りがあったため、該当の文章を修正いたしました。読者並びに関係者の皆様にご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします。