ファミ通.comの編集者&ライターが年末年始のおすすめゲームをひたすら紹介する連載企画。ライターのNeverAwakeManがおすすめするタイトルは、PC用ソフト『ULTRAKILL』です。

【こういう人におすすめ】

  • ハイペースなアクションゲームに自信がある
  • 大量の血を見たい
  • ウルトラなキルをしたい

NeverAwakeManのおすすめゲーム

『ULTRAKILL』

  • プラットフォーム:PC(Steam)
  • 発売日:2020年9月4日配信(現在はアーリーアクセス中)
  • 発売元:New Blood Interactive
  • 開発元:Arsi “Hakita” Patala
  • 価格:2570円[税込]
  • 備考:ダウンロード専売
『ULTRAKILL』心血注いで点火しろ。地獄も震える“極”殺戮FPS【おすすめゲームレビュー】
『ULTRAKILL』Steamサイト

 俺が思うに、ゲームのタイトルはそのプレイ内容をうまく伝えられるものであるべきだ。

 たとえば、『ソニック』。超音速のハリネズミが駆け抜けるゲームだ。あるいは、『ポケットモンスター』。ポケットサイズのボールに入ったモンスターを連れ歩くゲームだ。もしくは、『ストリートファイター』。各地のストリートで格闘家たちが拳を交わすゲームだ。このように、タイトルから内容が想像できるゲームに名作が多いのは、名付ける側がそのゲームの本質をよく理解しているからかもしれない。

 では、当記事で紹介する『ULTRAKILL』はどうだろう? ウルトラで、キル。ほとんど挑発的なほどにシンプルなタイトルだが、そこに誇張や偽りは一切ない。これはもちろん、ウルトラなキルをするゲームだ。

血しぶき、爆発、ショットガン。
パリィ、跳弾、グラップリング。

 ゴアとバイオレンスの神に誓って保証しよう。このゲームには、殺戮を極めるためのすべてが詰まっていると。

血をたぎらせろ、血を浴びろ

 『ULTRAKILL』のキャンペーンモードを開始すると、ブラックアウトした画面にDOS風のテキストメッセージが流れ出す。そこで知らされる主人公の名はV1。いましがた再起動を果たした、人ならざるロボットだ。グラフィックやオーディオなど各種設定を終えると、メッセージは続ける。“人類は絶滅。血は燃料。地獄は満員”……どうやら、この世界ではV1のようなロボットたちが地上の人類を根こそぎ滅ぼしてしまったらしい。だが、地獄ならまだまだ獲物がいる。さらなる血を求め、V1は地獄の底へと下っていく。

 本作は日本語化されていないため、興味を持ってもらうためにここであらすじをざっと書いてみた。しかし正直なところをいうと、これは読み飛ばしてしまってもいい。

『ULTRAKILL』心血注いで点火しろ。地獄も震える“極”殺戮FPS【おすすめゲームレビュー】

 ステージを進み、現れる敵を皆殺しにし、地獄の階層を下る。FPSの始祖である『DOOM』や『Quake』と同じく、プレイヤーがやることは基本的にそれだけだからだ。マップをくまなく探索すると隠し部屋などのシークレットが見つかるあたりも『DOOM』譲りだが、クリアーしなかったからといって特段不利になることはない。主人公のV1は「我殺す、ゆえに我在り」を地でいく殺戮ロボットなのだから、プレイヤーもそのマインドで気楽に殺っていくべきなのだろう。

 さきほどのあらすじに“血は燃料”とあったが、これは単なる比喩表現やキャラ設定ではない。『ULTRAKILL』において、主人公のV1がライフを回復する唯一の方法は敵の血しぶきを浴びることだからだ。これがおもしろいのは、遮蔽物に隠れて遠距離からチクチク攻撃するようなチキン戦法をゲーム側が決して許さないという点である。

『ULTRAKILL』心血注いで点火しろ。地獄も震える“極”殺戮FPS【おすすめゲームレビュー】

 本作のマップ上に回復アイテムはなく、時間経過でライフが回復することもない。敵は大勢、こちらはひとり。降りかかる攻撃は苛烈のひと言だ。そんなゲームでノーダメージを貫くのはまったく非現実的だし、立ち止まればたちどころに死んでしまう。

 こうして、危険を冒してでも敵の目の前へ突撃し、新鮮な血を浴びなければならない瞬間が必ず訪れる。

 この仕組みはシビアに聞こえるかもしれないし、実際シビアだ。とはいえ、遊んでいるとそれほど理不尽には感じられない。敵の一撃でライフが3、4割吹き飛ぶこともざらにある一方で、こちらが至近距離でショットガンをぶっぱなすだけでライフの半分以上を一気に回復できるからだ。じつに危ういがリスクリターンは成り立っており、このギリギリの駆け引きが闘争本能を刺激する。半強制的に死線をくぐらせることで殺意と興奮を高めるという、大胆かつ秀逸なゲームデザインだ。

