2022年10月15日、東京都・恵比寿にあるLIQUIDROOMにて、声優・今井麻美さんのライブ“今井麻美 Autumn Live 2022「One Step」”が開催された。本記事では、同ライブの模様をお届けする。

 ライブは『ANTHEM of +A』からスタート。前奏とともにバンドメンバーと白と青のドレスに身に包んだ今井さんがステージに登場し、クールに力強く、そして時折笑顔を見せながら同曲を歌い上げた。

 続く、最新アルバムの表題曲『Balancing Journey』では伸びやかな歌声を響かせ、『Dear Darling』ではキュートにパフォーマンス。本公演では新型コロナウイルス感染症の予防対策として、大声での発生が禁止となっていため、『Dear Darling』でおなじみとなっている最初の「L・O・V・E」コールやDメロの「大好きだよ」といったコールアンドレスポンスはできなかったものの、会場がピンクのペンライトに染まるなど、会場一体となって盛り上がった。

 3曲を歌い終えたところで、「夏みたい。暑ーい」と興奮気味に感想を語りながら、最初のMCへ。まずは、今後条件を満たせば観客の声出しがOKになるというガイドラインがライブ当日に発表されたことについて。本公演で最初に披露された『ANTHEM of +A』は、“みんなで盛り上がれる楽曲を作ってほしい”というファンからの提案で誕生した楽曲だが、今井さんは、これまでずっとひとりで歌ってきたことに触れつつ、つぎのライブではいっしょに歌えるかもしれないとうれしそうに語っていた。

 ライブパートに戻ると、これまでの流れから一変して、ゆったりとした『風と猫のStoria』、鳥のさえずりなどが入った温かいメロディーが印象的な『Astral World』の2曲をしっとりと歌い上げる。なお、『風と猫のStoria』では、CDでギターが演奏していたパートの一部をヴァイオリンが担当するなどのアレンジが行われていた。

 MCでは、今井さんのライブやイベントで恒例となっている、初めて来た人の調査を行った後、かわいくてお気に入りだという衣装について「背中がすごく開いていて涼しい」とコメント。なお、公演中には言及されなかったが、終演後の今井さんのツイートによると、デザインはイラストレーターやVTuberとして活動している“なつめえり”さん、制作は今井さんの衣装でおなじみの園山織衣さんが担当しているとのこと。

 また、ここではバンドの新メンバーの紹介も行われた。今回の編成は以下の通り。

  • ギター:宮崎大介さん(だいちゃん)
    ※宮崎さんの「崎」は正しくはたつさき(以下、同じ)
  • ベース:安達さとしさん(あだっち)
  • ヴァイオリン:Aiさん(あいちゃん)
  • キーボード:鈴木栄奈さん(えなっち)
  • ドラム:白川玄大さん(玄ちゃん)
  • マニピュレーター:大場 映岳-hana-さん(ハナちゃん)
今井麻美さんのライブ“Autumn Live 2022「One Step」”リポート。新旧織り交ぜたセットリストを多彩な表現で歌い上げる

 ちなみに安達さんと宮崎さんは今井さんの個人名義のライブには初参加となるが、宮崎さんは『グランブルーファンタジー』のコンポーザーである成田勤さんが率いるバンド“Stella Magna”のメンバーということで何度も共演をしている。

 新メンバーの紹介を終えると、「裸足のほうが安定感が出る」と靴を脱ぎだした今井さん。気合を入れ直してつぎの曲にいこうとしたものの客席から笑い声が。そんな雰囲気ではつぎにいけないということで、今井さんは合図をしたら、険しい顔をしてほしいと提案。

 そして、合図をした後、ガラッと空気を変え、今井さんの楽曲の中でも激しい『Carve out』、『砂漠の雨』(映画『コープスパーティー Book of Shadows』主題歌)をパワフルに歌い上げた。『Carve out』では間奏中に客席を煽ったり、『砂漠の雨』では「躓いて倒れたなら」という歌詞に合わせて倒れ込んで膝をつきながら歌ったり、ミュージカルのように全身を使った大きな動きとともに熱唱し、観客を楽曲の世界へといざなっていた。

