2022年11月11日にNintendo Switch、プレイステーション5、プレイステーション4、PCで発売される、スクウェア・エニックスのタクティカルRPG『タクティクスオウガ リボーン』のレビューをお届けする。

 前回のプレビュー記事に続き、今回も事前に機会をいただいて本作をプレイ。それをもとに、本作ならでは魅力をお伝えしていこう。なお、内容には一部ネタバレが含まれる可能性もあるので、ご承知いただきたい。

 本作の概要については以下の記事でご覧ください。

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『タクティクスオウガ リボーン』レビュー。ユーザーに媚びないストーリーとバトルシステムにやられながらもハマる!

重いし辛いがいつの間にか引き込まれていくストーリー

 本作のオリジナル版である『タクティクスオウガ』が発売されたのは1995年10月6日。当時はまだ消費税は3%、インターネットは有線でしかも通信速度は最大で128キロ(ギガどころかメガにもおよばない)、羽生結弦選手や大谷翔平選手はまだ1歳と、現在と比べるととんでもなく隔世の感がある。「すげー昔」と言い換えてもいい。

 それから四半世紀の時を経てもなお、最新のハードで遊びたいという声が数多く上がる作品である『タクティクスオウガ』。その魅力はいくつもあるが、とくにゲームファンへ衝撃を与えたのは“民族紛争をテーマに遠慮呵責なく描かれるハードなストーリー”だろう。

 苦しい台所事情のレジスタンス活動から始まり、序盤からくり広げられるドロドロとした政治の話、理想と現実の狭間で揺れながら迫られる選択、裏切りに断罪など、ハートが弱い人なら見ているだけでもツラくなるような重い展開が続く本作のストーリー。

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 キャラクターもこれでもかというくらい尖っている。主人公の姉カチュアや幼なじみのヴァイスなど、ポジション的には主人公を支え、盛り立ててほしいキャラクターたちは、むしろ主人公を悩ませることばかりする制御不能な暴れ馬。一方で同じ名前を持ちながら対照的な思想や行動を採る“ふたりのランスロット”を始め、各陣営には腹に一物も二物も抱えたさまざまな人物たちが顔を揃える。

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 目的のためには手段を選ばない解放軍のリーダー、理想に燃えるゲリラの戦士、軍に所属しながらも不老不死の研究に没頭するサイコパスなネクロマンサー……。ほかにもさまざまな個性を持つキャラクターが登場する。彼ら彼女らのすべてがわかりやすい悪人、善人であったらまだいいのだが、民のため、家族のためなどそれぞれの正義を持っていたりして、単純に割り切れず好き嫌いに悩まされるのがツラいところ。

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 主人公も、大義のために手を汚すことを選べるかどうかを迫られる。しかも、その選択によってストーリーが分岐したり、仲間になるユニットも変化するのだ。いずれも重いし辛いが、練り込まれた世界観や、ゲームではほかに例をほとんど見ないその内容に、いつの間にか引き込まれてしまうのである。

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 さらに、バトルに参加するユニットや、バトル中の行動によって特殊な会話やイベントが発生することもあり、ストーリー上の見どころは非常に多い。一部のイベントには“ウォーレンレポート”という、ゲーム内の情報ページの閲覧により発生するものもある。そういった隠し要素はけっこう多く、油断ならない。

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 あくまでも理想を追い続けるのか、それとも大義のために手を汚すこともよしとするのか、さらに……。どのルートを選んでもしっかりと構成された展開を楽しめるので(“重さ”はやや異なるが)、思うままに選択してほしい。

 また、本作のストーリー部分はフルボイスとなっており、多くの主要人物のセリフで声の演技も堪能できるようになっている。アクの強いキャラクターばかりなだけに、その演技は一見の、いや一聴の価値ありだ。

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 個人的には、本作ならではのワードセンスにも魅力を感じている。たとえばチャプタータイトル。“僕にその手を汚せというのか”、“思い通りにいかないのが世の中なんて割り切りたくないから”、“駆り立てるのは野心と欲望、横たわるのは犬と豚”……思わず声に出して読んでみると、右眼に封じられた中二の自分が蘇ってきそうになった。

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大小さまざまな変更点、新機能が採用されプレイしやすくなったバトル。でも相変わらず難しい(笑)

 オリジナル版や本作のリメイク元である『タクティクスオウガ 運命の輪』からもっとも大きく変わったのがバトルだろう。

 おもな変更点および新要素には以下のものが挙げられる。

  • AIの一新
  • UIが変更。コマンド入力がウインドウ方式からアイコン選択方式に
  • バトルスピードが倍速に変更可能に
  • レベルアップがクラスごとではなくユニットごとになった
  • 消耗品や魔法、スキルは4つずつ装備する形に
  • バトル前に“偵察”が可能に
  • “軌道予測”の導入
  • バフカードの導入
  • ユニオンレベル(いわゆるレベルキャップ制。ストーリーの進行に応じて上限も増えていく)の導入

 全体的にプレイアビリティ(プレイしやすさ)が向上している。本作ではユニットごとにAIコマンド(オートプレイ)の設定ができるのだが、バトルスピードのアップと併用するとものすごい早さでバトルが進んでいく。AIもだいぶ改善されており、シナリオバトルではさすがにきびしいものの、味方ユニットのレベルアップなどに使うフリーバトルの“演習”では、かなり役に立ってくれるはずだ。