『ULTRAKILL』心血注いで点火しろ。地獄も震える“極”殺戮FPS【おすすめゲームレビュー】

 殺意とテクニックが足りないうちは、きっと何度も死を経験するだろう。どんなゲームであれ、死は辛く苦しいものだ。しかし、どのステージにもこまめにチェックポイントが置かれており、リスタートしてもロード時間はまったくといっていいほど挟まれない。そのため、トライアンドエラーに伴うストレスは驚くほど低減されている。ローポリでノスタルジックな見た目とは裏腹に、『ULTRAKILL』は遊びやすさにしっかり配慮された現代的なゲームだ。

よりスタイリッシュであれ

 『ULTRAKILL』のもうひとつの特徴は、プレイのスタイリッシュさをリアルタイムで可視化する『デビル メイ クライ』風のシステムだ。ヘッドショットやマルチキルなどバイオレンスな行動でポイントが加算され、時間経過やダメージによって減算される。そして、一定のポイントを稼ぐごとに以下の順でスタイルランクが上がっていく。

Destructive(破壊的)
Chaotic(カオス!)
Brutal(残酷!!)
Anarchic(無法!!!)
Supreme(最ッ高!!!!)
SSadistic(ドS!!!!!)
SSShitstorm(クソかっけえ!!!!!!)
ULTRAKILL(ウルトラキル)

『ULTRAKILL』心血注いで点火しろ。地獄も震える“極”殺戮FPS【おすすめゲームレビュー】

 地上をノロノロ動き回り、扱いやすい武器で敵をチマチマ撃つような腑抜けたプレイをしているかぎり、最高ランクのウルトラキルまでたどり着くのは至難の業だ。もっとアクロバティックに、ずっとアグレッシブに立ち回らなくてはならない。

 各行動で得られるポイントは、そのときの自分の状態によってさらに乗算される。上の画像の右側で“MULTIPLIER”と表示されている部分の数字が、現在の乗算値だ。スライディングやジャンプをすると、得られるスコアは最大3倍にまで跳ね上がる。飛んだり跳ねたり滑ったりしながら戦うのは大変そうだが、そうでもしないと一瞬で敵に包囲されて集中砲火を浴びてしまうのが『ULTRAKILL』だ。基本的な操作が手になじむころには、空中で戦う時間のほうがむしろ長くなっているだろう。

 “MULTIPLIER”のさらに下に、“FRESH”と書かれてあるのがわかるだろうか? これは、現在装備している武器の“鮮度”を示すものだ。使いたてのフレッシュな武器で戦うとスコアに1.5倍のプラス補正がかかるが、攻撃し続けるうちに1倍、0.5倍と補正値が低下し、最低の“DULL”までいくと0倍になる。高ランクを目指すなら、つぎからつぎへと新鮮な武器に切り替えて戦わなければならない。

『ULTRAKILL』心血注いで点火しろ。地獄も震える“極”殺戮FPS【おすすめゲームレビュー】
銃もなまくらになる。

 同じ武器ばかり使ったりモタモタ歩き回ったりするようなダサくてダルくてつまらないムーブを、『ULTRAKILL』は許さない。あらゆる武器を使いこなし、自由自在に戦って初めてスタイリッシュと言えるのだ。ウルトラキルへ到達するのはもちろん生半可なことではないが、このゲームはそのためのテクニックを数多く用意してくれている。

 この記事を読んで『ULTRAKILL』に興味を持ってくれるあなたのために、比較的簡単に使えるテクニックをここにいくつか書いておこう。

1. コインを理解しろ

 このゲームには多種多様な武器が存在する。ショットガン、レールガン、ガトリングガン、ロケットランチャー……中でも異彩を放っているのが“Marksman”と呼ばれるリボルバーだ。この銃を装備して右クリックすると、コイントスを行う。そして、そのコインをめがけて撃つことで、甲高く爽快な効果音とともに跳弾を発生させられる。

『ULTRAKILL』心血注いで点火しろ。地獄も震える“極”殺戮FPS【おすすめゲームレビュー】
コインをトスして
『ULTRAKILL』心血注いで点火しろ。地獄も震える“極”殺戮FPS【おすすめゲームレビュー】
撃って弾く

 これだけ見るとただカッコいいだけの曲芸にすぎないが、『ULTRAKILL』では跳弾したコインは自動的に敵の弱点に向かって飛ぶというユニークな性質を持っている。したがって、敵の弱点が頭ならヘッドショットになるし、敵がガスボンベを背負っているならそこを撃ち抜いて大爆発を引き起こせる。弱点への攻撃に加えて跳弾自体がポイントとなるため、コイントスは敵を効率的に始末するだけでなくスタイルランクを上げるのにもうってつけのテクニックだ。

 このテクニックで最初に心得ておくべきなのは、コイントスの軌道はつねに一定であるという点である。上下左右どこを向いていても、コインは視界のまっすぐ上方向に飛んでいく。コインに弾丸を当てる角度とタイミングさえ体に覚えさせれば跳弾の成功率は飛躍的に上昇するはずだ。

