またよしというイラストレーターがいる。またよし氏が描くイラストは、美しく儚げな少女がこちらを見つめるというモチーフが多い。鑑賞者は、独特の透明感を持つ少女たちに見つめられる体験をする。薄い表情をもつ少女の視線で射すくめられる。思わず一瞬息が詰まるような思いがする。
最近ではゲーム関連のイラストも手掛け、『うたわれるもの ロストフラグ』のキャラクターイラストや大陸版『アークナイツ』3周年のお祝いイラストなども手掛けた。作品は氏の公式サイトにまとまっているのでご覧になっていただきたい。
Switch『あつまれ どうぶつの森』(Amazon.co.jp)どのイラストもじつに印象的でかわいらしく、虜になってしまう。
上記『うたわれるもの ロストフラグ』のディレクターは、またよし氏をゲストイラストレーターとして起用した理由を「かわいらしく美しい女性を、体温を感じる距離感で描かれる作品の数々を初めてSNS上で拝見した際、目を奪われました」とコメントしている。筆者も同感だ。
今回、そのまたよし氏に“自分の好きなゲーム”のキャラクターを描き下ろしてもらった。
選ばれたのは『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(プロセカ)と、『あつまれ どうぶつの森』(あつ森)の2作品。
本稿では、またよし氏の描き下ろしイラストとともにその製作過程を動画でお届けしつつ、またよし氏へのミニインタビューも実施した。
『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』
ふだんよく遊んでいるという『プロセカ』から、異なるセカイの初音ミクが描かれた。明るい雰囲気の中でどのミクも華やかに描き出されている。
制作過程動画
『プロセカ』5つのセカイの初音ミクをイラストレーター・またよし氏が描き下ろし! 制作の模様をお届け
『あつまれ どうぶつの森』
『あつ森』からは、“まるめがね”と“イヌのつけばな”を装着したマイキャラクター。ゲームとは異なりぐっと大人っぽく描かれている。
制作過程動画
『あつまれ どうぶつの森』マイキャラをイラストレーター・またよし氏が描き下ろし! 制作の模様をお届け
またよし氏にインタビュー!
またよし 氏(またよし)
イラストレーター。大丸・松坂屋カタログイラストや、小説『大宇宙の魔女 ノースウェスト・スミス全短編』(東京創元社)表紙イラスト、『葛登志岬の雁よ、雁たちよ』(光文社)表紙イラストなどを手掛ける。2021年には自身2冊めの画集『ticket』(1月と7月)や絵本『霧立の森』(EASTAGE,INC.)を発行(文中ではまたよし)。
――『プロセカ』と『あつ森』の、素敵なイラストありがとうございます!
またよし『あつ森』は自分のキャラクターで色んなコーディネートを楽しむことができるので、その中でも“まるめがね”と“イヌのつけばな”の組み合わせが好きで描きました。しょぼんとした目がしょぼんに見えないところが好きなんです。
『プロセカ』からも最初はひとり選ぼうと考えていたんですがどうしても選べなくて、セカイのミクを描くことにしました。ミク達を描けてとても楽しかったです!
――ふだんどのようなゲームをプレイされますか?
またよしコツコツ集めることが好きなので、あつ森もコツコツ自分のペースで遊んでいます。1日の終わりにプレイすることが多いですね。海でちゃぷちゃぷと泳いでいると穏やかな気持ちになります。
『プロセカ』では、イベント順位で称号がもらえるので、最初のころは20000位以内に入ることを目標にしていました。きっかけは初めて参加したイベントでたまたま20000の称号を手に入れたことです。称号一覧で20000のアイコンが並んでいるのが密かな楽しみで“集める”モードになっていたんだと思います。
でもあるとき、仕事などでどうしてもプレイできないときがあって、称号を逃してしまいました。
――あら。
またよしそのときはショックで数ヵ月ほどイベントにも積極的になれずにいたのですが、好きな曲もどんどん増えてミクたちもかわいいし、だんだんと「楽しい!」という気持ちが強くなって、いまは自分のペースでイベントも楽しめるようになりました。
もともと音ゲーは苦手意識がある私でも、難易度関係なくイベントに参加できるところが、楽しめるうれしいポイントです。
――『あつまれ どうぶつの森』でお気に入りの住民や施設というのはあったりしますか?
またよし『あつ森』でお気に入りの住民はネズミのリカです。眼鏡の端からぱちぱちと見えるまつげがかわいいです~! お気に入りの施設は博物館です。初めて足を踏み入れた時の高揚感は忘れられませんね。まだ空っぽの博物館の中で響く足音にひたすら感動しました。賑やかになってきたいまでも思い出します。
あとは、マイデザインを描けることも大きな楽しみですね。
――ゲームの中でも絵を描かれるんですね!(笑)
またよし(笑)。寝る前にふと思いついて、布団の中でポチポチと描いていたら朝だったなんてこともあります。その中のひとつが、こちらの記念撮影です。お仕事で描かせていただいた絵を、『あつ森』の世界で飾れてすごくうれしかったです。
――『プロセカ』でお気に入りの曲というのは?
またよし『プロセカ』でお気に入りの曲、すごく悩みますね。私のプレイ難易度はほぼHARDなのですが、初めのころに大苦戦したのが『ドクター=ファンクビート』でした。「大・天・才!」と歌うところがすごく好きで一生懸命練習しました。
なので、マッチングでこの曲になると緊張しつつもうれしくなる曲です(笑)。ほかにも最近プレイしていて気持ちいい曲は『ラストスコア』、フルコンボを目指して頑張っているのは『the EmpErroR』、MVで胸が熱くなるのは『ステラ』です。
――最近では『アークナイツ』のお祝いイラストを描かれたり、『うたわれるもの ロストフラグ』ではゲーム内イラストも手掛けるなどゲーム関連のお仕事もされていますね。
またよし『アークナイツ』では3人が並んで穏やかに歩くイメージで描きました。
3周年のお祝いの気持ちを込めて背景は華やかな赤にしようと思い、人物は柔らかな印象になるようにブラシの跡や隙間を意識しています。お仕事のご縁からゲームをプレイし始めまして、先日、イラストで描かせていただいたイェラも迎えることが出来ました。キャラクターみんな動きがかわいくて、自動指揮中も眺めちゃいます。
『うたわれるもの ロストフラグ』でネコネを描かせていただくときに強く意識していたことは、ネコネのかわいさやほっぺたのやわらかそうなところです。
こちらもお仕事のご縁からゲームもプレイし始めまして、描かせて頂いた灯幻鏡が無事ゲットできたときはうれしかったです。大事に育ててネコネといっしょに編成しています。
――またよしさんは透明感のある少女を多く描かれていますが、イラストを描く際にもっとも大事にしている点はどのようなことになるでしょうか。また、今後チャレンジしてみたい題材や方向性などはありますか?
またよし絵を描いていると穏やかな気持ちになります。この感覚がすごく好きです。じっくり描くことが好きで、そうでしか生まれない線もあると思います。
同じように大事にしていることは、描きながらわくわくできるかどうかです。この角を曲がったらどんな景色があるんだろうと一歩前に進めるように、この絵が完成したらどう見えるんだろう、どんな気持ちになるんだろうとわくわくする気持ちは、描き上げるための大きな原動力になります。
ぐいぐい描きながら、直感的な取捨選択によって残る線も好きだからかもしれません。
今後チャレンジしてみたいことは、深さのある絵です。もっと自分の感覚を絵に描けていけたらと思っています。