 しかし、MCに入ると「暑いよー」と本音をぶっちゃけたり、Aiさんに「最近いいことあった?」といきなり質問したり、大場さんのステージネームの由来が書道の雅号(※文人、画家、書家などが、本名以外につける名前のこと)だと知り、「今後ステージに後ろに(飾る)何か書いてほしい」と依頼するなど、楽曲のパフォーマンス中とは打って変わって、一気にアットホームな雰囲気に。

 そして、『追憶の糸車』(『神様と運命覚醒のクロステーゼ』エンディングテーマ)を歌唱したところで、今井さんは衣装チェンジのため一旦ステージを後にした。着替え中には、以前ファンクラブ会員向けに配信されていたラジオ番組“+A sounds”の番外編を放送。

今井麻美さんのライブ“Autumn Live 2022「One Step」”リポート。新旧織り交ぜたセットリストを多彩な表現で歌い上げる

 番組では、本公演の会場であるLIQUIDROOMについて、2018年7月28日開催の“桜庭統 椎名豪 The History 2018”でゲストとしてステージに立ったときの思い出などが語られた。

 さらに、番組内ではバンドメンバー紹介も行われることになっていたのだが、メンバーは今井さんが発表するテーマに合わせて、即興の演奏でアピールしてほしいと無茶振り。今井さんが発表した各メンバーへのテーマは以下の通り(バンドメンバー紹介は、今井さんのテーマ発表部分が事前収録となっており、バンドメンバーは今井さんの着替え中もステージに残り、即興で演奏を行った。当然、テーマは事前に伝えられていない)。

  • 白川玄大さん:ミンゴス
  • 鈴木栄奈さん:オータム(秋)
  • 安達さとしさん:ハロウィン
  • Aiさん:ヴァイオリンの技巧テクニックで会場のみんなを魅了してくれ
  • 大場 映岳-hana-さん:なんか音を出してください、歌ってください(※どちらかを選択)
  • 宮崎大介さん:君と紡ぐ、空を感じさせる物語

 白川さん、鈴木さん、Aiさんのおなじみのメンバーは無茶振りにも臆することなく、見事なパフォーマンスで盛り上げる。安達さんも戸惑いは見せつつ、巧みなベース捌きで魅了。そして、新メンバーにも関わらず、いちばんの無茶振りと言っても過言ではないテーマを提示された大場さんは迷いつつも、なんと歌うことを選択し、会場に美声を響かせた。ラストの宮崎さんは、今井さんと観客の期待に応え、どこかで聞いたことのあるような楽曲を演奏し、会場を沸かせた。

 “+A sounds”が終わると、衣装を着替えた今井さんがステージに登場し、アコースティックパートに突入。最初に披露されたのは歌手活動の原点とも言える『The Azure~碧の記憶~』(『Ever17 -the out of infinity- Premium Edition』エンディングテーマ)(※)。間奏中には観客に手拍子を促し、会場全員で楽曲を楽しんだ。

※『The Azure~碧の記憶~』は、“歌手・今井麻美”として最初に歌唱した楽曲のひとつ。詳細は10周年記念インタビューなどでも語られているのでチェックしてほしい。

 そのまま、2017年に発売した100曲入りのコンプリートアルバムの表題曲『rinascita』へ。原曲より少しゆったりとしたやさしい音色が印象的なアレンジとなっており、さまざまな想いが込められた同曲の歌詞をひと言ひと言大切に歌声に乗せて、観客のもとへと届けた。

今井麻美さんのライブ“Autumn Live 2022「One Step」”リポート。新旧織り交ぜたセットリストを多彩な表現で歌い上げる

 MCでは、バンドメンバーに無茶振りをしたことを謝罪しつつ、じつは“+A sounds”の台本には最初と最後の少ししか内容が書かれておらず、ほぼアドリブで収録したそうで、今井さん自身もプロデューサーから無茶振りを受けていたことを暴露。

