世界が称賛した“神ゲー”の続編は、もっと“神ゲー”だった!
親子の成長や絆の物語と、骨太で豪快なアクションが支持され、2018年に大ヒットを記録したソニー・インタラクティブエンタテインメントの『ゴッド・オブ・ウォー』。全世界のゲームメディアが選ぶゲームアワード“The Game Awards2018”のゲーム・オブ・ザ・イヤーを始めとする、数多くの賞を獲得するなど世界中のプレイヤーを熱狂させたゲームの続編が、2022年11月9日にプレイステーション5/プレイステーション4でリリースされる。
クレイトスとアトレウスの親子は、世界に終焉をもたらすとされる“ラグナロク”をどのように乗り越えるのか? ふたりが過酷な運命に立ち向かい、新たな道を切り拓く壮大な旅路を見届けよう。今回は、本作をひと足早くプレイした記事担当ライターによる、プレイレビューをお届け。一部、前作のネタバレが含まれるので、前作未体験の方は注意してほしい。
『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』(PS5)購入はこちら(Amazon.co.jp) 『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』(PS4)購入はこちら(Amazon.co.jp)大切だから守りたい。すれ違う親子や友との結末は?
緻密に構築された世界観や、豪快なアクションや豊富な探索要素といったゲーム性など、本作の魅力を挙げればきりがない。しかし、前作から続けて遊んでいる筆者にとっては、やはりなんといっても、クレイトス親子を中心とした物語の展開に、引き込まれずにはいられなかった。
いきなりだが、筆者の家庭での話。小学4年生の息子を叱ったときに反発する姿を見ると、子どものころに父親に反抗したときのことを思い出す。当時は口うるさい父親のことを“子の心親知らず”だと思っていたが、我が子が成長するにつれて、「“親の心子知らず”だったな……」と考えを改めるようになった。本当に心配してくれていたから叱ってくれていたのだと。
そして本作。親と子、双方の気持ちが理解できるからこそ、クレイトスとアトレウスのリアルな感情のぶつかり合いにもどかしさを感じた。ストーリートレーラーのシーンやセリフからも、すれ違うふたりの姿が確認できる。
クレイトス 「何を隠している?」
アトレウス 「いまは話せない。でも僕を信じて」
クレイトス 「私はともに歩もうとしてきた」
アトレウス 「でも信じてくれなかった!」
クレイトス 「だが望み通りにした。お前の命を守るためにな」
アトレウス 「なら父上の命は誰が守るの?」
クレイトス 「お前が守る必要はない」
アトレウス 「ほんとにそうかな」
お互いに相手のことを守りたい。でも、それぞれワケがあってその理由は語れない。ふたりはこう憤っているに違いない。「なぜ息子は/父上はわかってくれないんだ!」と。ぶつかり合い、気持ちがすれ違い合いながらも、数々の試練を乗り越えて、絆を深めていくアトレウスとクレイトス。ふたりの姿に心が揺さぶられて、ストーリーを進める大きな原動力となった。
父親目線で言うと、前作からさらにたくましく成長したアトレウスの姿を見るのも微笑ましかった。前作では壁を登るとき、クレイトスの背中におんぶされていたのに、本作では絶壁の壁をひとりで難なく登っていく。アトレウスと共闘するシーンも頼りになるし、彼を操作する場面では爽快なアクションを通して頼もしさが感じられた。その一方で、父親のマネをして宝箱を叩き割ろうとするも失敗し、痛がるコミカルなシーンも。
まだまだ子どもなんだなと痛感させられたし、逆にひとりにするには不安で、子離れできないクレイトスの気持ちも理解できた。
また、前作でバルドルの死を契機に仲違いしたクレイトスとフレイヤの関係性も、物語の見どころだ。フレイヤは息子バルドルを殺したクレイトスに復讐を誓い、たびたび襲撃してくる。はたして、ふたりの関係はどのような運命をたどるのか。ぜひ注目してストーリーを進めてほしい。
さらに本作は、イベントシーンの見せかたも秀逸。開発陣が“全編ノーカット”と称した、シーンとシーンのつなぎ目がないワンショットカメラで進行する演出手法は、本作でも採用されている。前作同様、つぎつぎと巻き起こる怒涛の展開に、やめどきがわからなくなるほどのめりこんでしまった。前作をプレイしたことがある方には、期待通りと伝えれば、そのすごさがわかってもらえるはず!
なお前作を遊んでいない方や、プレイしたけど記憶がおぼろげな方は、本作に収録されている“前作のあらすじ”や、公式の振り返り動画“『ゴッド・オブ・ウォー』-ミズガルズの神話”をチェックしてから遊ぶのがオススメだ。
絶妙なバランスに調整されたバトルを堪能!
