2023年1月29日に東京都・LIVE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)およびZAIKOでの有料配信にて、“ストリートファイター35周年記念ライブ”が開催された。本記事ではその模様をお届けする。
本公演は、カプコンの人気対戦型格闘ゲーム『ストリートファイター』が、1987年に開発・稼動してから35周年を迎えたことを記念した特別ライブである。
『ストリートファイター』史上では初めての音楽イベントであり、『ストリートファイターII』(以下『ストII』)から、2023年6月2日に発売予定の『ストリートファイター6』(以下『スト6』)までの楽曲が、生演奏アレンジでつぎつぎと披露された。
1990年代当時の音源から始まるオープニング。当時の記憶が想起されるなか、一夜限りのバンドサウンドに圧倒される
ステージは、『ストII』のオープニング映像とBGMが当時の音源そのままに流れるところから始まる。その古きよきサウンドに懐かしさを覚えていると、その音源に重なるような形で、大迫力のバンド演奏がスタート。
本公演の前半は、シリーズの各タイトルごとに厳選された楽曲を、“STREET FIGHTER 35TH ANNIVERSARY ORIGINAL BAND”の演奏で進めていく流れ。トップバッターとなる『ストII』セクションでは、オープニングに続いて“リュウ〜ケンステージ”が披露された。
改めて『ストII』の楽曲群を聴いて思うのは、数々のキャッチーなメロディラインのよさ。『ストII』は1991年にアーケードで稼動し、翌1992年にはスーパーファミコン版が発売された作品。当時はまだデータを保存できる容量が少なく、グラフィックやサウンドに多くの制限があった時代である。
そんな時代だったからこそ、当時の作品は表現に多くの工夫が凝らされていた。『ストII』のBGMやSEはその最たる例のひとつ。シリーズの他タイトルと比べても、記憶に強く残るフレーズが多く、それらの楽曲を令和の時代に、気持ちのいいスピード感のある生演奏アレンジで聴けるという事実に終始感動する時間だった。
『ストII』セクションが終わると、幕間として曲紹介やメンバー紹介を行うMCパートへ。MCはニッポン放送アナウンサーの吉田尚記氏とカプコン・『ストリートファイター』開発チームの浦沢賀奈氏によって進行。ふたりとも当時ゲームセンターでプレイしていた思い出を語るなど、出演者ながらもひとりの『ストリートファイター』ファンとして、本公演への興奮や高揚が感じられた。
続いてはライブパートに戻り、シリーズにおける現行の最新作である『ストリートファイターV』(以下『ストV』)セクションへ。ここでは“Bustling Side Street -China Stage-”、“Theme of Rashid”、“Ring of Destiny -Ring Stage-”が披露された。
『ストV』は2016年に稼動した作品で、世界大会“カプコンプロツアー”やプロリーグ“ストリートファイターリーグ”など、世界中でeスポーツ大会を実施。eスポーツ隆盛の流れの中で、対戦格闘ゲームを競技として昇華させたタイトルと言える。
『ストV』の楽曲群はそんな“対戦”や“競技”を意識したものなのか、さきの『ストII』などと比べると、やや重厚感のあるサウンドで、緊迫感や緊張感を覚える。よりディテールが細かくなった世界観やキャラクター設定とともに、真剣勝負に没入するプレイヤーたちの雰囲気が表現されているようだった。
その後は再度MCを挟み、『ストリートファイターIII』(以下『ストIII』)セクションとして、ステージメドレー“Dudley Stage〜Hugo Stage〜Stage Results”、“The theme Of Q”と続く。ちなみに、筆者はシリーズの中でもこの『ストIII』の楽曲がいちばん好きである。