 続いての楽曲は『unknown world』。世界樹をテーマにした幻想的な同曲をときにやさしく、ときに力強く歌い上げる。MCに入ると、コロナ禍以前の今井さんのライブではお客さんと会話するのが当たり前だったことに触れ、初めて観客の発声が禁止で行われた“今井麻美Live2020 ~Sing in your heart~ Side Blue(2020年10月17日開催)”のときに、いままでファンに助けられていたことを実感したと当時を振り返っていた。

 その影響でバンドメンバーへの無茶振りが増えたと冗談交じりに語り、観客を笑わせつつも「当たり前の生活がどれだけ幸せで、平和で、ありがたかったかということを、ここ数年は噛み締めています。ライブができることにも感謝ですし、皆さんが来てくださることにも改めて感謝しています」と感慨深そうにコメント。

 その後、今井さんも「M1(※1曲目)からやり直す?」と語るほど、あっという間に時間が過ぎていたようで、つぎの2曲でアコースティックパートが終了であることを宣言。1曲目の『三日月色』は、最初をキーボードとヴァイオリンだけで演奏し、中盤からギター、ベース、ドラムが参加するという、同曲に込められた“優しさと芯のある強さ”などを感じられるアレンジとなっていた。そして、前向きの歌詞と軽快なリズムが印象的な『タンジェリンの海』を爽やかに歌唱したところで今井さんは退場。

今井麻美さんのライブ“Autumn Live 2022「One Step」”リポート。新旧織り交ぜたセットリストを多彩な表現で歌い上げる

 バンドメンバーによるインストを挟んだ後、ライブTシャツに着替えた今井さんがステージに再び登場し、「2022年はどんな年でしたか?」と観客に質問(心の中で答えてほしいとのこと)。その流れから今年の漢字の話題になり、今井さん個人としての2022年の漢字は“引”で、その理由は引っ越しできなかったことが心残りだったからと説明していた。

 その後、『Gene of the Earth』と今井さんを代表する楽曲のひとつ『朝焼けのスターマイン』(テレビアニメ『プラスティック・メモリーズ』エンディングテーマ)を立て続けに披露。『朝焼けのスターマイン』について、今井さんはインタビューや過去のライブなどで「いろいろな表現ができる楽曲」と語っているが、本公演では前奏からずっと飛び跳ねたり、観客とともに手を左右に大きく振ったり、サビの終わりにピースをしたり、とにかく楽しそうに歌唱していた。

 そのまま最後は『私が好きになる魔法』へ。そして、同曲をファンひとりひとりの顔をじっくりと見ながら、満面の笑顔で歌い上げたところで、“今井麻美 Autumn Live 2022「One Step」”は幕を閉じた。

今井麻美さんのライブ“Autumn Live 2022「One Step」”リポート。新旧織り交ぜたセットリストを多彩な表現で歌い上げる

 なお、10月25日配信の“今井麻美のニコニコSSG”第171回では、同ライブの振り返りを実施。ライブの感想などが語られているので、こちらもチェックしてほしい。

【ライブ振り返り】ミンゴスのライブ「One Step」を振り返る【今井麻美のニコニコSSG第171回/10月25日配信】

“今井麻美 Autumn Live 2022「One Step」”セットリスト

  • 01.ANTHEM of +A
  • 02.Balancing Journey
  • 03.Dear Darling
  • 04.風と猫のStoria
  • 05.Astral World
  • 06.Carve out
  • 07.砂漠の雨
  • 08.追憶の糸車
  • ラジオ+A sounds番外編(バンドメンバー紹介含む)
  • 09.The Azure~碧の記憶~
  • 10.rinascita
  • 11.unknown world
  • 12.三日月色
  • 13.タンジェリンの海
  • インスト
  • 14.Gene of the Earth
  • 15.朝焼けのスターマイン
  • 16.私が好きになる魔法

[2022年11月29日0時30分 記事修正]
本文中の一部表記を修正しました。