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 また、『タクティクスオウガ 運命の輪』で導入された機能“C.H.A.R.I.O.T.”は本作でも採用されている。これは、バトル中いつでも行動を巻き戻してやり直せるというもの。“敵にクリティカルを連発されて主力がやられてしまった”、“1マス目測を見誤って移動して行動終了してしまった”など、シミュレーションRPGあるあるの悲劇も、この機能を使えば何回でもやり直せるのである。ペナルティーもない(ただし使用回数の記録は残る)何という神機能か。

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 もっとも、全体的な難易度はかなり高い。何も考えずに敵陣に突っ込むパワープレイだけでは、ゲーム序盤であるチャプター1でも失敗してしまうこともあるほど。攻撃種やエレメント(属性)の相性や種族特攻、装備、スキル、高低差や地形効果など、さまざまな要素が絡んでくるため、それらを活かした戦いかたが求められるのである。

 とくに役立つのは、『タクティクスオウガ 運命の輪』でも有効だった、状態異常系の呪文である。敵の数が多いマップでは、チャームで敵を魅了して同士討ちさせたり、スロウムーブで行動が回ってくるのを遅らせる、ペトロクラウドで石化させると驚くほど戦いやすくなる。呪文書はショップで購入するほか、敵がドロップすることもある。さらに、ほしい呪文を覚えている敵が出てきたらスキルの“説得”を使って仲間にすると、確実に手に入れられる。

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 同様に、クイックムーブを味方にかけるのも有効だ。本作では一撃を鍛えるよりも行動回数が多いほうがトクなことが多い。ウィザード(ウィッチ)やクレリック(プリースト)といった呪文のエキスパートは、どのマップでも欠かせないと言える。

 一方で、射程範囲が飛び抜けて広いアーチャーや、地形や高低差を無視して移動可能な飛行ユニットは、敵として出てくると非常にやっかい。それらに回復役を集中攻撃されると一気にピンチに陥ってしまうので、呪文系ユニットのポジション取りには気を遣う必要がある。

 もちろん、個々のユニットの能力を高めることも重要。装備はつねに最高のものを身に付けているようにしつつ、アイテム合成ができるようになったら手持ちの装備をパワーアップさせておきたい。本作では、合成した装備にアビリティがつくものがある。身体用防具には水場に入れるようになる“ウェイドスルー”、脚用防具には移動距離が延びる“ムーブプラス”といった感じだ。防具の能力上昇も大事だが、それ以上に立ち回りに影響するものなので、優先的に検討したいところ。

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 本作では戦術に大きな影響を与える新要素がいくつも導入されている。とくに重要なのが“バフカード”である。その名の通り、取得すると一時的にさまざまなバフ効果をもたらすもので、バトル中ランダムでマップ上に出現する。直接攻撃力や魔法攻撃力の上昇、スキル発動確率のアップなどがあり、その効果はかなり高い。また最大4枚まで取得でき、同じものを取っても効果は加算される仕組みなので、積極的に取りに行きたいところだ。

 また、バフカードは敵が取っても効果を発揮する。とくにストーリーに出てくるような固有イラストのユニットに攻撃力アップを取られると、その後の攻撃が致命傷になりかねない。実際、筆者はウッカリしていて何度もエラい目に遭っている(もちろん、すぐにC.H.A.R.I.O.T.を使った)。とくに敵がより強力になってくる中盤以降は、バフカードを巡る駆け引きが重要となるのだ。

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 軌道予測システムも、プレイヤーにとってはありがたい。これは、弓や呪文攻撃の際に、敵に命中するまでの軌道を表示してくれるというもので、もし他のユニットや地形にぶつかって命中しない場合も、これを見れば事前にわかるようになっている。おかげで無駄弾を撃たずにすむのは涙が出るほどうれしい。

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 バトル開始前に“偵察”を行って、開始時の敵の配置や地形を確認できるのもうれしいところ。とくに敵のユニット編成がわかれば、こちらも相性のいいユニットをアタックチームに入れたりできる。

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 そして本作を初めてプレイする人に覚えておいてほしいのは、本作のバトルではクリアー条件として設定されていなければ、必ずしも敵を全滅させなくていいということ。敵を倒すことで貴重なアイテムや換金アイテムが入手できたりすることもあるのだが、敵を全滅させようとするとかなり苦労することになる。まずは目標となる敵ユニットの撃破を目指しつつ、余裕があれば周囲のユニットも倒す、くらいの心がまえでいい。

 また、本作では消費アイテムや呪文、スキルが各4つまでしか装備できない仕様になっている。そのため、マップによって必要なものを整理し直す必要がある。面倒に感じるかもしれないが、それだけ失敗が少なくなるしバトル中も操作しやすいので、これはいい仕様変更だと感じた。

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 新要素の導入もあり、さらに奥深くなったバトル。これを全部最初から実践するのは不可能に近いが、C.H.A.R.I.O.T.も使いながら徐々に慣れていけばそのうち楽しくなってくるはず。接待する気などさらさらない、どうにもツンデレな仕様だが極め甲斐はある!

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