『ストIII』の楽曲の特徴は、シリーズ作品の中でも特筆した“オシャレさ”。『ストII』の正統続編として1997年に稼動した本作は、“ブロッキング”システムをはじめとした新しい試みが多く取り入れられており、それに沿うようにグラフィックやサウンド面も飛躍的に進化。とくにサウンド面は、ゲーム内だけでなくひとつの音楽作品として聴けるほどに魅力的で、1999年に稼動した『ストIII 3rd STRIKE』では、オープニングテーマに英詞のラップが取り入れられていた。
本公演でも『ストIII』セクションはとくにダンサブルでクールなアレンジとなっており、小気味いいギターカッティングに乗せて、ギターやシンセのソロパートがあるなど、座って見ているのがもったいなく感じられるほど。この辺りは陳腐な表現ながら、実際に“目で見て確かめて欲しい”といったところだ。
前半パートの締め括ったのは、『ストリートファイターIV』(以下『ストIV』)セクションの“Theme of C.Viper”、“Theme of Yun -SSFIV AE Arrange-”、“Theme of Cammy -SFIV Arrange-”の3曲。
再び筆者個人の話になるが、『ストIV』シリーズは『ストリートファイター』の中でもっともやり込んだ作品。2008年にアーケードで稼動した当時は、ゲームセンターのアルバイトとして働き、毎日猛者たちとの戦いをくり広げ、オフラインの大会にも足繁く参加していた。
そんな風にプレイに没頭するあまり、正直なところサウンドに対する印象が他タイトルほど強くなかったのだが、アレンジされた楽曲を聴いた瞬間に当時の光景がフラッシュバック。楽曲そのものの魅力を感じつつ、対戦に明け暮れた記憶と強く結びつく“音楽の力”を改めて感じた瞬間だった。
“カプチューン”と“ザ・リーサルウェポンズ”の共演、レジェンド下村陽子氏のトークなど、特別な夜は続いていく
前半パートが終わると、演奏はカプコン・サウンドチームのバンド“カプチューン”にバトンタッチ。カプチューンはイベントのたびにチームの中からメンバーが選抜されるバンドで、海外でも“CAP-JAMS”として活動している。
今回はリーダーの岡田信弥氏や、『スト6』のリードコンポーザーを勤めている寺山善也氏をはじめとした7名が出演し、『ストV』から“Theme of Dan カプチューン Arrange”と、発売予定の『スト6』から“Luke's Theme Taking Aim カプチューン Arrange”、“Jamie's Theme Mr. Top Player カプチューン Arrange”の3曲を披露した。
演奏が終了すると、スクリーンの『ストII』の乱入演出に合わせて“ザ・リーサルウェポンズ”がステージに登場。カプチューンとの寸劇を挟みつつ、“昇龍拳が出ない feat.カプチューン”を熱唱した。
エンターテイメントに溢れた演出の後は、トークセクションとして『ストII』のBGMやSEの制作を手掛けた作曲家の下村陽子氏が登壇。カプチューンのメンバーとともに、開発当時の苦労や、制作事情、カプチューンの前身となる“ALPH LYLA(アルフライラ)”などのエピソードが赤裸々に語られた。
ライブ終盤はブラス隊を加えてさらに豪華に。そしてアンコールでは往年の名曲も披露
トークセクションが終わるとライブも終盤へ。再び演奏はSTREET FIGHTER 35TH ANNIVERSARY ORIGINAL BANDへ。ここからはトランペットやトロンボーンのブラス隊も加わり、『ストII』ステージメドレー“ガイル~春麗~本田ステージ”から、“ボーナスステージ”、四天王ステージメドレー “バイソン~バルログ~サガットステージ”と怒涛のラッシュ。
そして最後は、シリーズボスメドレー“Theme of Seth~Urien Stage”、“ベガステージ”、“Killing Moon”と迫力のある構成でメインステージを締め括った。
拍手喝采の中でステージが終わるもその音は鳴り止まず、ステージは続いてアンコールへ
鳴り止まぬ拍手に呼び戻され、三度STREET FIGHTER 35TH ANNIVERSARY ORIGINAL BANDが登場すると、劇場アニメ『ストリートファイターII MOVIE』の主題歌であり、最新作『スト6』の日本イメージソングにも選ばれた『恋しさと せつなさと 心強さと』を披露。曲中ではスクリーンに『ストリートファイターZERO』のドラマチックバトルの映像が流れ、リュウとケンが協力してベガと戦うというストーリーが読み取れる粋な演出となっていた。