前作で生まれ変わったアクションや戦闘システムは、本作でますますパワーアップ。キャラクターの動きにVFX(視覚効果を意味するビジュアル・エフェクトの略)を加えることで、動きの迫力が増しており、より壮大で力強いアクションが楽しめる。スキルやコンボの種類が増えているほか、成長したアトレウスが積極的に戦闘に参加してくれるのも、戦略性を高める要因に。プレイスタイルに応じて多彩な戦いが堪能できた。
クレイトスは、扱える武器の種類もバラエティー豊か。前作でもおなじみの戦斧リヴァイアサンや双刀の短剣ブレイズ・オブ・カオス、さらに守護者の盾と体術を組み合わせたアクションもくり出せる。
リヴァイアサンは、かつてブロックとシンドリがクレイトスの亡き妻フェイに贈った武器。現在はクレイトスが愛用しており、力強いアクションで敵を圧倒できるうえ、刃に冷気をまとわせて攻撃できるほか、投擲することで離れた敵にもダメージを与えられる。放たれたリヴァイアサンは、クレイトスの手もとに呼び戻せるので、ブーメランのように使うことも可能。斧を力いっぱい振るう連続攻撃はもちろん、投擲して狙った軌道で敵にヒットさせることができるのも気持ちいい。
一方、クレイトスが昔から愛用しているブレイズ・オブ・カオスは、刃が両腕に巻かれた伸縮自在の鎖につながれており、振り回して広範囲の敵にダメージを与えられるのが強み。炎をチャージして刃に炎をまとわせて攻撃することもできるほか、刃を投擲して標的に突き刺した後に、炎上させたり、鎖を瞬時に縮めて一気に距離を詰めて攻撃したりすることも可能だ。こちらは敵集団を相手に、スピーディーな戦いが堪能できた。
最後の守護者の盾は、クレイトスが左腕に装着している防具。ふだんは折りたたまれた状態だが、瞬時に円形の盾になってガードできるうえ、リヴァイアサンを投げているときなどは守護者の盾と体術が武器になる。なお、本作にはほかにも多彩な盾が登場し、ガード特性やガード中の移動速度などが異なる。敵の攻撃を弾く“パリィ”しやすい盾もあり、パリィが成功したときの快感は格別だ。
とはいえ、多彩な武器を駆使し、圧倒的な戦闘力を誇るクレイトスであっても、敵に囲まれたときは多勢に無勢。前作でも、慣れないうちは何度もリトライする羽目になったものだ。しかし本作は、力押しで戦おうとすると苦しくなるが、システムを使いこなしたり、周囲の環境を利用したり、敵の動きを観察したりすることで、きちんと乗り切れるように調整されている。
このバランスが絶妙で、多彩なアクションを駆使して敵を倒すのがじつに気分爽快! とくにお気に入りのアクションが、スタンゲージを溜めると発動できるフィニュッシュ攻撃だ。使用する武器や敵に応じていくつかのパターンが用意されており、いずれもパワフルで、クレイトスの凶暴性や残虐性が垣間見られてゾクゾクする。
また本作では、アトレウスやシンドリなどの同行キャラクターとの共闘要素が強化された。仲間には□ボタンで攻撃の指示が出せるので、アトレウスの弓攻撃でスタンゲージを溜めてクレイトスのフィニュッシュ攻撃でトドメを刺す、といった連携も可能。
クレイトスの戦いかたには相応しくないが、同行キャラクターをオトリにして無防備な敵を不意打ちするといった戦術も取ることができ、仲間がいる場面での戦略性は、前作以上に幅広くなっていると感じる。
なお難易度設定は5段階用意されており、いちばん難しい“God of war”以外の難易度は、メニュー画面でいつでも変更可能。ちなみに筆者は、バランスの取れた戦闘を楽しみたいプレイヤー向けの“Balance”で進めている。歳のせいか、アクションゲームの腕は小学4年生の息子にも負けたと感じることがあるものの(苦笑)、先述した通り、絶妙な難易度のおかげで、楽しくプレイできている。
ボス戦では戦闘不能になることもあるが、すぐに復帰できるうえ、ボス戦によってはある程度進めたところからやり直せるのも、ストレスフリーでありがたい。
戦闘の合間に楽しめる北欧神話の九つの世界“九界”の探索や、シリーズおなじみの謎解き要素にも熱中。前作を制作するにあたって、開発陣は実際にアイスランドでロケを行い、北欧神話の世界観を忠実に再現したという。本作でもゲームをプレイしながら、北欧を旅行したかのような楽しさが体験できた。
そのうえシリーズで初めてプレイステーション5向けにも開発された本作では、前作の時点でハイクオリティーだったグラフィックがますますリッチに。前作に登場した六つの世界に新たなエリアが追加されているほか、新たにヴァナヘイム、スヴァルトアルフヘイム、アースガルズが登場。ヴァナヘイムは熱帯雨林のような世界を、スヴァルトアルフヘイムは舟に乗りながら水辺に広がる世界をじっくり探索できた。
また、旅の途上には、行く手をさえぎる障害や、ロックを解除すると貴重なアイテムが手に入る宝箱など、プレイヤーの頭脳を試す多彩なギミックが待ち受けている。これらは、クレイトスの武器リヴァイアサンやブレイズ・オブ・カオスを使ったり、アトレウスと協力したりすることで解除可能。
戦闘同様、謎解きのバランスも絶妙で、簡単に解除できないものの、決して解けないわけではない。冒険を進めると、使用できる武器や道具、ギミックの種類も増加し、より手応えのある謎解きに挑めるのも挑戦しがいあった。
前作でも好評だった豊富なアクセシビリティ機能が、ますます充実しているのも好印象。プレイヤーのスタイルやニーズに最適なゲームプレイを実現するための調整方法は、全部で60項目以上にも及ぶのだから驚きだ。アクセシビリティ機能の中には、攻略に役立つものも用意されており、あれこれ試して自分に合った設定を見つけるのもおもしろいだろう。
物語やキャラクター、舞台、アクションまですべてが徹底的に作り込まれているうえ、かゆいところまで手が届いた本作は、ゲームファンならぜひ遊んでほしいオススメのタイトル。今年の冬は、北欧神話の美しい世界を舞台に、口下手な父親が好奇心旺盛な息子と、絆を深めるストーリーをじっくり堪能してみませんか?