2. 自分で撃った弾丸を自分で殴れ

 Fキーでくり出せるパンチは、ほとんどの攻撃を殴って弾き返すことができる。いわゆるパリィだ。これ自体はチュートリアルでも説明されるテクニックだが、じつは殴ってパリィできるのは敵の射撃だけではない。トスしたコインを殴って敵に当てることもできるし、自分が撃ったショットガンの弾丸を自分で殴ることすらできるのだ。明らかに物理法則が捻じ曲がっているように見えるけれど、V1が殺戮ロボットだからできる芸当ということにしておこう。

『ULTRAKILL』心血注いで点火しろ。地獄も震える“極”殺戮FPS【おすすめゲームレビュー】
撃った瞬間に殴る

 ショットガンパリィの操作自体は非常にシンプルだ。射撃と同時にパンチ、ただそれだけであるが、タイミングは結構シビアだ。キーを押すのが遅すぎたり早すぎるとパンチを空振ってしまい、なんだか気まずくなってしまう。成功すると心地よいヒットストップと閃光が発生し、殴った弾丸はなぜか着弾時に爆発するようになる。敵の群れにショットガンパリィを叩き込み、爆発とともに血の雨を降らせるのは『ULTRAKILL』で最高に気持ちいい瞬間のひとつだ。

3. スライドジャンプで飛び回れ

 WASDキーで行う通常移動に加え、本作にはスライディングとダッシュというふたつの移動システムがある。多くのFPSは主人公がか弱い人間なのでごく短距離しかスライディングできないが、V1は殺戮ロボットなので無限に滑り続けられる。一方のダッシュは短い距離を一瞬で詰めるシステムで、こちらは空中でも使用可能だ。壁蹴りとダッシュを組み合わせることで、地に足を着けない立体的な戦いができる。ただし、ダッシュは使うごとにライフゲージの下にあるスタミナを消費し、スライディングしているあいだはスタミナが回復しない。考えなしにダッシュやスライディングを使っていると、肝心なときにスタミナが足りず痛い目を見るだろう。

『ULTRAKILL』心血注いで点火しろ。地獄も震える“極”殺戮FPS【おすすめゲームレビュー】

 スタミナを節約しつつスピードを求めるなら、スライドジャンプの出番だ。スライドジャンプとは、一瞬だけスライディング→ジャンプ→着地際に一瞬だけスライディング→ジャンプという一連の操作をくり返すテクニックである。『ULTRAKILL』は前後左右に助走なしでスライディングできる珍しいタイプのFPSなので、スライドジャンプをマスターすると文字通り縦横無尽の超高速機動が実現する。スライドジャンプ連打は速すぎてどんな敵も追いつけないし、操作しているこっちの目もぶっちゃけ追いつかないが、この手のゲームにおいてスピードはつねに正義だ。

心血注いで暖を取れ

 もうわかっているかもしれないが、『ULTRAKILL』はイージーとは程遠いゲームだ。スライディング、ジャンプ、武器切替などをひっきりなしに行うせいで手元は忙しいし、繊細なエイム力だって必要になる。こちらを取り囲む敵の数、種類、配置を瞬時に把握する状況判断能力も問われる。初見プレイヤー向けの難易度とされる“STANDARD”は、実質的にハードモードと言って差し支えない。なにしろ、たったひとりのボス相手に56回も殺されるくらいなのだから。

『ULTRAKILL』心血注いで点火しろ。地獄も震える“極”殺戮FPS【おすすめゲームレビュー】

 しかしながら、『ULTRAKILL』は決して間口の狭いゲームというわけではない。難易度は4段階に分けられており、最低難易度の“HARMLESS”では、さきほど56回殺されたボスをノーデスでクリアーできるくらいやさしくなる。また、オプション画面からはゲームスピードの緩和、無限スタミナ、オートエイムといった細かなアシストを設定することも可能だ。一切ダメージを受けなくすることもできるため、理屈の上では誰でも必ずクリアーできるだろう。いまは下手でも、そこから上達していけばいい。

 命をかけて血を浴びる駆け引き。滑らかで自由な操作性。プレイスキルの向上を可視化するスタイルランク。『ULTRAKILL』に備わったこの3つの要素には魔性の魅力があり、プレイヤーの挑戦心に火をつける。そして、より美しく激しい殺戮へと駆り立てる。この衝動は人を変えるといっていい。最初は跳弾すらままならなかった俺が、いまでは戦闘だけを純粋に楽しむスコアアタックモード“THE CYBER GRIND”に夜な夜な挑戦しているほどだからだ。

 プレイヤーが『ULTRAKILL』に心血を注げば、V1はそれを燃やして戦ってくれる。冷え込む年末年始で凍てついたゲーマー魂を、このバイオレンス極まりないゲームで暖めてみるのも一興だ。

『ULTRAKILL』心血注いで点火しろ。地獄も震える“極”殺戮FPS【おすすめゲームレビュー】
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