そしてフィナーレを飾ったのは、スクリーンに『ストII』のオープニングからキャラクターセレクト、対戦画面が流れる中、それにBGMの生演奏をリンクさせた“スペシャルメドレー”。BGMとともに当時のSEやボイスが入り乱れる様に会場の熱気は最高潮となり、そのまま2時間にわたるライブは大団円を迎えた。
配信アーカイブは2月12日まで視聴可能。『ストリートファイター』史の新しい1ページをお見逃しなく
今回の公演の模様は、ライブ配信サービスのZAIKOにて2023年2月12日 23:59(日本時間)まで視聴が可能。35年間の中で初めての音楽イベントであり、アレンジされたバンド演奏や、下村氏のスペシャルトークなど見応えは十分。
オンライン視聴券は下記から購入ができるので、あの特別な夜のすべてをみなさんの目と耳でも感じてほしい。
※ZAIKO ストリートファイター35周年記念ライブ 配信チケット購入ページはこちら
ストリートファイターII オープニング
なんと‼️配信の模様を一部公開
配信ならではのカメラアングルは見逃し厳禁✋
2/12(日)23:59まで視聴可能。
アーカイブ視聴はこちら… https://t.co/neosnSFe0Y
— ストリートファイター35周年記念ライブ (@SF35th_Live)
2023-02-01 13:57:01
『ストリートファイター35周年記念ライブ』セットリスト
【ストリートファイター35周年記念ライブ 特別バンド】
1.ストリートファイターII “オープニング”
2.ストリートファイターII “リュウ〜ケンステージ”
3.ストリートファイターV “Bustling Side Street -China Stage-”
4.ストリートファイターV “Theme of Rashid”
5.ストリートファイターV “Ring of Destiny -Ring Stage-”
6.ストリートファイターIII ステージメドレー “Dudley Stage〜Hugo Stage〜Stage Results”
7.ストリートファイターIII 3rd Strike “The theme Of Q”
8.ストリートファイターIV “Theme of C.Viper”
9.スーパーストリートファイターIV “Theme of Yun -SSFIV AE Arrange-”
10.ストリートファイターIV “Theme of Cammy -SFIV Arrange-”
【カプチューン】
11.ストリートファイターV “Theme of Dan カプチューン Arrange”
12.ストリートファイター6 “Luke's Theme Taking Aim カプチューン Arrange”
13.ストリートファイター6 “Jamie's Theme Mr. Top Player カプチューン Arrange”
【 ザ・リーサルウェポンズ 】
14.昇龍拳が出ない feat.カプチューン
〜ゲスト:下村陽子 スペシャルトーク〜
【 STREET FIGHTER 35TH ANNIVERSARY ORIGINAL BAND 】
15.ストリートファイターII ステージメドレー “ガイル~春麗~本田ステージ”
16.ストリートファイターII “ボーナスステージ”
17.ストリートファイターII 四天王ステージメドレー “バイソン~バルログ~サガットステージ”
18.ストリートファイターシリーズ ボスメドレー “Theme of Seth~Urien Stage”
19.ストリートファイターII “ベガステージ”
20.ストリートファイターIII 3rd Strike “Killing Moon”
【 アンコール:STREET FIGHTER 35TH ANNIVERSARY ORIGINAL BAND 】
21.恋しさと せつなさと 心強さと
22.ストリートファイター35周年記念ライブ スペシャルメドレー
ライター:ベックス、編集:とよまん
Amazonで『ストリートファイター』を検索